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『コンサルタントの秘密-技術アドバイスの人間学』 G・M・ワインバーグ

2019年04月14日 | 読書雑感
著者によると、最古のコンサルタントはエデンの園にいた蛇なのだそうだ。蛇はイブに対して、林檎を食するといいことがあるというコンサルティングをした。尤も、副作用を警告することを怠ってしまったが。

この本は、副題が『技術アドバイスの人間学』となっているように、高い報酬を得て企業に知恵や戦略を恭しく授ける憧れの職業コンサルタントとしてデビューし成功する秘訣が書いてあるのではなく、コンサルティングの現場で起こる色々な軋轢や生き延びるための知恵、つまりクライアントと上手くやっていくための人間学が書かれている。そして、そこには著者ならでは経験だけでなくユーモアが存分に盛り込まれている。例えば、こんな風に:「最近まで私は心理学という学問が50%の誤りと50%のでっちあげから成っていると疑っていた。」つまり、この本は、コンサルタントになるための参考書というより、人生を愉しく生きるための参考書と考えた方がしっくりくる、人生の大先輩の金言集と考えるべきものだ。

第一章:コンサルタント業はまぜ大変か -ラズベリージャムの法則
冒頭からコンサルタントとして身に着けるべき法則が出てくる:
 第一法則:依頼主がどう言おうとも、問題は必ずある。
 第二法則:一見どう見えようとも、それはつねに人の問題である。
 第三法則:料金は時間に対して支払われるのであって解答に対して支払われるのではなく、ということを忘れてはならない。

そして、米国と日本におけるコンサルタントの数と求められているものの違いがあるにせよ、「誰の手柄になるかを気にしていたら、何も達成できない。」という、これこそ人間学の最たるものだと思える法則が出てくる。そしてトドメは、ラズベリージャムの法則だ:「広げれ広げるほど薄くなる。
つまり、頭をさんざん捻って考え出した解決策を伝える先が広げると、その分影響力が減って収入も減ってしまうと著者は言う。皿洗いのコンサルタント、皿洗いについてのトレーナー、皿洗いについての講師、皿洗いについての著作をモノにする作家。対象が広がれば広がるほど、与えられる影響は減じてくる。影響は富か、二つに一つ、というのが著者の経験から生まれた法則だ。

第二章:逆説的思考育成法-オレンジジュース・テスト
ほとんどのことは達成できる、時間とコストを掛けさえすれば。この当たり前のようなことが実社会では忘れられることが多い。依頼主や上司は、いとも簡単に「これをやれ」「あれをやれ」と命令し、従順に従うコンサルタントや部下を求めるが、実際にはすべてがトレードオフなのだ。大事な考え方は、「それはできますよ、で、それにはこれだけかかります。」ということを忘れずに、横暴で欲深な依頼主に対処することがコンサルタントとして生き抜く方策。

第三章:わからないことをしているときでも有効であるの法-ゴーマンの法則
医者によると、実はすべての病気の90%までは医師の手当てなしに自然に治るのだそうだ。このことからコンサルタントが学ぶべきことは、
・自ら治癒できるはずのシステムは穏やかに扱おう
・自らを治せるシステムを無理くりに治療していると、ついには自ら治せないシステムが出来上がる
・どんな処方には2つの要素がある:一つは薬、もう一つは薬が正しく使われることを保証するための方法

そして、成功するコンサルタントが知っておかねばならない秘訣は
・もしこれまでしてきたことが問題解決にならないのなら、違ったことを勧めること
つまりは、人は自分が今までやってきた方法や方策に拘ってしまう思い込みがある。それを解き放ってやるのが優れたコンサルタントなのだ。
そして、最も大切な秘訣は、なおせなかったら機能にしてしまえ。例えば、黄ばんだバナナは見栄えがよくないから買われることはない。これを逆手にとって茶色のソバカスが出たころがバナナの食べごろ、と言ってしまえ、ということ。

第四章:そこにあるものを見るの法-金槌の法則
クリスマスプレゼントに金槌をもらった子供は、何でも叩きたがる
。実は大人も同じことが言える。そしてこれから次の法則が生まれる:我々はたいがい商品ではなくレッテルを買う。
人は思い込みや今までの経験、先入観から問題そのものではなく、刷り込まれたレッテル(イメージと言ってよいかもしれない)によって判断したり行動したりする。その結果、依頼主は自分たちの問題を解き方を実は知っていて、その解答を最初の5分の間に口にしている。外部の人間で思い込みのない中立的で、レッテルに誤魔化されないコンサルタントであれば、この最初の5分間を大事にして耳を傾けるのだそう。

