税理士 田村直樹の 「建設業者の会計・税務・経営のポイント」  個人事業から会社へ、決算、調査、相続に安心で対応

税理士 田村直樹 が、建設業者の会計・税務・経営のポイントをやさしく、わかりやすく解説します。

【非公開裁決】高額な取引なのに証拠等なし、外注委託費等は損金算入できない

2023-01-25 10:31:17 | 日記
参考になります。


【非公開裁決】高額な取引なのに証拠等なし、外注委託費等は損金算入できない


 請求人が、法人税の申告において損金の額に算入した支払手数料および外注先(本件外注先)に送金した金員(本件外注委託費)について、原処分庁が、支出の使途が明らかでなく損金の額に算入できないなどとして更正処分等をしたのに対し、請求人が、当該支払手数料等の使途は、情報収集等の役務提供(本件業務)を受けたことの対価であり支出の使途は明らかであるなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案で、国税不服審判所は、本件業務は、高額な取引であるにもかかわらず、契約書が作成されておらず、本件外注先から本件業務に係る報告もなく、相当期間にわたり未払であったが本件外注先から催告もないなど、本件業務が実際に行われたのであれば通常存在するはずの証拠等が存在しておらず、本件業務は実際には行われていなかったものと認められる、よって、本件外注委託費の額を損金の額に算入することはできないとして、請求人の主張を棄却した(令和3年10月8日付、非公開裁決事例)。

【事実】
(関係法令)

 関係法令は別紙のとおりである。なお、別紙で定義した略語については、以下、本文でも使用する。

(基礎事実)

 イ 請求人について

 (イ)請求人は、〇〇に設立された、〇〇等を営む法人であり、平成25年5月1日から26年4月30日までの事業年度以後の事業年度の法人税について、青色申告の承認を受けていた。

 (ロ)請求人の取締役は、設立以来、〇〇が務めており、代表取締役は、〇〇のみであった。

 ロ 商品の販売について

 (イ)請求人は、29年5月1日から30年4月30日までの事業年度(以下「本件事業年度」)において、〇〇が発注する〇〇に使用される圧縮袋(〇〇の減容のための容器)を、メーカーから仕入れ、〇〇を通じて、当該〇〇を行う事業者に販売していた。

なお、〇〇は、〇〇に設立された法人で、本件事業年度において、〇〇は代表取締役を、〇〇は取締役をそれぞれ務めていた。

 (ロ)請求人は、本件事業年度において、〇〇および〇〇が発注する〇〇に使用されるフレキシブルコンテナバッグ(〇〇の保管等のための容器。以下「フレコンバッグ」といい、圧縮袋と併せて「圧縮袋等」)を、メーカーから仕入れ、〇〇を通じて、当該〇〇を行う事業者に販売していた(以下、請求人が〇〇を通じて圧縮袋等を販売していた事業者を「本件各納入先事業者」)。

 ハ 支払手数料および外注委託費の損金経理について

 (イ)請求人は、本件事業年度において、〇〇から、基本的に毎月末日付で、請求項目を圧縮袋の販売協力金などとする各請求書を受領し、当該各請求書に記載された金額(税抜き)を、請求人の本件事業年度の総勘定元帳に、支払手数料として計上した(以下、当該支払手数料を「本件手数料」)。

 なお、本件事業年度において、〇〇の代表取締役は〇〇が務めていた。

 (ロ)請求人は、本件事業年度において、〇〇から、基本的に毎月末日付で、請求項目をフレコンバッグの販売協力金とする各請求書を受領し、当該各請求書(以下、上記(イ)の各請求書と併せて「本件各請求書」)に記載された金額(税抜き)を、請求人の本件事業年度の総勘定元帳に、外注委託費として計上した(以下、当該外注委託費を「本件外注委託費」)。

 なお、本件事業年度において、〇〇の代表社員は〇〇が務めていた。

(審査請求に至る経緯)

 イ 請求人は、本件事業年度の法人税について、青色の確定申告書に記載し、また、29年5月1日から30年4月30日までの課税事業年度(「本件課税事業年度」)の地方法人税について、青色の確定申告書に記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。

