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食事指導はどれくらい有効なのか

2006年06月19日 | 循環器
健康診断でコレステロールが高いとか血糖が高いといわれると栄養士から日常の食事の内容を改善するために食事指導をうけることがありますが、それがどれくらい有効かという研究の結果が発表されました。

Low-fat dietary pattern and risk of cardiovascular disease: the Women's Health Initiative Randomized Controlled Dietary Modification Trial.
Journal of American Medical Association. 2006;295:655.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

1993年から1998年に調査対象とされた50歳から79歳までの閉経後の女性48,835人が、脂肪の摂取をカロリー換算で20%減らし野菜と果物を1日に5品以上摂取するように食事指導された指導群19,541人とそれまでと同様の食生活をしていただく非指導群29,294人にわけられ8年間調査されました。

アンケートの結果、指導群では脂肪摂取量は8.2%減少し、野菜と果物の摂取が1.1品/日増えたものの、悪玉のコレステロールであるLDLコレステロールは3.55md/dlしか減少せず、血圧も0.31mmHg低下しただけで、血糖値、善玉コレステロール、中性脂肪は変化しませんでした。その結果、心筋梗塞(危険率0.94)と脳卒中(危険率1.02)の発症率は低下しませんでした。

食事指導だけで食生活を変え心筋梗塞や脳卒中の発症率を低下させるのは難しいようです。

ところで、こんなユニークな論文もありました。

トランス脂肪酸とは、悪玉の脂肪で、脂肪の分子中の炭素と水素の結びつきに変化が生じたもので、炭素の二重結合の場所で炭素と水素の結びつきが正常な結合である蹄鉄型をしたシス結合と違い直線的なトランス型をしているためこう名付けられました。

脂肪酸は細胞膜の構成要素になっていますが、細胞膜の中にトランス型が紛れこむと細胞膜は弱くなり、その結果としてさまざまなトラブルを生ずるといわれています。トランス脂肪酸は、熱によって生じるので、溶剤抽出法による高温下の食用油製造過程や使い古しの天ぷら油にも生じます。

トランス脂肪酸は飽和脂肪酸と同様に悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らします。

Trans Fat Now Listed with Saturated Fat and Cholesterol on the Nutrition Facts Label.
The New England Journal of Medicine, 2006;354:1650.

世界のマクドナルドとケンタッキーフライドチキン(KFC)のフライドポテト(171g)とチキンナゲット(160g)に含まれるトランス脂肪酸の含量を調べた結果、デンマークとドイツでは1g未満と少ないのですが、ニューヨーク(マクドナルド)では10g、ハンガリー(KFC)では24gでした。マクドナルドの食品の場合、トランス脂肪の含量が最も高かった上位3カ所は、ニューヨーク、ペルー、アトランタで、KFCの食品の場合、最も高かった上位3カ所は、ハンガリー、ポーランド、およびペルーでニューヨークは8位でした。米国およびペルーのマクドナルドの店舗でフライドポテトの調理に使用されている油には、それぞれ23%および24%のトランス脂肪酸が含まれていたのに対して、多くの欧州諸国のフライドポテトに使用されている油にはトランス脂肪酸が約10%しか含まれておらず、5%(スペイン)および1%(デンマーク)とさらに低い国もあったそうです。

日本での結果がないのが残念ですが、ニューヨークではマクドナルドとケンタッキーフライドチキンの食品をあまり食べない方がよさそうです。

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