クロソイド(滑り台にも好適な曲線 その２)

ブログを書くときは自分では良く知っている積りの知識であっても一応は調べます。礼儀だと思っています。Wikipedia日本版にはしばしばお世話になっています。自然科学や技術に関する記事は概ね信用できると評価しています。
百科事典というのは新しい理論や技術が普及し始めた頃に書かれた記事が内容豊富で読んでも面白いものです。我が家にも亡父が出征するときに家族に頼んで買い揃えた平凡社の百科事典が納戸のどこかにしまってあるはずです。Wikipediaでは得られない知識が沢山あるだろうと予想しています。昔の『ブリタニカ』ではマクスウェルが書いた「原子論」やアインシュタインの「時空」の記事が読めたのです。これらの人類の遺産は編集して出版すべきでしょうね。より良いのは「青空文庫」に入れて、誰でも読めるようにすることでしょう。

今回、クロソイドについてWikipediaで調べましたが梗概の域を出ません。困ったことに、googleで検索した結果には、このメモ程度の記事がどっさりコピペされているのです。コピペしたら理解したと誤解しているのでしょうね。
Wikipediaの左のサイドバーには「他の言語」の一覧があり、英語も参照してみました。英語版は更に酷くて「フレネル積分」から記事を飛ばしているのです。ドイツ語は30数年前にかじったことがあるので恐る恐る覗いてみましたが、さすがアウトバーンの国だけあって最も充実しています。枯れた技術であっても後世にしっかり伝えようとする意欲が感じられます。

前のエントリーでも触れましたが、名神高速道路が開通したのは1963年(東京オリンピックの前年)で、この年に発行された『数学セミナー』11月号に「いねむり運転を防ぐ曲線　高速道路とクロソイド」と題する記事があります。これは旧道路公団の木倉正美さんが執筆されています。高速道路の幕開けの時代を感じることが出来、内容も分かりやすく好感が持てます。以下は氏の記事を参考に致しました。

クロソイドの語源はギリシャ神話の運命を司る3人の女神の一人Klotho(クロト)に由来します。画像では一番右の女神です。最年少のクロトは人間の誕生を司り、生命の糸を紡ぎます。手にスピンドルを持っていますね。次女のラケシス( Lachesis)が命の長さを測り、最年長のアトロポス(Atropos)が糸を断ち切る、と言い伝えられています。クロソイドは漸近点を持ち、これが糸巻きを連想させることからclothoidと呼ばれるようになったのです。英語のclothの語源でもあります。

この曲線が考えられたのは1694年頃、ベルヌーイが弾性薄板を研究対象としたのが最初と言われていますが、漸近点を持つ曲線として明確に認識したのはオイラーです。1781年の論文の中で弾性スプリングに関連した問題として研究されました。
19世紀に入り、光の回折に関連して、この曲線がフレネルによって再発見され、その積分が興味を引くようになりました。光学の問題としてフランスの物理学者コルニュにより研究されたためにクロソイドはコルニュ螺旋と呼ばれることもあります。
その後、クロソイドは鉄道や道路の緩和曲線として推奨されるようになり、ヒットラーが軍事的な目的からアウトバーンを作るに当ってその優秀性が認められ、線形として採用されるに至ったのです。

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