長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

スウェーデン風「おら、こんな村ァいやだぁ~♪」物語 ~映画『ミッドサマー』~

2020年06月21日 18時05分34秒 | ホラー映画関係
 みなさん、どうもこんばんは! そうだいでございます~。
 いや~、今日の山形はとってもいいお天気でした。湿度もなくカラッとして、もう暑いくらいの陽気で。公園を散歩するにも最適な休日でしたね。また、公園にも徐々に家族連れが戻ってきました。年明けすぐからコロナで大変なことになってしまった今年も、ようやく普通の日々が戻ってくるんでしょうかねぇ。
 今日はわたくし、そうとう久しぶりに映画を観に行ってきました。いや、ほんとに久しぶり! 確か、今年に入っていくつか映画を観てはいたのですが、最後は2月に観た『1917 命をかけた伝令』(サム=メンデス監督)でした。それ以降はもう、ご存知の通りの自粛騒ぎで映画興行自体がストップしてしまいましたからね。
 私が今日行ったの映画館も、しばらく前から営業は再開していたのですが、上映本数もかなり抑えられていたし、飲食の売店も開いていないようで、見た目はかなり寂しい様子になっていました。それでも、少しずつ日常に戻りつつあるわけで、娯楽が増えてくるのは素晴らしいことですよね! ファントミラージュの映画、いつやんのかなぁ。
 そういえば、映画館が休業していた時に、地元の映画チェーン「フォーラム」グループが始めたネット販売のオリジナル Tシャツと冊子を購入しました。がんばれ、娯楽業界!! 演劇や音楽で生きる皆さま、なんとか生き延びてほしいですね。

 さて、実は今日、この映画を観ると決めてから聞かされてビックリしたのですが、本日6月21日は、今年の夏至なんですって! しかも、ななんとなんとの部分日食の当日なんだとさ!! 山形、雲ひとつない晴天で良かった~。確かに太陽、ちょっとだけ欠けていました。直接見ちゃダメよ!
 夏至に日食とは、こりゃあ驚いた……だって、これから観る映画、なんだか夏至をテーマにした内容らしいんですよ。しかも、ホラー映画! ミステリアスだな~。絶好のタイミング。今日をおいて他に観る手はありませんでしたね!
 そんなわけで、意気揚々と観たのですが……いや~これはとんでもない作品だった!!


映画『ミッドサマー』(2019年7月アメリカおよびスウェーデンにて公開 147分)

 『ミッドサマー(Midsommar)』は、2019年公開のアメリカ合衆国・スウェーデン合作のホラー映画である。
 原題の「Midsommar」は、スウェーデン語で夏至祭(ミィドソンマル)を意味する。
 本作の登場人物のうち、ホルガ村の住人たちは主にスウェーデン人俳優が演じており、スウェーデン語が話される場面もある。また、本作の主要場面の撮影はハンガリーのブダペストで行われており、ダニーの家族などの脇役数名はハンガリー人俳優が演じている。
 なお、アリ=アスター監督は自身の好きな映画として、イギリス・スコットランド地方の民間伝承を題材にしたホラー映画『ウィッカーマン』(1973年 イギリス)を挙げている。『ウィッカーマン』は、異教が信仰される村の祭によそから招かれた主人公が巻き込まれてゆく物語であり、劇中の要素やプロットに『ミッドサマー』と共通する部分が多いが、アスター監督は本作の脚本執筆中は『ウィッカーマン』を観返さなかったという。

 当初、本作はアメリカ映画協会からNC-17指定(17歳以下鑑賞禁止)を受けたが、6週間にも及ぶ再編集の末に、R指定(17歳未満の観賞は保護者同伴が必要)へと引き下げられることになった。なお、本作のファースト・カットは3時間45分にも及ぶ長大なものであった。2019年8月17日、アスター監督の編集による本作のディレクターズ・カット版(上映時間171分)がアメリカ本国で上映された。
 日本では2020年2月21日からR15+指定で上映されたのち、ディレクターズ・カット版が同年3月13日からR18+指定で上映された。
 本作は批評家から絶賛されている。映画批評集積サイト「Rotten Tomatoes」の批評家支持率は89%、平均点は10点満点中7.93点となっている。批評の要約は「野心的で、見事に作り込まれており、観客の心を大いに揺さぶってくる。『ミッドサマー』によって、アリ=アスター監督はホラー映画の巨匠と見なされるべき人物であるとまたしても証明された。」となっている。
 本作の製作費は約900万アメリカドル。世界公開による興行収入は約4100万アメリカドルを超えた。

