(日産自動車 自動車交通白書より) (厚生労働省 人口動態統計より)
女性ドライバーの交通事故
女性運転者による交通事故
↑
これは走行距離がわからないですけど。
自動車交通白書を見ると、どの年齢層をみても女性の自動車事故率は男性よりも少ないというグラフが載っています。(スペースの関係でこの記事には載せられませんでした)事故率というのはある年齢層の女性が起こした自動車事故の件数をその年齢層の女性の人数で割った数字でしょう。
ということは、女性の方が男性より自動車の運転が上手なのでしょうか?
これもまた、算数の得意な小学生(中学生でないと無理か?)ならすぐにわかることです。
免許を持っていて車を運転しなければ獲得できるゴールド免許を持っている人が、運転が上手とは限らない例を挙げるまでもなく、ここにはどれだけ(時間や距離)車を運転したかという情報が含まれていません。
(左図)をみると、どの年齢層でも、女性の運転する走行距離は男性の約3分の1であることがわかります。走行距離が少なければ事故が発生する確率は少なくなるのはあたりまえです。従って、運転が上手かどうかを判定するためには、事故の件数を走行距離で割り算しなくてはならないのです。
その結果が、(図中央)で、走行距離あたりの事故の件数(1億kmあたり)は、女性は男性の約1.5倍になっています。つまり男性の方が事故を起こしにくいといえます。
私はこの記事を、男性は女性より運転が上手ということが言いたくて書いているのではありません。これと同じ過ちをしている教授たちを研究会でよくみかけるのです。
悪玉コレステロールを下げる薬を販売する製薬会社の研究会に参加すると、「日本人の食事の欧米化にともなって、心筋梗塞や狭心症が増えています。今後ますます増えるでしょう。だから、悪玉コレステロールを下げる薬を飲みましょう」などと恐怖心を煽っています。
確かに、心筋梗塞や狭心症の発症件数を時代の経過とともにグラフにすると、右方上がりとなり、発症件数は増えています。
しかし、この統計処理は意味をなしていません。上記の例のように何かが足りないのです。
もうお気づきかと思いますが、それは、調査した母集団の数で割ることです。しかも大切な条件があります。赤ちゃんは絶対心筋梗塞や狭心症を起こしませんね。10歳以下の子どもも起こしません。20歳以下の青年も起こしません。つまり年齢層別に母集団数で割って補正することが大切です。
その結果が、(右図)です。スペースがないので男性だけ示しましたが、年齢別の人口で調整すると心筋梗塞や狭心症(グラフの中では虚血性心疾患)の死亡率は減っているのです。スペースの関係でグラフをお示しできませんが、発症率も同じです。
そりゃそうでしょう。これだけ世間でメタボ撲滅、生活習慣の改善とキャンペーンがはられているのですから、これで発症率が増えたら、逆に医者は何をしているんだとお叱りを受けることとなります。
つまり、心筋梗塞や狭心症の発症件数が時代とともに増えているのは、心筋梗塞や狭心症の好発年齢である高齢者の数が増えているからで、日本人が昔と比べて心筋梗塞や狭心症を発症しやすい体質になっているわけではないのです。
(厳密にいうと、福岡県の久山町研究では80歳以上の男性だけは心筋梗塞や狭心症を発症しやすい体質になっているそうです)
(日本内科学会雑誌 2009;98:234)
まだわかりにくいかもしれないので付け加えると、例えば政府の少子化対策が功を奏して、ある年に赤ちゃんの数が1.5倍になったとします。特発性発疹(知恵熱)という疾患は、ほとんどの赤ちゃんが1歳までに罹患して、しかも10歳以上で罹患することはありません。
この年か翌年には特発性発疹の発症は1.5倍になるのは当たり前のことですね。
このように原因→結果の順で考えると、とても簡単な論理なのですが、結果→原因の順で考えようとすると、上記の教授たちの間違いに騙されてしまうのです。
市民公開講座などで、「日本人の食事の欧米化にともなって、心筋梗塞や狭心症が増えています。今後ますます増えるでしょう。だから、悪玉コレステロールを下げる薬を飲みましょう」という教授はたくさんいます。要注意です。
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これは走行距離がわからないですけど。
自動車交通白書を見ると、どの年齢層をみても女性の自動車事故率は男性よりも少ないというグラフが載っています。(スペースの関係でこの記事には載せられませんでした)事故率というのはある年齢層の女性が起こした自動車事故の件数をその年齢層の女性の人数で割った数字でしょう。
ということは、女性の方が男性より自動車の運転が上手なのでしょうか?
