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コージーミステリーを読み耽る愉しみ その19 グレイス&フェイバーコテージシリーズ(ジル・チャーチル著)

2022年03月14日 | 街歩き
第4話に続いて第5話『君を想いて』。近所に住むミス・トゥイベルが自分の邸宅を老人用老後施設として運営している。リリーとロバートは、2人で老後施設のお手伝いを始める。自分から仕事を探してではなく、欠員が埋まるまでの短期という約束で先方から申し込まれた。叔父の遺言でグレイス&フェイバーコテージに縛り付けられている二人にとって収入を得る道は大切。でも、元々は富裕上流階級に属する人間だった二人は、ガツガツしていない。おっとりと構えていたところへ、丁度よい申し入れだった。洗濯物を運ぶ係、床のモップ掛けする係として働きだすが、施設に入っていた老人が殺される。入居者か、外来客か、それとも不審人物が忍び込んだか?リリーとロバートが手掛かり探しを開始するが、皆に可能性があったようでもあり、でもそんなことをするような人物にも巡り合わない。犯人はたまたま訪問に来ていた妻だったのだが、物語としては筋がちょっとね!と言いたくなる。元々は自分の所有物だった農園(夫に譲渡していたもの)を取り戻すための殺人だったというのだが、なぜ殺人までやらかす必要があったの?と犯罪動機が肚落ちしない、理解はできるんだがね。このシリーズは、犯人探しの途中で色々な脇道に逸れるお話が出てきて、それが愉しいのだが、ミステリーとして考えると、取ってつけたような犯罪なんだよね。コージーミステリーだから、そこを求めるべきではないのだろうが。

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『風の向くまま』は本シリーズの第1話。大恐慌で財産を失い貧しい生活をおくりながらも、決して品性を失わずに暮らしている元上流階級出身の兄妹の2人が、大叔父の遺産を受け継ぐことになった。但し、大叔父が所有していた田舎の地所に10年間住み続けるという条件がついている。根っからの都会っ子の二人だが、背に腹は変えられずに条件を受ける。そこへ、降って沸いたような事件が起こって、二人が巻き込まれる。事件はお約束どおりに殺人。

第2話は『夜の静寂に』、そして一つ飛ばして第四話『愛は売る物』。大叔父の財産管理をするブリニー夫妻にも仲良くお屋敷で暮らしつつ、下宿人を増やしていくことで生計を維持している兄妹2人。第四話では身元不明のグループが週末のみ部屋を借りたいと申し入れてきた。金額は申し分ない。客を好きになれないが背に腹は代えられないと貸すことに同意したものの、借り手の一人が部屋で殺されてしまう。借りてのグループは宗教のラジオ説教師の一団と判明。教祖は宗教を隠れ蓑にした金儲け主義者で、団体で働いている人々は金のために嫌々という具体。誰が手にかけても不思議はない。団体の経理責任者も疑いが出るし、教祖が若いころに作った子供がいることも分かって容疑者は増えるばかり。しかし、実際に殺人を実行したのは行方が分からなくなっていた学校の教師だった。この教師の不在中、兄妹2人が代わりに教師役を受け持っていたという皮肉なめぐりあわせも。

物語の中に、「教養があることが話し方で分かった」という台詞があった。日本の小説にはお目にかからない表現。「学がある」という言い方はされるが、これは高等教育を受けていることを示す言い方で「教養」の有り無しは直接的には言及されていない。今まで生きてきた中でも、話し方で「あの人は教養がある」という言われ方を聞いたことはないし、「教養」の有り無しを人物評価でしたこともほとんどない。「品がよい」ならあるが、これが日本における評価尺度なのだろうと思った時に、欧米での「教養ある」との違いを思い起こさせてくれるという面白い展開がを愉しめた。
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