過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part4からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。
■『ハート泥棒』(1987)
監督:アーシアン・バーンスタイン 出演:マーティン・ショート、アネット・オトゥール、ポール・レイザー ほか
ソフトなロマンティック・コメディ。いつもビデオ屋の目の前の棚にあって全然気づかなかった主演2人のジャケ。
このショートの写真がなんとも完璧なんだな。この時37歳。
いつもながら一体どんな秘密があるのか、この人って年々若返っているみたい
メジャーになったのが遅咲きの分、これからもっともっと稼いでほしい。
相手のオトゥールは『キャット・ピープル』の人だよね。大人の男女の3度目のデート。
互いに自分を飾って受け入れてもらおうとするが故に嘘をついちゃうってゆう微妙なあやを丁寧に描いている。
軽いポップミュージックが'80代してて作品の温かなラストに似合ってる
あの超ビキニパンツはちょっとキョーレツ
男は男らしくリッチなところを見せたがり、女はそれに感心するフリをする。
女は女らしい可愛さを装って、男はそれにひっかかる。
でも、本当に内面に惹かれたら、他はどーでも虚飾は必要ないんだよね。
ショートは物真似が得意芸で今作にもチラリとある。ピアノは本当に弾いてるの?
すっかりその世界に入っちゃってるから笑える。彼もSNLで長年鍛えられて、
先輩のS.マーティンらと同じイッっちゃってる芸のあるコメディアンだから、
もっとキョーレツな部分の見せ場も欲しかったなあ。
■『HANKY PANKY』(1982)
監督:シドニー・ポイティア 出演:ジーン・ワイルダー、ギルダ・ラドナー ほか
最初から最後まで完璧サスペンスタッチで二転三転して結末が読めずに引きずり込まれる面白さ。
ワイルダーと亡き妻でコメディアン、ラドナーの息の合ったカップルで、
助演には『ヒル・ストリート・ブルース』の主任の男優やら名優ぞろい。
町に、空に、西部の荒地、グランド・キャニオンって、舞台も次々広がって、
軍、政府の国家秘密と絡んでゆくなかなかスケールの大きい作品。
のんびり平凡な男の巻き込まれ型の災難話。
ワイルダーのキレちゃってるギャグは少ないもののサスペンスコメディもgood。
ただワイルダーもラドナーも服のセンスはないみたい '80代前半だからねってこともあるけど。
まさにこれこそ“TRUST NO ONE”って感じ。
スパイごっこをするなら常に尾けられ、情報が漏れてるって用心してないといけないんだね。
(ラドナーのSNLでのギャグ大好きだったなあ
■チャップリン作品集Vol.7『独裁者』(1940)
監督・脚本・出演:チャールズ・チャップリン 出演:ジャック・オーキー ほか 解説:淀川長治
今作でやっとチャップリンがキートンら名コメディアンらと一段違って扱われ、
単なるコメディアン以上の偉人として世界に知られ、現代になってもビデオや伝記等が発売され
長く人々に愛されている理由が分かった。
バーレスク+トーク+ドラマ、彼の全力を注いだ125分もの長編。しかもヒットラー統制の世界大戦に合わせて、
これほどストレートに独裁政治をあざけり、平和の大切さを訴えたことに感服。
神は一方に極悪、他方に善を同時に造り出した。この偶然のフシギさ。詳しい解説は淀川さんに任せて。
有名な演説のシーンがあって、これだけ立派にセリフ回しが出来るならトーキーへの心配など皆無だったのに。
他にもハンガリー舞踏曲に合わせて勢いよくヒゲを剃るシーンや、地球儀とのバレイ、
カーテンを魔法のようにスルスルと登ったり、とギャグも多い。
ポーレットが美しく勇敢で平和を愛するという申し分ないヒロインを熱演。