あらすじ
 アメリカの大学生のダニー=アーダーは精神的な疾患を抱えていた。ある冬の日、同じく精神疾患だった妹が両親を道連れに一酸化炭素中毒で無理心中してしまう。自身の疾患と家族を失ったトラウマに苦しみ続け、恐怖の底に追い詰められているダニーを、恋人のクリスチャンは内心重荷に感じながらも別れを切り出せずにいた。
 翌年の夏、6月。ダニーはクリスチャンが友人のマーク、ジョシュと一緒に、同じく友人であるスウェーデンからの留学生ペレの故郷であるホルガ村に旅行する予定であることを知った。クリスチャンはペレから、故郷で90年に1度しか開催されない夏至祭が開催されるので、見に来てはどうかと誘われたのである。大学で文化人類学を専攻するクリスチャンは、学問的関心もあってホルガ行きを決めたのであった。クリスチャンは、ダニーの精神状態を危惧しながらも仕方なく旅行に誘い、ダニーはそれに応じた。
 クリスチャンとダニーらはスウェーデンへ渡り、ペレの案内でヘルシングランド地方にあるホルガ村を訪れた。一行は、森に囲まれた草原という幻想的な風景と、白い服を着た親切な村人たちに初めは魅了される。一行は同じくよそ者で、ペレの幼馴染のイングマールに誘われてロンドンからやってきたサイモンとコニーのカップルと合流するが、その翌日から始まる夏至祭はただの村祭りではなく、自然を強く信仰する土着の原始宗教(ペイガニズム)に基づく祝祭であった。そうとは知らずに参加したダニーたちは、次第に得体の知れない不安と恐怖に苛まれていく。

主なスタッフ(年齢は劇場公開当時のもの)
監督・脚本 …… アリ=アスター(33歳)
音楽   …… ボビー=クルリック(34歳)
撮影   …… パヴェウ=ポゴジェルスキ
編集   …… ルシアン=ジョンストン

主なキャスティング(年齢は劇場公開当時のもの)
ダニー=アーダー …… フローレンス=ピュー(23歳)
 アメリカの大学で心理学を学ぶ女子学生。パニック障害を抱えており、彼氏のクリスチャンも含めて自分の不安や焦燥感を共有してくれる友人が少ないことに苦悩している。
クリスチャン=ヒューズ …… ジャック=レイナー(27歳)
 ダニーと同じ大学に通う大学生。院試を控えていて、論文作成の題材を模索中。交際しているダニーを愛してはいるが、彼女の苦悩を受け止め切れず、その関係は微妙なものになりつつある。
ジョシュ …… ウィリアム=ジャクソン・ハーパー(39歳)
 ダニーと同じ大学に通うクリスチャンの友人。今回のスウェーデン旅行のほか、文化人類学の研究のためにドイツやイギリスも巡る予定でいる。
マーク …… ウィル=ポールター(26歳)
 ダニーと同じ大学に通うクリスチャンの友人。学問よりもセックスとドラッグのことしか頭になく、仲間の中でも特に軽薄な行動が多い。
ペレ …… ヴィルヘルム=ブロングレン(28歳)
 ダニーたちと同じ大学に留学しているホルガ村出身の青年。ダニーたちをホルガ村の夏至祭に誘う。
サイモン …… アーチー=マデクウィ(24歳)
 イギリスの農園で知り合ったイングマールの招待をうけホルガ村へ来た青年。コニーと婚約している。
コニー …… エローラ=トルキア
 サイモンの婚約者。イギリスの農園で知り合ったイングマールの招待をうけホルガ村へ来た。
ダン …… ビョルン=アンドレセン(64歳)
 ホルガ村の老人。夏至祭の初日にアッテストゥパンの儀式に選ばれる。
マヤ …… イザベル=グリル(22歳)
 ホルガ村の娘。夏至祭に際してある重大な役割を担っている。
インガ …… ジュリア=ラグナルスン(27歳)
 ホルガ村の女性。夏至祭の実行を取り仕切っている。


 うわぁ、えらいもん観ても~た……なんか、ものすごい作品でしたね。
 ものすごかったんだけど、少なくとも私は「すごかったな~オイ!」と、観た後にテンションが上がる感じじゃなかったです。でも、なんだか作品について話がしたくなるというか、誰かと作品の内容がどういうものだったのか、結局なにを言いたかったのかを確認しないと気が済まない衝動にはかなりさいなまれました。いや~、ひとりで観に行かなくてよかった! 話せたおかげで、観た後のフワフワした気分がだいぶ落ち着きました。実にタチの悪い映画だなぁ……
 そう、「タチが悪い」っていう表現がぴったり! 私の感想としましては、「観て損はしないけど、絶対に人には薦めない。」ということで!! これにつきますでしょうか。
 どっちかというと、ネガティヴな印象が強いかな……ただそれは、私が男性だからなのかもしんない。

