温故知新~温新知故?

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富岳による流体シミュレーション〜もっともらしいけど真実とはかけ離れている可能性が高いことを認識して欲しい〜

2021-03-06 18:09:16 | コンピュータ、ハイテク
[新型コロナ]「二重マスクの効果限定的」富岳が検証 隙間なくせば1枚でも効果

上の画像、スーパーコンピュータの流体シミュレーションだ。最近、コロナ禍で度々目にする映像だ。素人が見るとこれがまさに真実化のように思うかもしれないけど、そうではないといいたい。
二重マスクの効果は限定的 スパコン富岳が分析 - 産経ニュース
新型コロナウイルス感染予防で、マスクを二重に着けても不織布マスク1枚を隙間なく装着した場合と効果はほとんど変わらないことが、理化学研究所が運用するスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」を使ったシミュレーションで分かった。理研などが4日、研究成果を発表した。

一体どれくらいの人が、この映像に意味するところを理解しているだろうか?
1.詳細の論文や研究報告を確認していないけど、一般に、このような流体解析は、まず、これは乱流領域の解析で、数値シミュレーションの乱流の場合は、その乱流をケーエプシロンモデル(k-εモデル)というわりあい単純な式で乱流強度を定義する。私は乱流をこのように単純化するのはかなり無理があると思っている。実験などで検証して、確かに実験とあっているということが検証されていれば問題ないけど、実感が難しくてなかなか検証できていないのが現実だと思う。
k-εモデルとは - コトバンク
数値流体力学に利用される乱流モデルのなかで,設計などの工学的利用に最もよく使われるモデル。乱流によって発生する応力を,分子運動による通常の粘性力と同じ論理で,速度勾配に比例すると仮定する。このときの比例係数である渦粘性係数が,乱れの運動エネルギー kと散逸率εによって与えられる。 kとεの輸送方程式は,乱流の運動方程式を利用して求められたのち,物理的考察から簡略化される。

ケー・イプシロン(k-ε)2方程式モデルはこんなに違う 1方程式モデルとの比較
ケー・イプシロン(k-ε)2方程式モデルはこんなに違う 1方程式モデルとの比


上の図はこのサイトより引用
ちょっと難しいけど、そんなに長い記号の羅列ではなく難しい式ではないことがわかると思う。しかし、このk-εモデルは私の仕事でエンジンの燃焼シミュレーションにも使われる非常に利用される式だ。多分自動車の空力の乱流領域にもこれが使われていると思う。
流体の解析には乱流を層流という2つの領域があって、レイノルズ数が2000以下の遅い流れは層流として扱えるが、現実の流れは乱流で扱う必要がある場合が多い。
層流と乱流 | 鳩ぽっぽ
層流(laminar flow)とは、流体が層状になって規則正しく運動する流れのことです。層流では流体は層状になって流れるので互いに混ざり合うことはありません。
乱流(turbulemt flow)とは、流体が不規則に乱れながら運動する流れのことです。乱流はいろんな方向へ運動するので、流体は互いに混ざり合いますが、平均すると流れの方向へ進みます。
また層流から乱流に変化することを遷移(transition)といいます。

層流と乱流|2限目 今さら聞けない…|熱交ドリル|株式会社 日阪製作所 熱交換器事業本部
層流と乱流
「流れ」の状態には、流れ方向に向かって規則正しく流れる「層流」と、様々な方向に不規則に流れる「乱流」があります。
1883年にイギリスの科学者オズボーン・レイノルズがインクを使って流れの可視化実験を行い、層流と乱流の区別を発見しました。流速が小さいときはインクがほぼ一本線で流れる「層流」、流速が大きいときはインクが途中から乱れて拡散する「乱流」となることが分かりました。

2.これも想像だが、上のマスクの動画は、周りの風の影響はない状態でのシミュレーション結果だ。
3.同じ入力で計算すると数値シミュレーションはいつも同じ結果となるが、現実は毎回外部の風やマスクの装着状態、人の顔の個人差などで、同じ結果となることはありえない。
上のような不確実な条件があり、このシミュレーションが、本当っぽいけど、本当に真実のウイルスの動きを表しているかは、たまたま正しいこともあるけど、このシミュレーション動画のようにはならない場合は山ほどあるし、それを理解した上で一つの限られた条件での結果として見る必要があると思う。
シミュレーションは、本当は実験で確かめたり、実験では毎回条件が異なるので、数回の結果をそれこそ今流行りのビッグデータとして統計的な解析をして、平均的にこういうことが言えるなどのチェックをした上で、確からしさが保証されてから、公開されるべきなのに、このようにメディアなどでいかにもこれが真実のように報道されていることに私は危惧を覚える。
しかし、このようなことを発言することは、今日もネットで色々検索してこのくらいの文章を書いて伝わるか伝わらないかはっきりしないのし、十分説明したとは言えないのが現実なので、なかなか難しい。
最近はSNSなど、すべてが一瞬にして理解できること、わかりやすさが求められるし、ある意味わかりやすさが重視されるのできちんと難しいことを時間をかけて説明することや理解することが避けることが横行しているようだ。昔はメールやSNSはなく、いろいろなことを紙で書いて伝えて、理解する時間が想定されていたけど、そのような手間を省く今の現実は何かを失っているような気がする。



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2 コメント

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富岳の解析 (橋爪)
2021-03-10 18:15:07
コンピュータの解析も研究室の実験も条件が異なれば結果が違うことは自明のことですが,多くの情報の中でついつい結果だけに引っ張られてしまうことに自戒。
re: 富岳の解析 (橋爪) (ひろBB)
2021-03-11 13:22:31
橋爪さん、コメントありがとうございました。実は3月9日富岳が公開され、HPCIフォーラム ~スーパーコンピュータ「富岳」への期待~に参加して、自動車の利用などの説明を聞きました。50億格子の解析が40分弱でできるようです。このマスクの解析は一つの条件か未だにわかっていませんが、いくつかのケースを確かめることも可能なようです。解析もそうですが、確かにご指摘の通り、実験もある条件のもとの結果ですね。

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