風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

新緑の津軽ひとり旅 2-1(金木、五所川原)

2019-07-25 | 東北

1日目からの続きです。


● 弘前行きのホームは遠い

2日目。6時に起きると、前日とはうってかわって冷え冷えとした空気。
外は雨が降っていました。
一日中雨降り予報なので、遅めの出発にして、9:52の青森発奥羽本線に乗ります。
駅前のホテルに泊まっているので、電車に乗るにはとても便利ですが、弘前行きの電車は長~い駅の構内奥のホームから出るということを、忘れていました。


改札に入ってから思い出して、急ぎ足になります。
連絡通路の前方を歩くスーツ姿のビジネスマンが走り出したのを見て、私も小走りになります。
階段を下りてホームへ行こうとすると、下から車掌さんが見上げていました。
急いで降り、ビジネスマンに続いて電車に乗りこみます。
車掌さんはなおも階段の上を見て、乗客がもうこないと確認してから電車のドアを締め、定刻発車しました。

● 机上旅行を実行

今日は、昨夜調べておいたタイムテーブルに沿って動きます。
予定通りにいきますように。
かつて通った中学校に「机上旅行クラブ」があり、(机の上での旅行?どんなこと?)と思っていました。
多分、時刻表を見て、行程のプランニングをしていたんでしょうね。
(実際に旅行しないなんて、それ楽しいの?)とも思っていましたが、入ってみたらおもしろかっただろうな。
今になって、クラブ員になった気分です。

● りんご王国のアップル

向かいに座った女性がiPhoneを持っています。
りんご王国でアップル。あ、私もそうだわ。
ところで、アップル本社のあるアメリカ合衆国のりんごの名産地って、どこなんでしょう?
アップルパイが大好きな国民なので、りんごはあちこちで獲れそうですが。

調べてみたところ、ワシントン州だそうです。
ワシントンD.C.ではなく、シアトルがある西海岸の方。
日本の倍以上、全米の半分以上をりんご生産しているそう

う~ん、アメリカは王国というより、アップル帝国ですね!

● JR五能線

 

今日は弘前に行く途中で降りるので、うっかり寝過ごさないようにしないといけません。
10:32に川部駅で降りました。ここで10:39発のJR五能線に乗り換えます。
あまり時間がありませんが、小さな駅なので乗り換えはスイスイ。


大きな林檎冷蔵庫

この辺りもリンゴ畑が多いエリア。
車窓から大きな建物がいくつも見えます。みんなリンゴ関係の倉庫です。

● 「ふじ」の由来

藤崎駅のそばまできました。
倉庫の壁面に、大きく「ふじ発祥の地・ふじさき」と書いてあります。
えっ、そうなの?



「ふじ」といえば、リンゴの代名詞ともいえるスタンダード品種。
てっきり「富士山」からとった名前だと思っていましたが、「藤崎町」のりんごだから?
てことは、漢字にすると、「富士」じゃなくて「藤」?
なんか自分の中にあるふじのイメージが変わるわ~!

ただ、あとで母に聞いたところ「開発者が女優の山本富士子のファンだったからよ」とのこと。
え~、どれが本当なのかしら?

・・・Wikipediaには、その全てが命名理由だと書かれていました。
   「ふじ」は、富士で藤で富士子だったんですね~~。

● 板柳と力士


一面に広がるリンゴ畑の向こうには、岩木山。
昨日とは少し違う角度から眺めます。
この日は雨なので、雲が多く、あまりよく見えません。


板柳駅に着きました。ここもまたリンゴで有名な辺り。
そして、相撲の力士の故郷としても知られています。
夏にこの町に巡業に来るようです。
今でも板柳出身の力士はいるのかな。
・・・調べてみたら、「おとなのふりかけ」や「サントリー BOSS」のCMでおなじみのロボコップ、高見盛関の故郷でした!

