メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

notes and movies(1995.7~ part3)

2013-04-13 16:50:51 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part2からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『キートンの月ロケット』(1945)
監督:ジェイム・サルヴェイダー 出演:バスター・キートン ほか
驚いた!キートンのトーキーだなんて。何年の作品かハッキリしないけど、晩年のもの。
やっぱり彼は無声映画とのあいのこのよう。ジャケットにある通りキートン作品としてはかなり異色の題材。
SFコメディもどきというか、ドタバタよりストーリーの荒唐無稽さをメインにしている。
若い娘を追いかけるロマンスものにはもう不向きな年齢だけど、最後のセリフは妙に彼にピッタリくる。
作品中のキートンの役は168cmの身長に63kgの体重という設定だが、きっと実物もそのくらいの小柄な人だったんだろう。
外国人の平均身長に囲まれると、とてもちょこちょこして見える。
晩年とはいえ、2段ベッドから落ちたり、机の上に両足を上げて跳ぶシーンにはビックリ
体の造りや運動神経が並みじゃないから、歳をとっても丈夫で身軽だったのかな?


『ヒット・パレード』(1948)

製作:サミュエル・ゴールドウィン 監督:ハワード・ホークス 原作:ビリー・ワイルダー、トーマス・モンロー
出演:ダニー・ケイ、ベニー・グッドマン、トミー・ドーシー、ライオネル・ハンプトン、ルイ・アームストロング、ヴァージニア・メイヨ ほか
ジャズの巨人を集めてゴールドウィン&ダニーケイ&ヴァージニア・メイヨ3人コンビが音楽とロマンスの華を咲かせる。
豪華この上ないジャムセッションがただただ素晴らしい
ダニー・ケイが主演でも今作はおふざけなしなのがちょっと寂しいけど、落ち着いたロマンス・ストーリーの彼もなかなかのもの。
スマートなボディに青い眼、高い鼻、輝くブロンドをウットリ見つめているだけで2時間あっという間っていうファンも多いはず
妙にキスシーンが豊富。♪WONDER MAN とは正反対に強いアメリカ女性を演じるメイヨがなんとも魅惑的。

ジャズの録音に皆が集まり、ジャムを始めるシーンも圧巻。サッチモの若いこと スマートだし、溢れんばかりの愛嬌は同じ。
ルイのトランペットにベニー・グッドマンの軽やかなピアノ、4人のコーラスグループのスウィングしたハーモニーetc...
音楽は理屈や音符じゃなくてビートに感覚、自然に心と体が歌い踊りだす。そんなものなんだよね。


『NATIONAL LAMPOON'S EUROPEAN VACATION』(1985)
監督:エイミー・ヘッカリング 出演:チェビー・チェイス、エリック・アイドル ほか
チェビー・チェイス作品は初見かな? トボケたキャラにアメリカ人の庶民生活を反映させて、
飛びぬけて奇抜じゃないけど、マヌケ度の笑いは親しみやすい。
でも今作はなんといっても、エリック・アイドルがゲスト出演とあって、掘り出しものシリーズを締めくくるにふさわしい1本。
本当は『ラットルズ』なるビートルズもどきの主演作が目当てだったけど、それは次回に回すとして。

チャールズ皇太子やダイアナ妃のソックリさんもいたな。ヨーロッパ観光巡りも一緒に楽しめて一石二鳥。
エリックは、ほんの3シーンながらしっかり笑いのポイントは押さえてる。
とっかえひっかえの機内食、ド派手なイタリアンファッション、パンフとぜんぜん違う貧弱ホテルとか
海外旅行ネタは尽きない。実際ありそうなんだもの。


『みんな~やってるか!』(1995)
監督:北野武 出演:ダンカン ほか
丁寧にも「GETTING ANY?」なんて横文字の副題まで付いてるのは、たけしさんのイギリス人気、カンヌ出品を念頭に入れての1本だろうか?
第1回ビートたけし監督作品、第5回北野武監督てことわりがあって、監督業の文芸的シリアスな目とともに
今作はもろエゲツない“たけし軍団”率いるコメディアンの色で撮ったというわけ。
血みどろのヤクザものが続いた後でこれぞたけしの世界!ってゆうナンセンスギャグの目白押しが嬉しい。
2時間たっぷり、これでもかと押しつける放送禁止の数々。これを大スクリーンで正装して観たカンヌの皆様の様子を
想像すると一体どんなリアクションだったのか痛々しいかぎりw
妙なイラク語の日本語訳が戸田奈津子さんってのもgood。刀で細菌や原子まで半分に切っちゃう男もすごかった!


