ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

前を向いた君

2021-02-28 21:53:22 | 
夏の疲れを癒しながら
秋の色を加えていく街並み
いつものように俯きながら歩いていた君が
少しずつ速度を落とし、やがて立ち止まった
人々の忙しい足取りが強調される
 
ほどなく君は再び歩き出した
少しだけ顔を上げながら
相変わらず重たそうな影を引きずって
今更、何も見つからないことは君もわかっているだろうに

愁いを帯びたその白い顔に
灼熱を緩めた眩しい光が射し込んだ
君の不幸を暴くように
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またひとつ下手になっていく

2021-02-28 18:34:53 | 
娯楽は生きる過酷さのひと時の緩和
情熱は苦悩悲哀のつかの間の忘却
それを持たざる者は快適さを求め
座り心地の良い椅子を探し
体が喜ぶ食を求める

幸福難民の長蛇の列は遅々として進まず
日はあっさりと暮れてゆく
並び疲れた者たちはボロボロと列から零れ落ち
ジョギングや散歩に精を出したり
酒で気分を変えてみたり
自ら死を選んだり
 
周辺の砂場では小さな幸福の達人たちが、大きな笑い声を発してはしゃぐ
またひとつ季節が進み
またひとつ生きるのが下手になってゆく

 

 
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無意味だと知りながら

2021-02-28 17:05:59 | 
カップルや家族連れで賑わう
ショッピングモールの片隅のベンチに
初老の男性がひっそり置かれている

雲一つない青空の雨傘
誰の目に触れることなく散った薔薇
いまを生きる人にとっての23世紀
暴投ばかりの剛速球
深く埋まって取り出せなくなった美しい記憶

ベンチの人よ
戻りたいのは貴方だけじゃない

遠くの英雄よりも
近くに転がる幸福とも言えないささやかなものを
僕は憎んでいた

 

 
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メンタル予報

2021-02-28 14:25:52 | 
晴れのち曇りのち
苦しみのち苦しみ、しばらく苦しみ
孤独のち孤独のち寂しみ
不安のち不安のち不安
朝、薬は忘れずにお飲みください
 前線は北上し、しばらく安定した天気が続くでしょう
 
そんな秋空の下
悲しみのち哀しみ
苦悩のち苦悩
もがきのちのたうち回り、やがて諦観
 
気分の波はやや高く
明日の自殺者数は平日並みでしょう

 

 
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もういいではないか

2021-02-28 12:43:45 | 
この28年半近く
我ながらよくやってきたと思う
もういいのではないかと

今日は病院へ行ってきた
病院へ行くまでの苦しみが14年
通院が14年
よくやったのではないかと

季節は本来
さまざまな顔や体があるのだと思う
春の香り
夏の眩しさ
秋の優しさ
冬の温もり

しかし、この28年の季節は
もう少し待って欲しいという僕の声に対し
耳を貸さずに過ぎ去った百以上の季節たちは
暑いとか寒いとか
辛いとか辛くないとか
苦しいとかだるいとか
そんなものばかりで
彩りは失せてしまった
四季の国に生まれながら、無念です

誰が悪いとか
どこで間違ったとか
この薬を飲めば良くなるとか
これは病気に良くないとか
もういいのではないかと
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真っ赤な悲しみ

2021-02-28 09:46:21 | 
街は人であふれ
喜びであふれ
幸せであふれ
あふれ あふれ あふれ
 
そして完成した真っ赤な悲しみは
凍える空へ向かって蹴り昇り 
やがて落下し、今日を殺した


 

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まもなく平成が終わると知った日も

2021-02-27 18:31:11 | 
まもなく平成が終わるという
パニック障害の名も知らぬ頃から
おれが闘い、転落し、もがき続けた平成が

好き好んで戦い始めたわけじゃない
でも、この世で生きる限りは
まだ、この世で生きたいと思うならば
日々、次々と流れてくる訳の分からぬと怪物と向き合うしかなかった

平成が素晴らしい時代だった人々も、たくさんいるのだろうな
おれはまだ闘い、転落し、もがき続けている
まもなく平成が終わることを知ったこの日も

平成も疲れたのだろう
おれも少し疲れた
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未来なんかを語ってた

2021-02-27 16:40:00 | Weblog
電車のドアが開き、ホームへ降りたときの、束の間の開放感を味わう
春の風は香っているのだろうか?
薬を貰わないと生きてゆけない
だからそれを取りにいかないと

あの冬の僕はまだ少年で
そのことを前日まで知らされず
未来なんかを語ってた
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まだ生きているよ

2021-02-27 16:30:31 | Weblog
生きていくのは大変なことだね
それを10歳で知る人もいれば、年老いて知る人もいるだろう
僕は18の真冬に思い知らされた

何も分からないまま死ねたらどれだけ幸せだろう
ただ知ってしまった以上、それを抱えて生きていくしかないのだ

もう重さに耐えられない
荷物を降ろしてしまいたい
しかし、もはや僕の荷物は体の一部になってしまった
背負ったまま生きてゆき、背負ったまま死んでゆくのだ

僕はまだ生きているよ
果てしない広がりを見せる空の下で
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漂流

2021-02-27 13:51:51 | 
容赦ない光を浴びた街は色褪せ、それとなく古びた
諦めがメガホンで限りなく広がり
音量をまともに受けたせいか
体が縛り付けられたように動かない

秒針はあんなに重かったのに
あっけないほどに時代は過ぎて
次々と幕は閉じられてゆく

無理矢理に青春を思い出しても
前を歩く青春の眩しさに恥ずかしくなり
8月の暑さを理由に溶けて消えていった
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