長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

令和も負けるな! 山口敏太郎の妖怪百科

2023年06月25日 21時02分44秒 | ゲゲゲの鬼太郎その愛
※この記事では、水木しげるの妖怪図鑑18作の中で採り上げられた妖怪をリストアップした過去記事と同様に、山口敏太郎の著した妖怪百科で採り上げられた妖怪をリストアップしています。妖怪の名前の後に続く数字は、水木しげる作品での掲載回数に山口版での掲載回数を加算した本数です(表記の無いものは山口版1作のみでの掲載)。

参考資料
『大迫力!日本の妖怪大百科』       2014年 西東社
『大迫力!日本の妖怪大百科 セレクト版』 2022年 大創出版


赤えい 8
あかなめ 11
足長手長(手長足長) 8
小豆洗い / 小豆とぎ 12
天邪鬼(あまのじゃく) 8
網切り 11
雨降り小僧 9
磯撫で 6
一目連 7
一反木綿 11
一本ダタラ 7
牛鬼(うしおに ぎゅうき) 12
産女(うぶめ 姑獲鳥) 5
海坊主 9
応声虫 2
大首 4
お菊虫 5
長壁姫 7
オッパショ石 6
おとろし(おどろおどろ) 9
お歯黒べったり 8
帰ってくる生き人形
元興寺(がごぜ) 5
傘化け 7
火車 10
がしゃどくろ 10
河童 13
桂男 2
蟹坊主 5
鎌鼬(かまいたち) 9
髪切り 6
川男 7
岸涯小僧(がんぎこぞう) 11
キジムナー 12
九尾の狐 10
九頭龍
件(くだん) 2
ケサランパサラン
けらけら女 5
ケンモン(ケンムン) 6
小袖の手 6
コックリさん 2
児啼き爺 9
ゴム男
コロポックル 10
座敷童子(ざしきわらし) 9
さとり(覚) 8
三吉鬼 3
酒呑童子
朱の盤 6
精螻蛄(しょうけら) 8
猩々
絡新婦(じょろうぐも) 2
人面犬 4
すきま女
砂かけ婆 9
だいだらぼっち 2
タンコロリン(タンタンコロリン) 9
小さいおっさん
ちょうなつぽろ
土蜘蛛 8
恙虫(つつがむし) 2
釣瓶落とし(釣瓶下ろし) 10
手の目(手目坊主) 8
寺つつき(物部守屋の怨霊) 2
貂(てん) 4
天狗 4
天井なめ 10
豆腐小僧 8
百々目鬼(どどめき) 10
泥田坊 10
浪小僧 6
人魚 8
鵺(ぬえ) 9
ぬっぺふほふ / ぬっぺらぼう 11
ぬらりひょん 12
塗り壁 9
塗り仏 3
濡れ女 9
猫又 9
祢々子河童(ねねこがっぱ) 4
寝肥り(ねぶとり) 5
野槌 7
野鉄砲
花子さん 4
ひだる神 6
一つ目坊(一つ目の大坊主、目一つ坊) 5
百鬼夜行 2
100キロババア
ひょうすべ(ひょうすえ) 10
貧乏神 9
二口女 10
船幽霊 7
震々(ぶるぶる) 9
べとべとさん 11
頬撫で 2
舞首 6
枕返し 9
豆狸 7
見上げ入道(見越入道) 8
宮ホーホー
魍魎 10
夜行さん 10
屋島の禿狸 3
山男 7
八岐大蛇 3
山地乳(やまちち) 3
幽谷響(やまびこ) 6
山童(やまわろ) 12
山婆(山姥 やまんば、やまうば) 7
幽霊 3
雪女 9
雷獣 8
龍 2
飛頭蛮(ろくろくび) 7
輪入道 10


