メランコリア

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『エコQ&A100 1 世界のエコはいま』(ポプラ社)

2013-10-08 15:47:22 | 
『エコQ&A100 1 世界のエコはいま』(ポプラ社)
本書には、危機的状況が端的にまとめてあるだけでなく、世界でそれぞれ具体的にどんな取り組みをして、
実際にどんな効果を上げているかも、たくさんの写真や資料で紹介していて分かりやすい。
森林破壊とかのパーセンテージが本によって微妙に違うのは、出版年、調べた統計年が違うからかな?
自動車の代わりに路面電車や自転車、歩行者を優先させたり、森林ごと買い上げて守るなどの取り組みはイイなあ。


【内容抜粋メモ】

●氷河が消えている
名古屋大学雪氷圏研究室の調査隊が、ヒマラヤ氷河の写真を撮影して、1978年~2004年の4枚を比較したら
明らかに氷河が溶けて、岩肌があらわれ、下に氷河湖ができていることがわかった。

生物がバランスよく暮らせる平均気温は14度。温室効果ガスの増加で大気の気温が上がり温暖化が進んでいる。


●森林が消えている
世界の森林面積は約39億5200万ha(2005年)。
2000~2005年の間に年平均731万7000ha減り続けている。
材木が輸出用に大量にきられ、アブラヤシ農園の開発も進んでいる。
雨水等で「表土」が流され、植物が育たなくなっている→砂漠化
炭の材料となるユーカリが植えられ、原生林の70%が消えた。


●砂漠が増えている
農耕不可能な土地は、年間600万ha増え続けている。1秒で約1900平方mの速さで砂漠化が進んでいる。
砂漠化した土地は、全陸地面積の1/4で37億ha。
1996年、国連による「砂漠化対処条約」発効。植樹・灌漑施設の建設など進められているがおいついていない。


カメルーンの首都上空には、1000km以上離れたサハラ砂漠の砂が覆い、
村でただひとつの井戸が村人の命をつないでいる。


●アマゾンの熱帯雨林の60%が破壊
熱帯雨林には、地球上の生物種の50%以上が生息するといわれる。
木材の輸出、牧場、コーヒー園のために伐採された。
残された自然林を生物保護区、国立公園、森林保護区にして開発を防いでいる。
マレーシアのキナバル山と周辺の熱帯雨林は、ユネスコの世界遺産に登録された。


●マングローブ

潮間帯の汽水に育つ植物群。
巻貝、トビハゼ(トビー!)、カニなどの生息地で、水辺の掃除もしてくれるので、
キレイな海でしか育たないサンゴが河口付近で発達する。

ベトナム戦争でカンザーの海辺のマングローブがほとんど失われた。
マングローブ植林行動計画の調査員・浅野哲美さんらによる復興計画によってよみがえった。
マングローブは、台風、高潮、津波などから海辺の人や家を守り、二酸化炭素をとりこむ働きもしてくれている。


●イギリスのボタ山が緑の山に
ボタ山:炭鉱で石炭の採掘に出る捨て石の山。

ボランティアが土や堆肥を運び、草や木を植え、「アファンの森」として管理されている。
「ウッドペッカーズ」というグループには日本人も活動している。


●絶滅危惧種

絶滅のおそれの高い生物種は世界で1万7291種(2009年)。
「レッドリスト」によれば、日本の絶滅のおそれのある野生生物は、鳥類92種、哺乳類42種、菌類にいたるまで3155種(2007年)。
マダガスカルの熱帯雨林は、木炭や畑のために伐採されている。
キツネザルは、食材としてレストランに密売されている。


●ワシントン条約
国同士の商売のために野生動植物がとりつくされて絶滅するのを防ぐための条約。発効は1975年。
毛皮、革製品をつくるためにたくさんの野生動物が殺されている。

3つのランクがある。
Ⅰ.学術目的以外では、国際取引が厳重に禁止されている。
Ⅱ.国際取引は輸出国の許可を必要とする。
Ⅲ.各国が保護に気をくばる。


ケニアでは毛皮、象牙の売買を禁止したが、密猟が止まらず、国立公園などで管理している。
サファリツアーに力を入れ、観光収入が重要な産業になっている。

日本は、世界でもとびぬけて野生動植物や加工品を輸入していて、反対が多く、加入も遅れた。
Ⅰ.ランクでも「留保」という制度があり、捕鯨国の日本はミンククジラなどを「留保」していて抗議を受けている。


●渡り鳥の保護
日本が「渡り鳥条約」を結んでいるのは、アメリカ、オーストラリア、中国、ロシア。
渡り鳥の情報交換、捕獲規制、環境管理がもりこまれている(横浜港のユリカモメなど
渡り鳥は、北の繁殖地~南の越冬地まで、干潟・湿原などの中継点が必要。
保護会では水田・湿地を借りあげ、餌まきをして農作物の被害を少なくしている。