 この作品、実は日本では2月から上映が始まっていたので、皮肉なことですがコロナ騒ぎが無かったら私が映画館で観ることはなかったと思います。上映期間が異例に長くなったおかげで今日観られたわけなのですが、2月に観ていた人から、相当とんでもない作品だと聞かされてはいたので、ちょっと気になってはいたのですが……まぁ~予想をはるかに超えて、とんでもない作品でしたね。でも、映画館で観られて本当にラッキーではありました。
 気になってはいたので、事前に、結末にあんまり触れていないネット上での感想をのぞいてみると、いわく「女性向け」、いわく「デートに観るべきではない」、いわく「途中退席した」、いわく「ホラー映画らしくない怖さ」……なんだか、かなり人を選ぶクセの強い作品であるなんですよ。う~ん、相手にして不足はなし!
 あと、私はこの映画のあらすじだけを読んでみて、私の選ぶ名画ベスト10の常連である、イギリスのホラー映画『ウィッカーマン』を即座に連想していたので、あの『ウィッカーマン』の後続フォロワーだとしたら点は辛くなるぞ~、とたかをくくっていたのでした。
 そしたら、ど~だい! 良い意味でもそうでない意味でも、この『ミッドサマー』は何か特定の先行作品の「直系の子孫」などという、おさまりのいい単純なタマではなかったのです。『ウィッカーマン』とは、むしろ似ても似つかないという印象を持ちました。なんか、作品の「粘着度」が違いすぎるよ!

 結局この『ミッドサマー』は、ホラー映画の皮をかぶったアート映画。ただし、主たる作者であるアリ=アスター監督の趣味というか、力の入れどころがあまりにもエグすぎるので、アートとは言いたくないタチの悪さに満ちている作品なんじゃなかろうか、と私は感じました。途中退席するのは、千ウン百円払った手前もあるしなんか負けたような気もするので最後までちゃんと観ましたが、ヤな感じだったな~!

 私自身は、まったくそういったジャンルというか、需要が存在している理由がさっぱり理解できないのですが、昔から『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000年)とか『ブラック・スワン』(2010年)みたいに、主人公がとことん理不尽でひどい状況に追い込まれてムチャクチャになってしまう映画って、ありますよね。そういうジャンルの新たなホープとしては、それなりに歴史に残るイイ作品だったのではないでしょうか。ほめてんのか……?
 ほぼ10年に1作品の割合でこういう作品がヒットするのって、おもしろいですね。私も昔、千葉でひとり暮らしをしていた時に、「1回食べたら半年は店の前も通りたくなくなるんだけど、必ずまた行きたくなる味のラーメン屋さん」ってあったんですよ。そういう感じのジャンルなんですかねぇ。映像ソフトを買って何回も観たくなるもんじゃないという。

 たぶん、アスター監督はホラー映画に対する造詣がそうとうに深いし、今回の『ミッドサマー』に100%全力を注いで真剣に作っているはずです。少なくとも、配給元の注文に従ってやっつけで作っているかのような粗い出来のハリウッドものとは一線を画す、ワンカットワンカットに込められた計算や情報密度の濃さには驚きました。
 でもさぁ……あまりにも精巧に作られた「損壊した肉体」とか、「いちいちうにょうにょする背景とか草花」にそんなに予算をかけるのって、私は好きじゃなかったなぁ~! おそらくアスター監督の構想の実現には絶対に必要なのでしょうが、そこはさぁ! もっとこう……控え目に、さぁ!! 直接そんなに長い時間かけて見せつけなくたっていいだろうがよう!!

 そうなんですよ~。この映画、観ているとびっくりするくらいに、先達たるいくたの名作ホラー映画のイメージが連想されて、アスター監督の嗜好や深い敬意がありありと伝わってきます。それでいて、単にディティールや小道具だけをつまんだという手軽さじゃないのが、芸がこまかいというか、頭おかしいというか。
 『ウィッカーマン』を引き合いに出すまでもなく、この『ミッドサマー』は、映画を観たたくさんの方々による考察・感想サイトで、「あの映画と似ている!」、「この映画が元ネタか?」という指摘がなされているようです。
 カブるのを覚悟のうえで、私も観ている最中に気づいた、『ミッドサマー』の構造にインスピレーションを与えたのではないかと思われる作品を挙げてみましょう。

・軽率な若者たちがヒドい目に遭う …… 王道中の王道『13日の金曜日』シリーズ ←ホラー映画伝統の様式美……
・主人公の精神状態があまりよろしくない …… 『呪われたジェシカ』(1971年 アメリカ)
・主人公と恋人との関係があまりよろしくない …… 『ポゼッション』(1981年 フランス・西ドイツ)
・マーク青年のなれのはて …… 『悪魔のいけにえ』(1974年 アメリカ)
・恐怖の儀式アッテストゥパンの撮り方 …… 『回路』(2001年 日本)
・村の美少女マヤがパイにまぜたもの …… 『カンゾー先生』(1998年 日本)