シュルツ役のレジナルド・ガーディナーも個人的にこのG.チャップマン風喋りが気に入ったv
問題の第二次大戦の嵐は過ぎ、国々のバランスは微妙なところで奇跡的にとれているけれど、
1人1人の心の中にチャーリーの言葉が染み渡るのはいつのことだろうか。
■BBC製作ドラマ『聖地ノックへの旅』(1991)
出演:ジョン・ハート、デヴィッド・シューリス、マル・ホワイト ほか
「信仰は支えにはなるが万能じゃない」「笑いまで失ったらおしまいだ」
「こんな体になったのは、神のせいでも誰のせいでもない。運が悪かった、それだけだ。生きることを楽しまずにどうする」
現代医学は障害になる子どもを生む前から識別できるまでになり、母親らが生む選択が出来るようになり、
身障者団体から「身障者にも生を得る権利がある」と訴えられているというニュースが頭に浮かんだ。
苦労すると分かっていながら生む、どちらを選んでも苦しい選択には変わりない。
しかし五体満足のほうが身障者より幸せかということは必ずしも分からない。
テリーの皮肉に満ちたユーモアは、不安や恐怖と表裏一体、それでもどこかで折り合いをつけて、
毎日の中に幸せと満足感を得ようとし、他人を助けようとする彼の一言一句が重く感じられる。
J.ハートの久々元気な姿を見れて嬉しい。最近は地元のテレビ出演のほうに忙しいのかな?
人と宗教という微妙な問題についても今作品の重要なテーマとなっている。
■『ロビン・フッド 伝説のタイツ男』(1993)
製作・監督:メル・ブルックス 出演:ケリー・エルウェス、リチャード・ルイス ほか
おお、主人公の2人からずーーーっとカメラを引いて気象衛星から見たイングランドみたいなカットの美しいこと
'90を象徴する軽快なラップでの始まりと終わりからギャグのオンパレード。
このMP的荒唐無稽ナンセンスコメディ映画を継承していけるのは、
もはやベテラン、メル・ブルックス唯一人になってしまったのだろうか
細かい芸が無数にある。ブルックスももちろん顔を出している。
情報伝達にはFAXならぬFOX、これが超速いっ!!!
魔法使いが焼いた特製ゲテモノ焼きもスゴイ。全て中世モダン劇とも言えるセットは
リモコンや音センサーに反応するし、『ゴッド・ファーザー』もどきのイタリアンギャングも笑える。
決闘中影絵になるとすかさず手でつくった犬の争いになったり、一瞬たりとも気が抜けないのがブルックスコメディ。
■『幸せはパリで』(1969)
監督:スチュワート・ローゼンバーグ 出演:ジャック・レモン、カトリーヌ・ドヌーヴ ほか
レンタル屋で粘って漁った結果見つけたレモン作品。ドヌーヴとの共演なんて
ストーリーは甘ったるい小品だけど、この異色で豪華な顔合わせでラストまで引っ張ってる。
'70代を予感させる妙にサイケデリックなシーンが多いのも特色。
緑と白の水玉模様のカエルのぬいぐるみのプレゼントも可愛い。
当時レモンは44歳、ドヌーヴは27歳かな。若い! でも彼女は40過ぎた今も全然変わってない。
彼女こそ神の創った美しさ。永遠なんだね。黒のミニドレスがバッチリ。
キスシーンはレモンがなんだか緊張気味に見えるのはマジかも? 長いこと俳優業をしているといろんな事があるねぇ。
フシギでサイケでロマンティック、なんともいえない魅力のある作品。
Say a little pray fo you の詩も雰囲気出てる。
■『アラスカ珍道中』(1946)
監督:ハル・ウォーカー 出演:ビング・クロスビー、ボブ・ホープ、ドロシー・ラムーア ほか
これが噂の「珍道中シリーズ」。7作つくられたうちの今作は最高傑作と言われている4作目。
『笑う映画』、その他でも今作の楽屋落ちギャグの楽しさを取り上げて、
ファンも多く、期待してたけど、それ以上の面白さ!
波に乗ってるユニヴァーサル映画が息の合ったスタートリオを生み出し、ロマンティックな歌、
豊富なギャグ(モノクロなのが惜しい)、特に今シリーズでコメディ演技も花開いたクロスビーは、
R.ミッチェム風に眠たげで、時にすっとぼけ、時に色っぽい瞳で甘い歌声に思わずウットリするのも納得。
最初、解説者が「僕の名はR.ベンチリーだ。誰も気にしないだろうけど・・・」とか、
「今のがフラッシュバックです」とかいちいち上の隅にお邪魔したり、
そうそう、猿の後ろ姿! 何度も振り向いて「ついてくるな、頼むよ」とか、
悪態の音声が消えて「子どもだって観てるんだぞ」とか、船上での素人芸大会では猿の次に
どんな金持ちでも春は皆のもの とクロスビーが歌って賞金は猿に。「次はシナトラを呼んでこよう」!
でもさすがの彼らも突然降ったようにどこからともなく流れる伴奏のことは口にしなかったなw
サンタクロースが「何が欲しい?」「どうせ子どもだましだろう」行ってしまうソリには美女2人。
2人はガラガラ持ってアブアブ。
遠くの雪山を見て「パンだ」「ありゃ山だろ」
周りに星がついてパラマウントのマークになって、「いや、あれが俺にとっちゃ飯の糧さ」
ほとんどポイントは『笑う映画』の中におさめされている。他6作を観る日が楽しみ。
キスシーンで「ここで映画が終わりならいいのにね」なんて観客に話しかけるなんてあまりないもんねw
■『私の彼は問題児』(1991)
監督:アート・デ・ジョン 出演:フィービー・ケイツ、キャリー・フィッシャー ほか
離婚した両親、仲が悪いのは娘のせいと思っている母、それを感じて愛されていない淋しさと不満は
架空のイタズラ小僧に投影され悪さを働く、楽しいコメディの裏にはフロイト的心理学が流れている。
深層心理に潜って、父のように甘え、頼りきってた浮気者でどーしよーもない夫と、
命令的な母を直視し、幼い自分と対面して、解放と自我を取り戻すというラストはまさに
誰かの心理療法の体験談の典型。女ってつくづくやっかいだなって思っちゃった。
人生80年、90年時代。その人の基本的性格しいては人生を決めるのは「3歳までの育て方による」という。
考えれば空恐ろしい。後々、彼女みたく感動的に軌道修正ができればいいんだけど、
「自信を持って、自分を信じること」でも、みんな実は寂しい生き物なんだ、人間て。
子どもは、大人が忘れた“想像する力”を持っている。それを信じてあげて、愛で包んであげるのが一番みたい。
イギリス訛りで、緑の服に黄色い髪のフレッドのキレようは、今大人気のJ.キャリーに通じるものがある。
泥パイや泥棒ごっこ「忘れ物だよ」といって鼻くそをつけたり、海賊ごっこで船を沈めたり、
大人にはキツイ冗談でも、際限ない子どものイタズラには胸がすく思い!
■『恋人よ帰れ!わが胸に』(1966)
製作・監督・脚本:ビリー・ワイルダー 出演:ジャック・レモン、ウォルター・マッソー ほか
B.ワイルダー+J.レモンコンビ第3弾目。解説通りワイルダーは「映画を面白くするコツを知り抜いた職人監督」。
数々の監督賞等をとり、今も人々に愛されている理由がよく分かる。
予期せぬハプニングにいやおうなしひきずられる小市民がレモンの得意技とすれば、
共演のマッソーは確信犯的ズル賢さが特徴。この2人、後々も縁深いワケだけど、まさに名コンビ。
マッソーは今作で助演オスカーを獲得。フットボール選手のR.リッチもいい味出してる。
細かいセクションに分けて、どんどん話に引き込んでいく面白さはさすが。
マッソーの悪い天才ぷりと渋いアップが印象的。テクニカラーじゃないのが残念。
邦題は妻が帰ってくるところからとっててロマンスを感じさせるけど、原題は中国のおみくじクッキー。
「一部の人を一時騙せても、大勢をずっと騙すことは出来ない」(リンカーン
■『晩秋』(1989)
製作:S.スピルバーグ ほか 製作・監督・脚本:ゲイリー・デビッド・ゴールドバーグ
出演:ジャック・レモン、テッド・ダンソン、オリンピア・デュカキス ほか
久々泣けた感動作。スピルバーグ作品には、必ず笑いと涙、家族の温かさが感じられる。
高齢化社会問題を数々とり上げ、がん、介護、認知症、死を見つめなおし、精一杯生きることを学ぶ。
どこかに起きている、言ってみれば自分と家族にも似た、またそれぞれのドラマがあるんだと気づかされる。
父の空想の農場から物語りが始まる。古きよきアメリカを象徴する、のどかで温かいこれらのシーンがなんとも幻想的で美しい。
レモンの78歳演技も見事。特殊メイクと知らなければ信じてしまうところ。
奥深く重みのあるセリフ、エピソードがたっぷり。
「家族じゃないか、忘れて、愛し合おう」温室で和解する母と父のダンスシーンはキレイ。
「ずっと間違ってたの?」「途中でスレ違っただけだよ」
「'47、ジョー・ディマジオがホームランをとられて土を蹴った。彼も人間なんだ。アメリカならやろうと思えば何でもできる」
世の中は急速に変わり、親と子にはいつも価値観の違いがあるけど、心底はいつも抱き合える愛情が流れている。
「お前を子どもの頃、もっと抱いて、キスしてあげればよかったよ」
野球をずっと嫌っていたけど、テレビの話にキャッチボールって、とっても大切な父と息子のコミュニケーション手段なんだな。
「子どものしつけは間違ってなかったようだ」
part4からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。
■『ハート泥棒』(1987)
監督:アーシアン・バーンスタイン 出演:マーティン・ショート、アネット・オトゥール、ポール・レイザー ほか
ソフトなロマンティック・コメディ。いつもビデオ屋の目の前の棚にあって全然気づかなかった主演2人のジャケ。
このショートの写真がなんとも完璧なんだな。この時37歳。
いつもながら一体どんな秘密があるのか、この人って年々若返っているみたい
メジャーになったのが遅咲きの分、これからもっともっと稼いでほしい。
相手のオトゥールは『キャット・ピープル』の人だよね。大人の男女の3度目のデート。
互いに自分を飾って受け入れてもらおうとするが故に嘘をついちゃうってゆう微妙なあやを丁寧に描いている。
軽いポップミュージックが'80代してて作品の温かなラストに似合ってる
あの超ビキニパンツはちょっとキョーレツ
男は男らしくリッチなところを見せたがり、女はそれに感心するフリをする。
女は女らしい可愛さを装って、男はそれにひっかかる。
でも、本当に内面に惹かれたら、他はどーでも虚飾は必要ないんだよね。
ショートは物真似が得意芸で今作にもチラリとある。ピアノは本当に弾いてるの?
すっかりその世界に入っちゃってるから笑える。彼もSNLで長年鍛えられて、
先輩のS.マーティンらと同じイッっちゃってる芸のあるコメディアンだから、
もっとキョーレツな部分の見せ場も欲しかったなあ。
■『HANKY PANKY』(1982)
監督:シドニー・ポイティア 出演:ジーン・ワイルダー、ギルダ・ラドナー ほか
最初から最後まで完璧サスペンスタッチで二転三転して結末が読めずに引きずり込まれる面白さ。
ワイルダーと亡き妻でコメディアン、ラドナーの息の合ったカップルで、
助演には『ヒル・ストリート・ブルース』の主任の男優やら名優ぞろい。
町に、空に、西部の荒地、グランド・キャニオンって、舞台も次々広がって、
軍、政府の国家秘密と絡んでゆくなかなかスケールの大きい作品。
のんびり平凡な男の巻き込まれ型の災難話。
ワイルダーのキレちゃってるギャグは少ないもののサスペンスコメディもgood。
ただワイルダーもラドナーも服のセンスはないみたい '80代前半だからねってこともあるけど。
まさにこれこそ“TRUST NO ONE”って感じ。
スパイごっこをするなら常に尾けられ、情報が漏れてるって用心してないといけないんだね。
(ラドナーのSNLでのギャグ大好きだったなあ
■チャップリン作品集Vol.7『独裁者』(1940)
監督・脚本・出演:チャールズ・チャップリン 出演:ジャック・オーキー ほか 解説:淀川長治
今作でやっとチャップリンがキートンら名コメディアンらと一段違って扱われ、
単なるコメディアン以上の偉人として世界に知られ、現代になってもビデオや伝記等が発売され
長く人々に愛されている理由が分かった。
バーレスク+トーク+ドラマ、彼の全力を注いだ125分もの長編。しかもヒットラー統制の世界大戦に合わせて、
これほどストレートに独裁政治をあざけり、平和の大切さを訴えたことに感服。
神は一方に極悪、他方に善を同時に造り出した。この偶然のフシギさ。詳しい解説は淀川さんに任せて。
有名な演説のシーンがあって、これだけ立派にセリフ回しが出来るならトーキーへの心配など皆無だったのに。
他にもハンガリー舞踏曲に合わせて勢いよくヒゲを剃るシーンや、地球儀とのバレイ、
カーテンを魔法のようにスルスルと登ったり、とギャグも多い。
ポーレットが美しく勇敢で平和を愛するという申し分ないヒロインを熱演。
シュルツ役のレジナルド・ガーディナーも個人的にこのG.チャップマン風喋りが気に入ったv
問題の第二次大戦の嵐は過ぎ、国々のバランスは微妙なところで奇跡的にとれているけれど、
1人1人の心の中にチャーリーの言葉が染み渡るのはいつのことだろうか。
■BBC製作ドラマ『聖地ノックへの旅』(1991)
出演:ジョン・ハート、デヴィッド・シューリス、マル・ホワイト ほか
「信仰は支えにはなるが万能じゃない」「笑いまで失ったらおしまいだ」
「こんな体になったのは、神のせいでも誰のせいでもない。運が悪かった、それだけだ。生きることを楽しまずにどうする」
現代医学は障害になる子どもを生む前から識別できるまでになり、母親らが生む選択が出来るようになり、
身障者団体から「身障者にも生を得る権利がある」と訴えられているというニュースが頭に浮かんだ。
苦労すると分かっていながら生む、どちらを選んでも苦しい選択には変わりない。
しかし五体満足のほうが身障者より幸せかということは必ずしも分からない。
テリーの皮肉に満ちたユーモアは、不安や恐怖と表裏一体、それでもどこかで折り合いをつけて、
毎日の中に幸せと満足感を得ようとし、他人を助けようとする彼の一言一句が重く感じられる。
J.ハートの久々元気な姿を見れて嬉しい。最近は地元のテレビ出演のほうに忙しいのかな?
人と宗教という微妙な問題についても今作品の重要なテーマとなっている。
■『ロビン・フッド 伝説のタイツ男』(1993)
製作・監督:メル・ブルックス 出演:ケリー・エルウェス、リチャード・ルイス ほか
おお、主人公の2人からずーーーっとカメラを引いて気象衛星から見たイングランドみたいなカットの美しいこと
'90を象徴する軽快なラップでの始まりと終わりからギャグのオンパレード。
このMP的荒唐無稽ナンセンスコメディ映画を継承していけるのは、
もはやベテラン、メル・ブルックス唯一人になってしまったのだろうか
細かい芸が無数にある。ブルックスももちろん顔を出している。
情報伝達にはFAXならぬFOX、これが超速いっ!!!
魔法使いが焼いた特製ゲテモノ焼きもスゴイ。全て中世モダン劇とも言えるセットは
リモコンや音センサーに反応するし、『ゴッド・ファーザー』もどきのイタリアンギャングも笑える。
決闘中影絵になるとすかさず手でつくった犬の争いになったり、一瞬たりとも気が抜けないのがブルックスコメディ。
■『幸せはパリで』(1969)
監督:スチュワート・ローゼンバーグ 出演:ジャック・レモン、カトリーヌ・ドヌーヴ ほか
レンタル屋で粘って漁った結果見つけたレモン作品。ドヌーヴとの共演なんて
ストーリーは甘ったるい小品だけど、この異色で豪華な顔合わせでラストまで引っ張ってる。
'70代を予感させる妙にサイケデリックなシーンが多いのも特色。
緑と白の水玉模様のカエルのぬいぐるみのプレゼントも可愛い。
当時レモンは44歳、ドヌーヴは27歳かな。若い! でも彼女は40過ぎた今も全然変わってない。
彼女こそ神の創った美しさ。永遠なんだね。黒のミニドレスがバッチリ。
キスシーンはレモンがなんだか緊張気味に見えるのはマジかも? 長いこと俳優業をしているといろんな事があるねぇ。
フシギでサイケでロマンティック、なんともいえない魅力のある作品。
Say a little pray fo you の詩も雰囲気出てる。
■『アラスカ珍道中』(1946)
監督:ハル・ウォーカー 出演:ビング・クロスビー、ボブ・ホープ、ドロシー・ラムーア ほか
これが噂の「珍道中シリーズ」。7作つくられたうちの今作は最高傑作と言われている4作目。
『笑う映画』、その他でも今作の楽屋落ちギャグの楽しさを取り上げて、
ファンも多く、期待してたけど、それ以上の面白さ!
波に乗ってるユニヴァーサル映画が息の合ったスタートリオを生み出し、ロマンティックな歌、
豊富なギャグ(モノクロなのが惜しい)、特に今シリーズでコメディ演技も花開いたクロスビーは、
R.ミッチェム風に眠たげで、時にすっとぼけ、時に色っぽい瞳で甘い歌声に思わずウットリするのも納得。
最初、解説者が「僕の名はR.ベンチリーだ。誰も気にしないだろうけど・・・」とか、
「今のがフラッシュバックです」とかいちいち上の隅にお邪魔したり、
そうそう、猿の後ろ姿! 何度も振り向いて「ついてくるな、頼むよ」とか、
悪態の音声が消えて「子どもだって観てるんだぞ」とか、船上での素人芸大会では猿の次に
どんな金持ちでも春は皆のもの とクロスビーが歌って賞金は猿に。「次はシナトラを呼んでこよう」!
でもさすがの彼らも突然降ったようにどこからともなく流れる伴奏のことは口にしなかったなw
サンタクロースが「何が欲しい?」「どうせ子どもだましだろう」行ってしまうソリには美女2人。
2人はガラガラ持ってアブアブ。
遠くの雪山を見て「パンだ」「ありゃ山だろ」
周りに星がついてパラマウントのマークになって、「いや、あれが俺にとっちゃ飯の糧さ」
ほとんどポイントは『笑う映画』の中におさめされている。他6作を観る日が楽しみ。
キスシーンで「ここで映画が終わりならいいのにね」なんて観客に話しかけるなんてあまりないもんねw
■『私の彼は問題児』(1991)
監督:アート・デ・ジョン 出演:フィービー・ケイツ、キャリー・フィッシャー ほか
離婚した両親、仲が悪いのは娘のせいと思っている母、それを感じて愛されていない淋しさと不満は
架空のイタズラ小僧に投影され悪さを働く、楽しいコメディの裏にはフロイト的心理学が流れている。
深層心理に潜って、父のように甘え、頼りきってた浮気者でどーしよーもない夫と、
命令的な母を直視し、幼い自分と対面して、解放と自我を取り戻すというラストはまさに
誰かの心理療法の体験談の典型。女ってつくづくやっかいだなって思っちゃった。
人生80年、90年時代。その人の基本的性格しいては人生を決めるのは「3歳までの育て方による」という。
考えれば空恐ろしい。後々、彼女みたく感動的に軌道修正ができればいいんだけど、
「自信を持って、自分を信じること」でも、みんな実は寂しい生き物なんだ、人間て。
子どもは、大人が忘れた“想像する力”を持っている。それを信じてあげて、愛で包んであげるのが一番みたい。
イギリス訛りで、緑の服に黄色い髪のフレッドのキレようは、今大人気のJ.キャリーに通じるものがある。
泥パイや泥棒ごっこ「忘れ物だよ」といって鼻くそをつけたり、海賊ごっこで船を沈めたり、
大人にはキツイ冗談でも、際限ない子どものイタズラには胸がすく思い!
■『恋人よ帰れ!わが胸に』(1966)
製作・監督・脚本:ビリー・ワイルダー 出演:ジャック・レモン、ウォルター・マッソー ほか
B.ワイルダー+J.レモンコンビ第3弾目。解説通りワイルダーは「映画を面白くするコツを知り抜いた職人監督」。
数々の監督賞等をとり、今も人々に愛されている理由がよく分かる。
予期せぬハプニングにいやおうなしひきずられる小市民がレモンの得意技とすれば、
共演のマッソーは確信犯的ズル賢さが特徴。この2人、後々も縁深いワケだけど、まさに名コンビ。
マッソーは今作で助演オスカーを獲得。フットボール選手のR.リッチもいい味出してる。
細かいセクションに分けて、どんどん話に引き込んでいく面白さはさすが。
マッソーの悪い天才ぷりと渋いアップが印象的。テクニカラーじゃないのが残念。
邦題は妻が帰ってくるところからとっててロマンスを感じさせるけど、原題は中国のおみくじクッキー。
「一部の人を一時騙せても、大勢をずっと騙すことは出来ない」(リンカーン
■『晩秋』(1989)
製作:S.スピルバーグ ほか 製作・監督・脚本:ゲイリー・デビッド・ゴールドバーグ
出演:ジャック・レモン、テッド・ダンソン、オリンピア・デュカキス ほか
久々泣けた感動作。スピルバーグ作品には、必ず笑いと涙、家族の温かさが感じられる。
高齢化社会問題を数々とり上げ、がん、介護、認知症、死を見つめなおし、精一杯生きることを学ぶ。
どこかに起きている、言ってみれば自分と家族にも似た、またそれぞれのドラマがあるんだと気づかされる。
父の空想の農場から物語りが始まる。古きよきアメリカを象徴する、のどかで温かいこれらのシーンがなんとも幻想的で美しい。
レモンの78歳演技も見事。特殊メイクと知らなければ信じてしまうところ。
奥深く重みのあるセリフ、エピソードがたっぷり。
「家族じゃないか、忘れて、愛し合おう」温室で和解する母と父のダンスシーンはキレイ。
「ずっと間違ってたの?」「途中でスレ違っただけだよ」
「'47、ジョー・ディマジオがホームランをとられて土を蹴った。彼も人間なんだ。アメリカならやろうと思えば何でもできる」
世の中は急速に変わり、親と子にはいつも価値観の違いがあるけど、心底はいつも抱き合える愛情が流れている。
「お前を子どもの頃、もっと抱いて、キスしてあげればよかったよ」
野球をずっと嫌っていたけど、テレビの話にキャッチボールって、とっても大切な父と息子のコミュニケーション手段なんだな。
「子どものしつけは間違ってなかったようだ」