≪特別ふろく 妖怪百科20タイトルで集計しました! 日本の妖怪知名度ランキング≫
〇堂々の第1位!!掲載回数13回
河童
〇惜しかった!!第2位 掲載回数12回
小豆洗い(小豆とぎ)、牛鬼、川獺、キジムナー、土転び、ぬらりひょん、山童
〇掲載回数11回
あかなめ、網切り、一反木綿、川赤子、岸涯小僧、縊鬼、すねこすり、ぬっぺふほふ、べとべとさん
〇掲載回数10回
煙々羅、火車、がしゃどくろ、九尾の狐、毛羽毛現、コロポックル、水虎、釣瓶落とし、天井なめ、百々目鬼、泥田坊、ひょうすべ、二口女、魍魎、夜行さん、輪入道
・掲載回数9回
油すまし、雨降り小僧、海坊主、うわん、雲外鏡、おとろし、鎌鼬、児啼き爺、座敷童子、しろうねり、砂かけ婆、タンコロリン、鵺、塗り壁、濡れ女、猫又、のびあがり、ひでり神、貧乏神、ぶるぶる、枕返し、家鳴り、雪女、呼子
・掲載回数8回
赤えい、赤舌、足長手長(手長足長)、天邪鬼、あまめはぎ、磯女、姥火、海女房、大かむろ、お歯黒べったり、加牟波理入道、さざえ鬼、さとり、しょうけら、土蜘蛛、手の目、天井さがり、豆腐小僧、人魚、白蔵主、隠神刑部狸、一つ目小僧、吹き消し婆、万年竹、見上げ入道(見越入道)、山爺、雷獣
・掲載回数7回
足まがり、あやかし、一目連、一本ダタラ、長壁姫、白粉婆、餓鬼、傘化け、烏天狗、川男、古庫裏婆、さがり、山精、樹木子、白坊主、野槌、獏、火取り魔、百目、船幽霊、箒神、豆狸、目々連、百々爺、山男、山姥、ろくろくび
・掲載回数6回
油赤子、磯撫で、後ろ神、笈の化け物、大入道、オッパショ石、朧車、陰摩羅鬼、金霊、髪切り、狐火、首かじり、ケンモン、小袖の手、木霊、木葉天狗、蛇骨婆、朱の盤、みずち、人面樹、袖引き小僧、高女、たたりもっけ、手洗い鬼、浪小僧、野寺坊、のぶすま、化け草履、びしゃがつく、ひだる神、日和坊、骨女、舞首、百足、やまびこ、遣ろか水
・掲載回数5回
小豆はかり、一目入道、いやみ、岩魚坊主、うぶめ、海和尚、海座頭、お菊虫、餓鬼憑き、影女、元興寺、蟹坊主、竈神、紙舞、ガラッパ、狂骨、倉ぼっこ、けらけら女、小右衛門火、こそこそ岩、五徳猫、逆柱、皿数え、しばかき、すっぽんの幽霊、セコ、算盤坊主、竹切狸、畳叩き、狸囃子、提灯小僧、つちのこ、釣瓶火、鉄鼠、てっち、天火、沼御前、塗り坊、ぬるぬる坊主、寝肥り、一つ目入道、一つ目坊、狒々、火間虫入道、風狸、ふらり火、古杣、松の精霊、蓑火、柳婆、山鬼、山女、わいら、渡り柄杓
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志村でも小沢でもなく、左卜全が全てをかっさらっていった ~映画『醜聞(スキャンダル)』~

2023年06月10日 00時42分29秒 | ふつうじゃない映画
映画『醜聞(スキャンダル)』(1950年4月公開 105分 松竹)
 映画『醜聞(スキャンダル)』は、松竹製作・配給の日本映画。モノクロ、スタンダード。
 東宝争議のため東宝での映画製作を断念し、他社で作品を撮っていた黒澤監督の、初の松竹作品である。過剰なジャーナリズムが引き起こす問題を描いた社会派ドラマ。当時、無責任なマスコミの言論の悪質性を不愉快に思っていた黒澤が、電車の雑誌広告のセンセーショナルな見出しをヒントに製作した。第24回キネマ旬報ベスト・テン第6位。

あらすじ
 新進画家の青江一郎は、オートバイを飛ばして伊豆地方の山々を描きに来ていた。そこに人気声楽家の西條美也子が現れ、宿が同じだと分かると、美也子を後ろに乗せて宿へ向かった。青江は美也子の部屋を訪ね談笑していたが、そこを雑誌社「アムール」のカメラマンが隠し撮りし、嘘の熱愛記事を書かれてしまう。雑誌は飛ぶように売れ街頭で大々的に宣伝された。これに憤慨した青江は、アムール社へ乗り込んで編集長の堀を殴り倒し、騒ぎは更に大きくなってしまう。青江はついに雑誌社を告訴することにし、そこへ蛭田と名乗る弁護士が売り込みに来る。翌日、素性を確かめるために蛭田の家を訪ねた青江は、結核で寝たきりの娘の姿に感動し、蛭田に弁護を依頼する。しかし、病気の娘を抱えるも治療費のない蛭田は、10万円の小切手でアムール社の堀に買収されてしまう。

おもなスタッフ
監督 …… 黒澤 明(40歳)
企画 …… 本木 荘二郎(35歳)
脚本 …… 黒澤 明、菊島 隆三(36歳)
音楽 …… 早坂 文雄(35歳)
特撮 …… 川上 景司(38歳)

おもなキャスティング
青江 一郎  …… 三船 敏郎(30歳)
西条 美也子 …… 山口 淑子(30歳)
蛭田 乙吉  …… 志村 喬(45歳)
蛭田 正子  …… 桂木 洋子(20歳)
すみえ    …… 千石 規子(28歳)
編集長・堀  …… 小沢 栄太郎(41歳)
朝井     …… 日守 新一(43歳)
カメラマン  …… 三井 弘次(40歳)
荒井     …… 清水 一郎(50歳)
美也子の母  …… 岡村 文子(51歳)
裁判長    …… 清水 将夫(41歳)
蛭田 やす  …… 北林 谷栄(38歳)
片岡弁護士  …… 青山 杉作(60歳)
木樵の親父A …… 高堂 国典(63歳)
木樵の親父B …… 上田 吉二郎(46歳)
酔っ払いの男 …… 左 卜全(56歳)
青江の友人A …… 殿山 泰司(34歳)
青江の友人B …… 神田 隆(32歳)
青江の友人C …… 千秋 実(33歳)
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みんな~!道徳の時間ダヨ。 ~ホラー映画のほうの『バーニング』(1981年)~

2023年06月03日 21時21分01秒 | ホラー映画関係
 おばんでごぜぇやす、そうだいでございます~。みなさま、梅雨前のつかの間のうららかな日々、いかがお過ごしでしょうか。でも、最近は線状降水帯の発生とか妙な群発地震とかで、おだやかな時が徐々に少なくなっているような気がしますね。大切にしないとなぁ、こういうひとときは。

