メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

notes and movies(1993.6~ part3)

2012-11-30 11:33:57 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。part2からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『STING NOTHING LIKE THE SUN THE VIDEOS』(1988)
このアルバムを聴いたのは、もうずいぶん前だけど、改めてメッセージに耳を傾けて聴き直してみた。
説明書によれば、このアルバムと前回観た『STORMY MONDAY』撮影前に母親が亡くなったそうで大変な時期だったらしい。
作品全体はシンプル。♪THEY DANCE ALONE は政治的メッセージの強い曲で、詳しくは分からないけど重みのある映像。
この頃は、髪を伸ばしてたけど、やっぱし今みたくショートスタイルがずっといい。


『STING unplugged アコースティック・ライヴ』
素晴らしい スティングの音楽はどれも洗練されたセンスがある。
時に洗練されすぎていて退屈することすらあるけど。
比較的小さなスペースにシンプルなセットと、観客が混ざり合ってて、その真ん中でバンドがプレイしている。
観客まで洗練された人たちに見える。

何年収録のものか分からないけど、最近のアルバムの曲が入っているからごく最近か?
一緒にポリス時代のビッグヒットナンバーも相変わらず歌っている。
本人のインタビューで「ライヴはアルバムの再現じゃない。ツアーが終わる頃にはその曲は進化しているか、
簡素化しているか、とにかく全然別のものになっている。ライヴは曲を進化させるものだ」

いくつになっても鍛え上げられたスリムな体。でも、彼の一番の魅力はやはりその声。
どこにもない独特の声。喋っている時でもある種の音楽を聴いているようだ。
「僕はどんなカテゴリーにも分けられたくない。ジャンルなどなくしてしまうのが自分の役目だ」
黒人ピアニストのプレイが一番よかった。滑らかでハートフル。
同類は集まるっていうけど、皆“静”のイメージがする人たちばかり。


『PERMANENT VACATION』(1980)
監督:ジム・ジャームッシュ 出演:グリス・パーカー ほか
80年代にしてはなかなか新しい感覚の作品。
とてもリアルで、出演者は演じているとは思えないような存在感がある。
ティーンエイジャーのアリーが点と点を結んで浮かび上がる絵のような自分の一部を追ってゆくという設定。
「あるサックスプレイヤーは、時代を超えた音を出して誰にも理解されずに仕事がなかった。
 友人の勧めでパリに行ったが、やはりうまくいかず、屋根にのぼり飛び降りようとすると、突然空から光がさす。
 スポットライトのように。彼は♪虹のかなたに を吹くが、続きがどうしても思い出せない。
 警官が近寄り、彼はジャンプしたが奇跡的に助かり、救急車のサイレンが聞こえた。ドップラー効果だ」
このジョークのオチがよめないけど、この作品で一番気に入ったセリフ

「一つ所にいられない。終わりなき休暇ってところだ」
休暇を取れずにせかせかしている私たちには、彼の生活は羨ましいけど、
「明日することがない人は不幸だ」って言葉もあるわけで、
彼は自分のことをクレイジーだというけど、単にレイジーなだけじゃないかしら?
でも、否定できないのは彼の一部が私たちの中にも必ずあるってことと、
周りに合わせることなくやりたいだけやってる彼はとても誠実だって言える。
フーテンしている奴ほど、いい教訓をはいたりするものだけど、アリーもなかなかいいことを言っている。
きっと今でも彼みたいな奴はどこかにいるだろうけど、私はもっと別の刺激や知識を求めていたい。

いろいろゴネている彼もやはり自己主張し、表現し、最終的には人とのコミュニケーションを求めているようにしか見えない。
作品中曲らしい曲はなく、始終、鐘の幻聴みたいな音がずっと流れているのが気になる。
この少年の先の物語をもう少し見ていたい。静かに港を離れてゆく船。
「そこを離れる時は、そこに住んでる時より懐かしく思える」この気持ちもよく分かる。
波が画面いっぱいになって、もっと大きなスクリーンで観ていたい気がした。


『STING tne videos』(1988)
♪If you love somebody set them free ではセクシーなサングラスとスタイリッシュな服で登場。
バンドは別撮りらしく、揺らいだり白黒に霞んだりして凝った映像。(中略)
後半は先日観た『STING NOTHING LIKE THE SUN THE VIDEOS』からのもの。
スティングの純真さは純真さからじゃなく、ファンキーさはファンクからじゃなく、
いつもそのインテリでハイセンスな感覚からきていて、プレイも映像もそこから生まれている。
ビデオもいいけど、観ているとライヴに足を運んでみたくなる。
最近はもっぱら慈善活動にはげんでいるけど、ライブ活動もどんどん見せて欲しい。


『都会のアリス』(1974)

監督:ヴィム・ヴェンダース 出演:リュディガー・フォーグラー ほか
『ペーパー・ムーン』を観ているようだった。
1ヶ月間アメリカを放浪して雑誌記事を書かなきゃいけないのに、
毒された街と人々、溢れかえる情報の渦に自分を見失い、自分で自分に飽き、
どこへ行っても変わることなんてあり得ないと思っているこの男は監督自身を投影しているのだろうか?

