風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

みちのく津軽ひとり旅 4-2

2017-02-21 | 東北
その1からの続きです。

● 恐山霊場スパ

じっくりと地獄を周り終えました。なんだか肩の荷が落ちたような気がします。
お次は、木造の小さな湯小屋へと向かいます。

恐山は活火山。辺りに硫黄の香りが漂っているように、温泉が湧き出ており、入山者は入ることができます。
なんと無料で。

恐山で温泉なんて、意外な気がしますが、地表のあちこちから硫黄ガスが出ている場所ですからね。
掘っ立て小屋のような湯屋の木戸をガラガラと開けて、中に入ってみました。
浴槽が2つ並んでいる、シンプルな作り。
壁には、鍵のかかっていない大きな窓。
本当にスカスカで、見られるとなったらもう見られ放題。
さらに混浴もあるのです。煩悩を持って入ってはいけないということでしょうか。

(わざわざここまできて入湯しなくても・・・真夏だし)という逃げの気持ちがありますが、
(わざわざここまできたからこそ、入湯しよう)と気合を入れ直し、えいやっと、勇気を出して入ります。
この世のものならぬ霊魂が集う恐山でスッパダカになるのは、かなり勇気がいるものです。



● もう一人の単身女性

おちつかないシチュエーションに緊張しながら浴槽に身を沈めると、まろやかなとてもいいお湯でした。
湯の花も浮いています。
さすが、活火山の恵み。硫化水素含有酸性緑ばん泉という泉質だそうです。(むずかしー)
初めての霊場スパをドキドキ体験しているところに、もう一人女性がやってきました。
行きのバスで同じだった人です。

湯船につかりながら、二人でおしゃべりをしました。
仙台からきたとのことで、仙台のどこかと聞いたら「多賀城ってところです」
「私、住んでいたことがありますよ」
「え?いま高砂に住んでます」「私は鶴ヶ谷にいました」
「わー、なんて偶然!」
現多賀城人と元多賀城人が、地の果ての温泉で巡り合いました。

青森からフェリーで下北半島の脇野沢まで行き、そこからバスを乗り継いできたという彼女。
いいですね~。ドラマチックですね~。もうその冒険者ルートを聞いただけで、彼女のことが好きになっています。
そのフェリーが遅れて、バスに乗りそこねてしまい、真っ青になっていたら(田舎では1本バスを逃すと致命的)、地元の人が「バスに乗り遅れたんだな?じゃあバスに追いついてやるから、乗ってけ」と、車に乗せてバスを追い越してくれたそう。
こちらには暖かい人が多くて、ありがたいわ~。

まさか、恐山の温泉で、そんなくだけた話ができるとは思いませんでした。
つい話し込んでしまい、長めにお湯につかってしまったようです。
硫黄泉につかるのは、長くて10分ほどにしておくところを、その倍くらい入っていました。
う~ん、ちょっと頭がくらくらするから、少し湯冷まししなくちゃ。
その女性は、もう一つの温泉にも入るということで、そこで一旦お別れしました。

● 合掌...霊場アイス

すっかりほてほてにのぼせたので、さらに温泉に入る気にはなれず、外に出ます。
お寺の入口で売られている霊場アイスに引き寄せられていきました。



霊場アイスですよ!すごいネーミングですよね!
魂レベルで心底ひんやりしそう。
恐山に来たら、ぜひともこのアイスを試してみたかったんです。
だって、青森のチリンチリンアイスが大好きなんですもの~。
「(秋田の)ババヘラアイスですか?」と聞くと、盛ってくれたおばあちゃんは「似ているけれどちょっと違うよ」と言いました。



ブルーベリーとよもぎとバニラのミックス。変わった取り合わせですねえ。
まあ、健康そうだから、いっか。
横のベンチに座って食べていたら、呼び水になったのか買いに来る人が集まりだして、商売繁盛のおばあちゃん。
おいしかったです~。特にヨモギは、周りからも大好評。
温泉後のアイスなんて格別。
精進落としもできて、いつの間にか恐山をエンジョイ満喫しています。

アイスでひんやり涼んだところで、再び入山。
訪れた時よりも、雲が薄れてきれいな青空が見えてきました。
地獄巡りを済ませて温泉に入り、アイスを食べてスッキリした私の気持ちを反映しているようです。



● イタコはいない

恐山に行ったことがあると話すと「イタコに会った?」と必ず聞かれます。
全国レベルでイタコが有名なことに、内心ビックリ。
でもイタコは恐山にいつもいるわけではありません。
7月と10月のお祭りの数日間いるだけで、普段はいないのです。



裏山にある展望所に登ると、お寺の広い敷地が見渡せました。
恐山菩提寺の南直哉院代は、語る禅僧として知られています。
彼の著書を何冊か読んだことがあり、とても頭が切れる方だという印象。
下山中でなければ、きっとこの視界の中のどこかにいて、修行中なんでしょう。



● 恐山は畏れるところ

賽の河原一帯はには緑が何も生えていませんが、境内にはジャングルのように木々がうっそうと茂った場所もあります。



こちら側から見る宇曽利湖は、割と普通の顔。
(きれいだな)というくらいで、生死に絡むいろいろな感情は引き起こされません。



やはり賽の河原で地獄めぐりをした後、浄土ヶ浜から眺める宇曽利湖でないと、恐山の景色とは思えないのです。
人は非日常な光景を前に呆然とするために、ここまで来るのですから。