これもまた、算数の得意な小学生(中学生でないと無理か?)ならすぐにわかることです。
免許を持っていて車を運転しなければ獲得できるゴールド免許を持っている人が、運転が上手とは限らない例を挙げるまでもなく、ここにはどれだけ(時間や距離)車を運転したかという情報が含まれていません。
(左図)をみると、どの年齢層でも、女性の運転する走行距離は男性の約3分の1であることがわかります。走行距離が少なければ事故が発生する確率は少なくなるのはあたりまえです。従って、運転が上手かどうかを判定するためには、事故の件数を走行距離で割り算しなくてはならないのです。
その結果が、(図中央)で、走行距離あたりの事故の件数(1億kmあたり)は、女性は男性の約1.5倍になっています。つまり男性の方が事故を起こしにくいといえます。
私はこの記事を、男性は女性より運転が上手ということが言いたくて書いているのではありません。これと同じ過ちをしている教授たちを研究会でよくみかけるのです。
悪玉コレステロールを下げる薬を販売する製薬会社の研究会に参加すると、「日本人の食事の欧米化にともなって、心筋梗塞や狭心症が増えています。今後ますます増えるでしょう。だから、悪玉コレステロールを下げる薬を飲みましょう」などと恐怖心を煽っています。
確かに、心筋梗塞や狭心症の発症件数を時代の経過とともにグラフにすると、右方上がりとなり、発症件数は増えています。
しかし、この統計処理は意味をなしていません。上記の例のように何かが足りないのです。
もうお気づきかと思いますが、それは、調査した母集団の数で割ることです。しかも大切な条件があります。赤ちゃんは絶対心筋梗塞や狭心症を起こしませんね。10歳以下の子どもも起こしません。20歳以下の青年も起こしません。つまり年齢層別に母集団数で割って補正することが大切です。
その結果が、(右図)です。スペースがないので男性だけ示しましたが、年齢別の人口で調整すると心筋梗塞や狭心症(グラフの中では虚血性心疾患)の死亡率は減っているのです。スペースの関係でグラフをお示しできませんが、発症率も同じです。
そりゃそうでしょう。これだけ世間でメタボ撲滅、生活習慣の改善とキャンペーンがはられているのですから、これで発症率が増えたら、逆に医者は何をしているんだとお叱りを受けることとなります。
つまり、心筋梗塞や狭心症の発症件数が時代とともに増えているのは、心筋梗塞や狭心症の好発年齢である高齢者の数が増えているからで、日本人が昔と比べて心筋梗塞や狭心症を発症しやすい体質になっているわけではないのです。
(厳密にいうと、福岡県の久山町研究では80歳以上の男性だけは心筋梗塞や狭心症を発症しやすい体質になっているそうです)
(日本内科学会雑誌 2009;98:234)
まだわかりにくいかもしれないので付け加えると、例えば政府の少子化対策が功を奏して、ある年に赤ちゃんの数が1.5倍になったとします。特発性発疹(知恵熱)という疾患は、ほとんどの赤ちゃんが1歳までに罹患して、しかも10歳以上で罹患することはありません。
この年か翌年には特発性発疹の発症は1.5倍になるのは当たり前のことですね。
このように原因→結果の順で考えると、とても簡単な論理なのですが、結果→原因の順で考えようとすると、上記の教授たちの間違いに騙されてしまうのです。
市民公開講座などで、「日本人の食事の欧米化にともなって、心筋梗塞や狭心症が増えています。今後ますます増えるでしょう。だから、悪玉コレステロールを下げる薬を飲みましょう」という教授はたくさんいます。要注意です。
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鋭い着眼点と分析にいつも感心しています
これからも有益な情報をよろしくお願いいたします
1990年代のデータですよ。
2016年最新のソニー損保のデータでは男性の年間走行距離平均約7000km、女性は約6000kmです。
よくトラック運転者やタクシー運転者は男性が多いから走行距離が多くなると主張する方がいますが、彼らは職業ドライバーです。事故なんか起こしたら会社の面子が潰れますし基本事故による損害は全額運転者負担なので最も厳しく指導されています。
事故が多いのは圧倒的に乗用自動車間で、警視庁のデータでは走行距離に関わらず人身事故はほぼ男性ドライバーが引き起こしています。
男性は調子に乗らずしっかりと現実を見てください。
詐欺にも近いような情報操作がある中、貴重なソースとなる記事でした!