腹腔内腫瘍の一つにデスモイド(desmoid)腫瘍という低悪性度腫瘍があります。この腫瘍は手足など整形外科領域に発生することが多いのですが、小腸や大腸など腹腔内にできることもあります。
診断はCTやMRIなどの画像診断だけでは困難で、内視鏡や直接穿刺による生検で組織を採取し、一般的な病理組織検査に加えて免疫組織学的検査が必要になりなす。画像上は消化管間質腫瘍や神経原性腫瘍などとの鑑別が問題となります。
この腫瘍には放射線や抗がん剤は殆ど効果がありませんので、腹痛や腸管圧迫による通過障害など症状がある場合は手術による治療が行われることが一般的です。しかし、第3相試験による明確な科学的根拠はありませんが、最近厳重経過観察(watch and wait)も一つの選択肢になりうることがコンセンサスとなりつつあります。非常に稀な腫瘍で、大きさや存在部位も違いますし、増大速度も様々ですので治療法の選択は非常に難しいと思います。