メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

notes and movies(1993.1~ part2)

2012-11-14 10:58:35 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part1からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『ビートルジュース』(1988)
監督:ティム・バートン 出演:アレック・ボールドウィン、マイケル・キートン ほか
死後、そのままの格好で存在し続けたり、困った時のヘルパーやケースワーカーがいたり、
ほとんど一発芸のノリで次々と現れる奇妙な死者たち。
そして極めつけはキートン演じる完璧下品でスケベな人間祓いがいて、
霊界の様子がコミカルに解説されていて笑える。
セリフもブッ飛んでて、それにつけた日本語訳も他には見られないほどあわせているからビックリ/驚
ウィノナの変な暗黒ファッションに身を包んだオカルト少女ぶりもイイし、
アレックとジーナのどこか抜けてるけど平凡かつ強い愛の絆でしっかりと結ばれている夫婦ぶりがとてもほのぼのしている。


『コールド・ヘブン 悪夢の再会』(1992)
監督:ニコラス・ローグ 出演:テレサ・ラッセル ほか
これはとっても新しいスタイル
ストーリーのもっていき方といい、映像の斬新なアイデア、
心の中のつぶやきを読心術でも使っているかのようにセリフにしたり、
『エクソシスト』顔負けのヘドを吐くシーンがあったり
死人がよみがえるという驚くべき設定で神の起こす奇跡を描いたのかと思いきや、
夫婦の永遠の愛にまで発展するところが感動的。

無神論者の2人が神の前で誓い合った言葉。
とくにアメリカでは一体どれだけのカップルがこの誓いを破っただろうか?
死に直面した時、一体どれだけの夫婦が言えるだろうか「私はパートナーを一生愛した」と。
正統派で誠実そうなキャラがピッタリのマーク・ハーモンが久々に大役、
テレサが真の夫婦愛に目覚める妻役を妖しげに演じている。
愛することは信じること。信仰を取り戻すことは大変なことだ。


『ポンヌフの恋人』(1992)
監督:レオス・カラックス 出演:ジュリエット・ビノシュ ほか
ホームレス同士の色恋を描いたものには『黄昏に燃えて』があるが、
この作品では自分と同年代くらいでもう人生の舞台から降りてしまった男女が描かれている。
女ホームレスとして体当たりの演技を見せているのは、若手実力派の一人ビノシュ。
『存在の耐えられない軽さ』の時とはまたうってかわった役どころで、
路上生活の汚れた身なりとポスターの顔、そして後半のキュートさが対照的。
アレックス役はカラックス作品に3度目出演の俳優。
『ボーイ・ミーツ・ガール』でも観たけど、どこか日本人も親しめそうな風貌でアクの強い演技とキャラがある。
ラストに誰も死なないフランス映画は珍しくて大歓迎だけど、
ギリギリのところの駆け引きが恐かったし、若さだけを武器に犯罪でもホームレスでも
セーヌ川の水上スキーも出来ちゃう自由奔放さには少し羨ましさを感じた。
でもやっぱり酒と銃はトラブルのもとでしかないってこと。
イギー・ポップやデヴィッド・ボウイなど音楽の使い方が仏映らしくなくて面白い


『迷宮のヴェニス』(1990)
監督:ポール・シュレイダー 出演:クリストファー・ウォーケン ほか
ストーリーの訳の分からなさは『ツインピークス』並。
ヴェニスに迷ったのは確かだけど、50歳過ぎてもいまだに妖光を放つウォーケンの魅力に迷うための作品。
『ヴェニスに死す』での異常愛やペストといい、水の都といってもあんまりいいところには思えない。
音楽も古臭いし、なんだかフシギな一作。
『モーリス』以来、英国美青年として鳴らすルパートがひたすら美しいと賛美されているよう。
なんの目的もないが、人と人の間にはそれなりの関係が成り立つ、
それが吉とでるか凶とでるか想像さえせずに。


『エイリアン3』(1992)