 上岡龍太郎さんがみまかられたとか。
 自分からこの話題を言っておいてなんなのですが、実は私自身は、世間でいう上岡さんのすごさが今一つわかってないガキンチョだったんですよね、上岡さんが TVによく出ていた当時は。小中学生だった私には理解が追いつかない、世の中のウラ事情を見通した皮肉と説教をたれる関西のオジサンという印象でした。
 私が思春期真っただ中だった1990年代に、言うまでもなく上岡さんは数多くの TV番組に出ていたのですが、『探偵!ナイトスクープ』の初代局長もさることながら、私にとって最も重大なインパクトを残した上岡さんの出演番組はといいますと、なにはなくとも日本テレビ系深夜の平日帯番組『 EXテレビ』(1990~94年 0~1時放送)なのでありました。はい、エロ目的以外の何者でもございません!
 正直、いやらしいものを1秒でも長く見たいだけの山形のこわっぱにとって、とうとうと話し続ける上岡さんは邪魔でしかなかったのではありますが、それでも、「まぁ、この人あってのこの番組みたいだし……」と、親父の説教か校長先生の朝礼の話を聞くがごとき熱の無さで受け流していたものです。
 要するに上岡さんは、よくわかんないながらも「オトナとオトナ社会の代表」みたいな感じに見えていたのですが、当時あんなに輝いていた TVの世界が、上岡さんにとって代わるほどの哲学も色気も無い人達ばっかりになってからも、ずいぶんと時間が経ちました。果たして今、ああいう批判上等の気概を持つオトナは、日本のどこかにまだ生き残っておられるのでしょうか。
 関係ないけど、かのおすぎとピーコのお2人の現況を聞くだに寂しい気持ちになりますし、いよいよ、有名人の訃報に触れて我が身の残り時間に思いをはせる頃合いになってきたような気がします。『タモリ倶楽部』も、もうないしさぁ! 若くねぇなぁ、おいらもよう!!

 さてさて、そんなわけで今回は、TVのバラエティ番組や洋画劇場でうら若き女性のお色気シーンを見ては、「フケツ!」と言いながらも両目の録画機能をスイッチオンにしまくっていた呪わしき青春をしのんで、1980年代の若い人にとってはたまらない娯楽コンテンツのひとつだったホラー映画、その中でもひときわ輝いていたアメリカンスラッシャー映画の「あだ花」ともいえる、この作品に触れてみたいと思います。元気いっぱい!!


映画『バーニング』(1981年5月公開 91分 アメリカ・カナダ合作)
 『バーニング( The Burning)』は、1981年制作のホラー映画。
 ハーヴェイとボブのワインスタイン兄弟が設立したエンターテインメント製作会社「ミラマックス」の初期作品のひとつ。トム=サヴィーニが特殊メイクを担当している。また、ジェイソン=アレクサンダー、フィッシャー=スティーヴンス、ホリー=ハンターのデビュー作品でもある。
 アメリカ合衆国では、1985年5月に配給元によって一部の劇場でのみ公開され、1年半以上あとになって『 Cropsey』というタイトルで再上映されたが、製作費150万ドルに対して興行収入は約70万ドルと振るわなかった。
 イギリスで本作は猥褻刊行物法違反により押収され、暴力的なビデオに指定された。この映画における殺人鬼クロプシーの狂気に満ちた殺人シーンや、女性の身体をハサミで切断するシーンは、イギリスにおいて問題となった。
 日本公開時、日本での映画配給会社となった東宝東和は、劇中に登場する殺人鬼クロプシーに「バンボロ」という独自の名前を命名した。そして、「全米緊急指名手配中」や、絶叫で声帯や鼓膜が傷ついた際に「絶叫保険」を用意するなどといったキャッチコピーを掲げた。

 なお本作は、前年に第1作が公開された『13日の金曜日』シリーズと、キャンプ場で連続殺人事件が起きるという設定が共通している。また、トム=サヴィーニが特殊メイクを担当している点も同じである。


あらすじ
 湖畔のブラックフット・キャンプ場の管理人で大男のクロプシーは、陰険な性格のために人々から嫌われていた。ある夜、キャンプ場の少年たちがクロプシーを驚かせようといたずらを仕掛けたが、少年たちの予想以上に驚き慌てたクロプシーは火だるまとなり、大やけどを負ってしまう。
 その5年後。退院したクロプシーは、娼婦を大型の縫製バサミで惨殺した後、かつて自分が管理人を務めていたキャンプ場の廃墟の残る湖に戻ってきた。そして、自分に大やけどを負わせたかつての少年たち、果ては無関係の人々までをも、その手にかけていく。

おもなキャスティング(年齢は公開当時のもの)
トッド(リーダー)…… ブライアン=マシューズ(28歳)
ミシェル(委員長肌)…… リア=エアーズ(24歳)
アルフレッド(陰気)…… ブライアン=バッカー(24歳)
グレイザー(不良)…… ラリー=ジョシュア(29歳)
デイヴ(男前デブ)…… ジェイソン=アレクサンダー(21歳)
エディ(女好き)…… ネッド=アイゼンバーグ(24歳)
サリー(朝シャワー)…… キャリック=グレン(?歳)
カレン(心配性)…… キャロライン=ホーリハン(?歳)
ウッドストック(スナイパー)…… フィッシャー=スティーヴンス(17歳)
タイガー(ボブカット)…… シェリー=ブルース(?歳)
マーニー(男好き)…… ボニー=デロスキー(?歳)
ソフィー(かわいい)…… ホリー=ハンター(23歳)
ダイアン(パーマ)…… ケヴィ=ケンドール(?歳)
フィッシュ(のっぽ)…… J.R=マッケーニー(?歳)
ローダ(ふくよか)…… エイム=シーガル(?歳)
監督の先生(無能)…… ジェフ=デハート(?歳)
病院の用務員(外道)…… マンスール=ナジウラー(27歳)
病院の医学生(気弱)…… ジェリー=マギー(?歳)
街の娼婦(おばはん)…… K.C.タウンゼント(39歳)
クロプシー(はさみ)…… ルー=デイヴィッド(?歳)

