SURGERY NOW note
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 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)とは膵管内に乳頭状に増殖する膵腫瘍で、多くは粘液を産生します。この膵腫瘍は小さいうちは膵管内に限局していることが多く、膵管拡張または膵嚢胞として発見されます。一方、進行して膵実質へのがん浸潤を認める場合には、膵管内乳頭腫瘍由来の浸潤がんといわれます。こうなると通常の膵がん同様に、リンパ節転移、肝転移、腹膜転移などを起こして予後不良です。

 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)に対する治療は原則として外科手術です。しかし、主に分枝膵管内に存在する3cm以下の分枝型腫瘍で、腫瘍内に充実性成分がなく、主膵管も拡張していないものでは、殆ど良性の腺腫ですので経過観察とすることが一般的です。もちろん膵炎を起こして腹痛が強いような場合は3cm以下でも手術することもあります。また、病変が主膵管に存在する主膵管型では小さくても腺がんであることが多いので切除をしたほうが良いと考えられます。

  2008年1月までに国立がんセンター東病院で切除を受けたIPMN患者さんは100人ですが、その内訳は良性の腺腫が37例、悪性の腺がんが63例でした。悪性の63例中、非常に予後の不良である浸潤がんは36例でした。つまりIPMN切除例の約1/3が良性、約1/3が悪性でも予後の良好な非浸潤がんまたは微小浸潤がん、約1/3が浸潤がんということになります。IPMN由来の浸潤がん36例の5年生存率は32%でしたので通常型の膵がんの5年生存率10-20%よりは良好です。

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