東京教組(東京都公立学校教職員組合)

教職員のセーフティーネット“東京教組”

感染症対策・一斉休校で見えた学校の人権問題

2020年12月08日 | 日記

休校要請の差別性

今年2月27日の安倍前首相による突然の一斉休校の「要請」は、学校現場を大きな混乱に陥れた。東京教組は直ちに執行委員会声明を発し、一斉休校の問題を訴えた。一斉休校に反対したのには様々なポイトンがあったが、子どもの人権の観点からも大変危険な「要請」であった。声明から抜粋する。「・・・共働きでなければ生活困難な家庭、シングル家庭などでは、突然子どもを返されれば、仕事と家庭の両立は崩壊する。・・・両親が揃い裕福でどちらかの親が働けば生活できる家庭しか思い描けない首相の想像力と現状認識の欠如は深刻だ。・・・」もっとも危険だと感じたのは「『普通』の家庭」しか想定しないで政策を打ち出してしまう姿勢である。緊急事態だからこそもっとも深刻な影響を受ける社会的「弱者」を基準に考えなければならなかった。さらに実際に差別政策を我慢して受け入れる社会の姿を子どもに見せてしまったことは、差別の再生産につながってしまうのではないか。

休校中のオンライン教育の問題

休校中のオンライン教育の推進は、今現在の段階では各家庭のネット環境に大きく左右されてしまうため格差拡大であり、大きな誤りであったと考える。「オンライン教育」と言っても、単なるプリントの配信・動画配信から、授業のライブ中継まで様々である。単純なHPからのプリントのダウンロードができない環境の子も大勢いた。動画配信であっても、日中子どもが一人では見ることができない、兄弟が同時に見る環境まではない、親が帰ってきてからやっとスマホで見る、など大きな差があった。「1人1台」が先行していたところでは、タブレットやルーターなどを貸し出したというが、結局同様の差が生まれることは言うまでもない。「ハードの不足」よりも「インフラとしてのネット環境不足」なのであって、一人一台だけで解決する問題だとは思われない。

さらに大きな問題は「オンライン授業」が、一方向の授業を加速させ、教員がそれで満足してしまうことである。もちろんオンライン授業で、子どもの側からの質問が可能なツールもたくさんある。しかし、カメラへ向かって質問するハードルは、通常のそれより明らかに高い。そもそも質問できなくて困っている子を見つけてフォローしながら進めたり、質問までいかない「つぶやき」を拾っていったりするのが「良い授業」ではないだろうか。にもかかわらず、一方的な配信で「授業をした気」になる教員の増加が心配である。

GIGAスクール構想の問題

まして「GIGAスクール構想」で聞こえてくる「個別最適化」という言葉は、これまで特別支援教育での子どもの差別・選別を」正当化するキーワードであり、警戒が必要である。そもそも現在のAIが判断できるのは点数学力であり「点数学力」という基準による子どもの集団の輪切りが「個別最適化」の正体なのだと思う。また、教育産業が提供するプログラムを使用することによる授業の画一化、教員の創意工夫が失われる危険性も感じている。

そもそも、これまでの教室の問題

一方休校明けの約一か月「分散登校」がほとんどの学校で行われた。クラスを半分ずつに分けて(この時の分け方を男女別にした学校があったとの報告があり、これは大きな問題)授業を行い、少人数で行う授業の功罪が問われた形となったが明らかに「功」の声が大きい。これまで過密な人数を教室の押し込み授業を行ってきたことは、子どもにとっての人権侵害であったのではないか、との視点からも、少人数学級をおしすすめる声を上げていきたい。


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