 なんということでしょうか、6作品のうち2作に、麻生久美子さんが関係している!! アスター監督は麻生さんのファンなのか!? 武運長久、武運長久……
 『13日の金曜日』の文法は、もはや私が申しあげるまでもなく、観る人のうちのほぼ全員が「あ、こいつら絶対ひどい目に遭うな。」と直感してしまう安心と信頼のパターンですよね。
 あ! そういえば最近、近所のショッピングモールのガチャガチャコーナーで、なんと『13日の金曜日』シリーズの各タイトルごとのジェイソンマスク(主にホッケーのあれ)コレクションが売っていてたまげました! すばらしいですね、この、思わず需要を疑ってしまうけど少なくとも私は迷わず買ってしまうセンス!! 200円は安いなぁ。私は都合2回チャレンジして、『 PART2』(1981年)と『 PART7 新しい恐怖』(1988年)のバージョンが当たりました。いいですねぇ、ちゃんと『 PART2』も入れてくれてるのが! そして、なにごとも無かったかのように2009年のリブート版がしれっと黙殺されているのもステキですね。でも、こうズララ~っとジェイソンマスクが並びますと、タイトルの中のある作品のネタバレになっているようで、ちょっぴりハラハラしてしまいます。でも、そういうオチ、私は大好き!!

 私が連想した以上の6作品は、みんなみんな、私が大好きな作品です。もしもアスター監督が本当にそのあたりから要素を拾っていたとするのならば、「あんたも好きねぇ!」と申し上げたい。
 でも、逆に言うと、それらの要素を『ミッドサマー』からさっぴいていって残るものこそがアスター監督オリジナルの「やりたいこと」、「見せたいこと」ということになるのでしょうが……となると、「エグい肉体損壊」とか、「ゆがんだ価値観を疑いなく受容する集団の不気味さ」、そして「個人を軽くプチっと押しつぶす同調圧力の恐怖」になっちゃうんじゃないでしょうか。
 いや~、それ……わざわざ映画館に行ってお金払ってまで観たいもんじゃないよねぇ。充分に怖いは怖いんだけど、「畏怖」からは最も遠い場所に位置する、忌まわしいにも程のある怖さですよね。映画にせずとも、現実の人間社会やネットの中でいくらでも見られるイヤ~なやつです。
 それを、あんなにしつこくお金をかけて作り込んでお客さんに見せつけるとは……アスター監督、ちょっと私にはキツいかなぁ。前作の映画もけっこういい評判のようなんですが、西洋の悪魔ものらしいし、アスター監督の「家族観」も炸裂している作品のようなので、まぁたぶん見ることはないかと思います。次回作も、見ることはないかなあ。

 クライマックスに近づくにつれて、イケメン彼氏のクリスチャンがどんどんヒドい目に遭わされていくのも、男としてけっこう見ていられなエグさを感じましたが、もうクリスチャンが前かがみになっていようがすっぱだかで広場を走り回ろうが、客である私がもうぜんぜん笑える精神状態になっていないのが残念でした。アスター監督としても、そこは笑って欲しいところなのかも知れないんだけど、他ならぬあなたのおかげで笑えなくなっているわけですし……合間に悪趣味マックスの「男のいけづくり」も入れてくるしさぁ。どうしてほしいのよ、ホントに!?
 クリスチャンの受難の中でいちばんヒドかったのは、なんといってもマヤとのあのシーンなのですが、ふつう男だったら「うるせぇ!! みんな出てけ!!」とか、「顔を近づけて熱唱すんな!!」と叫びたくなるところですよね。でも、江戸時代の徳川将軍家って、夜はだいたいあんな感じだったんでしょ? 殿様って、大変だったんだなぁ……
 ただ、遠目に観ただけですが、さんざんあんなに汗まみれで前かがみになっておきながら、肝心の裸になったショットでクリスチャンのあの部分がああなっているのは、さすがにいかがなものかと思いました。いや、そこはデューク東郷のような漢を見せて欲しかったなぁ、クリスチャン。いや、そうなってたら映画として公開できなかったでしょうけど。

