白樺小舎便り(しらかばごやだより)

北信濃の田舎暮らしの日々

山里の集落の最奥で

2015年03月18日 05時25分45秒 | 日記

すっかり春めいてきた北信濃。

北信濃とは言え我が村はその中では南にあるので、いわゆる豪雪地帯ではない。

村から委託を受けている水道メーターの検針を始めた。

五つの、約五百軒分。

最初は比較的狭い範囲に家々が集まっているで、百軒程。

そして、次の日は山際の農業が主の、坂の多い家と家が離れている集落。

前の担当者はバイクを使って検針していたらしいが、僕は歩き。

一日で三万歩以上歩く。

その集落の最奥の家は、水道メーターが倉庫の中にあり、鍵がかけられている。

是が非でも、チャイムを鳴らし家の人に開けてもらわねばならない。

ここの住人は六十代なかば過ぎの婦人と息子さんが一人。

訊けば婦人はシルバー人材センターに所属していたが、自宅の農作業が忙しくて辞めたそうだ。

これまで会社勤めだったが、夫が亡くなって自分が農作業をやらねばならなくなって手探りでやっているという。

まんが日本昔話に登場しそうな、山に囲まれた村落の最奥の地で、周囲には田んぼがあるが、近所の家も少し離れている。

誰も住んでいないような感じの家もある。

そんな中で、平日の昼間も家にいる息子さんは何か事情があるのだろう。

検針を終えても、婦人は話す事を辞めない。

シルバーを辞めた理由、庭木の剪定、農作業のこと、熊が出る話、囲炉裏や炬燵の話、剪定した枝をうまく燃やせない話し、etc。

時はお昼少し前、そろそろ昼食に帰ろうとしていた。

だが、この婦人は、こんな場所で長い冬を過ごし、人と話す事に飢えていたのだろう。

そんなに聞き上手でもない僕を相手に一時間近くもしゃべっていた。

田舎暮らしはのんびりしていて、いいという向きもあろう。

だが、実態はほとんど年寄りしかいなくて、あまり話し相手すらいなくて、なかなか辛いものもあるということを僕も少しは理解している。

耕作放棄地も増えている。

決して田舎暮らしも楽ではない。

それでも、そこに樹が茂り、小川が流れ、鳥が鳴き、花が咲き、稲が実り、野菜ができる場所がある限り、都会よりも好きだ。

また五月に来るとそこを後にした。

あと少しすれば、その集落のもっと奥にある有名なしだれ桜を見に、全国から大勢の人が訪れる。

寂しさも少しは癒されるだろう。

水道メーターの検診は仕事をしながら、ウォーキングもできるのでとてもいい。

ここからは、北信五岳(斑尾山、妙高山、黒姫山、戸隠山、飯縄山)がうららかな日差しの中で白い衣をまとって輝いていた。

 

 

かみさんは伊豆の大島に行き、椿を買ってきた。

赤と緑のコントラストがとてもいい。

リビングから一番よく見える場所に植えた。

そこにあった、僕の挿し木したバラは家のうしろの方に移植した。

 

 

 

やっと雪が融けた庭に、春の花が咲き始めた。

 

 

城山の山頂から見る村の風景にも白い部分が消えた。

もう、本当に春が近いんだなあ。


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