おもなスタッフ(年齢は公開当時のもの)
監督 …… トニー=メイラム(38歳)
脚本 …… ピーター=ローレンス(?歳)、ボブ=ワインスタイン(27歳)
製作 …… ハーヴェイ=ワインスタイン(29歳)
音楽 …… リック=ウェイクマン(32歳)
編集 …… ジャック=ショルダー(35歳)
特殊メイク …… トム=サヴィーニ(34歳)
製作 …… ミラマックス


 いや~、やっと観れました、この映画! 感慨深いものがありますねぇ。
 なんか、いま『バーニング』っていうタイトルで作品を検索すると、5年くらい前に韓国で制作された映画の方が圧倒的にヒットしちゃうんですけど、私が今回取り上げているのは、そっちじゃなくて1981年に制作された B級スラッシャー映画のほうです。はい、村上春樹なんか全然関係ないです! バンボロが出てくるやつです!! バンボロじゃないけど。
 この映画『バーニング』に登場する殺人鬼クロプシーが「バンボロ」と改名させられてしまった強引極まりない経緯は上に引用した通りなのですが、あくまでもこれは1981年に日本で劇場公開された際の宣伝演出の一つに過ぎなかったようで、その数年後に TVの洋画劇場で日本語吹替版が放送された時には、殺人鬼の名前は原典通りにふつうにクロプシーと呼ばれていました。ちぇっ。

 この映画の宣伝素材などでよく使用される、園芸用の枝切りバサミを両手で高々と掲げて逆光を浴びるクロプシーの姿は非常にインパクトがあり、私が子どもの頃に本屋さんでよく売られていたケイブンシャあたりのホラー映画紹介百科本でも特に印象的な存在になっていたのですが、ジェイソンやフレディといった殺人鬼界隈のスター勢と違って続編も制作されなかった『バーニング』は、TV放映される機会もレンタルビデオ店に置いてある可能性も圧倒的に少なく、私にとっては長らく「知ってはいるけど見たことない伝説の作品」リストの筆頭に挙がっていたのでした。あとは、『悪魔の沼』とか『バイオ・スケアード』とかですかねぇ。そんなに今すぐ見たくはないけど、ちょっと気になって心の片隅に引っかかってる、みたいな。
 むしろ、私にとってのバンボロは、間違いなく『来来!キョンシーズ』(1988年放送 TBS)に登場した、ラスボス・コウモリ道士が使役する最終兵器「バンボロキョンシー」のことでしたからね。そのネタ元となった『バーニング』なんか、追憶のかなたに消え去ってしまっていたのでした。
 さぁ、今回ついに、そんな伝説の一作の封印を解いたわけなのですが、ちゃっちゃと観た感想を一言でまとめてしまいますと、

ぜんぜん退屈しない、充分に楽しめる作品だった! 納得いかない部分は多いけど。

 という感じでございました。面白かったですよ、これ! 正直、期待値はそんなに高くなかったのですが、作り手がけっこうやる気を持って取り組んでいるなという、エネルギーというか勢いみたいなものが伝わってくる、若々しい野心作でしたね。決して「傑作」とは言えないんですが……

 ただこの作品、自信を持って「おもしろいよ!」と主張するのは無論やぶさかではないのですが、いかんせん、視聴する手段が限られているんでねぇ。いくらおススメしたところで、レンタルショップを駆けずり回って借りるか、現在そんなに安い価格帯にもなっていない中古ソフトを購入するかしなければならないんですよね。そこが、40年も前にひっそりと公開されてヒットしなかった映画の哀しいところなのです。内容的にも今のコンプライアンス云々から見ると、 BSでも昼間のテレ東でも放送される可能性はまずないと思います。それは、グロテスクな描写が問題なんじゃなくて、やたらと女性の裸体や男性のお尻が出てくるからなんですけどね。かといって、ポルノ映画に分類されるかというとそんなに振り切れてもいないという中途半端さなんですよね。

 ですので、具体的な映像や画像はよその紹介サイトやブログ様にお任せしまして、本ブログでは本ブログらしく、面白く感じたポイントを本編映像の時系列順に羅列して、この作品の魅力を片鱗だけでも感じ取っていただけたらな、と思います。
 ほんと、確かにシリーズ化できなかった事情もよく分かるのですが、単に『13日の金曜日』の無数の類似商品のひとつ、と片付けるにはもったいない個性があるんですよね!