 とまぁ、今回も色々ぐだぐだ言わせていただきましたが、この作品でほぼ一点だけ「いいな。」と思ったのは、やっぱり主人公ダニーの笑顔で物語が終わっている、というところでしょうか。まぁこういう映画って、客観的に見ればとてもじゃないけど幸せとは言えない結末に主人公がおかれて終わるわけなんですが、それでもせめて主人公の「心」だけは確かに幸せになりましたとさ、という部分をしっかりと描いたのは、まぁいいかなと思いました。
 つまるところ、ダニーがほんとうに欲しかったのは、内心「めんどくせぇな……」と当惑している恋人による背中さすりなどではなく、事情なんか知らないしそもそも言語さえ通じてなくても、とにかく自分と一緒に絶叫し慟哭してくれる人の存在だったのねと。そこらへん、宗教団体の人心掌握の手管を見たような気がして非常に怖かったのですが、冒頭のニューヨークとクライマックスのホルガ村との、ダニーから見た「あたたかみ」の対比は見事というしかありませんでした。そして、その慈愛に満ちたホルガ村にも、短いミッドサマーが終われば、冒頭にあったような「死の冬」が近づいてくるという……アスター監督は、つくづくシニカルで意地悪なお人だ!
 ただ、例の三角形の家がボンボン燃えるシーンが、上映時間の制約もあるのか、かなりのぶつ切りカットでさっさか処理されているのはもったいなかったなぁ。実物大の家が燃えるのって、ものすごいスペクタクルなのに! しつこい死体の描写なんかどうでもいいから、こっちに時間を割いてじっくり見せて欲しかったですよ~。死の描写なんか、みんなイギリスから来た女の子の方くらいのにおわせ程度でいいんですって! 想像で補えるんだから。
 さすがに聖タルコフスキー監督の『サクリファイス』(1986年)までとは言いませんが、なるべくノーカットで流してほしかったなぁ。あ! そういえば『サクリファイス』って、ソ連のタルコフスキー監督の作品だけど、スウェーデン映画だよ!! アスター監督、真似るのそうとう大変なとこだぞ~、そこは!

 ぜんぜん関係無いのですが、この映画を観て、私はいろいろと、大学生時代に学科ゼミの見学実習で静岡県の山奥で年に一度だけ行われる伝統の祭を0泊2日(寝ちゃいけないんです)で観に行ったり、演劇フェスティバルに参加するために、これまた山奥の村で世界各国から来た劇団関係者とともに約1ヶ月過ごしたという(お客さんが来る前から長く泊まり込むわけです)、非常に得がたい経験の日々を思い出しました。
 もちろん、映画のようなヒドい目に遭うこともそんなにはなく、当時10~20代だった私も無事に人里に帰ってきて生き延びたわけなのですが、こういった「異世界」にまぎれこむ時のウキウキ感。そして、「あ~、現実の世界に帰るのやだな~。バイト生活に戻るのやだな~。」という心理が働いたのを、ありありと思い出しました。異世界とて、それが日常になったらつまんなくなるに決まってるんですけどね。ダニーの幸福も、うたかたの夢なんでしょうなぁ。あの宿泊所みたいなところに飾ってあった無数の歴代メイ・クイーンの色あせた写真が哀しいですね。

 そういえば思い出したよ。静岡の山奥の祭を見に行った時、さすがに映画みたいな気持ち悪い謎の飲み物や謎肉はふるまわれなかったんですけど、村はずれの自動販売機でジョージアコーヒーを買って、ゼミの友達とくっちゃべりながらプルトップを開けてなにげに中身を口に入れたら、何とも言いようのない、普通のコーヒーとはまったく異なる不気味な味が……うげっ、これは!?
 思わず缶コーヒーの底を確かめてみたら、賞味期限が半年過ぎてました……これ、なかなかないことですよね!? 賞味期限まであと半年を切った時点で、だいぶ味がおかしくなってきますからね。
 ま、マヤみたいな美少女はいなかったし、せいぜい山から駆け下りてきた鬼に熱湯のしぶきをかけられた程度で済みましたが。

 この映画の、撮影中のオフショットのような写真も、ちょっと検索してみるとけっこうあるんですが、いかにもやんちゃな若者たちが、1ヶ月くらい山奥に泊まり込んで、ワイワイガヤガヤ言いながら、楽しく一生懸命作品を作り込んでいるという感じのなごやかな雰囲気を感じました。
 映画本編よりも、むしろそっちのほうにしみじみ感動したわ!! 私もつくづく、歳をとったなぁ~。
コメント
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涙の悲願成就! 2020年はゆりりんの年であった!! ~ドラマ『探偵・由利麟太郎』~

