大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

下院・共和党、ようやくオバマケア改廃案を提出

2017年03月08日 | 日記

 トランプ大統領が当選した後、与党共和党が最初に取り組んだのはオバマケアの改廃である。

 オバマケアには大きな予算が使われており、最初にここでどのぐらい予算を削るか決めないとあとの予算案を作ることができないのである。

 つまりオバマケアの問題を解決した後でないと、減税策もインフラ投資も具体化できないのである。

 これがなかなか進まないでいたが、2017年3月6日(月)になってようやく下院・共和党の具体的なオバマケア改廃案が出てきた。

 おもな内容は、1)医療保険(購入)への連邦政府の補助金を廃止する、2)低所得者向けの公的医療保険メディケイドの加入対象者を広げた州に出している補助金を2020年までに廃止する、3)あらたに年齢別の税額控除(tax credit)の仕組みを導入するというもの。 

 税額控除は日本にはない仕組みで、30歳以下の人は年2千ドル(23万円:1ドル=115円で計算)、60歳以上の人は年4千ドル(46万円)といった金額が決められていて、その金額までは収めた税金が返ってくる。そしてもし払った税金が、定められた金額に達しなければ差額を現金で支給されるというのが税額控除の仕組みである。

 家族全員の税額控除の上限は1万4千ドル(160万円)とされている。

 また個人について7万5千ドル(860万円)、世帯で15万ドル(1700万円)を超える所得があると、所得に応じて少しずつ税額控除が少なくなるようになっている。

 この案がとおると、連邦政府による補助金が大幅に削減され医療保険に入れなくなる人が大量に生み出される恐れがある(下院・共和党はその見積もりを出していないが)。

 ところでアメリカのメディア-トランプ大統領を熱烈支持するウォールストリート・ジャーナルも含め-は、オバマケア改廃案がすんなり成立するか疑問視するものが多い。

 共和党内にさまざまな反対があるからである。

 一方には政府の市民生活への関与を最小限に抑えようとする保守強硬派が存在し、とくに税額控除の導入に強く反対している。

 他方には、オバマケア改廃で医療保険から締め出される人が多く出ることを懸念する議員-とくにリベラルとされる州の出身議員-がいる。

 まず今週(水曜日)、下院の委員会で法案の投票がおこなわれ、来週に下院本会議で投票がおこなわれる予定となっているが、民主党と共和党が拮抗する上院(100人)では、共和党から2人の造反者がでると法案が通らなくなる。

 法案の行方を注視していきたい。

 

2017/3/12追記

 2017年3月9日(木)、下院・委員会は共和党が提出した法案を可決した。ウォールストリート・ジャーナルは、共和党内に強い反対があるため、下院本会議での採択は予定より少し遅れ今月下旬ごろになりそうだと伝えている。

ジャンル:
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はじめまして (Harkerboy)
2017-03-08 18:52:44
ブログを読ませていただきコメントを書きたかったのですが、市井のおばあさんが何か書いてもトンチンカンになるし、と遠慮していました。

が、先程もCNN.jpを見ているとオバマケアの廃止で困るのはトランプ支持層と、まあ当選前からわかっていたことを言っていましたが、以前皆保険に反対者が多い理由として、移民の国であることが大きな理由だと聞いたことがあります。

米国にやってきたばかりの者に高い医療費を補填するなんてとんでもない、と言う考えがあるので皆保険制度が敷かれないと。

確かに日本国内でも医療費問題が騒がれながら滞在半年(?)で国民健康保険の対象に外国人がなることには正直私も少なからず抵抗はあります。が、欧米人はともかく途上国からの人もいますから、しかたないかな、とも。

皆保険制度というのはあるに越したことはないのですが、果たして米国で反対が多い本当の理由って一体何なんでしょうか。何をいつも反対するのかわかりません。もしもご研究の関連でおわかりの点があればご教示いただけると幸いです。
追記 (Harkerboy)
2017-03-08 18:57:59
すでにオバマケアが導入され皆保険の一歩は踏み出されているので、今更これを全くなしにすることは無理だと共和党内でもわかっているのは私もわかっている上での先の質問です。
アメリカ人が皆保険に反対する理由 (大野)
2017-03-10 08:31:10
 はじめまして。返信が遅れてすいません。
 アメリカの事情にお詳しいようにお見受けしました。
 ご質問のアメリカで皆保険への反対が多い理由ですが、ご指摘のとおりアメリカでは皆保険にすると医療費が上がると考える人が多いためではないかと思います。
 皆保険にすると、移民の方たちを含む低所得者への補助が必要になったり、既往症があってオバマケア以前は保険に入れなかった人がたくさん保険に入ってきて医療費が増え、結果的に保険料が上がることになると考える人が多いようです。
 あとアメリカでは、政府は非効率だという考えが強く、公的な保険制度にすると非効率から保険料が高くなるとする考え方も根強いです。医療保険は民間企業の競争にゆだねた方が安くなると考える人が多くいます(この考えのため、オバマケアも他の先進国のような公的機関がおこなうものでなく、民間の保険会社を使った制度になっています)。保守強硬派は、基本的にこの考えだと思います。トランプ氏も、医療保険料を安くするため(保険会社などの)競争の促進が必要だと言っています。
 ちなみにお隣のカナダにいくと、皆保険で、医療費はすべて無料です。

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