長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

検証・ニャニャニャの猫娘ヒストリー ~『ゲゲゲの鬼太郎』サーガより~ 「ニャー」の章

2010年12月02日 23時03分29秒 | ゲゲゲの鬼太郎その愛
 どうもこんばんは、そうだいです。なんか私の町では、夜中の今ごろになって大雨が降りだしてきました。そういや、雨は久しぶりだなぁ。

 いやぁ、今年も暮れが近づいてきましたねぇ。流行語大賞も発表されました。今年の大賞は、「ゲゲゲの」!

 え? ゲゲゲの……?

 流行語って、ちまたで会話にしょっちゅう使われるくらいに流行した言葉のことじゃないの? 「ゲゲゲの」なんて私のまわりでは、私しか使ってる人は見たことがありませんよ。それも作品のタイトルとしてですからねぇ。
 いや、注目されるのは喜ばしいことですよ。でも納得いかないなぁ。そんなに水木しげる先生関連を持ち上げるんなら、流行語大賞なんてのはいらないから、去年にあんなに好評だったのに打ち切りになったアニメ第5期版『ゲゲゲの鬼太郎』を再開させろと、私は声を大にしてシャウトしたい! 青野武カムバ~ッック。

 つうことで、今回はいよいよ、原作マンガでのゲストキャラからスタートして、21世紀には鬼太郎どころか日本中の純粋な男子どもを蠱惑する大妖怪に成長してしまった猫娘ヒストリーの最終回です。いよいよ彼女のサクセスストーリーが始まる!

 お話は1985年、フジテレビで第2期からかぞえて13年ぶりに『ゲゲゲの鬼太郎』の新作アニメ(第3期)が制作・放映されたことにはじまります。
 時あたかも、バブルはなやかなりし昭和末期! なにからなにまで景気の良かったこの時代に作られた「鬼太郎」もまた、原作のワビサビなんかなんのそののバトルヒーローアニメになっちゃった!
 この第3期の鬼太郎の声をつとめたのは、現在では女優としても有名な戸田恵子アネゴ。もうひとつの戸田ヒーロー「アンパンマン」にも通じる情熱的な熱い演技は、そのまんま第3期のテイストを象徴するものになりました。
 第3期の『ゲゲゲの鬼太郎』に、「なんとなく解決」という言葉は存在しません。悪い妖怪は必ず鬼太郎に滅ぼされ、悪い人間も必ず鬼太郎に罰せられる。悪、即、オカリナムチ!
 熱血だなぁ! とてもちょっと前まで、小学生のくせにタバコをバカスカ吸っていたとは思えないような豹変ぶり。妖怪ポストに送られてきた全国の少年少女からの被害届をもとに、日本中の妖怪退治に奔走する勤勉っぷり。
 一方、そんなマッチョ鬼太郎に対抗すべく、悪者妖怪の方も「多くの悪事を裏からあやつっている悪の大ボス」ポジションのキャラクターが設定されます。それが、妖怪の総大将ぬらりひょんサマ! 演ずるはシブい悪役を演じさせたら天下一品の名優・青野武!! キャ~。
 正義の鬼太郎VS悪の妖怪。このわかりやすさがおおいにウケて、第3期『ゲゲゲの鬼太郎』は平均視聴率20%台、4年にわたって全115話が放映される空前の大ヒットシリーズとなったのです。

 そして! そういうヒーローものに欠かせないのが、闘いに疲れたヒーローをいやす存在となる可憐なヒロインなわけでして……おおっ、ということは、第3期「鬼太郎」のヒロインの座についたのは~っ!?

 第3期『ゲゲゲの鬼太郎』オリジナルの美少女キャラクター・天童ユメコちゃん(真人間)。

 あらァ!? 猫娘は~!?
 はい、第3期の猫娘は、鬼太郎にほのかな好意を寄せながらも、いっつもいいところをユメコちゃんにもってかれてしまうコメディエンヌ的な役割のレギュラーになっていたのです(声・三田ゆう子)。
 ユメコちゃんは小学生にしてはずいぶんと落ち着いた女の子なんですが、ただの人間なので妖怪に襲われるとすぐにピンチにおちいり、それを鬼太郎が必ず救ってくれるというのがいつものパターン。
 対して猫娘は、中途半端に半妖怪であるためにある程度はひとりでなんとか切り抜けられるため、いつも鬼太郎とユメコちゃんの接近を歯がみして見つめることになってしまいます。
 多少のさみしさはあるのでしょうが、設定上も身長が原作より10cmほどのびた(146~152cm)猫娘は、カラッとした性格の陽気なお姉さんキャラに成長していました。第3期「鬼太郎」が水木しげるテイストの重力から脱して新境地をきり開いたように、猫娘もまた原作時代の暗雲を吹き飛ばす新たな局面をむかえることに成功したのです。ふっきれたねぇ!
 ただし、ファッションは『マガジン』版原作をもとにしたものとなっていて、白ブラウスに赤いジャンスカ(吊りスカートよりも布地が大きい)、そしてオカッパ頭にはスカートにあわせて赤いリボンが。
 要するに、第3期の猫娘はヒロインの座をねらうという大勝負はいったんさけておいて、まずレギュラーキャラクターとしての自分のポジションの地固めに徹するという堅実な手段を選択したのです。この徳川家康のような作戦が、のちに21世紀になってあれほどの大輪の花を咲かせることになろうとは。
 ともあれ、1980年代の猫娘は決して「美少女」ではなかったものの、「猫娘ここにあり。」という存在感を充分にアピールし、遅ればせながら鬼太郎ファミリーの仲間入りに成功したのです。

