SURGERY NOW note
がん治療と外科手術に関する新しい情報や日常診療を通じて感じたことなどを紹介します。
 



今日は東京フォーラムの第100回日本消化器病学会で、膵癌に対する術前化学療法の有効性について発表します。術前化学には大きく二通りあり、一つは切除可能膵癌に対して手術前に補助療法として計画的に化学療法を行うもので、もう一つは切除不能と診断して化学療法を行ったところ腫瘍が縮小し、切除を行う場合です。

前者が28例、後者が5例で、その生存率を検討しました。後者で切除できた人の生存期間中央値は約4年で非常に良好な結果でした。一方、前者の生存期間は、術前治療をしない手術先行例とほぼ同じでした。大血管に浸潤の疑われる切除境界膵癌 (borderline resectable cancer) では、切除率は確かに上がって切除は可能になるものの再発は比較的早く、予後の改善は認められませんでした。まだ、十分な結果が出ていないのではっきりとは言えませんが、術前化学療法に用いる抗がん剤の種類や、用いる期間を工夫する必要がありそうです。

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膵臓の嚢胞性腫瘍で、膵管内乳頭粘液性腫瘍、膵粘液性嚢胞腫瘍(MCN)に次いで多いのが漿液性嚢胞腫瘍(SCN)です。この疾患は100%近く良性ですので、外科的に切除することは少ないのですが、病気の頻度としてはMCNよりもSCNの方が多いと思います。基本的に良性腫瘍なので経過観察をしますが、腫瘍が大きくて症状がある場合は手術をすることもあります。また画像で充実性に見えて、嚢胞部分がわずかしかないタイプでは、内分泌腫瘍やSPNと鑑別が困難で、切除されることもあります。大きなSCNでは門脈と癒着して、門脈に狭窄を認めることもあります。


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先月ですが、松山ケンイチさん主演の映画、「家路」を観ました。福島原発事故で避難区域となった農家の家族の物語です。心に屈折しているものを抱えていながら、身体で農業を覚えていた主人公は、誰もいなくなった避難区域内で農業を始めて、人間性を回復していきます。松山さんも田中裕子さんも演技が素晴らしいです。

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膵臓の嚢胞性腫瘍の中で、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)に次いで二番目に多いのが粘液嚢胞腫瘍(MCN)です。MCNは、ほぼ100%女性に発生し、体尾部に好発します。以前は癌の割合が、良性の腺腫よりも多いと考えられていましたが、現在では腺腫の方が多いことが明らかとなっています。

MCNの治療は、原則として手術です。最近では腹腔鏡を用いた膵体尾部切除を行うことが多くなりました。診断も治療も難しいので、膵臓専門医のいる施設を受診することをお勧めします。

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一般的には患者さんが亡くなった時に主治医が泣くことはほとんどありません。私もやはり同じなのですが、ただし稀ではありますが、患者さんが亡くなって悲しくて泣いたことはあります。何れも癌の術後に再発して、徐々に悪化して死亡したケースです。若い人のこともあれば、年配の人のこともあります。どういう時に泣けてくるのかは、正直自分でもよくわかりません。確かなのは、こうした患者さんのことは今でも鮮明に覚えているということです。

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