 ロ 請求人は、29年5月1日から30年4月30日までの課税期間(以下「本件課税期間」)の消費税および地方消費税(以下「消費税等」)について、消費税等の確定申告書に記載して、法定申告期限までに申告した。

 ハ 請求人は、原処分庁所属の調査担当職員の調査を受け、令和元年7月1日、本件課税期間の消費税等について、元年7月18日、本件事業年度の法人税および本件課税事業年度の地方法人税について、各修正申告書を提出した。

 ニ 原処分庁は、請求人は、いずれもその支出した金銭の使途が明らかでない本件手数料および本件外注委託費の額を、その取引に係る役務提供があったものとして帳簿書類に記載しており、法人税法第127条《青色申告の承認の取消し》第1項第3号に規定する隠蔽または仮装の行為があったとして、2年7月1日付で、本件事業年度以後の法人税の青色申告の承認の取消処分(以下「本件青色申告承認取消処分」)をした。

 ホ 原処分庁は、2年7月28日付で、上記ハの法人税および消費税等について、過少申告加算税の賦課決定処分をした。

 ヘ 原処分庁は、本件手数料および本件外注委託費の額は、いずれもその支出した金銭の使途が明らかでないため、本件事業年度の法人税の所得金額の計算上損金の額に算入されず、本件課税事業年度の地方法人税の更正処分および重加算税の賦課決定処分(以下、上記法人税の更正処分と地方法人税の更正処分を併せて「本件法人税等各更正処分」といい、上記法人税の各賦課決定処分と地方法人税の賦課決定処分を併せて「本件法人税等各賦課決定処分」)を、また、本件課税期間の消費税等の更正処分(以下「本件消費税等更正処分」)および重加算税の賦課決定処分(以下「本件消費税等賦課決定処分」)をした。

 ト 請求人は、上記ヘの処分を不服として2年10月26日に審査請求をした。

【争点】
 本件手数料および本件外注委託費の額は、法人税法第22条第3項に規定する損金の額に算入できるか否か。

【原処分庁の主張について】
 本件手数料および本件外注委託費の額について、請求人の取締役である〇〇が、本件手数料および本件外注委託費に係る〇〇の業務(以下「本件業務」)の具体的な内容を説明していないこと、〇〇とで本件業務の依頼および実施の時期について申述内容が異なること、請求人は本件業務が行われたことを証する事実および書類等の提示をしていないことなどからすれば、本件業務が行われた事実はなかったものといえる。

 そのため、本件手数料および本件外注委託費の額は、いずれもその支出した金銭の使途が明らかでないから、法人税法第22条第3項に規定する損金の額に算入することができない。

【請求人の主張について】
 請求人は、〇〇における〇〇に使用される圧縮袋等の販売取引を獲得または維持するために、本件業務として、〇〇で使用すべきとされる圧縮袋等の仕様・規格に関する情報収集および行政に対する働きかけを依頼した。その結果、本件事業年度において圧縮袋等の販売が実現したことから、成功報酬として、圧縮袋等の販売数量と整合する内容の本件各請求書に基づき、本件手数料および本件外注委託費を実際に支払ったものである。

 したがって、本件手数料および本件外注委託費は、本件業務の対価であるから、本件手数料および本件外注委託費の額は、法人税法第22条第3項に規定する損金の額に算入することができる。

 なお、本件業務の不存在につき原処分庁に立証責任があるところ、原処分庁が提出した〇〇および本件各納入先事業者の関係者の申述に係る証拠は、いずれも信用性を欠いていることなどから、原処分庁は本件業務の不存在を立証していない。

【審判所の判断】
(法令解釈)

 法人税法第22条第3項の規定に照らせば、内国法人の所得金額の計算上、損金の額に算入することができる支出は、当該法人の業務の遂行上必要と認められるものでなければならないというべきであり、支出のうち、使途の確認ができず、業務との関連性の有無が明らかではないものについては、損金の額に算入することができないと解するのが相当である。