 そして第3期の成功を基盤として、猫娘はいよいよヒロインの座の獲得に乗り出します。

 1996年。おりからの京極夏彦の妖怪小説ブームや、ジャンプの妖怪エロギャグマンガ『地獄先生ぬ~べ~』のヒットに後押しされるかのように、そして、あまりにも水木イズムから逸脱しすぎてしまっていた第3期の反動として、原点回帰した正統派決定版が見たいという要望にこたえて、アニメ第4期版『ゲゲゲの鬼太郎』の放送が開始されます。
 第4期の鬼太郎は、第3期の鬼太郎とはうってかわって、ひょうひょうと人間と妖怪のあいだを行き来して両者の調停をはたす正体不明の少年といった、原作のイメージに近い役割を演じています(声・松岡洋子)。
 人間と衝突する妖怪の側もまた、完全な悪役に徹するものはほとんどおらず、生き方の違いによってやむなく危害を加えてしまっているという解釈もなされるようになりました。また、どこか憎めないおっちょこちょいなところがあるところも、原作の味わいを色濃く反映させています。
 そういった水木テイストが最新のデジタル技術によって色彩ゆたかに平成の世に復活していき、第4期もまた、3年にわたって全114話が制作される傑作シリーズとなりました。

 しかし! そんな原点回帰をスローガンにかかげた第4期の中でも、猫娘だけは! 原作なんかにもどる気はさらさらねぇ!とばかりにおのれのキャラクターを貪欲に成長させていきました。
 当初、第4期にも人間の女の子・村上祐子というレギュラーキャラがいたのですが、前シリーズのユメコちゃんほどヒロイン然としていない普通の小学生だった祐子ちゃんは、原作通りに人間の幼女にいっさい興味をしめさない鬼太郎に飽きたのか、シリーズ中盤から登場しなくなってしまいます。その空いたヒロインの座を奪い取ったのが、他ならぬ猫娘(声・西村ちなみ)!
 第4期の猫娘は、第3期よりもチビッと子どもっぽくなっており(設定身長141cm・原作よりは大きい)、服装はだいたい前作を継承しているものの髪の毛も含めて紫がかった色彩で、顔つきもふだんから猫っぽくなっています。妖怪らしさが強調されているんですが、それでいてかわいい。
 第3期ではサバサバした印象もあった猫娘ですが、第4期ではかなりナイーブなところも見せる少女になっていました。期は熟した!

 なにかと第5期アニメ(2007~2009年)の萌え萌え猫娘が、ヒロインとしての彼女のピークなんではないかと思われがちなんですが、私としては、この第4期シリーズの第89話「髪の毛地獄!ラクシャサ」における猫娘の活躍が、その後のヒロインとしての不動の人気を得る上で絶対に欠かすことのできないキャリアになったと考えています。第4期のこのエピソードによって、猫娘は最後の王手をうったのです。