● 津軽鉄道

11:08に、五能線の終点、五所川原駅に到着しました。
ホームの階段を上がったところに、アテンダントの女性が立っていました。
「津軽鉄道にお乗りの方はこちらです」との案内に従って、ホームを移動。
オレンジ色のかわいらしい一両電車が停まっていました。

名前はメロス号!
それだけで、テンションが上がります。


奥羽本線→五能線→津軽鉄道と乗り換えるにつれて、どんどんローカル電車味が増してきました。
乗車口では運転士と車掌さんがお出迎えしてくれます。
車内にアテンダントも同乗して、ガイドをしてくれます。
一両編成なのに、観光列車みたい。

そういえばこの鉄道、冬にはストーブ列車、夏には風鈴列車、秋には鈴虫列車になるんだっけ。
あ、観光列車だったわ。

11:13発。乗客は10名ほどで、即席ツアー電車のようなアットホームな雰囲気。
沿線で一番利用される駅だという金木周辺の地図を、希望者に配ってくれます。


青々とした田んぼの中を、電車はゴトゴト走ります。
晴れていたら、さぞきれいな光景だろうと思いますが、あいにくの雨。
それもあいまって、停まる駅はどこも味がありました。
ここまで雰囲気たっぷりの電車に乗る機会は、なかなかないでしょう。

● レトロな停車駅

ひとつめの「十川(とがわ)」は、津軽鉄道で一番小さい駅。
次の「五農校前」駅の、ひなびた駅舎に惹かれました。


津軽飯詰駅

学校の前という割には、辺りに大きな建物はなく、ただ田んぼが広がっています。
どうしよう、心のキレイな人にしか見えない高校なのかも。
(五農校ってなんだろう、第五農業高校かな)と思ったら、県立五所川原農林高等学校の略でした。
さすがにそんなに農業高校はありませんね!(テヘッ)
「津軽飯詰(つがるいいづめ)」駅には木造倉庫があり、渋さたっぷりです。


次の「毘沙門」は、「日本のかっこいい駅名ランキング」第1位に選ばれたことがあるんだとか。
そうなの?毘沙門堂がそばにあるからだろうと思いますが。

以前、無人駅の番組で、ここが取り上げられたことがあります。
利用する人がほとんどいない秘境駅ということで、なくなっているんじゃないかと思いましたが、まだあってほっとしました。


つつじのきれいな辺りを通ります


● 慎吾ペイント列車

次の「嘉瀬駅」は、吉幾三が15歳まで住んでいた故郷だとか。
えっ、あの人は金木の人間じゃないの?
もっと田舎出身だったのね。(失礼!)


駅前には、使われなくなった車両が一両置かれていました。
20年ほど前に『SMAP×SMAP』の特別企画で香取慎吾がペイントした「キャンバス列車」だそう。
おととし、慎吾ちゃんが再びここを訪れて、この車両を塗り直ししたそうです。
20年前に一緒に絵を描いた当時小学生だった地元のメンバーたちと再会して、一緒に協力して。
もう『SMAP×SMAP』はないため、その様子は今度は『おじゃMAP!!』で放映されたんだとか。

20年前の慎吾ちゃんは、日本一人気のアイドルだったので、予定を組むのも大変だったことでしょう。
聖地として、今でもファンがやって来るそうです。
全く知りませんでした。ジモティの吉幾三もがんばってー。


車両正面の顔は、ねぶたをイメージしているそう。
20年前は白塗りにしたそうですが、塗り直す時に「ねぶたといったら赤い顔のイメージだから」と、今度は半分赤にしたんだそう。
今でこそルーブル美術館で個展を開く慎吾ちゃんですが、20代の頃から、すでに美術の才能を見せていたんですね。

● 金木駅

そうこうしているうちに電車は11:40に金木駅に到着。
乗客のほとんどが降ります。
自分も降りたので確認しませんでしたが、もしかしたら全員降りたのかも。
アテンダントさんまで一緒に降り「私はここでUターンして、帰りの電車に乗ります」と言いました。
ここから先に乗っていく人は、乗客が減り、ガイドもいなくなって、急に寂しくなるでしょうね。