『沈黙の世界』(1956)
監督:ジャック・イヴ・クストー、ルイ・マル 撮影:エドモンド・セシャン
最近、話題となった海洋記録映画『アトランティス』が音と映像で綴る美しい芸術作品であったのに比べて
今作はその前衛ということもあってか、人類の発明の利器、科学の力を強調した記録映画色が濃い。
日本語の吹き替えが時代を感じさせる戦時中のニュース解説のようなのが気になったが、
今作はまさに未知の自然~海~にまで、ついにのびた人間の侵略の物語りだ。

自由に長時間潜水活動ができるアクアラングを考案したクストー自身がリーダーとなって、
他にも水中カメラや超音波探知機など文明の道具を次々紹介していく。
宇宙服みたいのを着て、命を危険にさらす原住民らをあざ笑うかのような挨拶。
70mが人が潜れる最深。今じゃもっと潜れるだろうけど。酔った状態になり、血液中の窒素で水圧を受けた体は関節が痛む。
減圧器に入って他の連中は収穫されたエビを食べる。実際の航海中は何か起きないものかとひたすら甲板で待つ
日のほうが多いだろうに、映画では次から次へと冒険がつづく。
海底に沈んだ'40代の沈没船「砂から針を見つけるようなもの」も簡単に見つけちゃう。

そして今作のハイライトはクジラのスプラッター映像。クジラを見てやわら槍を持ち出すなんて信じ難い感覚
さんざん追い回した挙句(彼らはそれを“親しみ”と呼ぶ)、子クジラがスクリューに巻き込まれて
頭部を引き裂かれてまさに血の海。そこに群がるサメ。人間のほうがよっぽど野蛮で残酷なのを棚に上げて、
にっくきサメを必要もないほど殺してひきあげる。あれは後で食べたのか? 捨てたのか?

そしてやっとたどり着いた陸では嫌がるゾウガメの背に乗って「仲良くなった」と勘違い。
ウミガメの産卵と子ガメのシーンは、彼らには迷惑だったろうけど、やはり感動する。そしてエサで釣って仲良くなったジョジョ。
しかし、ここでも仲良くなったのに他の魚と接するのにウルサイからと檻に閉じ込めて「本人は嬉しそう」だって!

これからも人間の侵略は続く。「海の男」とは現実社会を象徴する「陸」から離れて暮らし、陸を慕って暮らし、
たまには帰って待っている女とちょっと遊んで、また海に去っていくような連中をいうのかね。


『フランケンシュタイン』(1994)
監督・出演:ケネス・ブラナー 出演:ロバート・デ・ニーロ、ヘレナ・ボナム・カーター ほか
次々とクラシックホラーを完璧プレミアム版にリメイクしてゆくコッポラが今回製作したのはフランケンシュタイン。
映画・演劇界に新風を吹き込む、今やノリにノってるブラナーは原作を基に一気にシェイクスピア悲劇にまで高め、
大スペクタクルめまぐるしい作品に仕上げた。
存在意義と愛を求める恐ろしいクリーチャーに変身するなんてお手のもののデ・ニーロ。
愛する者を失う悲しみを負い、神をも畏れず、自然の理に逆らって死体を蘇らせたことで復讐される
狂気の科学者にブラナー自身、その恋人役にヘレナの演技の迫力は素晴らしい。

そして何より驚いたのは、もしや、でもまさか、でも似てる・・・で、やっぱり!!!
マッドサイエンティストにジョン・クリーズ 彼をキャスティングしたブラナーはエライ!
エリックはスピルバーグと組んで、クリーズはコッポラと組むなんて、他のメンバもヤラれたと思っていることだろう。
いやあ、長生きするもんだねえ。彼の演技力はまさにシェイクスピアレベルなんですよ!
それにしても、クリーズの声が別人みたいで低いのは演技? まだ56歳だもの、そんなにしわがれるとは思えない。

知恵は人に悲しみや憂いをもたらす。
19Cの初め、科学の力が猛進し、命の尊さや魂の在りかを置いてきてしまったことを訴えている。
クリーチャーは世界を恐がらせたコレラの恐怖の象徴でもあるだろうけど、実に様々な要素が見えてくる。
原作がどんなものか読むべきだろうな。著者メアリー・シェリーは最初からこれほど多くを意図していただろうか?
日本出版社他、日本の資金協力も大きかったようだ。このような芸術にかけるお金なら価値があるよね。


『ブロス やつらはときどき帰ってくる』(1991)
原作:スティーヴン・キング 監督:トム・マクローリン
出演:ティム・マティソン、ブルック・アダムス、ロバート・ラスラー、クリス・デムトラル ほか
うーん、これがS.キングホラーだなあと感心したのも束の間、木村奈保子さんの解説だと原作とはかなり趣が違うとか!?
タイトルのブロスってブラザースの略か? 確かにウェイン役の俳優は『スタンド・バイ・ミー』を思わせる。
悪党が幻霊となって悪さをするのは『IT』だな。それに『デッドゾーン』と同じアダムスをキャストしたのはキングの意向か?
深く心に染み付いた過去の傷をもう一度疑似体験することによって癒すヒーリングみたいだ。