 また、所得を構成する損金の額については、本来、原処分庁が立証責任を負うものではあるが、納税者が業務に関連して費用を支出したとして損金の額に算入し、原処分庁が、同支出について損金の額に算入すべきでないと主張する場合、原処分庁は、損金の存否に関連する事実に直接関与していないのに対し、費用等を支出したとする者は、原処分庁よりも、より証拠に近い立場にあることおよび一般に、不存在の立証は困難であることなどに鑑みると、更正処分時に存在し、または提出された資料等を基に判断して、当該支出を損金の額に算入することができないことが事実上推認できる場合には、費用等の支出を主張する側において、上記推認を破る程度の具体的な反証、すなわち、当該支出と業務の関連性を合理的に推認させるに足りる具体的な立証を行わない限り、当該支出の損金の額への算入は否定されると解される。

(認定事実)

 イ 圧縮袋のメーカーが作成した圧縮袋の仕様書には、主構成材料、防水性能、寸法、脱気口の有無、閉口部の構造、容積および充填質量等が記載されていた。

 フレコンバッグのメーカーが作成したフレコンバッグの仕様書には、主構成材料、防水性能、本体主加工方法、充填部分寸法、容積および落下衝撃試験の合否等が記載され、また、同仕様書には、フレコンバッグの積重ね試験および落下衝撃試験等の試験結果が記載された試験成績書が添付されていた。

 ロ 請求人と〇〇は、本件業務に係る契約書などの書面を作成していなかった。また、請求人と〇〇は、本件業務の依頼に際して、本件業務の報酬について取り決めをしていなかった。

 ハ 本件各請求書には、圧縮袋等の販売協力金などの請求項目、月毎の圧縮袋等の販売数量、販売協力金の単価および販売数量に販売協力金の単価を乗じて算出した請求額が記載されていた。

 なお、本件各請求書には、本件手数料の支払期限について記載がなく、本件外注委託費の支払期限については、翌月末日が記載されていた。

 請求人は、29年10月から30年4月までの間に〇〇を通じて本件各納入先事業者に圧縮袋等を販売しており、実際の圧縮袋等の販売数量と、本件各請求書に記載された圧縮袋等の販売数量は、おおむね一致していた。

 ニ 請求人は、次のとおり、〇〇の請求人名義の普通預金口座から、〇〇名義の預金口座および〇〇名義の預金口座へ、それぞれ送金した。

 送金日 30年3月30日 540万648円 本件手数料(マーケティングコンサルティング料)

 送金日 30年4月9日 1143万720円 本件手数料(平成29年10月分から平成30年3月分)

 送金日 30年4月9日 420万768円 本件外注委託費(29年11月分から30年3月分)

 送金日 30年4月27日 157万5288円 本件手数料(30年4月分)

 送金日 30年4月27日 323万7084円 本件外注委託費(30年4月分)

 合計 2584万4508円

 ホ  請求人の本件事業年度における税引後当期純利益は、〇〇であった。

 ヘ 〇〇は、30年8月29日、29年7月1日から30年6月30までの事業年度の法人税の確定申告をした。〇〇は、当該確定申告において、所得の金額の計算上、本件手数料の額を益金の額に算入していなかった。

 ト 〇〇は、請求人から当審判所への審査請求書の提出後の3年6月3日、29年2月1日から30年1月31日までおよび30年2月1日から31年1月31日までの事業年度の法人税の確定申告をした、〇〇は、当該確定申告において、所得の金額の計算上、本件外注委託費の額を益金の額に算入していた。

 チ 請求人は、〇〇名義の署名および押印のある3年4月20日付の「陳述書」と題する書面(以下「本件陳述書」)を証拠として当審判所に提出した、本件陳述書には、要旨、次のとおり記載されている。

 A 29年春頃、友人の会社経営者から、同社のクライアントが〇〇の自治体関係者と繋がりのある人を探しているので相談に乗ってあげて欲しいと頼まれ、初めて〇〇と会った。〇〇からは、メーカーに依頼して開発中の圧縮袋について、仕様・規格が想定の範囲内のものにならないと困るのだが、仕様・規格は〇〇が決定するため、自分達ではどのように営業活動してよいか分からないという趣旨の相談を受けた。なお、その後、フレコンバッグの仕様・規格についても、〇〇から同様の相談を受けた。

