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エッセイとショートショートと―あちこち話が飛びますが

スカスカの世界

2011-09-25 09:22:31 | 科学/考察
 
 竹輪やら薩摩揚げやら、七輪で焼きながら一杯やるのに丁度いい季節になった。
 山のようにあった枯れ枝や炭も、燃やせばほんの少しの灰が残るだけ。お釈迦様が言われた「色即是空」を感じる瞬間でもある。
 ただこの場合、炎によって光及び熱に変換されるとともに、水素や炭素が水蒸気または二酸化炭素になって空中に拡散してしまうのだから、かさが小さくなるのは当たり前といえば当たり前。

 物質を構成する原子は、原子核と電子とから成っている。電子は電子雲というもやっとした状態になっているものの、その内側は原子核があるだけ。原子の直径に対し原子核はその1万分の1、そして電子はさらにもっと小さいらしいから、原子1個の直径が100mとすると、原子核の大きさはわずか1cm、電子は、おそらく目に見えないはず。
 僕らが知っているこの世の物質は、素粒子レベルで見ればスカスカであると言っていい(だからニュートリノは星をも素通りするのか)。それが地球や月を形作り、生物を生み出している。不思議なことである。

 比率は全然違うけれども、これって野球やサッカーの球技場と選手の配置に似ている。球技場の大きさに比べ、9人にしろ11人にしろ、選手の大きさってのはごくわずか。しかしその間を抜けるヒットやドリブルというのはとても難しい。
 相手選手が有機的に動くからだが、選手の数が現状より多くても少なくても、きっと面白くないことだろう。長い歴史の中で、絶妙なバランスが編み出されたのだと思う。
 宇宙だって、銀河と銀河の間、星と星との間ってのは何もない、真空の状態である。ダークマターやダークエネルギーの正体がまだ良く分からないけれど、これがまあ、何かで埋まっていたとしてら、それはそれで、やりにくいと言うか、動きづらいに違いない。

 そうそう、ニュートリノが光より速く動くという実験結果が出たそうだ。その測定精度がどうかなと思っているが、もし真実ならば、特殊相対性理論が覆されるかもしれないし、素晴らしい大発見だ。
 たとえば裁縫のなみ縫いあるいは仮縫いみたいに、一部で別の宇宙を通っているとすれば、理屈は合うような気もするし〈虚数の質量〉の説明もつくような気がする。真空中で素粒子が発生したり消滅したりすることともつながるような。結局、この宇宙内での最速はやはり光なのかも。

 5年後10年後、これに限らずまったく新しい発見がされ、全然別の宇宙観が出来るのかもしれない。それはそれで、生きる楽しみなのである。
 

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ナンセンス スタヂアム 7

2011-09-18 09:00:43 | 言葉/ナンセンス
野球(やきゅう):ベースボール
蹴球(しゅうきゅう):サッカー
闘球(とうきゅう):ラグビー
鎧球(がいきゅう):アメリカンフットボール
排球(はいきゅう):バレーボール
籠球(ろうきゅう):バスケットボール
庭球(ていきゅう):テニス
卓球(たっきゅう):ピンポン
羽球(うきゅう):バドミントン
送球(そうきゅう):ハンドボール
投球(とうきゅう):ボウリング
孔球(こうきゅう):ゴルフ
避球(ひきゅう):ドッジボール
杖球(じょうきゅう):ホッケー
氷球(ひょうきゅう):アイスホッケー
水球(すいきゅう):ウォーターポロ
(ポロは「馬球」か)

柔道、剣道、弓道、合気道、空手、少林寺拳法。

茶道、華道、香道。



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酔うとなぜ美人に見えるのか

2011-09-11 08:52:18 | 科学/考察
 
 場所は大阪・道頓堀。
 朝、目が覚めると隣に女が寝ている。どうもゆうべの飲み屋で一緒になったあと、気が合って女の部屋に泊まったようだ。
 飲んでいる間は素敵な女性だと感じ、抱きたいと強く思ったものだが、少々二日酔いとはいえシラフでつくづく眺めると大したことはない。女が目を覚まさないうちに逃げ出そうかと…。

 これは僕の妄想の一つなのだが、このように、酔ったあげくどうでもいい(失礼!)女に手を出してしまった経験のある人もいるんじゃないかと思う。(僕は残念ながら、というか、ない)

 酒を飲むと、大脳皮質の方から麻痺していく。大脳辺縁系ほか中枢部が残るのは、生きていくために必要だから(呼吸なんかが止まると大変)。
 理性を司る皮質が痺れることにより、目の前の女性が美しいかどうか、素敵かどうかの判断が怪しくなる。と同時に、理性で抑えられていた肉欲が表に出てくるため、相手構わず口説いたりすることになる。

