メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

世界の名作全集 12 みつばちマーヤの冒険 ワルデマル・ボンゼルス/原作 国土社

2024-03-02 10:48:11 | 
1992年初版 高橋健二/訳 横内襄/挿絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


お母さんを探す男の子のハチの話だと思って読んでいたら
『みつばちハッチ』じゃないことに途中で気づいた

でも、今作もアニメ化されたんだな





虫はニガテだけれども、次々と登場する虫たちに
新鮮な驚きを隠せないマーヤにつられて興味がわいて、ネットで調べてみると
昆虫ってほんとうに多種多様な色形、生態をしているんだなあ!

なにを見ても夢中になるのは
ミツバチの一生が夏の1か月しかないこととも関係がある気がした

ニンゲンは100年ほど生きるけれども
もっと長寿なモノと比べたらほんの一瞬で
あらゆる体験をして、感動に触れても
しあわせに気づかないのは惜しいことだ

働きバチの国を優先して、個人を抑える生き方は共産主義的ともいえる

この物語は、ヒトが養蜂している巣箱のハチだから、さらに生き方は狭められ
マーヤが冒険に飛び出したくなる気持ちも分かる
そういう個が、ときに全体を救うきっかけになり得るというのはよく知られたこと








【内容抜粋メモ】

●ふるさとの町を出るマーヤ
みつばち族の間に革命が起きて、女王は抑えることができなかった

子どもたちの面倒をみる雌ばちのカッサンドラ:
若いみつばちが第一に心がけなければならないことは
めいめいが考えること、すること
すべて、ほかのものたちと同じようでなければならない
みんなの幸福を考えなければならないということです

明日、年上の女の仲間と飛んだら、いつでも帰れるよう
途中にあるものをよく覚えておくんですよ
菩提樹のお城の木を目印にすれば、私たちの町の位置が分かる

国家の古い取り決めにより、夏の間に集めた蜜の大部分は
人間に譲らなければならない

人間は自然がつくりだしたいちばん完全で高尚なものなの
お前は幸福になれる道理なんですよ

クマバチとキバチには用心しなさい
どんな昆虫に対してもおまえの針を使うことができます
皮膚に刺さったまま折れてしまうから
生きるか死ぬかという場合でなければなりません

私たちミツバチがどこへ行っても尊敬を受けているのは
勇気があって賢いからなのです


マーヤは速く飛び、幸福で自由に生活を楽しみたいと願い
巣箱に帰らない決心で冒険に出かける

マーヤ:私はほかのミツバチとは違う

うてな=花の萼(がく)のこと



●ペッピーのばらの家





バラコガネの一族のペッピーは、ことわりもなしに家に入って来るアリに怒る

大きなスイレンの上で金バエのハンスと出会い
みんなそれぞれの葉っぱには借り手がいることを教えるが
トンボのシュヌックに頭から食べられてしまう(! 昆虫も弱肉強食が容赦ないな/汗







シュヌックの羽の美しさに感動するマーヤ
人間がもっとも崇高だと教えられて育ったマーヤは
ほんものを見てみたいと切に願っている









シュヌックは弟がヒトにつかまって、ポケットにつっこまれ
瀕死のカエルに脅された挙句、いっしょに捨てられて死んだことを涙ながらに話して歌う

ああ、長くはつづかぬこの命
ありがとう かがやかしい夏よ
きょうはほんに素晴らしい




●イッフィーとクルト
初めて雨を経験し、旅の暮らしには日光がどんなに必要かを知る
経験は人生最高の宝で犠牲を払う値打ちがあると考えるマーヤ

アリの行進曲:この世に生きる ぼくらのみじかい命も まもなく終わる


こおろぎのイッフィーは友だちのクルトがマグソコガネと知って、縁を切る
クルトは涙をぬぐいミミズをかみ切ると
半分ずつ逆の方向に逃げていくのを見てビックリする!









クルトはマーヤを見ようとして仰向けになり、死に物狂いで暴れる
クルト:もうダメだ これより情けない運命が起こったことはありゃしない
マーヤは枝を曲げてあげると、それにつかまって起き上がる



●バッタ
バッタの長い足を初めて見てビックリしていると
マーヤをキバチと間違えて、憤慨する








バッタ:
牧師さんの庭で跳躍競技があるから見物できるように無料入場券をあげましょうか
ボクの一族には、自分の背の300倍も高く跳ねたのがいましたよ(!

