メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

notes and movies(1995.4~ part2)

2013-04-01 21:31:13 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part1からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『トリコロール/白の愛』(1994)

監督:クシシュトフ・キェシロフスキ 出演:ジュリー・デルピー ほか
白の愛=結婚として異国人であるばかりに好きな人と愛を交わすことも、
人間として生きていくことすら苦しいある男を焦点にして究極の愛を描き上げる。
デルピーの陶器のように白いクールな美しさは作品のテーマを象徴しているけれども、2作目は男のブルースが中心。
最初に現れた時は冴えなくても、話が進むごとに磨かれる俳優の魅力、それを引き出す監督の腕も光る。

ひどい復讐としか言いようがない。異国で理解されず、愛も届かない地獄の苦しみ。
恨みのこもった2ペンス硬貨に誓ったのはこんな残酷な結末だったのか。命と引き換えにした愛。
途中『青の愛』の1シーンがあったそうだが分からなかったのが残念。
青い電話ボックスのことじゃないよね? ヒロインがそれぞれすれ違うらしいけど分からない。
ラスト3作目は『赤の愛』。ヒロインはあの『2人のベロニカ』の女優なので楽しみ。
フランス映画の3連作といい、色に例えた男女の愛のストーリーといい、このコンセプトは本当に画期的。


『ザ・クライアント 依頼人』(1994)
監督:ジョエル・シュマッチャー 出演:スーザン・サランドン、トミー・リー・ジョーンズ ほか
次から次へとエキサイティングなヒット作を生み出し続けるアメリカ映画のパワーには本当頭が上がらない。
今作もこのストーリーにして2人のベテラン俳優、そしてすばらしいデビューを飾った新人ブラッド君の起用で決まり。
なんでも弁護士がつくアメリカならでは。少年がテレビで見て、まるでゲーム感覚で勇敢にFBIに食ってかかり、
殺し屋の追っ手から逃げ出して、自分の権利を堂々と主張する。
個人主義の中で育つアメリカの子どもはやっぱり日本とだいぶ違うね、感覚が。
弟におどけてみせる時は子どもだけど、レジに向かって「友達だろ。助けが必要なんだ」と訴える表情には
大人になる手前のドキっとさせられるイイ表情が出ている。

マスコミ合戦に、盗聴合戦、まさに現代犯罪に対するテレビで日々目にする、どこかで実際起こっていそうな事件。
そして貧困問題も重なっている。若くして子どもをもつ母子家庭、保険もなく、弁護士料は高すぎて雇えず、
安い給料、悪条件で働かされている。こんな状況も決して映画だけの話じゃない。
「夢はいつかかなうもの」鼻っ柱の強い弁護士役はサランドンにハマり役。
子を持つ母の情も素直に表現している。色っぽいシーンが全くないのはハリウッド映画では珍しいが、
ジョーンズとのスリリングな駆け引きはデキる男と女同士の魅力がある。
ジョーンズは今やハリウッドで引っ張りだこ。いるだけでセクシーだし、作品がひきしまる。悪も善も演じきれる名優だ。


『エスケープ』(1994)
監督:マーク・L・レスター 出演:アンドリュー・マッカーシー ほか
人生投げて腐った生活をしているタクシードライバーがカジノで横領された100万ドルを拾ってプロの殺し屋に追われる。
ターミネーターみたいに的確、かつ迅速に追ってくる殺し屋と、逃げて逃げて逃げまくるうちに命拾いしてツイてくる男。
邦題通りの追跡劇でみせる1本。この金額なら命を賭けても逃げ切る元気も出るわけだ。
物価が上がって100万円やそこらじゃ盗む気にもならないもんね

『羊たちの沈黙』で渋い警部を演じて一気に顔が売れたS.グレンがクールで完全無欠の殺し屋役にハマってる。
場合によっては警官にもなるし、気の弱いゲイのフリまでする徹底さ。でも、やっぱ性格はおもてに表れるのか、
誰が見てもテックスはワル顔で、マッカーシー演じるジェリーは善人面。
今までもそういうイメージの役が多かったし、ヒゲをはやしても、やっぱりマッカーシーは甘いマスク。
どんなに追い詰められてもそこには必ず救ってくれ、味方になり、愛を与える女の存在がある。
余計なおせっかいでひどい目に遭って巻き込まれるクリスも、ダムに落とされちゃうウェイトレスも、
ま、逆に陥れる情報屋もたくさんいたけど、実際もああゆう組織とボランティアが存在しているんだろうね、きっと。
身を滅ぼすも助けるもちょっとしたツキってことか? でもこればっかりはコントロールできないもの。


