3.11以後の日本

混迷する日本のゆくえを多面的に考える

with Corona の時代に 2   悲しすぎる声楽家のコロナ感染死

2020-06-13 16:44:22 | 新型コロナウイルス
今朝の毎日新聞に文京区に住む声楽家末芳枝先生がコロナで5月になくなっていたという記事を読んで悲しくなった。
//////////////////////////////////////////////////////////
2020.6.13 毎日新聞朝刊

東京都文京区のマンションで暮らしていた高齢の3姉妹が新型コロナウイルスに感染した。相次いで入院したが、病状はあっという間に悪化し、うち2人はわずか1週間ほどで帰らぬ人に。感染防止のため、最期の対面や火葬に立ち会うこともできなかった兄の末(すえ)利光さん(87)=甲府市=は2人の実名を明かした上、「どこにでもいる普通の姉妹がコロナに突然人生を断ち切られた。コロナの恐ろしさを少しでも身近に感じてほしい」と訴えた。 
      亡くなったのは、妹の貴久子さん(78)と芳枝さん(83)。2人は特に持病もなく、姉(90)を支えて3人で生活していた。 
     「この風邪はなんだか変だ。胸の下が妙に痛い」 
     最初に異変を感じたのは貴久子さんだった。4月10日に全身のだるさと喉の痛みがあり、翌11日に近くのクリニックを受診。数日後に別の親族に電話し、自らの症状とともに「芳枝さんも風邪を引いている」と伝えた。 
37度から38度台前半の熱が続いたため、貴久子さんは16日にクリニックに連絡し、保健所から指示された病院を17日に受診。そのまま入院し、その日のうちに容体が悪化して集中治療室に入った。芳枝さんも翌18日に入院。1人残された姉も同じ日に入院し、全員がコロナに感染していることが分かった。 
 「青天のへきれきとはこのことか」。利光さんらは8人きょうだいで、既に4人が他界。東京に行けば必ず3人のマンションに立ち寄っており、3月にも一緒に食卓を囲んだばかり。3人の感染を聞き、信じられない気持ちだった。 
     そばに駆け付けたいが、感染防止のため病院に向かうこともできない。入院して6日後の23日、病院から貴久子さんが亡くなったと連絡があった。本人とは言葉も交わせないままだった。 
     追い打ちをかけるように、芳枝さんも症状が悪化していった。その後、驚くほど弱々しい声で芳枝さんから電話があった。人工呼吸器をつけるかどうかの決断を迫られていると言い、こう続けた。「私には一生鍛えてきた歌い手の喉がある。このままの姿でいたい」 
     音大を出てウィーンに留学し、多くのリサイタルを開き、後進の育成にも力を注ぐなど声楽家として活躍してきた芳枝さん。「少しでも長く」と心では願った利光さんだったが、芳枝さんの覚悟に負け「お前の好きにしたらいい」と折れた。小さな声で「ありがとう」と聞こえたのが最後になった。芳枝さんも27日、息を引き取った。姉は回復し、PCR検査で2度陰性になった。 
   *********** 
     「電話のやりとりばかりで、亡くなった顔も見られない。どこか絵空事のようだった」と利光さん。死を実感したのは、遺品が入った段ボール箱が自宅に届いてからだった。感染リスクのため1カ月ほど待って開けたところ、芳枝さんの貫いた意志を示すかのように、白紙のままの人工呼吸療法の同意書が入っていた。 
///////////////////////////////////////////////////////////////////
末芳枝さんの死はさまざまな報道でもとりあげられている。
このVTRの中で芳枝さんが弱弱しい声で「一生、鍛えてきた歌手としての喉がある。喉だけは一生歌い続けた証拠として残したい。」と死の直前に話したというエピソードに感動し涙する。
末芳枝さんはウイーンに留学してリート歌手として後進の育成にも尽力してきたという。この記事とVTRを何度もみて涙がこぼれた。
人工呼吸器をあえて拒否した。それは最後まで声楽家であり続けたいという強い意志の表明だったのだろう。そこには声楽家たる矜持。喉をなくしたら私でなくなるという声楽家としての矜持。もし、人工呼吸器をつけても助からないかもしれない、だとしたら呼吸器をつけないで喉を最後まで大切にしてきた声楽家としての人生を生き抜きたいと考えたのではないか。死を前に一生を振り返り最後の決断をしたのだ。そう思うと、その強固なプロとしての最後の逝き方にただただ感動して涙が出る。
安らかに。
末芳枝さんのメゾソプラノの声を追悼して、
シューマンの女の愛と人生を聞こう(白井光子、ヘル)

 
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« With Corona の時代に 1 | トップ | with Corona の時代に 3 ... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (末門下)
2020-06-14 13:10:56
先生の記事を取り上げてくださり ありがとうございます。
もっと いろいろなことを教えていただきたかった。
先生を奪ったコロナウイルスが憎いです。
末先生のご冥福を心よりお祈り申しあげます。 (3.11以後の日本)
2020-06-16 11:09:22
コメントをお寄せくださいましてありがとうございます。本当に悲しい出来事で胸が痛みます。末先生のシューマン『女の愛と人生』を聞きたかったです。門下生としてどうぞご活躍なさってください。それが先生への最大の恩返しになるでしょう。リートのコンサートなどでもしかしたらお会いしているかもしれませんね。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

新型コロナウイルス」カテゴリの最新記事