マーヤは、経験を生かすことを知らないものに限って
いちばん多く経験するのはよくあることだと考える



●プック
イエバエのプックは、人間の家の中のことについていくつか教える
鏡に写すと自分の腹が見えることなど







プック:
人間の言葉が分かるようになるまでには長くかかったわ
地球はハエに支配されている
私は冬を越したのよ

プックは窓から家に入れることも教える

バカにされたために、襟首をつかんで押さえつける
プック:アゴが外れてしまった!(w



●マーヤ、クモにつかまる
カッサンドラは「人間は親切で賢い」と教えてくれたのを思い出す
カッサンドラ:昆虫が影で悪口を言っても耳を貸してはいけないよ

マーヤの頭と肩にクモの糸がからまり、暴れるほどくっついて飛べなくなる
チョウ:おや可哀想に ラクに死ねますよう祈りますよ








近くのキイチゴの葉の下にジョロウグモのテクラが黙って見ている
穏やかな口調で話しかけて、気を許したのをいいことに
さらにグルグル巻きにされて身動きがとれなくなる

テクラはマーヤの針を怖れて、そのまま飢え死にさせて食べようとしている
そこにクルトが通りかかり、助けを呼ぶと
からまった糸をチョキチョキ切ってくれる

テクラ:強盗だ 私のものを盗んでいくよ
マーヤ:心から感謝するわ 私、あなたをけして忘れないわ



●カメムシとチョウ
死を間近に感じたとしても、翌朝、太陽が照ると
マーヤはたいていの心配事を忘れ、いろいろ経験したいという願いに駆られて飛び出す

平べったい見慣れぬ虫に話しかけても、無言で去った後に茶色いしずくが落ちていて
恐ろしい臭いが広がる
チョウのフリッツ:なぜカメムシなんかに関わるの?w








フリッツが毛虫からサナギになり、チョウとなった様を話すと驚くマーヤ

フリッツ:
暗い眠りからサメて、殻を破った時の気持ちは到底説明できないよ
自分の命が愛おしくて、胸がドキドキしたよ



●ハンニバルと人間とのたたかい
キクイムシのフリドリンは木の皮を家として
約50匹の息子たちを養っている!

彼の一族が大群で木に襲いかかると
葉はたちまちやられて枯れて死ぬほかなくなる








フリドリン:あのキツツキがいなかったら、生きるのは楽しいだろうな

ネバネバする長く細い舌を伸ばして、ムシをからめとって食べる様子を話す!
いとこのアガーテは死に物狂いでもがいたが飲み込まれてしまった

メクラグモのハンニバル:
もし、すべての動物が自分たちにできる以外のことをしようと思ったら
この世はたちまち混乱に陥るでしょう

ハンニバル:
人間はわれわれの精神生活についてはほとんど知りません
たくさんのハエや蚊がランプにとまって、中をジロジロ覗くのを
僕は捕まえて暮らしを立てているんです

クモは8本足だが、ハンニバルは1本少ないワケを話す
ヒトに捕まって、足がちぎれたために九死に一生を得た

取れた足がしばらくは動くことについて
自分の目で見るまでは信じないと言うマーヤ

ハンニバル:
僕があんたのために足を1本ちぎるとでも思っているのかい
窮地におちいったら、たちまち僕のことを思い出して後悔するだろう

みんな考え方が違い、悪意のないことを分かってもらえないことが多いものだと悲しく思うマーヤ
でも、草原と花の間を飛ぶと、生きるのはなんと素晴らしいことだろうと考える



●夜のふしぎ
どんな動物でも、一人ひとりの性格がみんなの習慣に馴染めないということはある
そういうものをいけないと決める前に注意して考えねばならない
けして怠けぐせやワガママに限らず
もっと高いもの、よいものへの深い憧れが潜んでいることがあるから


