ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

(13) イブのプレゼント

2021-01-31 22:17:39 | 

クリスマスイブのプレゼントを受け取りにいく
12時37分の電車に乗って2駅
駅の西口に出て数分歩いた

僕はプレゼントを貰うため
いすに腰掛け順番を待つ
1時間ほど待って僕はプレゼントを受け取る

それは僕にとってかけがえのないもの
それはパキシルとレキソタン

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(12) 雨音に包まれ、眠る

2021-01-31 21:45:55 | 
頬をくすぐるような微かな雨でも
街歩く人の多くは傘を差している
遠くの暴風雨より
自分や所有物が濡れるのが気になるのは人間らしい

僕は相変わらず、地べたを、コンクリートを張り詰めた思いで匍匐前進している
肘は痛みを通り越し
感覚すらなくなってきた

自宅の鍵を手探りで開け、部屋に倒れこむ
闇の中で仰向けになり、もう動けない

テレビも電気も消えたままの部屋に
雨が急に激しくなった音だけが響いた
「今日は少しばかり運がよかった」と力なく笑い
静かに眠っていく
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(11) 青の絶望

2021-01-31 18:37:18 | 
内臓たちを乗せた大型私営バスが、崖の淵で踏みとどまった
そして焦げ臭い道に戻り、とろとろ走ってゆく

青い世界は絶望の海
その中へざぶんと投げ捨てられた命たち
死ぬのではなく、そこで生きるのだ

一体、青とは何だろう
天の国へ舞い上がるための試されか
生まれた不運を受け入れるための時の積りか

青の絶望の隙間に
束の間の安らぎや
瞬く間の輝きを残せたら
それはもはや幸福と呼ぶにふさわしい

 

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(10) 運命

2021-01-31 17:27:25 | 
だからとりあえず言っておこう、さらばと

考えてみれば人間というのは、出来のいいちっぽけな生き物だね
ただならぬ才に恵まれても
慎ましい汗をかいても
運命がその気になれば
ケーキに立てた蝋燭の火のように
アスファルトを埋めた枯葉のように
一息で消されるのだ
その儚さゆえに、些細な行為であれ、また人そのものを美しく映す時があるのだろう

すべては大きな力の支配下にある
彼が機嫌を損ねれば人の命はひとたまりもない
決まり事のような明日さえも
だからとりあえず言っておきたい、さらばと
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(9) あんぱん2つ

2021-01-31 15:28:38 | 
はらがへったから、あんぱんを2つかおうと思ってコンビニにいったんだ
あんぱんを見つけて、レジのところへもっていった

おかねをはらわないといけないから、ポケットからとり出した
ちゃいろい玉を5こか8こか、もっとかぞえられないぐらい、いっぱい出したよ

それでもてんいんは「おかねがたりません」て言うんだ
「そんなはずはないだろう。こんなにはらっているんだから」と思ったけど
「それなら1こと半ぶんでいいから」といっぽゆずってやった
そしたらてんいんは「そんなことはできません」とおこってしまった

しかたなくおれは、またポケットの中に手をいれ、かねをさがしたんだ
そしたらあながあいた白いたまが出てきてしまった

「これじゃダメだ。なんであながあいちゃったんだ」
そう思っていたら、てんいんは「これでアンパン2つかえますよ」って言ってくれた
なんてやさしいてんいんなんだろう

おれははらがへったら、またこのコンビニでかうんだ。いっぱい、いっぱいかってやる。
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(8) 羨ましき人生

2021-01-31 15:28:38 | 
人は心が折れる日に向かって生きている
それは順風満帆な人生ほど丁寧に

夢や希望や幻想は年を重ねていくたび、小さくなるものだ
子供のうちはスポーツ選手や政治家、大企業の社長
描く未来はどこまでも膨らむ

二十歳になって夢物語を諦めない人間がどれだけいるだろう?
大概は大企業に入ることに目的がシフトしているのだ

30歳で結婚もして、子供もいて、ローンを組んで一戸建て
傍から見れば羨ましい限りだろうな
40で課長、50で部長、こんな大きな会社で俺も大したものだ

早いもので子供も独立し、孫もいる
惜しまれつつ定年退職し
それなりの退職金も受け取った
子供たちのローンの頭金を払ってやり
年金も生活するには十分すぎるくらい貰っている