● 下界へのバス

お寺の敷地内にある龍神社をお参りしていたら、13時発の帰りのバスの時間が近づいてきました。
行きの乗客のほとんどがこの便に乗り込むため、バス停前で先ほどの女性とも再会。
バスの中では前後に座り、連絡先を交換し合いました。

バスは霊界の門を抜け、冷水の横を通り過ぎて、私たちを人里へと連れ戻してくれました。
下北駅に着いたところで、彼女とお別れ。ここからバスを乗り換えて、大間に向かうとのこと。
この日は大間でまぐろ祭りがあるそうで「30分くらいしかいられないけど、マグロを食べてきます!」とやっぱりパワフル。
「夜は八戸屋台村のみろく横丁で飲み明かします!」と楽しそう。
八戸といったら八食センターしか知りませんでしたが、ディープな場所があるんですね。

● てっぺんの終着駅

私はJRはまなすベイライン大湊線の下りに乗り、隣駅で終点の大湊駅まで行ってみました。



下北半島の終着駅。もうここから先に、線路はありません。



最果ての駅の周辺をちょっと見てみようと思ったわけですが、改札の外には、ここからの電車に乗ろうと大勢の人たちが行列を作って並んで待っていたため、私もその最後尾について、慌ただしく再乗車しました。
すっかり夏のいい天気。さっきまでの重苦しい雲は、どこへ消えたんでしょうね。



真っ白なドーム。なんだろう。
あとで調べたら、しもきた克雪ドームでした。



冬の大雪の季節には引きこもりがちになり、病気を多発する県民の運動不足に悩む青森。
ここはそれを解消する、全天候型のスポーツ施設でした。
雪見大福のような、雪苺娘のような、とにかくおいしそう~。(運動する気ナシ)

● 帰りの大湊線

折り返しは快速電車となり、混んでいました。
帰りも陸奥横浜で途中下車ができないかと調べてみましたが、大湊線は本数が少なく、次の電車が来るのは2時間後。
2時間そこで過ごせそうになかったため、通過します。



海は日光を受けてキラキラしていました。



うつらうつらしながら、ふと目を開けると、窓のところに蛾が迷い込んでいました。
普段なら(蛾だ!助けて~)と落ち着かなくなりますが、恐山から帰ってきた後では(生きとし生きるものは大切にしよう)という、だだっ広い気持ちになっており、あまり気になりませんでした。



そのうちに蛾は、どこかに行ってしまいました。



● 下北半島から津軽半島へ

再び野辺地で乗り換えて、青森に到着。まだ日は高いです。
もう少しどこかに行きたいなあと思い、今度は津軽線に乗って、終点の蟹田まで行ってみることにしました。

青森の電車は、ホームから一段高くなっています。
窓の外の景色を取ろうと夢中になっていると、いつも足元不注意となり、バランスを崩してガクッと落ちかけます。(学習能力がない)
雪が深いからでしょうか。足元ヒーターが床に入っているんでしょうか。



津軽半島の途中まで続く津軽線。
こちらも海沿いをゴトゴトと走って行くため、今度は先ほど大湊線で通ってきた下北半島の海岸線が見えました。
真っ青な海です。







途中「せへじ」という駅がありました。妙な響だなあと思ったら、漢字だと瀬辺地。
のへじ(野辺地)が野原近くの場所、せへじ(瀬辺地)は水の近くの場所、ということなんでしょう。

● 蟹田のカニ駅長

30分ほど揺られて、終点蟹田駅に着きました。



ここで7分ほど停車した後、電車は再び青森方面に折り返します。
一旦改札を抜けて、駅の待合室に行きました。

ここの駅は、名前つながりでカニさんが駅長をしていると聞いたので、会いたいと思ったのです。
和歌山のネコ駅長は話題になり、この前島原で鯉駅長のさっちゃんをみてきたところ。
ここは蟹駅長ね。
待合室に水槽があったので、(駅長室だわ)と寄って行きました。



が、そこにはカニではなく、カニのぬいぐるみがいました。
カニの駅長さん、津軽蟹夫は、その寿命を全うし、今は代わりにぬいぐるみを飾っているそうです。



また新しいカニ駅長を迎えればいいのに~。
近くの海辺で駅長を探せないのかしら?サワガニじゃだめなの?

● 風の町



太宰治が小説『津軽』の中で、「風が通り抜ける町」と表現した町。
ロマンチックですが、確かに風が通ります。だって海がそばですから。
夏は涼しいのですが、冬は雪が舞って、しばれるでしょうね。



NY・ローマと肩を並べるとは、蟹田もなかなか大胆ですね。
青森のぶどう、スチューベンの売り文句「NY生まれ、青森育ち」も、結構ツボです。
青森人は、意外に大都会好き?

7分後に発車した上り電車に乗り、再び津軽湾を眺めながら揺られていきます。
18時過ぎに青森に到着。この日の移動はこれでおしまい。

● ワンミッションクリア

ホテルの部屋に戻ると、どっと疲れが押し寄せて、ベッドに伸びたきり、しばらく動けませんでした。
念願の恐山を無事にお参りすることができて、すっきり満足。達成感があります。
ただ、予想していたよりもはるかにパワーのいる場所で、滞在中は土地の雰囲気に圧倒されっぱなしでした。
5日目に続きます。



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