2020年06月20日 20時40分03秒 | ミステリーまわり
 どうもこんばんは~、そうだいでございます。なんか、今年は空梅雨なんですかねぇ。降る、降るっていっても、こちら山形はなかなか雨が降ってくれないんですよ。九州地方とか、西日本は豪雨に悩まされている地域もあるそうなんですが、こっちは湿度が高くなるばっかりで。夏が来るといっても、今年はプールも打ち上げ花火もお祭りもないでしょうし。この夏は、遊ぶにもなにかとアイデアが必要のようですなぁ。
 今年のゴールデンウィークはどこにも行けなかったんで、そろそろ近づいてきた夏休み、7月の4連休なんかは、思いきってどこか遠くの温泉宿にでも泊りに行きたいなぁ~と考えているんですが、東京のコロナ事情を見ていますと、もしかして第2波もすぐそこまで来ているのかも知れず……まだ安心はできませんよね。
 私が山形に戻ってきて、はや5年が経ちまして、温泉王国・山形の温泉を各個撃破していくこころみも、ついに昨年で100湯を超えました。でもさすがは豊饒なる王国と言いますか、米沢とか庄内とか、まだまだ未開の温泉郷はいくらでも残っています。銀山も、ちゃんと泊りでは行ってないし。いやほんと、山形温泉ネットワークは広大ですわ! 五色温泉、またいつか泊りに行きたいなぁ。
 ただ、この夏はそんな山形県内を生意気にもひょいっと跳び越えて県外に繰り出したいとも考えているのですが……まだ時期尚早かも知れないし、判断つきかねているところです。やだね~コロナ!

 さて、そんなこんなでともかく良いニュースの少ない印象のある2020年なわけですが、まさか! まさかまさかの大朗報が!! これにはわたくし、心の底から驚きました。


ドラマシリーズ『探偵・由利麟太郎』(2020年6~7月放送予定 全5話 関西テレビ)
 『探偵・由利麟太郎(たんていゆりりんたろう)』は、カンテレ(関西テレビ)制作・フジテレビ系列「火曜21時枠」で放送予定の、横溝正史原作による「由利麟太郎」シリーズを映像化した連続テレビドラマシリーズ。主演は、本作が地上波連続ドラマ初主演となる吉川晃司。各話54分、第1回のみ15分拡大放送。
 番組キャッチコピーは、「観察すれば、真実は自ずと浮かび上がる」。

 本作は、昭和を代表する推理小説作家・横溝正史が、彼の代表作である「金田一耕助」シリーズよりも前に生み出していた探偵・由利麟太郎が活躍するシリーズ作品を初めて連続ドラマ化したもので、在阪テレビ局であるカンテレ(関西テレビ)が「ALL関西」を掲げ、34年ぶりにゴールデン・プライム帯の連続ドラマとして東映京都撮影所と共同制作した。全シーンにおいて京都をはじめとする関西地方で撮影されている。
 原作小説において由利麟太郎が登場する作品の映像化は、単発のテレビドラマとしては石坂浩二が由利麟太郎を演じた『蝶々殺人事件』(1998年12月5日にテレビ朝日『土曜ワイド劇場』枠で放送)の事例がある。また、『真珠郎』、『仮面劇場』、『木乃伊(ミイラ)の花嫁』、『悪魔の家』を原作として、由利および三津木を金田一耕助(演・古谷一行)に置き換えた連続ドラマや単発ドラマシリーズの事例や、『真珠郎』を原作として由利を金田一耕助(演・小野寺昭)に置き換えた単発ドラマの事例もある。ちなみに、映像化作品において由利麟太郎が原作小説の通りに白髪の人物として描写されているのは本作が初である。
 また本作は、2019新型コロナウイルスの感染拡大で開催延期となった東京オリンピックが本来は2020年7月に開幕予定だったことから、当初より全5話の特別連続ドラマとして企画・制作が進んでいたため、撮影はコロナ禍の影響を受ける直前だった2020年3月にクランクアップしている。
 なお、原作小説の時代設定は昭和初期(太平洋戦争前)であるが、本作では令和現在に置き換えるなどの変更が行われている(第1話で2020年3月1日の日付が見られる)。
 ちなみに、原作小説における由利麟太郎は「1893年生まれ」という設定であり、今回映像化される作品の中では40歳代ということになる。

主なキャスティング
4代目・由利 麟太郎   …… 吉川 晃司(54歳)
22代目・等々力 大志警部 …… 田辺 誠一(51歳)

三津木 俊助   …… 志尊 淳(25歳)
波田 聡美    …… どんぐり(60歳)
山岸 克平    …… 木本 武宏(49歳)
鈴子(等々力の部下)…… 森山 くるみ(26歳)
等々力の妻    …… あだち 理絵子(45歳)