 B 上記Aの相談を受け、〇〇に対して、要旨、以下の内容を話したところ、〇〇は、その内容を承知した上で、仕様・規格に関する営業活動をお願いしたいと述べたので、この仕事を受けた。

 (A)〇〇の自治体関係者の周辺には一定の人脈があるため、仕様・規格の件についてであれば、然るべき人脈を通じて、必要な関係各所に働きかけをしてみることは構わない。

 (B)ただし、誰に対してどのような活動をするか等については、先方との信頼関係上、明らかにすることはできない。

 (C)私自身は圧縮袋等の仕様・規格の内容に関する専門的知識を有していないため、技術的な事項の詳細については関知できない。

 (D)請求人の取引の実現や維持、各自治体等が最終的に決定する仕様・規格が〇〇の希望どおりになることを保証することはできない。

 (E)報酬は、仕様・規格が〇〇の希望どおりとなり、請求人が圧縮袋等を販売できた場合に、後で販売数量に応じて支払ってもらうことで構わない。報酬の具体的な単価をあらかじめ決めておくことは難しいだろうから、状況に応じて話し合って決めることで構わない。

 C 業務の内容を具体的に明示することは不可能であること、長年の友人からの紹介であったことから、契約書を取り交わさなかった。

 D 上記BおよびCの後、〇〇から受け取った圧縮袋等の仕様書などを然るべき関係者に渡し、仕様・規格の件について、必要な事項をお願いするなどして、営業活動を実施した。営業活動のために新幹線で〇〇に少なくとも2回出向き、また、関係者とは適宜電話で必要な話をした。それ以外に、誰に対して何をどのように頼んだのか等については、関係者に対する守秘義務を遵守し、関係者との信頼関係を維持する必要があるため、話すことはできない。

 E 営業活動の結果、請求人は圧縮袋等を販売することができたとのことであった。報酬については、〇〇との協議の結果、報酬単価が決まり、報酬対象期間は、おおむね半年間分となった。

 F 圧縮袋等の販売数量については、毎月、〇〇から電話で聞いており、信頼関係に基づき、販売数量に関する裏付け資料の提出は求めていなかった。〇〇から販売数量を聞くたびに、〇〇名義の請求書をそれぞれ作成し、請求人に郵送していた。

 G 本件手数料および本件外注委託費の支払の時期について、こだわりは全くなかった。

 リ 〇〇は、令和3年8月4日、当審判所に対して、要旨、次のとおり答述した。

 A 請求人からの依頼は、請求人が取り扱っている商品を販売できるように行政とのつながりのある人に声かけして欲しいということであった。もっとも、請求人の依頼を実現するためには、〇〇にお金を渡す必要があるので、請求人には、依頼の実現のためには〇〇にお金を渡す必要がある旨、請求人から私に外注費としてお金を出してもらえれば、私の人脈を通じてそのお金を〇〇に渡すので、請求人にお金の都合がついたら連絡を欲しい、連絡をもらったら請求人に宛てて請求書を出す旨話した。

 B 依頼の対象である商品について、〇〇としか聞いていない。請求人からの依頼に際して、商品の仕様書などの紙の資料は受け取っていない。

 C その後、請求人からの連絡を受けて、請求人に請求書を発行し、請求人から〇〇の口座にお金が振り込まれ、このお金を私のつながりのある人物に渡した。

 D 請求人からの依頼内容は、請求人のために必要なお金を〇〇に渡すことであって、私がお金を必要としているわけではないので、請求人に発行した請求書の金額の支払を催促したことはない。

(本件陳述書および答述の信用性について)

 イ 本件陳述書の信用性について

 A 本件業務の依頼状況、内容および履行状況について

 本件陳述書には、上記(認定事実)のチのAないしDのとおり、請求人から〇〇への依頼は、自治体が指定する圧縮袋等の仕様・規格が、請求人の想定の範囲内になるように、〇〇の人脈を通じて関係各所に働きかけるというものであった旨の記載がある。

