注意!本文は伊坂幸太郎著『残り全部バケーション』を読んでないと意味が分からない二次創作です。
といっても『残り~』を読んだ人が読んで面白いかどうかは定かではないです。
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「ブログを始めたんだよね。ケーキとか和菓子とか食べ歩きのブログなんだけど」
早坂沙希は突然切り出した。
岡田はケーキを頬張ったまま、フォークを持っていた手を止める。沙希は昔から本をよく読んでいるし、社交的な性格でもある。案外人気ブログになるのではないか、岡田はそう思う。
テーブルの上には沙希が買ってきた東京の有名店のケーキが所狭しと置かれている。そのケーキを一つずつ二人で分けて食べるのが今では半ば決まり事になっていた。
「でもさあ、なかなかアクセス数がアップしないんだよね」
そこで沙希は一旦言葉を切る。
「岡田さん、ブログの宣伝を頼めないかな?」
沙希の言葉に岡田は思わずむせそうになる。
「お、俺が沙希さんのブログの宣伝を?」
「そうだけど、もしかして嫌なのかな?」
「嫌というか、宣伝なんてやったことないし」
「宣伝っていってもそんな本格的なものじゃなくていいから。誰か知り合いの人に、お薦めの食べ歩きブログがありますよ、って紹介してくれればいいの」
そしたら、これまで以上にもっとブログにまじめに取り組めると思うんだよね、と沙希は言う。
「そう言われても俺にはブログを紹介するような知り合いはいないんだよ」
岡田が仙台で暮らすようになって半年が過ぎようとしている。そして今務めている焼肉店で働きだして三ヶ月が経つ。
けれど、秘密を抱える岡田はなかなか同僚と打ち解けることが出来ず、メールのやり取りをするような相手もいない。
「情けないなぁ。今どきメル友の一人もいないなんて。誰かいないの、メルアドを知ってる人」
「沙希さんも知ってるだろう、俺には元々友だちと呼べる人はほとんどいないし、携帯のアドレス帳も消されてしまったから」
岡田が毒島の元に連れて行かれる前に、毒島の部下に持ち物をすべて没収された。後になって財布と携帯電話は返されたものの、携帯電話の履歴とアドレス帳はすべて消去されていた。だから、もう溝口に連絡を取ることも出来ない。
「本当にいないの?メルアドを知ってる人。お世話になった人とか」
岡田は苦笑しながら答える。
「本当にいないんだよ。メルアドを知ってる人も、お世話になった人も…あ」
いた。現在、岡田が沙希以外で唯一メルアドを知っていて、世話になった、ともいえる人物が。
他でもない毒島である。
毒島は、困ったことがあればいつでも連絡してこい、と別れ際に一枚の名刺を渡してくれた。名刺には毒島の名前の他に電話番号とメールアドレスが記されている。
まさか実際毒島に連絡することになるとは思ってなかったが、それでも名刺は岡田の財布にしまってある。
「ねぇ、その人にさ、近況報告するついでに、お薦めの食べ歩きブログがありますよって宣伝してよ」
「そんな近況報告、聞いたことがないよ」
そう言いつつも、自分は毒島にメールをするのだろうな、と岡田は自覚する。誰かにメールを送ることを強制されるのは初めてというわけではない。
「何て書き出せばいいかな」
「こんなのはどう?あなたのおかげで甘いものをお腹一杯食べられるようになりました、ってのは?」
沙希が悪戯っ子のように笑う。
「そんな近況報告、聞いたことがないよ」
同じ台詞を繰り返しながら岡田は携帯電話を操作する。
といっても『残り~』を読んだ人が読んで面白いかどうかは定かではないです。
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「ブログを始めたんだよね。ケーキとか和菓子とか食べ歩きのブログなんだけど」
早坂沙希は突然切り出した。
岡田はケーキを頬張ったまま、フォークを持っていた手を止める。沙希は昔から本をよく読んでいるし、社交的な性格でもある。案外人気ブログになるのではないか、岡田はそう思う。
テーブルの上には沙希が買ってきた東京の有名店のケーキが所狭しと置かれている。そのケーキを一つずつ二人で分けて食べるのが今では半ば決まり事になっていた。
「でもさあ、なかなかアクセス数がアップしないんだよね」
そこで沙希は一旦言葉を切る。
「岡田さん、ブログの宣伝を頼めないかな?」
沙希の言葉に岡田は思わずむせそうになる。
「お、俺が沙希さんのブログの宣伝を?」
「そうだけど、もしかして嫌なのかな?」
「嫌というか、宣伝なんてやったことないし」
「宣伝っていってもそんな本格的なものじゃなくていいから。誰か知り合いの人に、お薦めの食べ歩きブログがありますよ、って紹介してくれればいいの」
そしたら、これまで以上にもっとブログにまじめに取り組めると思うんだよね、と沙希は言う。
「そう言われても俺にはブログを紹介するような知り合いはいないんだよ」
岡田が仙台で暮らすようになって半年が過ぎようとしている。そして今務めている焼肉店で働きだして三ヶ月が経つ。
けれど、秘密を抱える岡田はなかなか同僚と打ち解けることが出来ず、メールのやり取りをするような相手もいない。
「情けないなぁ。今どきメル友の一人もいないなんて。誰かいないの、メルアドを知ってる人」
「沙希さんも知ってるだろう、俺には元々友だちと呼べる人はほとんどいないし、携帯のアドレス帳も消されてしまったから」
岡田が毒島の元に連れて行かれる前に、毒島の部下に持ち物をすべて没収された。後になって財布と携帯電話は返されたものの、携帯電話の履歴とアドレス帳はすべて消去されていた。だから、もう溝口に連絡を取ることも出来ない。
「本当にいないの?メルアドを知ってる人。お世話になった人とか」
岡田は苦笑しながら答える。
「本当にいないんだよ。メルアドを知ってる人も、お世話になった人も…あ」
いた。現在、岡田が沙希以外で唯一メルアドを知っていて、世話になった、ともいえる人物が。
他でもない毒島である。
毒島は、困ったことがあればいつでも連絡してこい、と別れ際に一枚の名刺を渡してくれた。名刺には毒島の名前の他に電話番号とメールアドレスが記されている。
まさか実際毒島に連絡することになるとは思ってなかったが、それでも名刺は岡田の財布にしまってある。
「ねぇ、その人にさ、近況報告するついでに、お薦めの食べ歩きブログがありますよって宣伝してよ」
「そんな近況報告、聞いたことがないよ」
そう言いつつも、自分は毒島にメールをするのだろうな、と岡田は自覚する。誰かにメールを送ることを強制されるのは初めてというわけではない。
「何て書き出せばいいかな」
「こんなのはどう?あなたのおかげで甘いものをお腹一杯食べられるようになりました、ってのは?」
沙希が悪戯っ子のように笑う。
「そんな近況報告、聞いたことがないよ」
同じ台詞を繰り返しながら岡田は携帯電話を操作する。
(図書館予約待ち、ようやく順番回ってきそうです。)
はい、よろしくお願いします~。
上手く繋がっていればいいですけどね。笑。
もう誰の目にも触れることはないだろうと思っていたので、コメントを頂き、とても嬉しいです。
ところで確認ですが、Unknownさんは『ガタカ』の記事にコメントをしてくれた方とは別人なんですよね?
人物の特定が出来ないのはこちらとしては非常に困ることなので、次にコメントをするときはHNをちゃんと名乗ってもらえると助かります。