マーヤは一人で幸福に暮らしていても、団体と愛情が恋しくなることもある
それでも、人間を親しく知ることを強く願っていた

蚊:人間はたしかに優しいわ 私は今、あの人を刺してきたところよ

マーヤは目的を達するために、もっと大胆になろうと決心する








夜に目が覚める
マーヤ:これが夜なんだわ 夜にきまっているわ

ヨルコオロギのバイオリンのような鳴き声を聞く
ヨルコオロギ:夏の夜は、世界でいちばん美しいものよ

スイレンの花に小さい人間がいるのに気づく









花の精:
わたしのふるさとは 光
死と生の2つはいれかわるけど
私の魂はかわらない

僕たちは七夜の間生きているけれど
生まれた花を離れると、あけぼのの光の中で死ななければならない

死ぬ前にフシギな力を持ち、最初に出会う生き物に
いちばんの願いをかなえてやることができる

光がのぼると僕たちは露の玉にかわり、植物が飲んで成長する
しまいに、時を経て、また妖精として花から出てくるのさ

でも、花の中で眠っているとなにもかも忘れてしまう
それが地上のありとあらゆるものの身の上なのさ

マーヤはいちばん美しい人間を知りたいという願いを話す
花の妖精:おいで 君の願いを叶えてあげるよ



●妖精の旅
妖精:
僕たちが人間に姿を見せるのは夢の中だけだ
いつでも人間の夢は、その生活より美しい

ジャスミンの東屋で、月光の中抱き合っている男女を見せてくれる
マーヤ:私はいちばん素晴らしいものを見たのだ








●テントウムシのアロイス
マーヤは、自分の幸福や悲しみをともにしてくれるものが
この世に一人もいないと感じて悲しくなる

ナナホシテントウムシのアロイスは木じらみを食べる(!
「人間の指」という詩を聞かせるけれども、それほど感動しない



●盗賊の城
ムカデのヒエロニムスから、近くにクマバチの町があると聞いて
逃げようとしたが時遅く、襟を捕まえられる
針で刺しても、立派な鎧に通らず曲がってしまう!









生きたまま女王さまの所に連れていくと言われて、気を失い
気づくと、いろんな昆虫の死体のある牢屋に入れられている

壁ごしに女王と仲間が相談している声が聞こえる

女王:
日の出の1時間前にミツバチの町を不意打ちする
女王ヘレネ八世を生け捕りにしたものは騎士にとりたてる



●脱出
どうせ死ぬ運命なら勇ましく死のうと決心し
壁を噛み破り、外に出ようとしたところで番兵に見つかる
恐ろしさと同時に、強さ、美しさに感動する

番兵:どこにも悪いものといいものがいる







番兵が悲し気なのを見て、話を聞くと、友人シュヌックに捨てられて
二度と会えないと話し、居所を知っているマーヤは条件を出す
番兵:僕は自分の命より以上にシュヌックを愛している

居所を教えて、牢から逃げだし、全力で城に戻るマーヤ



●故郷
ミツバチ族は武装と防御の用意さえあれば優勢な敵と戦う力があるが
寝起きを襲われたら、女王は殺され、大勢の捕虜が出る

マーヤは番兵に合い言葉を言って入り
2人の侍女と副官を従えた女王に、明け方クマバチが襲撃することを伝える

女王は二言三言の命令を下し、マーヤを休ませる









●ミツバチとクマバチの戦い
敵の数は40

女王:
彼らの一人もふたたび故郷を見ることはあるまい(かっけー!
永遠の正義の名において、女王の名において国を守れ

厚いロウの壁で入り口を半分ふさぎ、1人ずつ中へ誘い込み
入り口をふさいで逃げ道をなくして、大勢で倒す作戦








軍勢が半分に減ると、裏切りがあって、ミツバチが備えていたと分かり
使者を送るが、女王は講和を断る

女王:
侵入した貴軍のものは戦死した
貴軍の約束をわれわれは信じない

クマバチ:
私たちは力は強いが、ミツバチ族は忠実で
裏切るようなミツバチは一人もいない
一人ひとりが、まず全体の幸福に仕えるのです

指揮官は引き上げるよう命令する
クマバチの死体は1つずつ草の上に投げ落とされ
死者を抱えて飛び去る

ミツバチは、お昼になると、またいつもの仕事を始める

マーヤは瀕死のクマバチに水をやろうとして断られる
敵も自分と同じ生き物であり、はかない命を愛していることを知る



●女王のお相手役
女王はマーヤを抱きしめ、どうやって敵の襲来を知ったのかを聞く
マーヤはこれまでの物語を話す

女王は妖精の詩に感動し、もう一度歌ってほしいと願う

すべての美しいものから
神さまの顔からも
神さまのつくられたものからも
流れ出るいぶきよ わたしの魂は


女王はマーヤに国家の繁栄のために経験を生かすよう言う

恩給の蜜を食べて老いの日を送っているカッサンドラの部屋も訪れ
若いミツバチたちには、冒険話を話して聞かせるマーヤ




解説








ワルデマル・ボンゼルス
1880年 西ドイツ最大の港町ハンブルク生まれ
父は医者 17歳で家を出て各国を旅して周った

1912年に本書を出して、世に知られるようになる
2年後、第一次世界大戦勃発
戦後、20か国に翻訳された

買ってきた昆虫を標本にするのではなく
じかに生きた自然に接することの尊さを描いた
72歳で死去

映画『みつばちマーヤの冒険』







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