てつりう美術随想録

美術に寄せる思いを随想で綴ります。「てつりう」は「テツ流」、ぼく自身の感受性に忠実に。

去りゆく秋に追いすがる ― 晩秋から師走へ ― (1)

2007年12月04日 | 写真記
 この秋の紅葉の記事は、一度書いたのでもういいかと思っていたが、季節の移り変わりを指をくわえて見送るのは寂しいものだ。まだ本格的な寒さが訪れていないのと、買ったばかりのデジカメでいろいろ写してみたいのとで、今年の紅葉はイマイチだとぼやきつつも、京都のゆく秋を惜しんで出かけてみた。

 前にも書いたが、京都の代表的な観光名所である嵐山とぼくの家とは、さほど離れていない。だが、この時季はあまりの人の多さに、ほとんど足が向かないのである。ただ、夜ともなると話は別だろうと思い、12月を迎えた最初の日の晩に、9時までライトアップしている宝厳院(ほうごんいん)の庭園へとおもむいた。ここは天龍寺の塔頭のひとつで、何年か前にも紅葉のライトアップを見にきて、大いに感激したことがあったのだ。

 だが今年の紅葉はやはり、ぼくを満足させるものではなかった。ある男性の客が、庭に入ってくるなり「白いなあ!」といって驚いていたが、たしかに葉の色が淡く、白っぽく見える。前に来たときには、上を見上げるとくれない色に染まった葉叢が幾層にも折り重なるようにして迫ってき、自分が今どこに立っているかを忘れてしまうほどだったのに・・・。

 細い道がくねりながらつづく庭を2周しながら、懸命にシャッターを切ってみたが、使える写真は数枚ほどしかなかった。それはもちろん紅葉が冴えないせいばかりではなく、写し手のぼくが夜間の撮影に不慣れだということも関係あるだろうけれど。


〔青々した竹と紅葉のコントラスト〕


〔今年の紅葉は濃淡の差が大きいようだ〕


〔足もとを照らしていた照明〕


〔巨岩に紅葉が覆いかぶさる〕

                    ***

 さすがに9時近くなると、寒さがにわかに増してくる。さっきまでは団体客で賑やかだった宝厳院の庭も、すっかり静けさを取り戻した。手持ち無沙汰になった案内人たちが、首をそろえてぼくを送り出してくれた。大堰(おおい)川のほとりまでくると、ほんの数人の人たちが家路を急いでいるばかりだ。

 今年も師走に入ったことだし、ほどなく冬本番が訪れるだろう。このまま秋が終わってしまうのは、少し物足りない気がした。まるでクライマックスのない映画を観たあとのようだ。

 もし機会があれば、もう一か所だけ出かけてみよう。往生際のわるいことに、暗い川の流れを見ながらぼくはそんなことを考えていた。


〔近代的な照明に浮かび上がる渡月橋〕


〔阪急嵐山駅のホームの明かりには、桜と紅葉の模様。この駅がいちばん賑わうのが、春と秋だ〕


〔翌日撮影した南座の「まねき」。早くも年末の雰囲気がただよう〕

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