東京教組(東京都公立学校教職員組合)

教職員のセーフティーネット“東京教組”

弱さに向かい合う教育実践を 関東ブロックカリキュラム編成講座に参加して

2018年09月21日 | 日記

 8月18日、19日に日教組関東ブロックカリキュラム編成講座が千葉県で行われました。今回の講座は、「豊かな学びとは何か」というテーマで、「学力」「外国語」「人権」という三つの分科会に分かれて討論がされました。二日間の講座を通して印象に残ったことを紹介します。

 初日は、浅川 和也さん(明治学院大学)が「検証 新学習指導要領~ゆたかな学びの創造に向けて~」というテーマで講演を行いました。この話の中でとても印象に残ったことは、浅川さんが学生に向けて「学校で学んだ結果できるようになったことは何なのか」と聞いたところ、多くの学生が「規則を守れるようになった」「時間を守れるようになった」「我慢ができるようになった」などと答えたそうです。浅川さんは「隠れたカリキュラムによって学ぶことで自ら進んで不自由になっている」と学生の現状を嘆いていました。

 私は、常々「どうして、安倍内閣はあれほどひどいことをしているのに支持率があるのだろう」と疑問に思っていたのですが、この話を聞いて私たち教員は規則を守り、我慢強く、従順な子どもたちを育ててきてしまったのではないかと思い至ったのでした。

 「学力分科会」の講師、菊地 栄治さん(早稲田大学)もその講演の中で、グローバル化社会の到来によって社会は不確実なものとなりその不確実さに対応することを教育に求めることを通して不安感をあおり「学力」を身についていかないと危険だという思いを私たちに抱かせていることや、「内面をコントロールするすべを獲得することが社会に通用するために必要」という考えをもたせているということを指摘していました。

 新学習指導要領は「できるようになること」を目指しているが、これは「強さ」「できること」を個人に追及させることを旨とする「個人能力論」であり、私たち教員が人間の「弱さ」にきちんと向かい合わなければ個人能力論は極めて大きな影響力をもって子どもたちの生活に浸透してしまうだろうと述べていました。また、この考えは「特別支援教育」を個人能力を高めるための合理的配慮にシフトしていく懸念があり、「受け止める寛容さ」を養う機会が排除され、人々は分断されるであろうと語っていました。

 こうした状況に抗していくためには、私たち教員自らが陥りがちな思考習慣や常識についていったん立ち止まって吟味し、人間と社会の「限界性」に気づくような生を味わい経験することでしか豊かなカリキュラム作りはできないだろうと述べていました。

 もう一度、「人類の進歩」という目線から学力論やカリキュラム論をみていく必要があります。9月22日(土)には授業づくりの本質を学べる授業講座 「いのちの授業」を行います。ぜひこの講座に参加して、「豊かな学びとは何なのか」ともに考えてみましょう。


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