『アニマルハウス』(1978)
監督:ジョン・ランディス 出演:ジョン・ベルーシ、ティム・マティスン、ブルース・マッギル ほか
これが噂の作品。対立する優等生ヤッピー組と、落ちこぼれアホ集団それぞれの友愛会同士の戦いっていう学園コメディの本家みたい。
ベルーシが主役扱いで確かに有名なキャンバス食堂での大食いほか怪演シーンはあるけど
セリフのないパントマイムが多いし、出番はそう多くない。とっても若いT.ハルスや、K.ベーコンが初々しい。
友人付き合いは容姿から? 貧弱そうだったり、チビ、デブは文句なくバカにされちゃうのはキツいなあ。
アメリカじゃ肥満は、不摂生や、自己管理能力がないイメージとして扱われるのね。

ソウルフルな黒人バンドといいルイ・ルイ はじめ、新入会員の歓迎会でのロックといい、ベルーシ好みのノリのいい音楽がいっぱい!
彼は7年留学のベテラン大学生で、頭で缶を潰すわ、瓶は割るわ、体当たりのギャグでハイテンションぶりを見せている。
D.サザランドも生徒にマリファナを勧めるし、女子学生と寝ちゃうってやり放題の
アナーキーな教授役は『MASH』を思わせるハマり役。
アメリカ映画で学園コメディってほんと人気がある分野のひとつに定着してるね。
日本と違ってこの解放感。大人になる前の必須段階なんだ。


『プレイグ』(1992)

監督:ルイス・プエンソ 出演:ウィリアム・ハート ほか
“ペストは家具にハンカチに潜み、再び人に思い出させるため戻ってくる。ネズミを送り、幸せな町を死滅させるために”カミュ『ペスト』
完全に世紀末一色の作品。時代も20世紀末、町の名はオルク。でも、これはどこにでも、いつ何時訪れるか分からない。
そしてペストは単に疫病でなく、この恐怖と死の影はどこにでも潜んでいる。生と常に隣り合わせの逃れられないものだ。

「平凡な生活とは何だ? 敵に取り囲まれているのがオレの日常生活だ」その敵とは?
ラウル・ジュリアはこれが遺作か?「死」にとりつかれた男の狂気漂う演技が残る。
「苦しみは幸せのありがたさを教えてくれる」まさにその通り。
苦しみや死を恐れて暮らすより、わずかでも幸せを楽しんで生きていきたい。

ベテランより抜き俳優陣の中でボネールとジャンらフランス勢が熱演。そして隠れたヒーローがR.デュヴァル
「私は町から出たことがないから分からないが、ノスタルジアという言葉は好きだ」
彼のあたたかい笑みは唯一黒雲にさしこむ一筋の光だ。
「病原菌も生きようとする自然の産物だ」
人間だけが生き延びようとすることは自然が許さないってこと。神は生も死も、苦しみも幸せも超えたところにいるんだと私は思う。


『カウガール・ブルース』(1994)
監督:ガス・ヴァン・サント 出演:ユマ・サーマン ほか
'70代の色濃いフェミニズム運動が盛り上がったアメリカの話。原作本が書店に並んでて実話かと思ったらフィクションか。
でも、こんな女の子がいても面白い。生まれもった特大の親指を生かしてヒッチハイカーのプロになり、人生が移動そのもの。
そこから芸術論、しまいには聖域(State of Grace)まで達したと豪語するシシー。
奇形を個性として利用して、成功したって話。

題材も変わっているが語り口も一風変わったポップなシーンがいくつもはさまっている。
切った親指がまだ小躍りしていたり、ヒッチハイクで飛行機や流れ星まで操れたり。
でも、一番ポップだったのは、自称伯爵夫人なるJ.ハートのオカマ演技。
まさにオカマってやつを的確に演じ切れてるものだから、違和感より、妙に感心してしまうからなお怖い。
「for River」とのことだが妹がどの人なのか分からない。K.リーブスがちょっと顔を出しているのもその関係からか。
「人が作ったもので唯一自然に近いのは茶袋だ」っていうのも面白い。
いつもなにかにとりつかれた放心状態って雰囲気のサーマンが、言葉少ないヒロインで
ラスト、焚き火にラブレターを焼くシーンはなんともいえない。
シシーはその後もずっと片親指のパフォーマンスでヒッチハイクを続けているだろうか。


『コンスタンス』(1984)
監督・脚本:ブルース・モリソン 出演:ドノフ・リーズ、シェーン・ブライアント、グラハム・ハーヴェイ ほか
スター女優を夢見る女の野心的に登りつめてゆく波乱万丈サクセスストーリーかと思いきや、
失敗して墜ちてゆく重苦しい最後。鏡の中の美しい自分に惚れるナルシシズム、父親に溺愛され、
母の嫉妬を見て育つといったフロイト的コンプレックスもあって、現実と白日夢の間をさまよい、
結果、すべて失い、神経衰弱に陥っていまう。
繰り返し流れるデートリッヒの歌同様、退廃ムードが漂う。
メイク、宝石、ドレス、どれだけ着飾っても自然な自分に戻った姿が一番美しく見える。