 最近の飲み会で、隣に座った女性と話し込んだはいいが、帰りにふっと消えられたことがある。女性なりの防衛本能だとは思うが、べつに口説くところまで酔ってはいなかったしそのつもりもなかったので、あまり気分のいいものではない。あまりに盾が強すぎるのも、攻める矛としては面白くも何ともない。

 話を戻すと。
 これはこれで、人類存続のためには必要なことだとも思える。大昔、いやつい昭和の初めくらいまでは、親や親戚の決めた相手と一緒にさせられ、飲めや歌えやの祝言のあと初夜を迎える、なんてことがままあったに違いない。
 それが今や上品になってしまって、相手を冷静すぎるほど冷静に眺め回すものだから、くっ付くものも付かなくなってしまったのだろうと思う。
 も一つは、テレビやネットの発達で、眼がぶくぶくに肥えてしまったこと。そしてこれまた画面や録画がきれいになり、美男美女にいつでも会えるというのもあるだろう。

 まあ、選ぶ方の立場である自分だって大したことねえや、って思えると、意外といい出会いが待っているのかもしれない。

〔冒頭の写真は「大阪おばちゃん特区」より勝手ながら拝借〕

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「遺言」

2011-09-04 09:29:19 | ショートショート
 ああ裕二か、よう来れたのう。仕事は大丈夫だったんか? …そうか、そりゃあ悪いことした。
 いやいや、このとおり元気じゃし、もう年じゃからいつ逝ってもいいと思うとるし、忙しいのに無理して来てもらわんでも良かったんじゃが、宏子がどうしてもちゅうてな。あいつもよう気が付く奴じゃからなあ。…母さんにも会いたいしの。

 …幼稚園に入るかどうか、お前がまだ小さい頃のことじゃった。熱出して、覚えとるかの、竹岡小児科に連れて行ったことがあっての。扁桃炎か何かじゃったと思うが、それはそれで大したことなく済んだんじゃがのう、竹岡の先生が「この子は他の子とはちょっと違う」とかいうことを言い出しての。
 何かというとすぐ癇癪起こすし、妙な理屈はこねるし気難しいし、扱いにくい子じゃとは感じとったが、男の子はこんなもんじゃろうとは思うとったのよ。

 まあ念のため、ということで検査を受けたところ、何ちゅうたかのう、知能は高いんじゃが何とかいう障害とかいうて、まともな成長は難しい、小学校も普通に行けるかどうかも分からん、と言われたもんよ。
 普通と思うとった自分の子が、突然「そうじゃない」と言われて、母さんともども、いや、母さんの方がショックは大きかったかのう、ほとほと困り果てたもんじゃ。

 …それでワシと母さんと、言葉は悪いが、ダメでもともと、うまく褒めて育てるしかないと考えたっちゅうわけじゃ。
 ちょっとしたことでも褒めて褒めて、「お前は賢い、将来大物になるぞ」とな。こうして頭なでつつ「お前は気が利くし、賢いのう賢いのう」とよう言われたことは、覚えとるとは思うがの。
 まあ病院での話や検査のことは、ワシと母さんしか知らないはずじゃが、和子や宏子はうすうす気付いとったかもしれん。悪いことしたような気もするがの。耕一もまあ、弟ばかりかわいがられて、気にはしとったかもしれんの。

 学校からの呼び出しも時々あって、そのつど母さんやワシが出向いて詫びたもんじゃ。じゃがそれも中学高校と進むにつれて少なくなり、母さんともども祈るような気持ちじゃった。もともと勉強はよう出来たから、先生もそううるさくはなかったしのう。
 お前も人間関係やら何やら、ずいぶん苦労したんじゃないか。…そりゃ、人は誰しも悩むもんじゃしのう。よう頑張ったなあ。

 優秀でなくてもいいから、せめてそこそこ人並みにはなってほしいと…それが今じゃどうじゃ、すっかり偉くなってしもうて。どういう仕事しとるのか未だによう分からんが、母さんの葬式には、何とかいう大臣の先生やら大学の先生やら、たくさん弔電や花輪が届いて、母さんも、きっと喜んどったことじゃろうて。
 何ちゅうたか、えらく立派な賞までもろうて、我が家の、いやこの村の誇りじゃと、母さんとことあるごとに話をしとったもんよ。

 まあ母さんとは、本人にはずっと言わずにおこう、ということにしといたんじゃが、今の裕二なら、何言うても大丈夫かと思うての。
 古い話じゃし、誤診ちゅうんか、何かの間違いじゃないかとも、今は思うとるんよ。

 …東京は、そうか、もう戻るんか。じゃあ、元気でな。良美さんと正太くんにも、よろしくな。うん、うん。


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