居所を探してあてもなくさまよう男と少女の旅。これはどこまでも、いつまでも続いて
私たちはその様子を一部始終見続けることができるんじゃないだろうかという気がしてくる。
人はなにも1ヵ所に定住することが決められている訳じゃない。
この主人公も、ロードムーヴィーを撮り続けるヴェンダースも、
放浪癖のある人たちは皆、風を食べて、常に動き、前進していることで生きている。
時にそんな人たちがひどくうらやましく感じられるものだ。

アリス役の子が美人でハキハキと主張しているのがイイ。
男のルックスはちょっと冴えないけど、2人していろんな行程を経てゆくのを観ていると、
都会で暮らす私たちを砂漠で水飲み場を見つけたラクダのような気分にさせてくれる。
「空き家て墓みたいね。家墓ね」


『THE TRIAL』(1993)(銀座テアトルにて

監督:デヴィッド・ヒュー・ジョーンズ 出演:カイル・マクラクラン ほか
『カフカ』よりずっとよかった。
久々にスクリーンで観て、より映像の確かさ、幻想的な世界を味わうことができた。
まさにカフカの不条理な世界。人が人を裁く、公正であるはずの裁判が、
裏のつながり、権力の横行、女たちの色仕掛けが働く、まったく馬鹿げた茶番劇だったという
かなり反体制的な内容。現代だから公平な目で判断され得る作品だ。
マクラクランが見事に熱演していて、一手に作品を引っ張っている。
それがとても自然で真に迫った迫力ある演技なのが少しビックリした。
一瞬にして女たちを虜にするその美貌も大いに利用され、光り輝いている。
強烈な皮肉とあらゆる要素を含んで、立派な芸術作品に出来上がっている。


『THE TRIAL 審判』(1962)
監督・出演:オーソン・ウェルズ 出演:アンソニー・パーキンス、ジャンヌ・モロー、ロミー・シュナイダー ほか
たぶん最初にこちらを観ていたら、それほど感銘を受けずに、
単なるパーキンス演じるサイコものとして片付けていたかも知れないけど、
先日観たリメイクと比べることで、その細部やセリフの概略は同じでも、微妙な違いが見えてきて、
とても面白く観させてもらった。撮った年代の違いでもあるからだ。

例えば、モロー演じる娼婦が事件とはまったく関わり合いがないことや、
リメイクでの法の門番と被告人の寓話を今作でははしょってあるのが大きな違い。
女たちの性的誘惑などの描写もやはりこの時代だとかなり遠まわしで抑制気味。
成り行きをいちいちセリフで言わずとも済ませられるのは、私たちが世紀末的映像に慣れてしまったからかも

キャストが華やかで、ウェルズの演技力が他と一線を画して素晴らしいのがひと目でわかる。
抑揚のきいた経験豊かな輝きがある。
昨年エイズでこの世を去ったパーキンスも独特の個性があった。
端整で静的美形なのに、なぜかいつでも脅かされているようなサイコ的雰囲気を漂わせ、
カイルとはまったく別タイプながら、同じカフカ役を演じて観客を魅了している。


『man trable』(1992)
出演:ジャック・ニコルソン、エレン・バーキン ほか
ニコルソンとバーキンの共演ってだけで期待度100%のワクワク感!
さすが筋金入りの2人の演技。どちらもプロ、拍手喝采で楽しむほかない
同じラブコメディでも設定や話の切り口、キャストであらゆる形に生まれ変わるもの。
この2人なら何をやらせても文句なしの出来になるんじゃないかな?
当時56歳でどうみてもしがないオヤジのニコルソン(失礼だ
髪をボサボサにしていくら滑稽にしても、笑えると同時にどこか他にない惹きつけられるものがあるのはフシギ。
バーキンは今作ではちょっと大人しめだけど、あのっ独特の皮肉っぽい笑い方といい、
今最も脂が乗っている時だけに、彼女だけの個性とコケティッシュな魅力をもっとスクリーンで観たい。
冒頭の犬のアニメも可愛いけど、なにがビックリしたって変質的な電話のメッセージに
スティングのI will watching you の一節を使っていたこと!


『The Nightcomers 妖精たちの森』(1971)
原作:ヘンリー・ジェイムス『ねじの回転』
監督:マイケル・ウィナー 出演:マーロン・ブランド ほか
なぜだかファンタジックな邦題がつけられちゃってるけど、原題は「夜這い人」?
「時に愛するが故に、殺したくなるものだ」

原作も撮影年代もとても古いけど、いまだに人気が高いブランドの魅力を探るにはいいかも。
私には分からないなあ。すでに立派な樽腹で、外見に似合わない少女っぽい声。
でもなにか分からないけど、泥まみれの中でも光る真実性がある。
今作でも子どもたちに真実を伝えようとしているのだけれど、
まだ社会での経験も年齢も浅い彼らには、その言動の表面しかとらえられず模倣することしかできない。
それはとても滑稽であると同時に取り返しのきかない危険に満ちている。
この子たちにもう一度正しい教育をしようとしてももう遅いんじゃないかしら?
クイントの人生観のお陰で『アダムス・ファミリー』のカルトなガキ並に悪ガキなんだもの。


『Stranger Than Paradise』(1984)
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ 出演:ジョン・ルーリー、エスター・バリント ほか
訳も分からずに手にした1本なんだけど、訳が分からないなりに良かった。
時代性も主題もへったくれもなく、いとことその友3人の微妙な会話ややりとりを淡々と描いている。
同世代として会話のとぎれたみょーな間や、そのおぼつかなさなんかが共感持てて、
このフーテンしている野郎の思いつき休暇につい付き合っちゃった感が残る。
なんといってもフロリダで突如現れたファンキーな黒人
一人でまくしたてて行っちゃうノリには参った
Screaming Jay Hawkinsの音楽もすごく渋くてブルーズィ。


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