 上記(認定事実)のイのとおり、メーカーが作成した仕様書には、圧縮袋等の仕様につき、試験結果等の専門的、技術的な事項が記載されていたことからすれば、上記働きかけを遂行するためには、圧縮袋等や〇〇についての専門的、技術的知見が必要と考えられるところ、上記(認定事実)のチのBの(C)のとおり、〇〇は、〇〇からの相談の際、自分自身は圧縮袋等の仕様・規格の内容に関する専門的知識を有していないため技術的な事項の詳細については関知できないと説明したにもかかわらず、〇〇が上記内容の依頼をしたというのは不自然である。また、上記(認定事実)のチのBの(E)およびCのとおり、本件業務の報酬については、あらかじめ定めず、後で請求人が圧縮袋等を販売できた場合に決めることとしたという点についても、上記(認定事実)のチのAのとおり、〇〇は29年春頃初めて〇〇と会った旨記載されており、取引上の信頼関係があったとは言い難い上、〇〇は、自ら圧縮袋等の販売をしているわけではないため、請求人から知らされない限り圧縮袋等を販売できたか否かを把握することが困難と考えられることに照らして、報酬について取り決めをしないまま依頼を受けたというのは不自然、不合理である。

 このように、本件業務の依頼状況、内容および履行状況についての本件陳述書の記載は、その内容自体不自然、不合理であることに加え、上記(認定事実)のリのとおり、〇〇は、当審判所に対しては、本件陳述書の内容と異なり、本件業務は請求人から〇〇に送金された金員を〇〇が自身の人脈を通じて〇〇に渡すことであった旨、また、請求人からの依頼に際して、商品の仕様書などの紙の資料は受け取っていない旨答述しており、依頼内容および依頼状況についての説明に一貫性がないこと、依頼内容を示す契約書や本件業務の履行状況を示す報告書やメールなどの客観的証拠もないことも併せ考えると、本件業務の依頼状況、内容および履行状況についての本件陳述書の記載内容は信用できない。

 B 本件各請求書の作成状況について

 他方、本件各請求書が、請求人からの求めに応じて作成、発行されていたことについては、上記(認定事実)のチのEおよびF並びにリのAおよびCのとおり、本件陳述書と答述とで一貫していること、また、圧縮袋等の販売に直接関与していない〇〇が、上記(認定事実)のハのとおり、現に圧縮袋等の販売数量とおおむね一致する内容の本件各請求書を発行していたことからすれば、〇〇が実際の圧縮袋等の販売数量を〇〇に伝え、〇〇がこれを基に本件各請求書を作成し、請求人に郵送していた旨の本件陳述書の内容は、信用できる。

 ロ 答述の信用性について

 A 本件業務の依頼状況、内容および履行状況について

 〇〇は、上記(認定事実)のリのとおり、請求人からの依頼は、請求人が商品を販売できるよう、請求人から〇〇に送金された金員を〇〇が自身の人脈を通じて〇〇に渡すことであった旨答述している。

 しかしながら、この点を裏付ける客観的証拠はない上、上記答述は、圧縮袋の販売開始(29年10月)の後に請求人から〇〇に送金(30年3月から同年4月)が行われたという上記(認定事実)のハおよびニの事実と齟齬しているため、この点についての〇〇の答述は信用できない。

 B 〇〇から請求人に対する支払の催促について

 他方、上記(認定事実)のリのDのとおり、〇〇は、請求人に対して本件手数料および本件外注委託費の支払を催促していなかった旨答述しているところ、かかる答述は、上記(認定事実)のハのとおり、本件各請求書に本件手数料の支払期限が記載されていなかったことおよび上記(認定事実)のチのGの、支払時期について全くこだわりがなかった旨の本件陳述書の記載と整合し、また、実際に催促されたことが窺われる事情もないことからすれば、この点についての〇〇の答述は信用できる。

(当てはめ)

 イ 業務関連性のないことが事実上推認されるかについて

 本件においては、以下のとおり、本件業務が実際に行われたのであれば通常存在するはずの事実および証拠が存在せず、これらは、本件業務が実際には行われていなかったことを推認させる事情ということができる。