自分のせいで兄を死なせたと悪夢にうなされ、苦しむ男が勇気を振り絞って悪と闘う。
同じパターンであっけなくヤラれてしまうチンピラには残念だが、“悪魔的笑い”といい、
青白い顔からドロドロの顔への変身といい、S.キングホラーはサイコもありゴテゴテのスプラッタもあり、まさに夏向け
そして忘れてならないのは家族というテーマ。突然27年前にトリップする展開や、
『キングコング』のビデオからいきなりホームビデオに変わるアイデアなどなど、泣けるし、同時に背筋が凍る。
原作も気になる。新作はロマンスだっけ? さらにファンのため20C最高のホラー作家さんには頑張ってもらいたい。


『アデルの恋の物語』(1975)
監督:フランソワ・トリュフォー 出演:イザベル・アジャーニ ほか
なるほど、今作はアジャーニしてる。久々の文芸作品に少々食傷気味で宇津木さんが言ってた通り
「フランス映画の主人公って、恋愛の他にすることないのか?」ってそのまんまの世界
でも、ま、ヴィクトル・ユーゴーの娘の物語ということで映画化されるくらいだから
激しい愛は人を常に惹きつけるものだし、常に人は愛を求めているもの。
「愛は私の宗教」とまで1人の男に全てを捧げ、結婚に魂までも課したアデル。
ここまで強迫観念に向かわせたのは一体どういう原因か?彼女が1915年まで長生きしたというのは実に皮肉だ。
意識、魂を失ってまで長生きして何になるだろう。

アジャーニが燃える恋する女から、青白く目だけが血のように赤いメイクで髪を振り乱し、
狂気で自己を失っていくまでを、ピリピリに張り詰めた弦のごとく演じて、19歳にして鬼気迫るものがある。
彼女をここまで女優業にのめりこませるあたりもアデルに通じる狂気と共通する。
ピアソン役の男優もついでに言えばカッコいい。ところでユーゴーがどんな天才だったか知らないんだよね。
難しい本を書いたらしいけど、父は手紙でしか登場しないが、娘への愛が文面から滲み出ているのが分かる。


『アフターアワーズ』(1985)

監督:アーティン・スコセッシ 出演:グリフィン・ダン、ロザンヌ・アークエット、テリー・ガー、ジョン・ハード ほか
「笑う映画」推薦シリーズ第1弾だと思う。驚いたね!こうゆうスゴイ作品を毎回目の前にして気づかないんだから。
スコセッシとはいえ、この前作『キング・オブ・コメディ』では泣かされてたから、ちょっと手放しじゃ信用できないと思いつつ、
J.ハードがアナーキーな役で出てるってことで面白そうなコメディかと思いきや、このシュールさ
次から次へとなだれこむ偶然によって、どうしても家に帰れない男の悪夢の一夜。
こりゃれっきっとしたホラーで、カフカの不条理、ダリの非現実、プラス、コメディなんだ。今年のベスト3には入る。

そうだ!この哀愁と狂気迫る雰囲気、コメディなのに薄ら寒い不安感を持たせるB.キートンのサイレント映画に通じないでもない。
終始を占めるクラシックの響き、ジュークボックスから流れる火事のバラード は音楽にうるさいスコセッシならでは。
これだけアクの強い俳優が揃ったのは彼の名より作品の面白さだろう。
製作にも関わった主演男優も熱演。作品の雰囲気にぴったり合ってる。
フシギな偶然ってあるもんだけど、こんなに異次元のようだとSFに近い。
今作と出会ったのも映画の中の何かとつながってるのかも!?


『街の灯』(1931)

監督・脚本・音楽・出演:チャーリー・チャップリン
出演:バージニア・チェリル、フローレンス・リー、ハリー・マイヤーズ ほか
チャップリン長編作のうち代表的な1作。トーキー時代の幕開けにサイレントを撮りつづけていたわけだけど、
スラップスティックな楽しさ+ドラマ性を加えて、自らのプロダクションで作られたまさにチャップリン独自の世界が存分に楽しめる。
ハッピーエンディングのはずが手放しで喜べない終わり方。
彼が人違いを装ったら悲劇になっちゃって、喜劇映画にとってはタブーだろうし、その辺のアイロニーも狙ったのか。
スパゲティと一緒に紙テープまで食べちゃったり、毛糸巻きに自分が来ているセーター(腹巻?)を抜き取られちゃったりするシーンは可笑しい。
生白い肌で相手にこびる姿はちょっと不気味なほど女性的。貧困から生まれる笑いは喜劇の基本とか。


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