監督:デヴィッド・フィンチャー 出演:シガーニー・ウィーバー、チャールズ・ダンス ほか
映画としての完成度は初作を上回ることは不可能としても、
これほどまでにエイリアンというキャラクターを昇華させ、イメージを限りなくふくらませてくれたことに敬意を表して。

SF映画が生み出した世界最強のキャラクターは、文化、感情等は一切持たずとも、
実は個の永久にして絶大な存続ただそれだけに人間よりはるかに進化した生物だった。
自らの利益のためなら他の大勢の命など問題にしない我々人間には
彼らほど繁栄してゆく確固たる理由は持てないだろう。

エイリアンによって始まったシガーニーのキャリアは、自ら今作をプロデュースし、
見事にこの悪夢そのもののリプリーの運命をエイリアンと共に完結させている。
暗闇から朝陽が広がるラストは決して暗いものではない。
けれども、もしこれが私たちの迎えるスペースエイジとしての近未来であるなら、
やはりそこには変わらない問題の数々と、かすかに輝く愛だけのある世界なのだろうかと少々不安が残る。

今回はSFXシーンの迫力もさることながら、かなりスプラッタの要素が多かった。
そして前2作とも劣らないエイリアンとの戦闘シーンのスピード感と、
それをさらに盛り上げる重厚な音楽効果、ストーリー設定もイイ。

それからなんといっても色男役が十八番のダンスが出演し、ファンの意表をついている。
巨大溶鉱炉の相変わらず湿気の多いセット、人間をものすごい勢いで追うエイリアンの視点から見た
カメラアングルも不思議な効果を生み出している。

永遠の女戦士リプリーという大きな役柄を卒業して、シガーニーは年齢、キャリアともに充実し、
次はどんな作品で、どんな演技を披露してくれるのか。
彼女にとってはまた大きなプレッシャーかもしれないが、ファンにしてみれば大いに興味のあるところ。
これからも全身を投げ打った彼女ならではの迫真の演技を期待して応援していきたい。


『幸せの向う側』(1991)
 
監督:ダミアン・ハリス 出演:ゴールディ・ホーン、ジョン・ハード ほか
家族をテーマにした映画を撮らせたら、アメリカが一番考えさせられるイイ作品を作るな。
昔のカルマに引き寄せられ、壮絶なサスペンスへと展開するのは『愛と死のはざま』でもそうだが、
平凡で幸福な家族の中にも、もしかしたら異常な狂気が見え隠れしているかもしれない。

夫が別の女の夫でもあるとしたら? 一夫多妻制ならあり得る話。
でも100%信じている男が、まったく別の過去を借りて偽っていると知ったら・・・?
最も身近な存在であるはずの家族に何十年も隠し通すことなど可能だろうか?
人間の愛とは、なんて不思議で、あったかくて、強い感情だろう。

ホーンが持ち前のファニーでキュートな笑顔をちょっと抑えて、
真の夫の姿を必死に探す一児の母親役に挑戦している。
そして今作はジョン・ハードの魅力によって最初から最後まで引っ張られてゆく。
目立たず、背も高くないのに、なんともいえない抑制されたセクシーさは魅力たっぷり
『キャットピープル』以来のステキな役って感じ。


『パイレーツ』(1991)
監督:ノア・スターン 出演:ケビン・ベーコン、キーラ・セジウィック ほか
ポップ!ヒップ!キッチュ!
実生活でもケヴィンのハートを射止めたのは、この間観た社会派ドラマ『ミス・ローズホワイト』に出演していたキーラ。
イメージをガラリと変えて、思い切りノリのいいラブコメディが出来ちゃった。
『フットルース』のヒットから一貫してポップな映画で活躍しているケヴィン。
最近は『フューグッドマン』など堅いものにも出てたけど、
やっぱりせめて年齢の許す限り恋する青春真っ只中のキュートな役をやってほしいのはファンのワガママ?

