年末年始、業界の話題と言えば、セールと福袋くらいしかない。だが、うちの家族から正月に意外な話が聞けた。
ちょうど30年くらい前になる。当時、取引していたファッション専門店で、福袋を購入した。中身はレディスの小物やアクセサリー5~6点だったが、手袋が特に上質だったようで、指先をカットして未だに愛用しているという。
見たところ、ウールに多少の合繊が混紡されたもので、粗めの編み立てのニット製だが、毛羽立ちはほとんどない。おそらく小物メーカーが通常の卸用に企画した商品だと思われる。もちろん、当時は中国製なんてないから、まさにメイド・イン・ジャパン恐るべしだ。
ファッション専門店の福袋企画は2パターンあった。ひとつは売れ行きが鈍い商品や持ち越しの在庫を詰めるもの。メーカー側が在庫を現金化するために小売りに持ちかけたり、バイヤーが店頭在庫やメーカーから商品を集めて揃えていた。
もう一つは、バイヤーが先に3,000円、5,000円、1万円の売価と個数を限定し、その枠の範囲でプロパーの「小物」をメーカーから仕入れて組み立てるものだ。こちらは点数が多くなく売上げ、利益とも取れないが、レギュラー商品による構成でお客さんに「初夢」をご奉仕したのである。
それでも1万円の福袋だと、1万5,000円~2万円近くの価値はあったと思う。中身が確認できないだけに、買って得したお客さんが年明けに来店し、「福袋、良かったよ」と言ってくれるケースもあったと聞く。それだけでも、お店のロイヤルティはあがり、お客は「納得」できたのである。おそらく、うちの家族の場合は、後者だろう。
元来、福袋は中身を見せず、買ってみて「得した」「損した」という代物だ。しかし、ここ数年、福袋は初売りの目玉商品になり、百貨店では暮れからテレビの情報番組等を使って、積極的に中身を公開し始めている。
初売りには駅ビルやファッションビルのテナントがブランドの福袋をこぞって投入。競争が激化したため、百貨店もより魅力的な福袋を企画しようと、アピールに躍起になった結果だ。
ただ、メーカー・問屋と小売りがはっきり分かれていた30年前ならいざ知らず。今は福袋を販売するために、それ用の商品をわざわざ生産している。特に在庫をもたない百貨店からメーカーが「値入れをこれだけにしてくれ」と指示されれば、通常の卸商品では対応できないからだ。
SPAブランドなら、期末の在庫消化とキャッシュフローを意識するから、売場に並ぶ服と同じ倉庫在庫を福袋に詰め込むのは不可能ではない。でも、百貨店は在庫を買い取っていないので、売場の商品を福袋で処分するわけにはいかないのである。
結果として、福袋専用品を「カシミア」「レザー」などと素材訴求するか、「1万円で3万円相当の商品」という「お値打ち感」を打ち出すしか販促手段はない。それがうちの家族が愛用している手袋のように上質かどうかはわからないが。
昨年、あるセレクトショップの福袋で問題が発覚した。ここは有名アパレルメーカーが手がける業態で、ストアロイヤルティも高く、顧客の信頼も得て福袋も売れていた。ところが、同じ内容の商品が別のショップの福袋にもあったのである。しかも、安い価格で。
アパレルメーカーだけに同セレクトの洋品や小物は、専業メーカーにOEMやODMで製造させているはず。企画担当者は福袋の商品もそのルートで発注したのだろうが、専業メーカーにしてみれば1ブランドではロットも足りず、利益もでないから大量生産して別ルートに流した結果、こうなったのかもしれない。
アパレルや商品流通の事情など知らない一般視聴者は、どうしてもバカなレポーターが言う「お得感」を鵜呑みしてしまう。百貨店の福袋についても、売場のプロパー商品がそのまま詰め込まれているような錯覚に陥っているのかもしれない。
その点では、SPAブランドのように福袋の商品が売場並んでいる服と同じものなら、色柄が好みでなくても購入客は納得するだろう。しかし、前出のセレクトショップのように行き過ぎてしまうと、一気にお客の信頼を損ねてしまう。
もっとも、アウトレットで平気でアウトレット専用品が販売されるのが当たり前の時代。某セレクトショップようなケースは、発覚しないだけでかなりあると考えた方が自然だ。
福袋は夢を売り、お客は納得を買う。例え、それが売れ行きの鈍い商品であっても、手持ちの在庫なら顧客を裏切らない。まして、バイヤーが利益度外視でプロパーを仕入れて仕掛けるのならロイヤルティもあがり、顧客の信頼は増す。