主なスタッフ
脚本  …… 小林 弘利(59歳)
音楽  …… ワンミュージック
主題歌 …… 吉川 晃司
演出  …… 木村 弥寿彦

原作小説 …… 『花髑髏』(1937年)、『憑かれた女』(1933年)、『銀色の舞踏靴』(1939年)、『蝶々殺人事件』(1946~47年)
原作との相違点
・原作小説では、由利麟太郎の活動拠点は東京の麹町であるが、本作では京都となっている。
・本作での由利の弓道の心得があるという設定はオリジナルで、由利役の吉川晃司と制作スタッフとの打ち合わせから設定に盛り込まれた。
・原作小説では、三津木俊助は新日報社の社会部の新聞記者であり、本作のようなミステリー作家志望の青年ではないが、原作の三津木も記者業の傍ら探偵小説を執筆している。
・原作では三津木が由利の解決した事件を新日報で記事にしているが、本作では三津木が WEBサイトに由利の活躍記録をアップしている。
・等々力警部は原作小説では警視庁の警部であるが、本作では京都府警に所属している。
・等々力警部が由利と大学時代の同窓生という設定と、たい焼き好きという設定はオリジナルである。
・本作の波田聡美と山岸克平、鈴子や等々力警部の妻は、すべて本作オリジナルのキャラクターである。


 いや~、まさか、2020年にこのお方が堂々復活なされるとは! しかも、京都で!? 5話限定で!? 吉川晃司さんで!? もう、どこから不思議に思っていいのやら……

 まず兆候として、おととし2018年に角川文庫版の『真珠郎』が、まんまあの杉本一文画伯の表紙絵ごと堂々の復刊をとげました。21世紀も10年以上が過ぎたこの時代に、いったい誰がこの復活を予期しえたというのでしょうか……いや、そりゃ確かに傑作なんですけど!
 なんだこれは……これはおかしい。これは何か、2016年の長谷川博己金田一版『獄門島』以降の「金田一耕助ブーム」とは別の地下水流が動き始めているぞ……なんとなく、浮かれてばかりもいられないミョ~な胸騒ぎがし始めていたわけです。まぁ、名探偵・金田一耕助にとどまらない「横溝正史ワールド」全体の再発見の流れなのかと喜んではいたのですが。

 そして、今年の春ごろに本屋さんで「連続ドラマ化決定!!」という目を疑うような惹句とともに、『蝶々殺人事件』、『憑かれた女』、『花髑髏』、『血蝙蝠』という、これまた目を疑うようなラインナップが月イチで復刊されるという、もはや「血迷ったか、角川書店!?」というか、「もっと先に復刊するやつ、あんじゃん!?」というか……いや、これはもううれしい悲鳴以外の何ものでもないわけなんですが、まぁ~ビックリ仰天のムーブメントが告知されたわけなのです。

 今までわたくし、横溝ワールドを原作とする映像作品についてのレビューだのなんだのを、この『長岡京エイリアン』にてさまざまつづってまいりましたが、正直言いまして、「由利麟太郎シリーズ」に関しましてはアウェー感があるというか、そんなに詳しくないです。というか、そもそも思い入れがうすいという……
 そりゃまぁ、横溝ファンとして青春の大切な時間をつぎ込んで古本屋をまわった身としましては、昔からちょいちょい、例の角川文庫の「黒地に緑字の背表紙」の未読本を掘り出してはむさぼり読み、その中で由利麟太郎ものも読んではいたのですが、ぶっちゃけ「なんだよ! 金田一出てこないやつ買っちゃったよ!」みたいな印象の持ち方で、完全に「金田一耕助ガチャ」のハズレ枠としか言いようのないポジションに甘んじていたのでした。いや、あくまでも当時の私の中では、の話ですよ!?
 振り返ってみれば、それだけ「金田一耕助」の名探偵としてのイメージは、すでに当時のそうだい少年に強烈に植えつけられていたのでしょう。それはひとえに、単発になっていたとはいえ充分におどろおどろしいインパクトを持って放送されていた TBSの古谷金田一による『名推理』シリーズとか、フジテレビの片岡金田一シリーズとか、衛星放送でたまに放送されていた石坂金田一シリーズとか、『金田一少年の事件簿』とか、一連の二次的作品の情報のおかげだったわけです。当然、原作小説も読んでみたらおもしろいわけで。

