この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

【ラブリーボーン】、癒し系映画としては一級、しかし・・・。

2010-01-30 23:24:49 | 新作映画
 ピーター・ジャクソン監督、【ラブリーボーン】(135分)、1/30、ワーナー・マイカル・シネマズ筑紫野にて鑑賞。2010年6本目。


 想像ではあるが、この映画が作られた(そして原作小説が書かれた)目的は、愛する者を喪った遺族の魂の救済にあるのではないだろうか。
 亡き恋人が、子供が、父が、母が、映画で描かれているような天国から自分たちのことを見守っていてくれている、そう思うことによって、残された人たちはきっと救われるに違いない。
 そういった意味では本作は癒し系映画としては一級であるといえるだろう。
 
 しかし、映画【ラブリーボーン】のもう一つの側面、サスペンス映画として観ると、本作はお世辞にも褒められたものではない。
 サスペンスとして盛り上げるための展開があまりにも無理矢理すぎて、リアリティに欠けること甚だしいのだ。
 (以下ネタバレ)
 例えば、殺されたスージーの妹が殺人鬼の家に忍び込むシーンがある。
 忍び込むこと自体はいい。
 だが、彼女が忍び込むことを思いつくのは、クラブのランニングの途中、たまたま殺人鬼が出かけるのを見かけたからなのだ。
 思いつきで行動するのも程々にしろ、といいたくなる。
 忍び込むのであれば、事前にちゃんと計画を立てて、最低でも誰かに見張り役を頼んでからするべきだろう。

 お約束というか、案の定というか、殺人鬼は彼女が家の中を物色している最中に帰ってくるのだが、彼女は都合のいいことにスージーが殺されたことの決定的な証拠となるメモ帳を見つけ出し、ギリギリのところで逃げ出すのだ。ご都合主義バンザイ!!

 もちろん現実の世界でも思いつきの行動がよい結果を生むことはままある。
 だが、だからといって映画の中でも登場人物に思いつきで行動させて、それがギリギリのタイミングで結果オーライだったら、ご都合主義が鼻につくといわれても仕方ないだろう。

 また、リアリティのなさはこの後の殺人鬼の行動についてもいえる。
 スージーの妹に決定的な証拠を奪われた彼は、この期に及んでスージーの死体の入った金庫を処分しようとするのだ。
 今ごろになって何故???
 この段階で死体を処分しても意味があるとは思えない。
 それより何よりさっさと逃げることを最優先にするべきだろう。
 だいたい、その金庫は見た目200キロはあろうかというシロモノで(大の男が二人でようやく転がせる)、警察が来るまでの短時間に、そんな重いものをどうやって彼は地下室から持ち出し、車の荷台に載せたというのか?重機でもなければ到底不可能だろう。
 このときの殺人鬼の行動は心理的にも不可解だし、現実的には不可能である。
 リアリティがないといわれてもやはり仕方ない。

 ご都合主義が鼻について、リアリティが感じられなければ、これはもうサスペンス映画としては二級としかいえまい。
 癒し系映画として観に行く分には構わないけれど、サスペンス映画として期待して観に行くと本作は期待外れもいいところだろう。
 やはりピーター・ジャクソンが本領を発揮出来るのは、ファンタジー映画であり、アクション映画であるということを本作を鑑賞して再確認した。

 お気に入り度は★★☆、お薦め度は★★☆(★は五つで満点、☆は★の半分)です。
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