 A 本件業務の基本的条件について書面が作成されていないこと

 上記【事実】の(基礎事実)のハの(イ)および(ロ)のとおり、本件手数料および本件外注委託費は、それぞれ総額1704万2000円、688万5700円であり、上記(認定事実)のホのとおり、請求人の税引後当期純利益が〇〇であることに照らして相当高額であることからすれば、本件業務が実際に行われたのであれば、報酬等の基本的な取引条件については、合意内容が客観的に形に残る契約書などの書面により取り決めるのが通常である。

 それにもかかわらず、上記(認定事実)のロのとおり、請求人と〇〇は、本件業務の依頼に際して、本件業務に係る契約書などの書面を作成していなかったのみならず、報酬の具体的な取り決めもしていなかったのであり、このことは、本件業務が行われていなかったことを推認させる。

 B 圧縮袋等の仕様・規格に関する情報が請求人に報告されていなかったこと

 本件業務として、圧縮袋等の仕様・規格に関する情報収集および関係者への働きかかけが実際に行われていたのであれば、〇〇は、収集した圧縮袋等の仕様・規格に関する情報を請求人に報告しているはずである。特に、圧縮袋等については、上記(認定事実)のイのとおり、仕様書に詳細な技術的、専門的な事項が記載されていたことからすれば、〇〇が収集し請求人に報告する情報にも、技術的、専門的な情報が含まれることが想定されるため、本件業務が実際に行われたのであれば、文書やメール等による報告が伴うのが通常であると考えられる。

 それにもかかわらず、請求人は、〇〇が収取した仕様・規格について報告をした文書やメール等の具体的な証拠を提出しておらず、当審判所の調査によっても、この点についての報告がなされていたとは認められない。このことは、本件業務が行われていなかったことを推認させる。

 C 本件手数料および本件外注委託費が相当期間未払であったにもかかわらず催促されていなかったこと

 上記(認定事実)のニのとおり、29年10月分から30年3月分までの6か月分の本件手数料(1143万720円)および29年11月分から30年3月分までの5か月分の本件外注委託費(420万768円)が〇〇の預金口座に送金されたのは、30年4月9日であった。

 このように、本件手数料および本件外注委託費は相当長期間にわたり未払となっており、金額も相当高額であったことからすれば、実際に本件業務が行われていたのであれば、受託者である〇〇は、請求人に対し、その支払を催促するのが通常であるにもかかわらず、上記(本件陳述書および答述の信用性について)のロのBのとおり、〇〇は、請求人に対して本件手数料および本件外注委託費の支払を催促していなかったのであり、このことは、本件業務が行われていなかったことを推認させる。

 D 〇〇が本件手数料および本件外注委託費の額を益金の額に算入していなかったこと

 本件業務が実際に行われていたのであれば、本件手数料および本件外注委託費はそれぞれ〇〇の益金となるから、〇〇は、本件手数料および本件外注委託費として受領した金額を、法人税の所得の金額の計算上益金の額に算入して確定申告するのが通常である。

 それにもかかわらず、〇〇は、上記(認定事実)のヘのとおり、所得の金額の計算上、本件手数料を自身の益金の額に算入して申告しておらず、また、〇〇は、上記(認定事実)のトのとおり、請求人が当審判所に審査請求をするまで、本件外注委託費の請求時期に対応する事業年度の確定申告自体をしていなかったのであるから、〇〇は、本件手数料および本件外注委託費が自身に収益として帰属するものではないと認識していたことが窺われる。そのため、これらのことは、本件業務が行われていなかったことを推認させる。

 ロ 請求人の反証について

 請求人は、上記【請求人の主張について】のとおり、本件業務の成功報酬として本件手数料および本件外注委託費を〇〇に支払った旨主張し、関係する各証拠を提出していることから、以下、この点につき検討する。

 A 請求人は、上記【請求人の主張について】のとおり、〇〇に対し、本件業務として、〇〇に使用される圧縮袋等の仕様・規格に関する情報収集および行政に対する働きかけを依頼した旨主張し、また、上記(認定事実)のチのAないしDのとおり、本件業務の依頼状況、内容および履行状況につきこれに沿った内容の本件陳述書を証拠として提出している。