死んだはずの両親が部屋に出るシーンは怖い。彼女は親、家、そのしきたりに縛られ、離れることができない。
夢は幻となって、それに向かって翔ぶことは叶わなかった。
映画スターのようになれたら、と、鏡の中の自分を飽きずに眺める少女は、大人になっても成長していないようだ。
ひとつひとつの仕草にそれがよく出ている。今の時代なら特に女優の世界は自らの性と引き換えに
スターダムにのしあがるのもありだってイメージがあるけど、'40代ニュージーランドは違っている。
美しいだけでも、才能だけでもない、チャンスを作って、運を味方につける。
女優としての成功は難しいアンフェアな世界だね。
アメリカ映画とはやっぱりちょっと異質なニュージーランド映画の世界。
大輪の女優ドノフ・リーズが着こなすファッションも見物。


『バッジ373』(1973)
監督:ハワード・W・コッホ 出演:ロバート・デュヴァル、ヴェルナ・ブルーム ほか
デュヴァルが『ゴッドファーザー』の翌年に出演したハードボイルドな刑事アクション。
当時42歳の彼の魅力がたっぷり。吹き替えだから本人の声とあの乾いた笑いが聞けないのは残念。
もうすでにお腹が少し出てるけどスーツを着るとスマートだし。
真犯人をクレイジーな人にしちゃうラストは安易だなあ。
「警官は一番買収しやすい」ってセリフはキツイ。その辺が今作のテーマみたい。
あとは人種差別と、デュヴァルがGGの相棒の家の豪勢さを見て
「警官にこんなものが買えるわけがない。スイートの甘い汁を吸っていたんだろう」というセリフ通り、
警官の働きに対する賃金の低さ、待遇の悪さも原因みたい。
奥さんも警察稼業に付き合いきれずに別れちゃうし、事件に巻き込まれて命まで脅かされたら怖いものね。因果な仕事。
でもせめて法を守る警官は悪にさらされる市民の安全を守る壁であってほしい。
警官役が多いデュヴァルのいろんな表情が見れてファンには嬉しい。初期作品ももっと観たい。
冒頭のプエルトルコ人の変装にはドギモを抜かれたけど。どーしたのって感じですごい怪しい。


『ローズヒルの女』(1989)
監督:アラン・タネール 出演:マリー・ガイデュ、ジャン・フィリップ・エコフェ ほか
「観る者の心を切なく打つ、スイス映画を世界的レベルに引き上げた名作」て宣伝文句だけど、
ブツブツ切れの撮り方はストーリーのあらすじだけをピックアップしている感じで抽象的。
せめて女が経済的な貧困からか、子どもを失った悲しみからか、島国を出てきた背景が語られれば、
後々の環境変化、異国人と結婚して滞在許可をとるしか方法がなかったツラさにも共感が持てるのだけど。
これでは単に無計画でワガママ、離婚すれば不法滞在となることも予想できないバカな女のようで、キャラクターに深みが感じられない。
マリーは確かにモデル系の美しさで、ヌードもみせてヒロインを演じているが、もうちょっとドラマ性が欲しかったな。
スイスもフラン語圏? ローズヒル(バラの山)はどこなのか知らないけど有色の妻を迎えるのはやはり珍しいことなのかな。
どうしてここまでこんがらがらなきゃならないのか、むりやり悲劇になった感じ。


『ビリー・ホリデーの真実』(1991)

監督:マシュー・セイグ 出演:ルビー・ディ、バック・クレイトン ほか
貴重なドキュメンタリー短編映画。ビリーだけでなく、巨大な暗闇のごときベッシー・スミスの歌っている映像、
それと対照的に周囲を楽しませずにはいられないサッチモのおどけたパフォーマンス、レスター・ヤングのブルージィな演奏、
やはり映像の与えるインパクトは強烈。文章で読むより、生き生きと動き、聴かせてくれる。

ビリーの声と半生に触れるのは今回が初めて。ティーンエイジャーの父母から生まれ、
スターとなってもなお私生活では闇の部分が多いようだ。ドラッグ、アルコール、何度かの結婚生活の破綻、
タフなロード生活、黒人女性としてのアンフェアな状況、そして麻薬所持で捕まり、獄中生活まで体験し、
それもステージ出演のネックになった。

「1人で何千人分の人生を生きている」周りがみなハッピーなのに、彼女は不幸だった。
蓄えもなく、病院で心臓発作でこの世を去るまで、彼女の特異な才能と不幸な私生活にスポットを当て、アウトラインだけまとめてある。
彼女のまたの名“レディ・デイ”は最初、母親に付けられたものを後からとったなどのエピソードを友人らが語るとともに、
南部に住む黒人に対する信じ難いリンチをモチーフとした奇妙な果実 ラバー・マン
ほか数多くのヒットナンバーも入っている。生で歌う姿、バックバンドの演奏に酔いながら、
両腕を腰のあたりにそえる独特のスタイルで、口を歪めて、透き通る高音、深みのある低音を使い分ける声、
豊かな髪を後ろでひとつに束ねたヘアスタイル、端整な顔立ち、スタイルの良い美しいレディ・デイ。
なんだか美空ひばりさんを思い出す。彼女にだってきっと幸福な時期があったんじゃないかしら?もっとよく知りたい。


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