バカバカしくも楽しい始まりから、後半にはまるでウディ・アレン風の精神科医を交えての男女の真剣勝負。
ほんとの夫婦なんだものどんな絡みシーンだって大丈夫。
関連のロックが15~16曲も入ってて、ラストを飾る♪ハウス・オン・ファイア もとってもいいノリ
おまけにケビンのファンキーなセレナーデまで聴ける、ロックファンも満足な作品。
2人の行く末を占うそれぞれの親友役もなかなかイイ味出してる。
さて火事は免れないこの2人。この先一体どんな騒ぎが待っていることやら。
笑いこけてスカッとするならこの1本。ケヴィンのシド風ファッションもイケてる。


『ニューヨーク恋泥棒』(1991)

監督:リチャード・シェパード  出演:デヴィッド・ボウイ、ロザンナ・アークエット ほか
ボウイ主演の作品はこれで何本目だろうか?
常に完全な変容に沿ってスクリーンに登場し、音楽シーンにおける活躍とともに
私たちを楽しませてくれる彼のエイリアン的キャラクターで、
今作では英国人バーテンダーぶりを披露。
途中からボウイであることを忘れてしまうほどなりきっているところにも
彼がまだ映画への愛着を捨てていなかったことが分かる。
彼が完全に別の人間変身できるのは、もはやスクリーンという媒体しかあり得ないのかもしれない。

舞台はN.Y.というより近未来のパリにいるようなケン・ラッセル作品にも通じる
デカダン風不思議に濃い色調で、超トレンディな店「ダリ」の“やわらかい時計”、
ジギーっぽいギンギラのファッション、食べ物や自然環境に関するちょっとした会話にしても
未来的で無機質な感じを受ける。
とにかく味のある役者が作品を引き締めている。
ジャズの軽妙なサウンドに乗って、ハッピーエンドなのに
ラストのピアノ曲のせいか、どこかキュンと寂しくなる余韻が残る。

さて、『ツインピークス』や今作、そしてティン・マシーンで充分時間をかけて充電し、
年齢的にもまたひとつの転換期を迎えたボウイが、また再びソロ活動を再開するとのニュースを聞いた。
今度はどんなビックリするメッセージを抱えて、神秘のベールに真実を覆って私たちに届けてくれるのかしら?


『恋人たちの予感』(1989)
監督:ロブ・ライナー 出演:ビリー・クリスタル、メグ・ライアン ほか
いきなりサッチモの渋いジャジーなサウンドで始まる2人の出会い。
「男と女は友達関係でいられない。いつもsexが絡むから」
『サタデー・ナイト・ライヴ』で鍛え上げたビリーの理屈っぽいジョークが冴えている。
メグのヘルシーでキュートな魅力も充分満喫できる。
サリーの友だちで、面倒見のいいマリー役にキャリー・フィッシャーが好演。
古今東西そして多分これからも未来永劫、複雑怪奇な男女の仲。
N.Y.では今この瞬間もボーイ・ミーツ・ガールが起こっている。
趣味のいい選曲の中でもやっぱり♪It had be you が一番


『カフカ』(1991)
監督:スティーブン・ソダーバーグ 出演:ジェレミー・アイアンズ ほか
カフカの作品で読んだのは「変身」だけ。それも何年も昔に一度読んだだけで、
著者の人となりもほぼ知らないが、今作は『1984』にも勝る陰鬱さで
せめてカラーだったならと思うが、城に入って突然カラー(それも少々濁った)に
変わるところは良かったから、時代の陰鬱さを反映させていたとも思える。

表情を抑えたアイアンズの魅力と力量が薄れている感じ。
テレサ・ラッセルなどひとクセある役者が揃っている。
でもなぜ今カフカを撮ったのか?
心理サスペンス、オカルト映画がまた面白くなってきたこともあるが、
組織の中で、個性も、ついには顔までも失って働き続け、
真実の歪みを時には認め、利用せざるを得ない、
現代人の心の病は、カフカにとりついた悪夢のような病そのものかもしれない。


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