 しかしながら、本件業務の依頼状況、内容および履行状況についての本件陳述書の記載内容が信用できないことは、上記(本件陳述書および答述の信用性について)のイのAのとおりである。

 したがって、上記請求人の主張および証拠は、上記イのとおり、本件業務が実際には行われていなかったことの推認を破る程度の具体的な反証とはいえない。

 B 請求人は、上記【請求人の主張について】のとおり、圧縮袋等の販売数量と整合する内容の本件各請求書に基づき、本件手数料および本件外注委託費を実際に支払った旨主張し、また、上記(認定事実)のチのB、EおよびFのとおり、これに沿った内容の本件陳述書、本件各請求書および請求人名義の預金通帳を証拠として提出している。

 しかしながら、上記(本件陳述書および答述の信用性について)のイのBのとおり、〇〇が〇〇に対して実際の圧縮袋等の販売数量を伝え、〇〇がこれをもとに本件各請求書を作成していた以上、本件業務が実際に行われたか否かにかかわらず、本件各請求書記載の販売数量と実際の販売数量が一致するのは当然であるから、本件各請求書記載の販売数量と実際の販売数量が一致するからといって、本件業務が行われたことが推認されるわけではない。また、預金通帳は、請求人から〇〇に本件各請求書記載の金額が送金されたことを示すにとどまり、それ自体が当該送金の実際の趣旨ないし業務との関連性を示すものとはいえない。

 したがって、上記請求人の主張および証拠は、上記イのとおり、本件業務が実際には行われていなかったとの推認を破る程度の具体的な反証とはいえない。

 ハ 請求人のその他の主張について

 請求人は、上記【請求人の主張について】の主張のほか、圧縮袋等が満たすべき仕様が請求人の想定の範囲内にならない場合、請求人は圧縮袋の納品ができずに大量の在庫を抱える可能性、また、指定される仕様を満たす安価なフレコンバッグを提供する競合他社に取引を切り替えられてしまう可能性があったなどとして、圧縮袋等の仕様・規格に関する働きかけの必要性があった旨主張し、関係する証拠を提出している。

 しかしながら、請求人の提出資料および当審判所の調査によっても、圧縮袋の仕様の指定に先立ち請求人がメーカーから圧縮袋を仕入れていたなどの、指定される仕様の内容によっては請求人が在庫を抱えることになる具体的な事情は認められず、指定される仕様を満たす安価なフレコンバッグを提供する競合他社の存在も明らかでないため、請求人の主張するような可能性が具体的に生じていたとは認められない。また、仮に請求人の主張するような具体的な可能性があったとしても、それを避けるためにあえて、自ら圧縮袋等に関する専門的、技術的知見を有していないと述べていた〇〇に圧縮袋等の仕様に関する働きかけを依頼することは、上記(本件陳述書および答述の信用性について)のイのAのとおり、不自然、不合理である。

 したがって、上記請求人の主張および証拠は、上記イのとおり、本件業務が実際には行われていなかったとの推認を破る程度の具体的な反証とはいえない。

 ニ 小括

 以上のことから、本件業務は実際には行われていなかったものと認められる。

 したがって、本件手数料および本件外注委託費は、本件業務の対価とは認められず、業務との関連性が明らかでないものというべきであるから、損金の額に算入することはできない。

別紙

関係法令 

 1 国税通則法(平成30年法律第16号による改正前のもの。以下「通則法」)第68条《重加算税》第1項は、同法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等または税額等の計算の基礎となるべき事実の全部または一部を隠蔽し、または仮装し、その隠蔽し、または仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に加え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。

 2 法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算の通則》第1項は、内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする旨、同条第3項は、当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、①当該事業年度の収益に係る売上原価等の額(同項第1号)、②当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く)の額(同項第2号)および③当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの(同項第3号)とする旨それぞれ規定している。

 3 消費税法第2条《定義》第1項第12号は、課税仕入れとは、事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、または役務の提供(所得税法第28条第1項(給与所得)に規定する給与等を対価とする役務の提供を除く)を受けることをいう旨規定している。

