SURGERY NOW note
がん治療と外科手術に関する新しい情報や日常診療を通じて感じたことなどを紹介します。
 



米国臨床医学雑誌New England Journal of Medicineの5月22日号に、新型コロナウィルスに対するRemdesivirの有効性を、大規模なランダム化比較試験で検証した結果が報告されました。

それによると、R群の方が偽薬群よりも早期に症状が改善しましたが、発症14日までの死亡率はR群7.1%、偽薬群11.9%と両群間に統計学的な有意差を認めませんでした。有害事象は両群とも20~30%でした。生存率に差がないと明確に有効とはいえないので、Remdesivirも特効薬にはならない可能性が高いと考えられます。しかし、この臨床試験はまだ途中ですので、さらにデータが追加されれば違う結果になる可能性はあります。



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胆嚢・胆管疾患の分かりにくい用語をご説明します。

胆道:胆汁の流れる管構造の経路全体で、肝内胆管、肝外胆管、胆嚢、十二指腸乳頭部までの全てを含みます。従って、胆道癌には、胆管癌、胆嚢癌、乳頭部癌が含まれます。肝内胆管癌は、日本では肝臓癌として扱われることが多いのですが、欧米では胆道癌として扱われることが少なくありません。

肝門部領域胆管:肝外胆管のだいたい上半分で、約4〜5cmの長さがあります。肝内胆管の枝分かれパターンはバリエーションが多いために一概には言えませんが、一般に右側では前区域胆管と後区域胆管の合流部、左側では内側区域胆管と外側区域胆管の合流部から十二指腸側、つまり下方が肝門部領域胆管です。

肝門部領域胆管癌:肝門部領域胆管に発生した癌。人間の癌の中で、最も治療の困難な癌の一つです。一般に肝切除+肝外胆管切除術が行われます。

遠位胆管:肝外胆管のだいたい下半分で、約4〜5cmの長さがあります。肝門部領域胆管との境界は必ずしも明確な訳ではなく、肝外胆管の上半分が肝門部領域胆管で、下半分が遠位胆管となります。

遠位胆管癌:遠位胆管に発生した癌。一般に膵頭十二指腸切除術が行われます。肝門部領域胆管癌よりは術後の生存率が良好です。

十二指腸乳頭部:胆管が十二指腸に開口する部分で、ここから胆汁が十二指腸内に流出します。十二指腸乳頭部の胆管周囲にはオッジ筋という括約筋があり、この括約筋の収縮により普段開口部は閉じています。

十二指腸乳頭部癌:一般に膵頭十二指腸切除術が行われます。遠位胆管癌よりさらに術後の生存率が良好です。

胆嚢癌:胆嚢に発生した癌。粘膜層または固有筋層までに限局してる場合(T1)は予後が良好ですが、固有筋層を超えて漿膜下層まで浸潤している場合(T2)またはそれ以上浸潤している場合には予後が極めて不良です。



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この10年間に東海大学肝胆膵外科で行った主な手術件数をまとめましたのてご報告します。

右または左肝切除が約100件、その他の肝切除が約300件、腹腔鏡下胆嚢摘出が約400件、開腹胆嚢摘出が約150件、膵頭十二指腸切除または膵全摘が約500件、膵体尾部切除が約200件でした。

当科の特徴は、肝切除よりも膵切除が倍近く多いことです。肝細胞癌が減って膵臓癌が増えていますので、この傾向は益々強くなると思います。

 



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日本の新型コロナウィルスのPCR検査数は、経済協力開発機構(OECD)に加盟する35ヵ国中34番目で、際立って少ないことが発表されました。

1000人当たりのPCR検査数は、アイスランド135人、イタリア29.7人、ドイツ25.1人、スペイン22.3人、アメリカ16.4人、韓国11.7人、フランス9.1人などに対して日本はわずか1.8人です。日本より低いのはメキシコだけです。日本のPCR検査体制は、発展途上国並みかそれ以下に貧弱であることが分かります。虫や髪の毛の混入したマスクよりも、こうした検査体制や医療物品の購入などにお金は使うべきだと思います。



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