第五章:そこにないものを見るの法-ブラウンの素晴らしき遺産
言葉と音楽が合っていなかったら、そこに欠けた要素がある。
この素晴らしい法則は、人間の第六感を信じろということだろうか。つまり、依頼主側が言葉で言っていることと態度や情緒などの違いに注目せよ、そしてそのためには不調和を洞察できるようになることが成功するコンサルタントの必須条件ということになる。例えば、お客様の安全のためにお風呂の段差にご注意ください!という警告文を目にしたら、風呂桶の設置の仕方が正しくないことをカモフラージュするためのものである、ということに気付くということ。

第六章:わなから逃れるの法ータイタニック効果
タイタニック号という名前から連想されるように、この効果は、惨事はあり得ないという考えはしばしば考えられない惨事を引き起こす。ということを意味する。大惨事を招かないようにするには、無視できないような引き金のシステムを作っておくこと。

第七章:インパクトを「ふくらますの法ー盲人に教える話
数人の盲人が象を触って、皆違うことを言う。それぞれが言うことは事実だが、真の象の姿を言い当てることはない、という有名なお話がある。コンサルタントと言えども万能ではない。成功する秘訣は、依頼主のちょっと先を行くだけのこと。柔道の高段者のようにこくわずかの力を加えることで相手の体重にものをいわせることができればいいのだ。実務において、ちょっとした揺すりを掛けてやること。今まで当然と思われていたことを揺すってやることで、相手に考えるように仕向けられればシメたもの。

第八章:変化を飼いならすの法ーホローマの法則
これが意味するものは、何かを失うための最良の方法はそれを話すまいともがくこと。イヤなことでも継続していると好きになったり、本当はやりたかったことをやるために他のことを準備としてやっているうちに、本当にやりたかったことが実は愉しく思えなくなってしまう、そんな傾向を言っている法則。ここから変化についてコンサルタントとして気をつけておかなければならないことがある:
・差がほとんどない、差がほとんどない、を繰り返していくと最後は大きな差となっている。
変化を感じるため、または変化を起こす処方箋をどうしたら信じることができるかは、自分自身の命やお金、生活、つまりは自分自身をそこに置いてみること、つまりは自分の身をさらせば真剣に判断できるはず、というのがワインバーグの法則だ。

第九章:変化を安全に起こすの法-ロンダの悟り
新しいものはけっして上手く働かない。だから新しいものは2つではなく一つにすること。
逆にいうと、新しいものが決して上手く働かないから、いつも希望というものがある、とも言える。

第十章:抵抗に出会ったら-バッファローブレーキ
「抵抗」というのはコンサルタントの立場の言葉で、依頼主からみると「安全性」という言葉になる。依頼主が「抵抗」するには理由がある。だから抵抗の無意識的な源泉を明るみにだすための方法として、代案をどのくらい魅力的か見る、と言う方法がある。「この計画の中でどこか一箇所だけかえるとしたら、あなたにとって一番大きな違いが出るも名どこですか・}や「「コストを30%減らすことが出来るとしたらこの案はより魅力的になりますか?」そして究極がこれだ「私はあなたがこの計画のどこを変更したいか全く思いつかないということは分かっていますが、もしあなたがそれを思いついたとしたのなら、それはどこでしょうか?」逆説的な質問で問題の核心をさらけ出すことができるかもしれない。

第十一章:サービスの売り出しかた-マーケティングの第九法則
コンサルタントが陥りがちな状態は、忙しすぎる状態か仕事がなくて暇な状態のどちらか。そうならないために、
・週に少なくとも一日は人目に触れるために使おう
・一人の依頼主の仕事が全体の四分の一よりも多くならないようにしよう
・マーケティングのための最良の道具は満足した依頼主だ
・全部自分だけでやろうとは思わない。最良のアイデアは依頼主にやってしまって自分でやらせろ
マーケティングは量のためではなく質のためにしよう。

第十二章:自分に値段をつける法
価格は単なる事物ではなく、交渉によってもたらされる関係である。人はたくさん払えば払うほど、受取人を愛する。
だから、価格を高めにつけること。
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