この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

傑作ではあるが、誰もが面白いと思うとは思わない『ダンケルク』。

2017-09-15 21:07:19 | 新作映画
 クリストファー・ノーラン監督、フィオン・ホワイトヘッド主演、『ダンケルク』、9/10、Tジョイ久留米にて鑑賞。2017年32本目。


 先日の記事でとある映画評論のことを取り上げました(【名作とされる古い映画を観て「面白くない」と感じるのはごく自然な反応だ 】)。
 その過激な物言いのせいか、映画ファンの間ではかなり否定的に捉えられていますが、自分はなるほど、と思いましたよ。
 要はどんな名作映画であれ、誰もが面白いと思うとは限らないってことですからね。考えてみれば当たり前のことです。
 同じことは傑作映画にも言えます。
 どんな傑作映画であれ、誰もが面白いと思うとは限らない。

 クリストファー・ノーランの最新作『ダンケルク』は傑作映画です。
 どこら辺が傑作なのか?
 この映画は第二次世界大戦下、フランス北部の港町ダンケルクに取り残された連合軍兵士たちの決死の脱出行を描いた作品です。陸、海、空の三つのパートに分けられ、(正確に測ったわけではありませんが)それぞれのパートに割かれる時間は30分程度で、最後の10分間に三つのパートが交錯する、そんな構成になっています。
 三つのパートに分けられ、その時間の長さが同じ30分であるなら、作中で流れる時間の早さも同じ、そう思うじゃないですか。
 これが違うんです。
 陸のパートでは一週間、同じく海では一日、空では一時間の出来事を描いているんです。
 自分のつたない言葉で伝えられたのかどうかはわかりかねますが、これってすごいことじゃないでしょうか?
 この構成を成立させただけでも『ダンケルク』は傑作だと言っていいと思います。

 『ダンケルク』は傑作だと言いました。
 ただし、誰もが面白いと思う映画だとは思いません。
 なぜかというとお話が恐ろしく淡々と進むのです。
 通常であればもっと感動的に盛り上げてもよさそうなシーンであっても、逆にショッキングなシーンであっても、ひたすら淡々と進みます。
 なので、この映画には主人公と呼べる人物はおらず、また各登場人物にも感情移入はしにくいです。

 けれどそれは意図的なものだと思います。
 なぜなら戦争って本来そういうものだから。
 戦争映画に主人公はいても、戦争に主人公はいないのです。
 ノーランは意図的に本作をそういう映画にした、そう思います。

 ですから、映画に感動や娯楽を求めている人には『ダンケルク』はあまり面白くはないでしょう。
 同じ戦争映画であれば、『ハクソー・リッジ』の方がよほどわかりやすく、娯楽作として楽しめます。
 しかし10年後、20年後、評価が高いのは『ダンケルク』の方ではないかと思うのです。

 『ダンケルク』、誰もが面白いと思うような映画ではないかもしれませんが、まごう事なき傑作映画です。


 お気に入り度★★★★、お薦め度★★★☆(★は五つで満点、☆は★の半分)です。
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