福袋用にわざわざ企画・生産するような商品であれば、お客にはまたタンス在庫が増えていくだけだと思う。
ちょうど30年くらい前になる。当時、取引していたファッション専門店で、福袋を購入した。中身はレディスの小物やアクセサリー5~6点だったが、手袋が特に上質だったようで、指先をカットして未だに愛用しているという。
見たところ、ウールに多少の合繊が混紡されたもので、粗めの編み立てのニット製だが、毛羽立ちはほとんどない。おそらく小物メーカーが通常の卸用に企画した商品だと思われる。もちろん、当時は中国製なんてないから、まさにメイド・イン・ジャパン恐るべしだ。
ファッション専門店の福袋企画は2パターンあった。ひとつは売れ行きが鈍い商品や持ち越しの在庫を詰めるもの。メーカー側が在庫を現金化するために小売りに持ちかけたり、バイヤーが店頭在庫やメーカーから商品を集めて揃えていた。
もう一つは、バイヤーが先に3,000円、5,000円、1万円の売価と個数を限定し、その枠の範囲でプロパーの「小物」をメーカーから仕入れて組み立てるものだ。こちらは点数が多くなく売上げ、利益とも取れないが、レギュラー商品による構成でお客さんに「初夢」をご奉仕したのである。
それでも1万円の福袋だと、1万5,000円~2万円近くの価値はあったと思う。中身が確認できないだけに、買って得したお客さんが年明けに来店し、「福袋、良かったよ」と言ってくれるケースもあったと聞く。それだけでも、お店のロイヤルティはあがり、お客は「納得」できたのである。おそらく、うちの家族の場合は、後者だろう。
元来、福袋は中身を見せず、買ってみて「得した」「損した」という代物だ。しかし、ここ数年、福袋は初売りの目玉商品になり、百貨店では暮れからテレビの情報番組等を使って、積極的に中身を公開し始めている。
初売りには駅ビルやファッションビルのテナントがブランドの福袋をこぞって投入。競争が激化したため、百貨店もより魅力的な福袋を企画しようと、アピールに躍起になった結果だ。
ただ、メーカー・問屋と小売りがはっきり分かれていた30年前ならいざ知らず。今は福袋を販売するために、それ用の商品をわざわざ生産している。特に在庫をもたない百貨店からメーカーが「値入れをこれだけにしてくれ」と指示されれば、通常の卸商品では対応できないからだ。
SPAブランドなら、期末の在庫消化とキャッシュフローを意識するから、売場に並ぶ服と同じ倉庫在庫を福袋に詰め込むのは不可能ではない。でも、百貨店は在庫を買い取っていないので、売場の商品を福袋で処分するわけにはいかないのである。
結果として、福袋専用品を「カシミア」「レザー」などと素材訴求するか、「1万円で3万円相当の商品」という「お値打ち感」を打ち出すしか販促手段はない。それがうちの家族が愛用している手袋のように上質かどうかはわからないが。
昨年、あるセレクトショップの福袋で問題が発覚した。ここは有名アパレルメーカーが手がける業態で、ストアロイヤルティも高く、顧客の信頼も得て福袋も売れていた。ところが、同じ内容の商品が別のショップの福袋にもあったのである。しかも、安い価格で。
アパレルメーカーだけに同セレクトの洋品や小物は、専業メーカーにOEMやODMで製造させているはず。企画担当者は福袋の商品もそのルートで発注したのだろうが、専業メーカーにしてみれば1ブランドではロットも足りず、利益もでないから大量生産して別ルートに流した結果、こうなったのかもしれない。
アパレルや商品流通の事情など知らない一般視聴者は、どうしてもバカなレポーターが言う「お得感」を鵜呑みしてしまう。百貨店の福袋についても、売場のプロパー商品がそのまま詰め込まれているような錯覚に陥っているのかもしれない。
その点では、SPAブランドのように福袋の商品が売場並んでいる服と同じものなら、色柄が好みでなくても購入客は納得するだろう。しかし、前出のセレクトショップのように行き過ぎてしまうと、一気にお客の信頼を損ねてしまう。
もっとも、アウトレットで平気でアウトレット専用品が販売されるのが当たり前の時代。某セレクトショップようなケースは、発覚しないだけでかなりあると考えた方が自然だ。
福袋は夢を売り、お客は納得を買う。例え、それが売れ行きの鈍い商品であっても、手持ちの在庫なら顧客を裏切らない。まして、バイヤーが利益度外視でプロパーを仕入れて仕掛けるのならロイヤルティもあがり、顧客の信頼は増す。
福袋用にわざわざ企画・生産するような商品であれば、お客にはまたタンス在庫が増えていくだけだと思う。