〇嗚呼、ほろ苦き青春の思ひ出!! 『バーニング』視聴メモ
・ログハウス調のキャンプ棟、夜の森に響き渡る虫の鳴き声、天パにボーダーライン柄のやんちゃな少年たち……なにもかもが、なつかしい! ていうかこれ、別の有名ホラー映画シリーズでさんざん見たことあるやつ~!!
・レザーフェイスにブギーマン、ジェイソンにフレディといった筋金入りの超有名殺人鬼キャラに見慣れた者にとっては、本作の殺人鬼(に将来なる人物)が、オープニングで間抜けに寝込んでいる姿からその描写が始まるという演出が、かえって斬新に感じられる。さぁ、この人間臭さが吉と出るか凶と出るか……?
・この映画を観る若者は、いたずらを仕掛けた少年グループに感情移入すると思うのだが、年齢が管理人クロプシーの方に近くなった身からすると、冒頭の大やけどシーンが恐怖にしか感じられない。ただただ、かわいそう……クロプシーが具体的にどういうイヤな男だったのかも描写されてないだけに、なおさら。
・全身大やけどでもなんとか死ななかったという奇跡の生還を遂げてるのに、入院先の病院でも「怪物だ」とかなんとか言われて、職員の間でなかば見世物小屋のような扱いを受けているクロプシー……彼の怨念を設定する上で必要不可欠なくだりであることはわかるのだが、倫理の「り」の字もない職員のド外道ぶりがステキすぎる。やっぱ1980年代は、キャラ描写が良くも悪くも突き抜けてるなぁ! 余談ですが、その職員をむんずと掴むクロプシーの腕が、山形県新庄市の春を告げる風物詩である、子もちニシンの焼き魚「カド」のようで非常に食欲をそそる。醤油かけていただきたい。
・あ~、これ! このオープニングテーマ、聴いたことある! さすがは老舗プログレバンド「イエス」のリック=ウェイクマン。この作品にはもったいないほどに抒情性豊かなテーマ曲が非常にすばらしい。ホラー映画史上に残るべき名曲。作品自体は、残るかな!?
・オープニング後、退院したクロプシーがさっそく第一の殺人を犯すシーンが描かれるが、クロプシーが最初から娼婦を殺すつもりだったのか、娼婦がクロプシーを拒否したから逆上して衝動的に殺したのか、その初動のきっかけがどちらなのかがはっきりしないのが引っかかる。5年も地獄の苦しみを味わった積年の恨みからすれば前者のようにも見えるが、そもそもクロプシーが手にした大型バサミが、偶然娼婦の家にあった物だったことを考えると後者の可能性も捨てきれないし……まぁどっちでもいいわけだが、クロプシーの心理的にドラマティックなのは後者の方ですよね。
・娼婦役の女優さんには大変申し訳ないのだが、ノーブラタンクトップの娘さんの生足祭りという「お客さんの大半が求めていたもの」がや~っと登場するのが、本編開始から13分後という硬派な采配が、すでにこの映画の興行成績における茨の道ゆきを暗示しているような気がする。10分間も野郎かオバハンばっかりというのは、やっぱり厳しかったか……
・5年の時が流れ、古巣の湖に帰ってきたクロプシーが、どこから用意したのかわからない新品ピカピカの枝切りバサミを握って最初に狙ったのは、森に飛んで行ったソフトボールの球を探しに来た少女タイガーだったのだが、初手で殺害に失敗しているのが、演出とはいえ非常にもどかしい。なにやってんだと殺人鬼の諸先輩がたにベンチで叱責されかねない大失態だが、退院したてだしね……
・別に個性もへったくれもないモブ女子高生のひとりのはずなのに、ベッドで寝込んで顔の半分しか見えていない段階ですでに他を圧倒する美貌を見せつけているという、少女ソフィー役のホリー=ハンターの殺人鬼クロプシー以上に広範囲な殺傷能力に戦慄してしまう。まだ一言もしゃべってないのに、すごすぎ、この娘!!
・朝シャワー中に謎の気配におびやかされる少女サリーのくだりが、スラッシャー映画の古典『サイコ』へのオマージュ風で非常にいい感じなのだが……クロプシーさんよう! まだ寝てた!?
・物語のトリックスターとなる、陰気で消極的な少年アルフレッド。常にうつむき加減な暗い表情が実にいい味を出しているキャラクターなのだが、湖でのカナヅチシーンを見てみると、意外と中肉中背で大人っぽい体型であることに気づく(実際に当時10代だったフィッシャー=スティーブンスの細身が近くにあるだけになおさら際立つ)。演じるブライアンさんは当時20代中盤。こいつ……ほんとは泳げるな!? 気をつけろ、ベテランだぞ!
・たいていのスラッシャー映画において、デブキャラは基本的に品性下劣で殺されても仕方がない愚鈍な生物という差別構造が定着しているのだが、本作におけるデブ枠のデイヴ(名前!!)は、親友のためなら不良キャラへの復讐も辞さない漢気を持つ社交的で陽キャな人物である。いいか女子、選ぶならこういう男だぞ!!
・男子デブ部門のデイヴが気を吐く一方で、それに呼応するかのように、出番こそ少ないものの、女子陣でのデブ担当となるローダが不良のグレイザーに得意の突き押しをかまして湖に叩き込むという連携もまた、痛快でいい仕事をしている。この2人には、生き残ってほしい……
・グループのリーダー格トッドの話す怪談によると、5年前にクロプシーの管理していたブラックフット・キャンプ場は、彼が大やけどを負った際に焼亡して廃墟となったというのだが……管理人の住居が燃えたのはわかるにしても、キャンプ場全体が運営できなくなるほど延焼するなんてこと、ある!? それに、いちおう死亡者が出たわけでもないんだし、閉鎖はやりすぎなのでは……ま、都市伝説あるあるで、話に尾ひれがつきまくった結果なのかな?
・やや潔癖症ぎみな21世紀の日本に生きる者として見ると、いくら若気の至りとはいえ、早朝の薄暗い湖で、じめじめした泥の上に脱いだ服をほうり出して裸で泳ぎ出すエディとカレンの所業は、エロいと感じる以前にいろいろ常軌を逸しすぎていてドン引きしてしまう。いや、絶対ムリでしょ! 殺人鬼のうわさとか関係なく、害虫とか寄生虫とか細菌とか! さすが1980年代のアメリカの若者……ていうか、それを演じる当時の俳優さんがたは、怖いものなしだな! ハングリーすぎ!!
・あのークロプシーさん……すでに本作の上映時間の半ばを越えてる(48分)っていうのに、やってるのは殺人1件と、女子高生の衣服を盗むいたずら1件のみですか。これはちょっと、リハビリ中にしても気が長すぎやしませんか。どっちかっていうと、全裸で森をさまようカレンの方が数百倍身体を張った仕事してますよね。カレンを演じたキャロライン=ホーリハンさんのその後の人生に、幸多からんことを! 敬礼!!
・トッドが主体となって急造したいかだが出発するシーンで、モブの一人として岸辺から手を振るソフィー役のホリー=ハンターさんのおみあしが非常になんちゅうか……健康的であることが判明する。おいキャメラマン、そこは遠景じゃなくてズームだろうが! 仕事して!!
・映画が始まって2/3が経過した時点(59分)になって、やっとクロプシーが殺人鬼としての真価を発揮する「5人瞬殺シーン」が展開されるのだが、さすがはトム=サヴィーニというか、血のりをふんだんに使った特殊メイクと、今までの停滞っぷりを一掃するスピーディなカット割りに、思わず息をのんでしまう。さすがに低予算ぶりは隠しきれないが、たったの30秒間に凝縮されたサヴィーニの鮮やかなテクニックは、やっぱり脂のりまくりである。
・「I ♥ NY」バッジって、1980年にはもうあったんだ……地味にびっくり。
・なんで、警察がヘリコプターで救援に駆けつけることを、引率の先生じゃなくていち生徒のミシェルが知ってるんだよう! 先生、電話通報くらいやってよ~!!
・アルフレッドが迷い込んだ、森の中の石窟寺院のようなコンクリート廃墟が、ロケ地としてとっても魅力的なのだが、これ、設定上はクロプシーが管理していたブラックフット・キャンプ場の跡地っていうことになるのかな? ちょっと、キャンプ場にしては味がありすぎるような……
・興奮を最高潮に持っていくべき、クライマックスでの廃墟内を舞台としたクロプシーとトッドの最終対決シーンなのだが、女優さんの追加撮影ができなかったのか、その場で発見されるカレンの遺体の映像処理が雑すぎたり、一回落下したはずのトロッコの位置がいつの間にか元の場所に巻き戻っていたりと、尺を埋めるための編集処理がむちゃくちゃすぎて、「ぷしゅ~。」と空気が抜けるような脱力感に襲われてしまう。なんだかなぁ。
・今作における、殺人鬼クロプシーの犠牲者は9名でした。これを多いとみるか少ないとみるか……


