司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

法人登記簿、代表者住所を原則非公開に

2009-01-17 19:39:12 | 会社法(改正商法等)
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090117NTE2INK0317012009.html

 「株式会社などの法人登記簿に記載した代表者の住所について、正当な利用目的がない限り非公開とする制度改正を検討する」そうだ。「早ければ2009年度の会社法改正も視野におく」とのことである。

 記事では触れられていないが、下記「規制改革推進のための第3次答申」を受けて「検討」を開始するものであり、実現については、?である。会社法制定の際にも、下記「法務省の回答」のとおり、議論された結果として、登記事項として存置されたものである。

 非公開化の是非についてはおくとして、仮に非公開化するとすれば、次のとおり法務省令の一部改正により対応可能である。


 株式会社の代表取締役の住所は、登記事項である(会社法第911条第3項第14号)。

 しかし、登記事項証明書の記載事項は、法務省令で定めるものとされており(商業登記法第10条第3項)、商業登記規則第30条等の規定が置かれている。したがって、会社法の改正によらなくても、商業登記規則の一部改正により「非公開化」することは可能である。

 閲覧に関しては、登記簿の附属書類の閲覧(商業登記規則第21条、第32条)と同様の取扱いにすればよいと考える。

 なお、印鑑証明書においても、代表取締役の出生年月日が記載事項とされている(商業登記規則第32条の2、第9条第1項第4号)が、この点も公開の必要性は乏しいように思われる。


 代表取締役の住所の非公開化に関しては、全国規模の規制改革要望においても、次のとおり要望が出されているところである。
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/accept/200810/0109/0109_1_07.xls

【要望事項】
 株式会社設立時の登記に伴う代表取締役の住所の取扱いの見直し
【求める措置の具体的内容】
 代表取締役の住所を誰もが閲覧可能な状態にせず。法務省の内部情報としていただきたい。
【提案理由】
 「会社法では、代表取締役の住所を登記の記載事項としているために、何人であっても閲覧可能な状態にある。そのため、代表取締役本人及び家族の身辺に危険が及ぶ可能性は否定できず、セキュリティ上問題がある。本来、代表取締役の住所を記載させているのは、送達する際に必要であるからと推察されるため、法務省が知り得る立場にあるのは理解できるが、一般にその内容を開示する必要があるのか疑問である。代表取締役住所を法務省に届けるが、企業が希望すれば公開しないような措置をとっていただきたい。」
【特記事項】
 英国では、企業が希望すれば、代表取締役の住所が公開されないようになっている。

【法務省の回答】
「御要望の件は、会社法制定の際にも検討されたものである。他の法人類型と同様に、会社法上、株式会社の代表取締役の住所が登記事項とされているのは、訴訟手続上、普通裁判籍の決定及び送達の場面において重要な役割を果たしていること(民事訴訟法第4条第4項、第103条等)に典型的に表れているように、代表取締役の行為を特定するための情報として重要であるからである。会社法制定にかかる法制審議会の結論においても、この代表取締役の住所を登記事項から削除することは、訴訟手続だけでなく、実際の取引に多大な影響を与える可能性が否定できないといった問題があることから、相当でないものとされたところである。」

【再検討要請】
 「会社の登記における代表取締役等の住所の非公開化の容認」に関する「規制改革推進のための第3次答申」(平成20年12月22日)を踏まえ、再度ご回答をお願い致します。


「規制改革推進のための第3次答申」
ウ 会社の登記における代表取締役等の住所の非公開化の容認
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2008/1222/item081222_21.pdf
【問題意識】
 会社法(平成17 年法律第86 号)により、会社を代表する取締役・社員等の住所は、登記の記載事項とされており、誰でも閲覧可能である。一方、公開されている情報から住所を調べ、不適切な行動がとられることが現に発生しており、個人のプライバシー保護の観点だけでなく、生命・身体の安全のために、住所を非公開にする必要性は高まっている。このままでは、自衛策から、実際に住んでいないところを住所として登記したり、詳細の住所を登記しないような対策が行われたりするおそれがあり、登記の目的に反する状況となりかねない。よって、登記に当たって取締役等の住所を法務局に届け出るが、公開しない仕組みを導入することにより、これらの懸念を払拭するべきである。
【具体的施策】
(ア)会社の登記における代表取締役等の住所の非公開化の容認
会社を代表する取締役・社員等の住所につき、法務局への届出は行うが、訴訟手続き等正当な目的のための開示を除き、非公開にすることを選択できる等の措置について検討すべきである。【平成21 年度検討開始、可能な限り早期に結論】
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