 
オオハクチョウは10月はじめに北海道尾岱沼にやってくる/ハクチョウとマナヅルの繁殖地と渡りのルート例


●ラムサール条約
「湿地および水鳥の保全のための国際会議」で採択された条約。
湿地、沼、泥炭地、マングローブ、河川、湖沼などの破壊を止め、復元する。

例:
イランのアンザリ湿地。淡水と海水がまじる汽水で、魚の種類が多い。
日本のJICA(国際協力機構)が浄化に取り組み、水質が回復した。


日本のラムサール条約湿地例


●サンゴ礁の白化現象

サンゴ礁には、石灰藻、有孔虫なども積み重なっている。
二酸化炭素を体内に閉じ込めて温暖化を防いでくれている。
魚や貝、カニなどの糞、腐った海藻を体内にとりいれて海をキレイにしてくれる
世界中の58%のサンゴ礁が危機にある。サンゴを食い殺すオニヒトデもいる。


世界のサンゴ白化の分布図(1998年)


●水辺のある生活環境
川、海は、工業用水や生活排水で汚れ、その上にコンクリートの蓋をして自動車道をつくっている。
韓国では「自動車道をとりはらい清渓川をよみがえらそう」という合言葉のもと、清渓川が復元された。
水の都ベネチアでは、水上バス、水上タクシー、トラゲット(渡し舟)、ゴンドラが交通手段。


●町並みの保存
大規模なショッピングセンターや、新しい道路をつくると、人々の心や暮らしが壊れてしまうということがわかってきた。
速度無制限の高速道路アウトバーンがあるドイツでは、町中での速度制限が厳しく、「速度告知機」が置かれている。
町は歩く人間が最優先


●世界遺産もエコ
「世界遺産条約」によって定められた文化や自然。歴史から学び、考え、保存するという行動はエコそのもの。
186カ国が参加、登録数は890(2009)。
グランドキャニオン国立公園は、世界遺産の中でもっとも規模の大きな公園の1つ。


ナショナルトラスト
自然、歴史的建造物を買い取るなどして一般公開し、無差別な開発などから守る活動。
『ピーター・ラビット』の作者ビアトリクス・ポターは、絵本で得た収入で湖水地方の牧場や山を買い、開発を止めた。
死後、ナショナルトラストに寄付された。


イギリスのナショナルトラストの標識


●フットパス

私有地内でも「歩く権利」を保障されなければならない。日本でも「フットパス協会」が設立された(2009年)。
家畜が逃げないよう柵の戸を閉める、農作物を無断でとらない、小道以外に立ち入らないなどのルールがある。


●エコツアー
自然を楽しむ観光。案内者がつく。ツアー料金は奥地に住む人々の経済を助ける。
このような観光のしくみを「エコツーリズム」という。

例:
コスタリカは、牧場、コーヒー園、バナナ畑のために伐採が進んだ。
入山料、ガイド料をとって、森林保護に使うエコツアーが始まり、観光収入が農業をしのぐまでに発展している。
参加費用は1泊2日、ガイドつきで1人約1万2000円ほど。


●世界のエコ対策
ドイツでは1994年に「次世代のための自然を守る責任法」をつくった。
2004年には「再生可能エネルギー法」が制定され、町の中心部からの自動車追放作戦、省エネなどが実行されている。
フライブルクでは、市内の入口に駐車場を設け、路面電車の市内乗り放題切符を格安で提供。


ソーラーパネルを多くのビル、郊外の住宅に設置し、二酸化炭素などの様態がわかる環境指標告知機がある。


パリでは路面電車トラムが走り、路面に芝生を敷くことで夏の照り返しによる気温上昇を防いでいる。


スペイン・マドリードの旧アトーチャ駅構内の植物園


●世界のリサイクル
ガレージセール、チャリティショップなどがある。


チャリティショップ:
個人の中古衣類、業者からの寄付による新品の衣類が格安で売られている。
店員の多くはボランティア。売り上げは、がん研究、老人ホームなどに寄付される。


●自転車
 
自転車で乗り降り自由のベルリン市内鉄道/自転車タクシー


信号無視などの違反者は罰金が科せられる。自転車警察もある。

ヨーロッパの細く入り組んだ道も幅を工夫して、歩道、自転車道、自動車道に分けている。
自転車遠距離道のネットワークもある。


低炭素社会への取り組み
世界のエネルギーの90%以上が石油や石炭などの化石燃料に頼っている。
二酸化炭素の排出量を減らす社会をめざして、「京都議定書」では、日本は2008~2012年までに6%の削減が定められた。

 


「COP15」
2009年、コペンハーゲンで開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議。
先進国と途上国が対立し、「コペンハーゲン合意」文書承認にとどまった。


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