 ……とまぁ、ざっとこんな感じでございます。まぁ、だいぶ粗削りではあるのですが、常に賑やかで退屈しない映画なんですよね。たぶんこれ、役者さんが実際楽しんで撮影に参加していたんじゃなかろうか。

 以下、作品を観終えた上での感想をまとめていきたいのですが、なにはなくとも、出てくるメインキャラたちの性格設定にメリハリがあって、みんな魅力的なんですよね。そこがまず、いい! 男の、特にモテない陣の活き活きさが、演技じゃないみたいですばらしいです。
 とはいっても、やっぱり見逃せないものとして、女優さんの脱ぎっぷりが実にいいです。特にカレンさん! そして、そんなカレンさんが、別にスラッシャー映画あるあるの、脳みそバーニングな不純異性交遊大好きっ娘というわけでなく、むしろ奥手でごく常識的な良識を持った女性であるという所も、なかなか深い人物造形なんですよね。そんなカレンさんが、どうにも移り気なプレイボーイの彼氏エディにそっぽを向かれることを恐れるあまり、泣きたい気持ちを押し殺してエディのノリについていき、その結果、湖畔の林間学校の生徒の中で最初にクロプシーの毒牙にかかってしまうという不運が、非常に理不尽なのです。いや、そこは断然、殺されるのはエディのほうでしょ! ま、間もなくエディも殺されるけど。

 理不尽!! 言ってしまった。そうなんです、この映画、パク……じゃなくて、インスピレーション元の『13日の金曜日』ゆずりの定番テーマとなっている、「若者は常識と節度を持って遊びましょう。」や、「いじめ、ダメ、絶対!!」をしっかりおさえ、なんなら『13日の金曜日』を超える人物造形の深みを見せながらも、どっちかっていうと優等生タイプなカレンさんは真っ先に犠牲者になるし、若者のくだらないいたずらのために人生を狂わされてしまったクロプシーは、そのいたずらグループの元メンバーに容赦なくぶっ殺されてしまうし、ラストに至っては、その元メンバーが何食わぬ顔で「映画の主人公、ボクですけど、なにか?」みたいなドヤ顔で彼女のもとに悠々と生還してエンドロールとなるのです。