孫の成長に目を細め
年に数回、夫婦で旅行する
この年になれば、体に多少はガタがくる
毎日、薬は飲んでいるが、年相応だろう

孫も大きくなり、顔を見せなくなった
年寄り二人の生活は心もとないが、子供たちに迷惑はかけたくない
そろそろ夫婦揃って、設備の整った老人ホームにでも入るとするか

施設に入ると、何でも人任せになり
足腰は弱くなるし、物忘れも激しくなる
子供たちはたまに顔を見せてくれるが、忙しいようですぐに帰ってしまう

気がつけば、車椅子なしでは移動できなくなった
傍らには同じく車椅子の老婆
このばあさんが俺の奥さんだったっけ?

大企業の部長で立派な仕事もしてきた
それなのに誰にも感謝されていないような気がするのは何故なんだ?
一体、俺の人生は何だったのか?
社会に貢献してきたはずなのだが、その中身を思い出せない
誰か教えてくれよ、誰か
「畜生」
 
80過ぎの老人の頬に一筋の涙がつたった
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(7) 一歩

2021-01-31 14:48:49 | 
天使の羽のような雪がコンクリートに舞い降りた
翌朝、朝日に照らされた真白な世界は
いまの僕にはもう眩しすぎたんだ

人々の歩幅は小さく
それはあたかも初めて歩き出した赤子のようだ
生まれて1年で経験する小さな一歩
とてつもない感動が小さな心を駆け巡る

それは大人への一歩
それは社会の歯車への一歩
それは大臣への一歩
それは女優への一歩
それは喜びへの一歩
それは悲しみへの一歩
 

どんな一歩であろうが
必死に踏み出したその一歩目は
周りの人間たちを無条件幸福にしたのだ
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(6) アベノミクスから遠い街

2021-01-31 14:08:12 | 

アベノミクスから遠い街
午前10時、僕はいつものようにシャッターを持ち上げる
眩しい光が降り注ぐ

真冬のわずかな隙間を潜り抜け
小さな春が来てくれたようだ

店を開け、しばらくして自転車の老人が安いタバコを買いにきた
お客の来ないこんな日はエコー2箱がいつにもましてありがたい

ラジオから番組に不似合いな木綿のハンカチーフが流れ
その後のニュースは教師の体罰を伝えていた

一瞬だけ、学生時代の光景が脳裏をよぎる
少しだけ覗いて、僕は記憶のページを閉じた
未来に希望を持ってる顔を見つけたから

学生時代の僕には今の僕の姿や辺りの景色は決して移らないだろう
そして未来の素晴らしい風景をいつまでも楽しそうに眺めているのだ

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(5) 朝の散歩

2021-01-31 12:12:48 | 
ご主人様は機嫌が悪いみたい
そんなに強くひっぱたら首が痛いよ

理由は何だろう?
仕事でいやなことあったのかな?
彼氏とケンカしたのかな?
お肌の調子が悪いのかな?
それとも僕が言うこと聞かないからかな?

家が見えてきた
朝の散歩ももう終わり
突然ご主人様が僕の顔を覗き込む
満面の笑顔で

よかった。僕が悪いんじゃないんだ
これからもその眩しさを忘れないでね、ご主人様
僕がいなくなった後も、ずっとね
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(4) 悪夢

2021-01-31 09:59:24 | 
なるようにしかならないことを知った時
人はどう振舞うべきなのだろうか

世界中が頬杖をつき目を伏せる
彼らのため息の集合が嵐を真似た強風になる
思う存分に荒れて、気が済んだら静かに眠れ

あの頃の僕も
浅い眠りの悪い夢なのだと
心の隅でそっと思っていた
諦めに制圧された心の微かな空間で

 

 

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