ここで車掌さんのタブレット交換を見守りました。

金木駅は津軽鉄道沿線で駅員が駐在する、貴重な3駅のうちの一つ。
でも駅員は一人体制だそうです。
 

かわいらしい駅舎の金木駅

駅の真向かいには、バーバーが一軒。
もう開店してはいないようですが、それにしてもレトロ~。
時代を感じさせます。



晴れていたらレンタサイクルで、隣駅の芦野公園まで足を伸ばす予定でしたが、雨が降っているので予定変更。
傘をさして、歩き出します。

● 太宰タウン

ここは太宰治の故郷。メロス坂を通っていきます。
道の途中には、あちこちに太宰の作品のワンシーンが掲示されています。
ファンにはたまらないでしょうね。


まちの記憶は太宰とともに


斜陽館の前に着きました。やはり巨大です。
周りの建物からも、ずばぬけて目立っています。

アテンダントさんは「斜陽館はとっても大きいので、帰りの電車に遅れないようにしてくださいね。
彼、想像以上のおぼっちゃまですから!」と、私たち乗客に念押ししていました。
今でいうと7~8億の資産価値のある建物だそうです。
たしかに、びっくりするほどおぼっちゃま。


斜陽館


以前、イトコのマミちゃんに、青森市内からここまでドライブで連れてきてもらったことがあります。
その時に中を見学しましたが、広くて迷いそうになりました。
この日も、観光バスで訪れた人たちで、結構混んでいるようでした。

今回は町並みを散策しようと、さらに先に進みます。
太宰が幼い頃によく乳母に連れられて訪れたという「雲祥寺」。
地獄絵図を見させられたそうですが、トラウマにならなかったのかしら?
その地獄絵図、今でも見学可(要予約)だそうです。
境内にある太宰が回した後生車を、私も回してきました。


雲祥寺の鐘楼門


太宰の母校、金木小学校の通学路にあるレンガ壁の「思い出広場」。
字は、彼の長女・津島園子さんによるもの。
太宰治の作品名のプレートが、レンガの壁に埋め込まれていました。


斜陽館の近くには、「津軽三味線会館」があります。
今でこそ全国に知られている津軽三味線ですが、世に広めたのは、三橋美智也なんだそう。
(えーっ、高橋竹山じゃないの?)と驚きます。
人気歌手だった三橋美智也は、三味線も弾けたんですね。
下積み時代には横浜の綱島温泉でボイラーマンをしていた人だと知っています。(浜っ子なので)

津軽三味線会館では、今月第一週目に大会が開かれたようでした。
あのピンと張り詰めた濃い音色が好きです。聴きに来たかったなあ。


オオデマリの花が満開でした

金木町では「斜陽館」がダントツで有名ですが、ほかに「太宰治疎開の家」もあります。
ここには又吉ほか、沢木耕太郎や角田光代といった有名作家が訪れたそう。


太宰治疎開の家

● 『人間失格』カステラサンド

ここで、地元クドウパンが太宰治生誕110年記念に出した『人間失格』カステラサンドと『津軽』林檎パンをゲットしました。
やったあ!
先月から販売され出したこのパン、青森に着いた時から探していましたが、昨日は見つけられなかったのです。
太宰ゆかりの地で見つけられたのも、嬉しいことです。


次の日曜日には、「走れメロスマラソン大会」が開かれるそうです。
なんていい名前!
せっかくなので、ギリシア風の、テルマエ・ロマエ的な格好で走ってもらいたいなあ。


● 段あり電話ボックス

雪国特有の公衆電話ボックスがありました。
ここでクエスチョン。わざわざ階段をつけているのはなぜでしょう?
正解は、冬に雪で埋もれてしまうから、底上げしているのでーす。
雪国の人じゃないと、わかりませんね。