 理不尽すぎる……なんなんだ、この胸に去来する無常観は! 若者のお色気パートも、満を持して現れるスラッシャー描写パートも充分に見ごたえがあるのですが、「加害者がもと被害者」という物語の根本の救済がまるでないことからくる「善悪の価値観のねじれ」が、どうにもこうにも消化しきれずに心に残る、世の理不尽を教訓とする映画。それこそが、この『バーニング』の真の姿なのです。

 つまりこの映画の理不尽の源泉は、ほかならぬ殺人鬼クロプシーの、他のスラッシャー四天王をはじめとする殺人鬼キャラではあまり触れられない「リアルさ」にあります。カフカの『城』の主人公レベルに理不尽まみれの絶望的境遇にある弱者クロプシーの末路。そこに寄り添うがために生まれる誠意のあかしこそが、この映画の理不尽さなのです。

 まず冒頭で語られる5年前の失火事件の顛末なのですが、クロプシーが管理人時代に、具体的にキャンプ場の子ども達にどういったいじめを行ったのかが、第三者的な視点からはいっさい描かれません。劇中で語られるのは、いたずらをしかける側の若者たちの一方的な雑言ばかりで、「殴られた」とかなんとか言ってはいますが、本当にクロプシーがその復讐を受けるに足りる悪行を重ねているのかどうかは、意図的に語られないまま火だるまにされてしまうのです。
 この流れ、最初に観た時に「いじめの描写はめんどくさいからカットしたのかな?」と思っていたのですが、5年後にクロプシーにまつわる怪談を語るのは、中心人物ではないにしてもクロプシーを焼くこととなったいたずらグループの元メンバーだし、その張本人が、クロプシーに対する謝罪の意識のこれっぽっちもない誇張表現をもってクロプシーを「怪談の殺人鬼」に仕立て上げているくだりを観て、ああこれは作り手が意図的にクロプシーの実像を語らないのだな、と感じました。実際にクロプシーがどんな管理人だったのか、それはまるで明らかにならない。それなのに、いたずらグループ側の主張と、いかにもいじめたくなるようなクロプシーのだらしない顔と寝姿しか映画に出てこないのですから、そもそもクロプシーが、マイケル=マイヤーズやジェイソン=ボーヒーズのように異常な先天的悪意や超人的な肉体をもって物語の主人公になるような素養が無い「ふつうのおっさん」だった可能性は濃厚なのです。もともと、シリーズ化したりホラーアイコンになるわけがないリアルさこそが、殺人鬼クロプシーの唯一無二なオリジナリティなんですね。それをあーた、「全米緊急指名手配中殺人鬼バンボロ」だなんて……涙が出てきますよ。

 殺人鬼クロプシーに異様にまとわりつくリアリティに関して突き詰めると、彼に関する疑問のほとんどは氷解します。すなはち、彼は5年間もの長きにわたって治療を続けてきた全身大やけどから退院したばっかの病後人なのです。そして、そんな彼が退院したその夜に速攻で娼婦をほふって殺人鬼になってしまった以上、選ぶのは「最悪の体調とうまく付き合いながらの殺人」。つまり、クマやライオンといった常態的に出会った人間から血祭りにあげていくパワーごり押しタイプではなく、「自分の狙った相手だけをじっくり追いかけるか、もしくは効率的な罠を仕掛け、決定的な瞬間にだけ全力を発揮して仕留め、また潜伏して体力を温存する」という、暗殺カマキリタイプ!

疑問その1、なぜ湖畔に到着しても2~3日間殺人を開始しなかったの? …… 体力回復と若者たちの行動パターンの分析に集中していたから。
疑問その2、なぜカレンさんを最初の犠牲者に選んだ? …… カレンさんがか弱い女の子だったから。
疑問その3、なぜカレンさんの衣服を盗んだ? …… カレンさんを完全に孤立させるため(恥ずかしがって他人に助けを求められない消極性を見透かしている!)。
疑問その4、なぜ、いちばん恨みを持っているはずのいたずらグループの元メンバーを殺さなかった? …… そもそもいたずらをした犯人が誰かを知らない。

 どうですか皆さん、このヘタレ感! これこそが、クロプシーのスラッシャー四天王に勝るオンリーワンの魅力なのです。
 クロプシーが前半になっかなか湖畔での殺人を開始しないもどかしさは、もはやコントの域に達しているのですが、無理をせずに様子見に徹していたのは間違いありません。第一、彼が殺人を開始したのは、元気ハツラツな若者たちや引率の大人たちが100人くらいひしめいているウォーターストーンキャンプ場から、最年長クラスの16名がカヌー旅のために「やっと離れた」瞬間に始まっているのです。
 湖畔で殺すのは女性が一人でいるとき(カレン、サリー)か、自分の仕掛けた罠に獲物がかかったとき(いかだ5人衆、グレイザー)という慎重さと、それに相反して、「ここで会ったが百年目!!」のはずの元メンバーがのこのこやって来ても額をちょっと斬って気絶させるだけという間抜けさ(=元メンバーを認識していない)という、ちぐはぐな二律背反性のリアルさ。こここそが、殺人鬼としてのクロプシー像の深さなのです。クロプシーが元メンバーを認識していないというのは、一見すると不思議なようにも思えるのですが、当たり前です、彼はいたずらをしかけた犯人が誰なのかさっぱりわからないまま火だるまになったし、入院中も犯人捜しどころじゃなかったのですから。その一方で元メンバーのほうも、最後の最後に廃屋でクロプシーの「素顔」を見るまでは、殺人鬼があの5年前の管理人だなんて思いもよらなかったのではないでしょうか。「え……退院したの? ごめん、おれ、勝手にお前を怪談のネタにしてたわ……メンゴ☆」みたいな。ふてぇ野郎だぜ!!