(2023年01月25日 税のしるべ電子版)

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本版インボイス発行事業者の登録件数

2023-01-17 09:47:53 | 日記
個人事業者、免税事業者は迷っていますね。

令和4年12月末のインボイス発行事業者の登録件数は約199万件、
法人課税事業者は75%が登録終える

国税庁は1月12日、令和4年12月末時点の適格請求書(インボイス)発行事業者の登録件数を公表した。

登録件数は198万9645件で同11月末より26万件以上増加した。

1月16日に開催された「第1回 適格請求書等保存方式の円滑な導入等に係る関係府省庁会議」に同庁が提出した資料によると、

同12月末時点で法人の課税事業者約200万者のうち約75%がインボイス発行事業者の登録を終えている。

他方、個人の課税事業者約100万者のうち、同登録を終えたのは約34%にとどまっており、

同庁は、個人事業者に対して、さらに幅広く、着実に情報を届けられるよう周知広報を行う必要があるとしている。

(税のしるべ電子版)

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

相続税の調査事例

2023-01-11 10:40:23 | 日記
相続税の調査事例が公表されています。

被相続人が保険料を負担した生命保険契約に関する権利を相続財産から除外

相続人は、自分名義の生命保険契約に係る保険料を負担したのは被相続人であり、

その契約に関する権利が相続財産であると認識していたにもかかわらず、相続財産から除外していた。

調査対象者(相続人)の申告について、

資料情報等から相続財産の申告漏れが想定されたため、調査に着手した。

調査の結果、調査対象者(相続人)は自分名義の生命保険契約について、

保険料を負担したのは被相続人であり、相続財産であることを認識していながら

相続財産から除外した上で申告していたことが判明した。

平成30年分の申告漏れ課税価格は約4500万円、加算税を含む追徴税額は約2500万円だった(重加算税有り)。

(税のしるべ電子版)

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

令和5年1月1日以後の納税地の異動等は届出書の提出ではなく所得税等の申告書に記載

2023-01-05 10:39:51 | 日記
5年1月1日以後の納税地の異動等は
届出書の提出ではなく所得税等の申告書に記載

国税庁は12月27日、令和5年1月1日以後に納税地の異動または変更がある場合、

その手続は現行の届出書の提出ではなく、

所得税または消費税の申告書に異動後または変更後の納税地を記載するとした、

「納税地の特例等に関する手続の変更について」を公表した。

例えば、転居等により、

所得税・消費税の納税地に異動があった場合、

「所得税・消費税の納税地の異動に関する申出書」の提出が必要となるが、

4年度税制改正により、その手続が見直されており、

異動後および変更後の納税地は、国税当局において、

提出された確定申告書等に記載された内容等から把握可能であることを踏まえ、

5年1月1日以後は、届出書の提出が不要となっている。

そこで、5年1月1日以後における納税地の異動または変更がある場合は、

異動後または変更後の納税地を所得税または消費税の申告書に記載するなどとした。

(税のしるべ電子版)

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

令和5年1月1日以後の納税地の異動等は届出書の提出ではなく所得税等の申告書に記載

2023-01-05 10:39:51 | 建設業者の税務調査のポイント
5年1月1日以後の納税地の異動等は
届出書の提出ではなく所得税等の申告書に記載

国税庁は12月27日、令和5年1月1日以後に納税地の異動または変更がある場合、

その手続は現行の届出書の提出ではなく、

所得税または消費税の申告書に異動後または変更後の納税地を記載するとした、

「納税地の特例等に関する手続の変更について」を公表した。

例えば、転居等により、

所得税・消費税の納税地に異動があった場合、

「所得税・消費税の納税地の異動に関する申出書」の提出が必要となるが、

4年度税制改正により、その手続が見直されており、

異動後および変更後の納税地は、国税当局において、

提出された確定申告書等に記載された内容等から把握可能であることを踏まえ、

5年1月1日以後は、届出書の提出が不要となっている。

そこで、5年1月1日以後における納税地の異動または変更がある場合は、

異動後または変更後の納税地を所得税または消費税の申告書に記載するなどとした。

(税のしるべ電子版)

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする