メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

notes and movies(1995.9~ part4)

2013-05-10 15:16:51 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part3からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『見ざる聞かざる目撃者』(1989)
監督:アーサー・ヒラー 出演:ジーン・ワイルダー、リチャード・プライア ほか
ワイルダー×プライアコンビで'76に撮った『大陸横断超特急』、'80『スター・クレイジー』、
そして3作目のこれで合わせて2億5千万ドルを稼いだとか!?
そのベストマッチのコンビが視覚・聴覚障害者を演じて事件に巻き込まれるコメディ。
障害者をネタにここまであっけらかんと笑わせちゃう感覚はやっぱりアメリカだからかな。
「人生そんなに難しかないさ」彼みたいに明るく楽しく生きられたら、さぞ人生も面白いだろうけど。
人の会話は4文字悪態が好き放題出てくるオンパレード。


『ラブリー・オールドメン』(1933)
監督:ドナルド・ペトリー 出演:ジャック・レモン、ウォルター・マッソー、アン・マーガレット ほか
また1本クリスマスにぴったりのあったかくて楽しいコレクションが加わった。
雪深いワバシャの町に建つ家々。そこで暮らす老人たち。
一人暮らしではあるものの趣味や交流を持って、死ぬまで「生」を存分に楽しもうっていう精神は
若い私たちでもうらやましくなっちゃう。
そして、なんといってもレモンとマッソーの顔合わせは映画ファンにはたまらない企画
'60前後のコメディ名作で見せた面影が'90になってもそのまま窺えて、大活躍している様子は本当に嬉しくなる。

腐った魚攻撃や、隣りのテレビチャンネル変え攻撃はイケるw
「『危険な情事』みたいになったらおしまいだ・・・」なんてギャグは2人とも現代に生きてるんだなあ!と思わせるセリフ。
レモンのピアノ演奏もチラリ。でもヒゲなんか最初からなかったよ!
ラストにはレモンとマッソーのNG集というオマケ付き! セリフのとちりはマッソーのほうが多いみたいね
ベテラン2人の共演にさぞかし撮影中も楽しい雰囲気だったろうな。ぜひもっと現役活躍をお祈り申し上げます。


『ライフ・イン・ザ・シアター』(1993)
監督:グレゴリー・モシャー 出演:ジャック・レモン、マシュー・ブロデリック ほか
まったくお手上げだ。レモンファンとして、主演作に文句をつけるつもりなんて全然ないんだけど、
ブロデリックとの共演といい、ジャケの軽いノリといい、2人でボケとツッコミをテンポよく交わす
ハリウッドコメディを想像していた私としては・・・笑いも何も、セリフが一つも理解出来なかった
プロデューサー側の狙いは何だったんだろう??? ヒットを飛ばそうなんて期待はこれっぽっちも感じられない。

確かに舞台劇に向いている。舞台役者、舞台裏を描いたに違いないんだけど、
ブロデリックは完璧、映画かテレビ向き俳優で、作品中たくさんの芝居のセリフを言うシーンもテレビのノリ。
レモンは舞台経験も豊富だろう。どっちかと言えばスクリーン俳優のイメージだけど。
亡霊のようにくっついて芝居に浸かって、私生活も、喋る言葉もセリフで若手に逐一忠告し、
それでいて若さに嫉妬し、憧れている老役者。ただ「そうかい」「そうだね」とうなづき続ける若者。
演劇になじみのない人間には分からない。なぜ未だにシェイクスピアなのか?

ケネス・ブラナー演出ほど現代的なら感動するけど、2人の会話は特に劇中はトチリの連続。
これで名コンビ?!ギャグもなし。劇は一発本番だから当日の調子に左右されるし、ハプニングもあるんだろうね。
あんな小さなスペースで、オフ・オフ・オフ・ブロードウェイってところか?
小劇場の数だけ役者の浮き沈みのドラマがあるんだな。いつか本物の芝居を観てみよう。
そしたら今作ももう少し理解できるかも? 作者はそれを狙ったんだな。
映画館じゃなく舞台を観に来て、血と汗が通っている生の演技を観てほしいってことか。

筋書きがあってないようなもので難しい。
分からないなりにレモンの熱演、始終喋り続けるセリフの長さ、重みが感じられる。
でも、やっぱりコメディがいいな。『ミッシング』もオスカーをとったけど理解出来なかったっけ
でも、この年齢でジャケでも分かるとおりのセンスのいいスーツがピッタリ決まる
レモンのスリムなスタイルにはなにかヒミツがあるのかなあ?


『野性の夜に』(1992)

監督:シリル・コーラル 出演:ロマーヌ・ボーランジェ ほか

♪空のかなたで誰かが俺を待っている
 空のかなたで誰かが俺を探してる..

'93年にエイズで死去したコーラルが監督・脚本・音楽・主演を兼ねた自伝的小説を自ら映画化。
繰り返されるラストの曲SOMEONE フランス訛りの淡々としたこの歌と
どこまでも続く夕焼け空の雄大な雲の映像はなんて美しいんだろう。
コーラルが自らの生き様を遺したドキュメンタリーとも言える作品。

「僕は死ぬだろう。しかし先の事はどうでもいい。俺は今生きているのだから」
張り詰めきったテンションがほどけた瞬間、相手に「愛している」と伝え、何もない砂漠で獣のように吠える。
死の恐怖から解放され、今生きている素晴らしさを実感する崖っぷちのシーンから、渦を巻いて海に近付いてゆく映像もステキだ。
彼は自分の苦悩も何もかもカメラの前に曝け出して、今、生きている自分を永遠の映像として残す作業を完璧にやってのけた。
それも仏映の永遠のテーマである愛の追求をきちんと踏まえて。

しかしここまで見せられても私には何が本物の愛か、愛とは何かは分からない。
この2人のように、またすべての仏映のカップルみたいに「愛」自体何者か突き止める事自体ナンセンスにすら思えてくる。
「誰が感染(うつ)したのかは関係ない。相手のぼやけた顔がウイルスに見えるくらいだ」
彼らは人並み以上に「生」を愛し、「愛と優しさ」を欲する素晴らしい自由な人間なのに。

コーラルは、J.ユーグ・アングラードとR.ダウニー・Jr.を足したみたい。
ヒロインは、この間観た『ミナ』のボーランジェ。恋一筋、狂気に猛進してゆく熱演はアジャーニにも通じる。
ローラは孤独から逃げ、ジャンは死の恐怖から逃げたくて2人は出会って愛し合った気がする。
いずれにせよ、どんな形でも愛であることに変わりはない。
遠く離れてみないと真の価値や相手の必要性が見えてこないって悲しい事実だね。
でも彼女たちくらいに狂えるってことは、冷めた理論でのめりこめないタイプよりも、
より人間らしく生きているってことかもしれない。

本人が作品中に予言している通りに本作の翌年、作者は逝ってしまった。
エルヴェ・ギベールほか才能あふれるクリエイターらが自らゲイを名乗った上で、病と正面から向き合い、
日一日闘う様子を残し、人々に訴えかけている。彼らの叫びを聞き、私たちも一緒に向き合う時が来たんだ。
から来たなんていう原因も不可解な、人の愛情に巣食い、全世界を揺さぶろうとしているウイルスと、
愛自体、相手を独占・支配しようとするウイルスみたいだな。


チャップリン作品集Vol.1『キッド/のらくら』(1921)
監督・脚本・出演:チャールズ・チャップリン 解説:淀川長治
キッド
これはコメディというよりドラマ性が強い。笑わせるシーンは、チャーリーが天使の国の夢を見るくだりだけで、
主なテーマは、母子の愛と、浮浪者と子どもの愛。
やはりJ.クーガンの愛らしく達者な演技は、彼の登場だけで観客の涙を誘う。
『ライムライト』にも感じられる感動的なメロディが作品を装い盛り上げる。チャーリーは音楽も担当してるよね。
好んで取り上げている貧困と、その生活の中でも一生懸命生きていて楽しんでいる人々を
法律の下に引き裂こうとする体制への反抗の物語り。

のらくら
こちらはうって変わってギャグが詰まった楽しいコメディ。
浮浪者とマヌケな富豪の夫の2役を演じるチャーリーは、なんだか変装好きなP.セラーズを観ているよう。
それにしてもなかなかドタバタ演技が上手い鎧の中の代役は誰だったのか?
池に浮かんだ球を間違えて打とうとして落ちたり、チョビヒゲの代役もモノクロ映画のマジックだから通用するトリックなんだけどね。
もしセラーズがあの鎧を取るとしたら、自分の頭を壁にぶつけたりしても、なおヘーキな顔で挨拶なんかするかもw


『ザ・プレイヤー』(1991)
監督:ロバート・アルトマン 出演:ティム・ロビンス、グレタ・スカッキ ほか
映画業界ってここまで細分化しちゃってるのね。今年は映画生誕100周年記念
最初はストーリーを選び、俳優を決め、脚本家がセリフを決め、カメラマンはフィルムを回し
監督は指示し、プロデューサーは資金を集め、映画会社は広告する。
ハリウッドは、億、兆単位を扱うのがフツーになっちゃって1本の映画に数えきれない人間が関わってくる。
その1本になる前にも、これまた無数の消されたアイデアと人間たちがいる。

ティムは今作でまたまた名を上げたけど、彼が演じるプレイヤーは脚本家から1日に125本もの電話で話を聞き、
ヒットするか判断して年平均12本の契約で映画作りをスタートさせる。
サスペンス、サイコ、アクション、ハートウォーミング、そして性描写にハッピーエンディングは必須条件
今作を観ると1本1本観て感動しているのが何だか操られているだけに思えてくる
すべては金を生み出し、会社を存続させるため。アンチハリウッドとして、
アルトマンは今作にすべての愚痴や恨みつらみをぶっちゃけたってとこか
映画自体、映画業界をパロディ化している。

次から次へと出演するドル箱スターたち。ほんのカメオだからノーギャラで引き受けたのかもだけど、
一同にスケジュールを合わせるのも苦労だったろうね!
極めつけはB.ウィリスと、J.ロバーツ。ありそうでないハリウッドスターの初共演・・・の1カット。
『人々に夢を与える映画』か。実際与えてもらっているけど、作る側には汚い現実の毎日なんだなぁ

パーティにはJ.ゴールドブラムもいたな。映画のシーンにS.グレン他、名前だけでも
M.ライアン、G.ホーン、シュワちゃん、W.ライダーと大物揃い。
シェール、J.キューザックが数カット、そして私が今作を観た理由のジャック・レモンは、
セリフはないけどパーティで自慢のピアノを静かに奏でている
私が確認できたスターは20人弱か。60人も出てるのか!? 再チェックする気力はないけど。

今作自体も大成功を収め、まんまとカンヌ映画祭受賞っていうご褒美も。これだからやめられないのねw
ファンとしては真剣に作り上げて、人々にメッセージを訴えようとしているスタッフと俳優の存在、
映画の夢を信じ続けたい。私たちも映画はやめられないものなんだ。


『ネクロノミカン』(1993)
監督:金子修介 ほか 出演:ジェフリー・コムズ、ブルース・ペイン ほか
『死者の書(ネクロノミカン)』がアメリカの僧院にあると知った小説家は鍵を盗んで読み始めるという3つのオムニバス。
1.自分のせいで死なせたのに、この仕打ちは酷くないかい?
2.『Xファイル』でも使えそうなネタ。永遠の命が持てても太陽や人目を避けなきゃならないなんて無意味だねぇ。
この後も壮大なスプラッタは続く。死者の書を読み進めるごとに開いて行く戸が開き悪魔が目覚める。

とにかく今作をスクリーンで観たお客さんは、このブッ飛びワールドに顎が外れたんじゃなかろうか?
今やサイコホラーの時代。リアリティを持つ実際の事件を元にした話でゾッとさせる作品がメインで、
こうゆうネトネト&ドロドロな元祖スプラッタしたのは出てこなくなったものね。
必ず異教思想が絡んでるのが特徴的なんだけど、なんと日本人監督も参加しているからビックリ。
どれかは分からないけど、3作とも同レベルで、見劣りはしなかったなあ。
みんな、こうゆうグチャグチャクリーチャーが好きなんだねぇ
3国の合作で予算もしっかりオーバーしていそうな豪華版スプラッタ。


『THE GREAT RACE』(1965)

監督:ブレイク・エドワーズ 出演:ジャック・レモン、トニー・カーティス、ナタリー・ウッド、ピーター・フォーク ほか

「ローレル&ハーディに捧ぐ」

パリの街のような絵画によるフリップが粋。『ご婦人がた脱帽下さい』とのこと。
内容としては『80日間世界一周』のパロディってとこ。スラップスティックに徹しているのが嬉しい。
レモンファンには彼が大活躍するのは嬉しいけど、この極端なキャラはアニメのようだぞ。
トニーとの共演は、たしか『お熱いのがお好き』以来2度目。
今や絶滅したハリウッド2枚目スタイルを存分に発揮する彼と、バリバリの悪役に徹するレモンの対決
ウッドの歌声もあり、みんな若くて頑張ってたなあ!

レモンとボケ役フォークの細かいギャグがいろいろあるけど、ローレル&ハーディの絶妙なタイミングと同じようにはいかないな。
日本の時代劇にチャンバラが不可欠なように、向こうもフェンシングの決闘が必ずあるのね。
髪を黒く染めてヒゲをつけて、大声を張り上げてレモンもすっかり変装。
エドワーズ監督は役者に変装させて2役以上演らせるのが好きみたいw


『ひと嘘ツイたら億万長者』(1991)
監督:マウリス・フィリップス 出演:リチャード・プライヤ、ジーン・ワイルダー ほか
このコンビはサイコーだね 共演作は4度目かな? 当時ワイルダーは57歳!プライヤは51歳!
とは信じがたいくらい、2人共全然変わらないんだもの。
それから悪役にはあの『ブルックリン最終出口』で印象的だった男優も出ているんだけど、名前がわかんない。
最初TORI-STAR のペガサスが飛ぶシーンで「羽生えてるな」なんてコメントを付けてる丁寧さw
スタッフもキャストもバッチリ、ストーリーも文句なし笑えるコメディ。

病院仲間の面々も可笑しなのばっかりで、P.フォークの物まねは上手い。
彼と歯医者の男優もどこかで見た顔。おいしい役者が勢ぞろい。このコンビでもっと活躍して欲しいな。
それから濃い顔にオーバー気味の男優のわざとらしさはコメディに向いてるかも。もっと出て欲しい。
それにしても正装したワイルダーの髪はやっぱりモワモワのくせ毛のまんまなんだろうか???


『酒とバラの日々』(1962)

監督:ブレイク・エドワーズ 音楽:ヘンリー・マンシーニ
出演:ジャック・レモン、リー・レミック ほか
あのノー天気なスラップスティックコメディ『ピンクパンサー』シリーズを撮った同じ監督が
うって変わってシリアスな社会派問題作を見事に取り上げている。
同タイトルのテーマ曲はアカデミー主題歌賞を受賞。
最初に一度歌われるだけで、ラストは音楽を敢えて流さないことで、かえってリアリティを高める効果を出している。
主演の2人はオスカーにノミネート。受賞しなかったものの熱演が素晴らしい。

近年同じくアルコール中毒のテーマで『男が女を愛する時』も感動したが、ずいぶん前から深刻な問題としてあったんだ。
アル中の真の原因は未解決のまま、今作を観ると、それは人の心の中に潜む孤独感や挫折感を餌にいつしか体中を巣食う悪魔のようだ。
チョコレートやタバコでも同じこと。普段真面目で繊細な人ほど、些細なキッカケで誰にでも起こり得る。
表面は平凡で幸せそうな夫婦でも、世の中もっと複雑なんだなあ。

「形だけの冷たい家はもうイヤ。2人で昔に戻れたらやり直せる」
「君と僕と酒、三つ巴が昔の僕らの暮らしだ。誰のためでもあの日に帰りたくはない」

お酒が夫婦の間をとりもっていたなんて皮肉な話。他人同士、何十年も付き合うには何かが必要だろうけど、
お酒は手っ取り早いのかも。更生会の人々が皆すがるように煙草をふかしている様子が印象的。
生きていくには何でもいい、頼るものが必要なんだ。
キアスいわく「しらふだとあの近くで見た汚い海のように全てが薄汚く見える」

アル中は飲酒を助長させる物質が体内に増えるから、という説もあるが、
いずれにしても精神的な原因も深く関わっていることは間違いない。

気の滅入るテーマにも関わらず、J.レモンのセンスが最大限に出ていて、彼の魅力を存分に味わえる作品でもある。
シリアス演技は息を飲むほどの迫力で迫ってくるし、あかんべーしたり、酔ってガラス戸に思い切りぶつかったり、
奇妙なセクシーダンスもあり、笑って楽しめるシーンも多い。
ベッドでオールヌードまであって、当時の劇場公開時はボカシ抜きだったのかとビックリするシーンもある
なんといっても彼独特のセリフの言い回し、テンポが好きだなあ。くるくる変わる表情も観てて飽きないし。
当時37歳? 歩き方ひとつとっても若いエネルギーに満ちていて、やっぱり若さってステキだね。
特に燃えて打ち込める仕事があって、健康で、愛する人がいて・・・「人生咲いているうちが華よ」か。
何かの小説の一節なんだな、このタイトルって。

AからZまで図書館の本を読破していた彼女(一度やってみたい!
本の中の偉人たちが残したたくさんの名言は、結局ひとつも彼女の人生の役には立たなかったってワケね。
「人生経験がすべてだ」って言ったのは『ラブリーオールドマン』のあの父ちゃんが言ったセリフ。
それも一理ありだな。レモンがオスカーをとった『ミスター・ロバーツ』や『SAVE THE TIGAR』もぜひ観たい。


to be continued..


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