 とにもかくにも、殺人鬼クロプシーの前半の殺人ペースの鈍さや犯行のしどろもどろ感は、決して作品の拙さから来ているのではなく、「被害者だった人間が突如として異常な復讐者になったとき、彼はどう行動する?」という想定に基づいた克明なシミュレーションの成果であると考えた方がいいでしょう。そういう意味で、クロプシーは本質的にスラッシャー四天王とは全く違うタイプ、どっちかというと『ジャッカルの日』(1973年)のジャッカルさんによっぽど近い、できることにちゃんと限界のあるリアルな暗殺者なのです。ほんとカマキリ。『シン・仮面ライダー』のカマキリカメレオンも、ちったぁクロプシーさんの慎重さを見習えバカヤロー!!

 さてさて、いつものように論調がヒートアップしてきましたし、字数も1万字をゆうに超えてしまいましたのでそろそろお開きにしますが、この作品、凡百の『13日の金曜日』フォロワーとは片付けられない人物造形の深さとはまた別に、「あのトム=サヴィーニが特殊メイクを担当!」という見逃せない要素があります。
 上記のような経緯で、序盤の娼婦殺害以降、殺人シーンが後半に入るまでなかなか出てこない本作なのですが、なにはなくとも湖上でいきなり展開される「5人瞬殺シーン」のカットの切り替わりの鮮やかさと、予算内にしっかり収めた特殊メイク効果の的確さが非常に印象的です。イギリスで問題視されたという残酷描写なのですが、よくよく見ると直接的なカットは「喉もとに突き刺さるハサミ」や「指を切断された手」といったあたりが一瞬見えるくらいで、あとは絶叫する俳優たちの表情とハサミを振り上げるクロプシーのショットの応酬で間接的に惨劇を想像させるテクニックをうまく利用しています。『ゾンビ』のような直接ズビズバ描写というよりは、『サイコ』のシャワーシーンに近い「におわせ演出」なんですよね。実際、当時の技術なものですから、よ~く見てみると刃物の突き刺さる喉も指の無い手もなんか質感がヘンですし、血の噴出するおでこも、もっこりふくらんでいるように見えるのですが、そこをあんまり長く見せないのがうまいんですよね! その道のプロは、その時点におけるわ我が手の限界も知悉しているのです。さすがはサヴィーニ!!
 あと、引っ張りに引っ張って最後にやっと登場する「クロプシーの素顔」も、そうとうにインパクトのあるグロテスクなものになっているのですが、これもチラッチラッとしか映らないのが、彼の奥ゆかしさと哀しさを象徴していていいですね。諸先輩がたのように仮面をかぶればヨシという図太さは持ち合わせていないという……

 以上のように、この『バーニング』は、決してスラッシャー映画の主流に位置する作品ではありませんが、「トム=サヴィーニが関わっている」や「女性の脱ぎっぷりが良い」、もしくは「ホリー=ハンターが出ている」といったポイントだけにとどまらず、

世の中、なにが善でなにが悪かだなんて、わかったもんじゃないよ☆

 という、生きていくうえで最も大切な「道徳」を教えてくれる、実に印象深い一作であることは間違いありません。その点で、何十年たっても決して色あせない「人生の真理」を説いてくれる永遠の生命、普遍性を獲得している稀有な作品なのです。
 そう考えてみれば、エンディング直前に蛇足のようにリフレインする「クロプシーの怪談」も、たかだか5年ほどしか経っていないのに実像からだいぶ離れてしまうクロプシーの都市伝説化を描いているのですが、最早ほんとうのクロプシーがどのような人物だったのか、廃屋で焼け死んだのかどうかだなんてどうでもよくなっていて、その代わりにクロプシーは永遠の存在になったんだよという、ある意味ハッピーエンド(か!?)を象徴しているのかも知れませんね。『よたかの星』みたいな。
 そう見ると、あの、柱に寄りかかって立ったまま炎上するクロプシーの姿が、背中に刺さった枝切りバサミと、顔面にめり込んだマサカリのシルエットのせいでまるで十字架のように見えたのも、決して偶然ではないでしょう。我が身を犠牲にして不滅の存在になったクロプシー……宗旨は違いますが、思わずこのシーンを観ていて合掌してしまいました。

 あと、最後の最後にもうひとつだけ! 私が入手したこの映画の DVD、1985年に TVで放送された洋画劇場の日本語吹替版も収録されているのですが、声優陣がめっちゃくちゃ豪華です! これは必聴!!
 特に、登場キャラの中でもひときわ気弱なカレンさんの声を、あの榊原良子サマが演じておられるのがすばらしい。そうそう、このお方は、こういった実に女性らしい細やかなゆらぎの演技も当代一なんですよね!

 それにしても、そんな榊原さんのカレンを狂わせるダメんずな彼氏エディ(グループいちのプレイボーイなのにそんなにカッコよくないののもまた、良し!!)の声を演じるのが、あの「ブライト艦長」こと鈴置洋孝さんなのも、なにかの因縁めいたものを感じさせて最高ですね。

 あの大佐を差し置いて、宇宙一タカビーな摂政殿下を籠絡するたぁ、いい度胸だ! ちきしょう、ミライさんに言いつけてやるぅ!!
コメント (3)
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