底上げしてないと冬は使えない

● 帰りのメロス号

町を1時間ほど散策して、再び金木駅に戻りました。
単線の津軽鉄道ですが、金木駅の辺りだけ複線構造になっており、ここでタブレット交換を行います。


線路が並ぶ津軽鉄道はこの辺りだけ

上りと下りの電車がここで落ち合うのを待って、12:40の上り津軽鉄道に乗りました。
雨は、町を散策している間は小止みになっていましたが、電車に乗ったとたんに突然ザーッと大雨になりました。
傘も役に立たないほどのひどい降り方で、瞬く間に車窓の外が湿気で見えなくなりました。
ぬれねずみにならずにラッキーでした。


この1分後には大雨が


今度はアテンダントさんのいない普通の電車になって、黙々と走っていきます。
窓の外が見えないくらい雨が叩きつけているため、ガイドしてもらってもさっぱりわからなかったことでしょう。

● 五所川原駅

五所川原に戻った時には、13:06になっていました。
津軽列車の津軽五所川原駅は、JRの五所川原駅の一番端のホームを間借りしています。
改札がちょっとだけ違います。JR改札には駅員がいますが、津軽列車改札は無人です。


レトロ!

津軽鉄道推奨ソングに、杉良太郎の「ひとり旅」という歌が決まった』というポスターが貼ってありました。
あれ、ジモティの吉幾三はどうしたの?

● 立佞武多の館

ここまでは割とスムーズにこられましたが、次の五所川原発の電車は12:32。
1時間半近く時間があります。
駅から5分の「立佞武多(たちねぶた)の館」へ向かいました。
遠くからでも目立つ巨大な建物なので、すぐにわかります。


立佞武多の館

ねぶたに佞武多という漢字があるとは知りませんでしたが、この辺りでのみ使われる当て字だそうです。
かなり強い風が吹いており、いまにも傘があおられそう。
駅から建物まではそう遠くない道のりでしたが、風に負けないよう一歩一歩踏みしめながら、じりじりと前に進んでいきました。

初めて、本物の五所川原の立佞武多と向き合いました。
前に東京の丸ビルに展示されたものを見ましたが、あれはかなり小さいものだったと判明。

ここで見たものは、23メートルある巨大なもの。
あまりの迫力にあっけにとられて、口を開けて呆然としました。
このねぶたが襲いかかってきたら、まさに『進撃の巨人』状態。
"超大型巨人"と"獣の巨人"の間くらいの大きさですね。(わかりづらい説明!)


6階建てビルくらいの高さ!

青森ねぶたは見慣れていますが、あちらは横広でこちらは縦長。
立佞武多を復活させるにあたり、練り歩くルート周辺の家と接触しないよう、かなり配慮したとのことです。

この巨大な山車は、この館で制作されました。
そしてそのまま外に出せるように、壁がスライドする仕組みになっているそうです。
それでこんなに大きな建物なんですね。

● 赤~い林檎

併設しているカフェで「赤~いりんごソフトクリーム」を食べました。


これは世界的にも珍しい、果肉まですべてが赤いリンゴ。
五所川原でのみ栽培され、品種名は「御所川原」。ソフトクリームも、ほんのり赤色です。
一口食べると、甘酸っぱさが口いっぱいに広がります。
ただこれは、ソフトクリームではなく、厳密にはシャーベット。
肌寒い日だったので、ちょっと震えながら食べました。

外はあいかわらず雨が降っていましたが、傘をさしても意味を成さないほどの強風。


近くには「吉幾三コレクションミュージアム」がありました。
彼は金木から、五所川原まで勢力を伸ばしたんですね。
東京で有名になりましたからね。

● 「思ひ出」の蔵

駅からほど近い場所に、太宰治「思ひ出」の蔵もありました。
幼い頃の彼が母として慕った叔母キヱの家の蔵です。


「思ひ出」の蔵

今度の週末に開催される「走れメロスマラソン」のコースは、五所川原から金木まで。
立佞武多の館と金木小学校の間を走ります。
メロス気分になるにはいい季節ですね。

その2に続きます。



最新の画像もっと見る

post a comment