 タイトル通り、第89話の敵妖怪は、なにかと人間の味方をする鬼太郎を抹殺するためにはるばるインドからやってきた悪鬼ラクシャサ(羅刹 声はあの塩沢兼人!)です。ラクシャサはあらゆるものに自在に変形できる自分の髪の毛を利用して鬼太郎ファミリーを各個撃破していくのですが、肝心の鬼太郎を倒すために利用したのがわれらが猫娘ちゃんだったのです。
 ラクシャサは鬼太郎に淡い恋心をいだいていた猫娘につけこみ、猫娘を妖艶な大人の美女に変身させる代償として、猫娘の心をコントロールして鬼太郎を誘惑させたのです。陰険!
 自分は子どもだから鬼太郎に関心を持たれない、だから大人の女になれば愛されるにちがいないと思った猫娘だったのですが、突然大人になった猫娘から発せられる異様な妖気にただならぬものを感じた鬼太郎は、裏に猫娘の恋心を利用した卑劣な悪意があることを見抜くのでした。
 結局、ラクシャサが退治されたことによって猫娘ももとの子どもに戻ったのですが、この事件で猫娘は、鬼太郎の名パートナーでありながら、その位置にとどまってそれ以上進展しない関係に常に不満を持っているという複雑な心情を見事に表現することに成功したのです。鬼太郎もほんっとに罪な男だねぇ!
 エピソードのラストで川辺に座り込み、はからずもラクシャサの奸計にのせられてしまったことに落ち込んでいた猫娘に鬼太郎が持ってきたのは、2人ぶんのソフトクリームでした。やっぱり子ども……
 鬼太郎といっしょにソフトクリームを食べる猫娘。この時、彼女の心に去来したものはなにか。永遠にみのらない想いへのあきらめ? それとも、それでもそれをつらぬき続ける決心?
 とにかく、第3期でレギュラーメンバーであることの自信をつけた猫娘は、ついにこの第4期で、鬼太郎のヒロインの座を誰にも明け渡さないという覚悟を決めるにいたったのでした。

 さあ、もうこのあとの猫娘の活躍はみなさんのご記憶にも新しいでしょう。
 21世紀になってはじめてのシリーズ、第3期をほうふつとさせるバトルヒーローものの流れを復活させた第5期アニメ版で、猫娘は他の追随を許さない唯一無二のヒロインに変身します(声・今野宏美)。 
 キャンギャル、映画撮影のエキストラ、警備員、ラーメン屋、チラシくばり、写真雑誌の素人モデル、ファーストフード店ウェイトレス、バスガイド……
 人間社会の勉強のためなのかただ単に生計をたてるためなのか、第5期の猫娘はかなりの勢いでそれらのアルバイトをバリバリこなし、人間社会に順応した器用さを見せつけてくれます。
 容姿は、凶暴化しないかぎりはいたって普通の美少女キャラ。体格も中学生くらいには成長していて歴代でもっともマセた印象。髪型ももはやオカッパであるはずもなくショートカット。
 特別な目的での変装以外ではまったく服装のかわらなかった以前とはうってかわって、アルバイトのかせぎの多くをファッションにあてているのか、新世紀の猫娘はファッションも季節の変化にあわせてノースリーブワンピ、サロペットスカート、バフスリーブドレス、カーディガン、ダウンジャケット、セーターとまさに現代風。とにかくヒロインとしては合格点以上のサービス精神を毎回毎回発揮してくれました。

 ただ、水をさすようなんですが、あくまで原作の味わいが好きな私にとっては、そんな第5期のノリはちょっと……だって、もう妖怪じゃないじゃん! 普通の女の子じゃん。

 さて、このように原作者・水木しげるの思惑を超えて、アニメという新天地の中でしたたかに成長した猫娘だったのですが、キャラクターソング、フィギュア、温泉入浴ピンナップ、水着ピンナップ、同人誌のネタにされる……あらかた、最近のアニメヒロインがやりそうな仕事はやっちゃいましたね。
 だいたい第5期アニメも100話やったとはいえ、ずいぶんと尻切れトンボな終わり方をしたのでまずその続きが制作再開されてもおかしくない気運なのですが、念願かなって不動のヒロインの座を手にした猫娘、これからいったいどこへ行く?

 おおいに気になるところなんですが、まずは次の登場まで、他の鬼太郎ファミリーともども充分に休養をとっていただきたいと思います。
 特に、目玉の親父さん。第5期の八面六臂の大活躍はお疲れさまでした。40年間がんばってきた分も、ゆっくり休んでください。本当にありがとうございました!

 鬼太郎ファミリーよ、永遠なれ~!! そしてニャニャニャの猫娘の前途に、幸多からんことを~!!


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2 コメント

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研究ご熱心ですね (雪風)
2011-04-02 09:06:49
はじめまして
鬼太郎+猫娘の歴史、わかりやすくご説明されて感服しました。
わたくしも妖怪好きです。
で、妖怪じみた周囲の人をモデルに妖怪絵を描くのはもっと好きであります。
Unknown (そうだい)
2011-04-02 12:32:57
 どうもはじめまして! コメント、まことにありがとうございます。
 うれしいなぁ、ついに私のブログも戦闘妖精様からお言葉をいただけるようになったとは!

 『ゲゲゲの鬼太郎』の「猫娘」というキャラクターの、特定の作者のいない不思議な浮遊感が本当に好きでして。時代にあわせて変わるところはどんどん変わる、それなのにどの猫娘も魅力的であるっつうのが気になったので自分なりにまとめてみたんですよ。まさに妖怪らしい時代の超えかたですよね。

 雪風さんの妖怪絵、見てみたいですねぇ! どこか見られる場があったら、ぜひとも教えてくださ~い。

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