 それに対して由利麟太郎シリーズはといいますと……たま~に『真珠郎』とかが映像化されても、あったり前のように名探偵役が金田一耕助にすり替えられて、「え? 解決するのは金田一耕助ですが、なにか?」みたいな恐怖の情報操作が行われていたわけです。『仮面劇場』とか、『木乃伊の花嫁』とか、『悪魔の家』とか……すべて金田一耕助という怪物の犠牲者ですよね。こんなキャラクターが「天使」なわけねぇだろ!!
 ただ、これらは別にテレビ局の横暴でそんな改変が行われていたとも言いきれず、『真珠郎』と『仮面劇場』はがっつり横溝先生がご存命の時に金田一ものとして映像化されており、さらに言うと、もともと由利麟太郎や三津木俊助が主人公だったジュブナイル作品(『夜光怪人』と『蝋面博士』)が、横溝先生の許可を得て推理作家・山村正夫によって金田一ものとしてリライトされるという、由利&三津木ファンにとってはもう造物主さえも信用できない愛なき極寒の迫害時代が、半世紀にもわたって続いていたわけだったのです。かわいそすぎ!!
 映像化された『真珠郎』なんて、3作品中3作すべてが金田一もの! ちゃんと由利ものにしてるのは JET先生のコミカライズだけだという寒々しさ。さすがは JET先生、金田一もののコミカライズの3番目に『睡れる花嫁』を持ってくるだけのお人だ!!
 そんな中でも、かつてあの石坂浩二さんが由利麟太郎を演じた『蝶々殺人事件』があったこと、確かに私も覚えてました。ただ、見たはずなんだけど肝心の内容は……とにかくつまんなかったっていう記憶しかない! いや、それは私がガキンチョだったからおもしろさがわかんなかったんだろうな、きっと! うん……

 ちなみにここで、横溝先生の手による原作小説での「由利麟太郎の事件簿」をざっと簡単に整理してみましょう。個人的には意外に感じたのですが、あの完璧主義者っぽい横溝先生にしては珍しく、中絶作品が2作もあるんですね! 金田一ものの『仮面舞踏会』を見てもわかる通り、自作の完成にはあんなにねちっこく執念を燃やしていた先生なのに……
 それにしても、金田一ものも当然そうなのですが、大小関係なく全ての作品を書籍で読めるっていう今現在の状況は、ホントに幸せなことですよ。四半世紀前の私が聞いたら口から血を吐いてうらやましがりますよ! 嗚呼、自転車立ちこぎで山形市内を汗まみれで駆けずり回り、数少ない古本屋に通いつめていたあの日々。っていうか、柏書房さまは神様だ!!


☆特別ふろく 名探偵・由利麟太郎の事件簿(カッコ内の年数は事件発生推定年月)
1、『石膏美人』 (19?年5月 角川文庫『悪魔の設計図』に収録)
2、『獣人』   (19?年9月 角川文庫『悪魔の設計図』に収録)
3、『憑かれた女』(1933年8月 角川文庫)
 ※ただし『憑かれた女』は初出当初は由利&三津木ものではなく、戦後1948年1月に単行本化された際に由利&三津木ものとして改稿された。
4、『白蝋変化』 (1936年4月 角川文庫『花髑髏』に収録)
5、『蜘蛛と百合』(1936年7月 角川文庫『蝶々殺人事件』に収録)
6、『真珠郎』(1936年10月 角川文庫)
ex1、『猫と蝋人形』(1936年8月 三津木俊助のみの登場 角川文庫『仮面劇場』に収録)
7、『首吊り船』(1936年10月 角川文庫『憑かれた女』に収録)
8、『夜光虫』(1936年11月 角川文庫)
9、『幻の女』(1937年1月 角川文庫)
10、『焙烙の刑』(1937年初春 角川文庫『花髑髏』に収録)
11、『鸚鵡を飼う女』(1937年4月 角川文庫『双仮面』に収録)
12、『幽霊鉄仮面』(1937年4月 ジュブナイル作品 角川スニーカー文庫)
  ※この作品から、由利&三津木に加えて少年探偵・御子柴進が登場する。
13、『花髑髏』(1937年5月 角川文庫)
14、『薔薇と鬱金香』(1937年7月 角川文庫『蝶々殺人事件』に収録)
15、『蝶々殺人事件』 (1937年10月 角川文庫)※作品の連載は1946~47年
16、『迷路の三人』(1937年8月 翻案作品 柏書房『由利・三津木探偵小説集成2』)
ex2、『猿と死美人』(1938年2月 三津木俊助のみの登場 角川文庫『幻の女』に収録)
17、『木乃伊の花嫁』 (1938年2月 角川文庫『青い外套を着た女』に収録)
ex3、『白蝋少年』(1938年4月 三津木俊助のみの登場 角川文庫『仮面劇場』に収録)
ex4、『悪魔の家』(1938年5月 三津木俊助のみの登場 角川文庫)
18、『悪魔の設計図』(1938年6月 角川文庫)
19、『双仮面』(1938年7月 角川文庫)
20、『仮面劇場』(1938年10月 角川文庫)
21、『銀色の舞踏靴』(1939年3月 角川文庫『血蝙蝠』に収録)
22、『黒衣の人』(1939年4月 角川文庫『悪魔の家』に収録)
23、『盲目の犬』(1939年4月 角川文庫『双仮面』に収録)
24、『血蝙蝠』(1939年8月 角川文庫)
25、『嵐の道化師』(1939年10月 角川文庫『悪魔の家』に収録)
26、『怪盗どくろ指紋』(1940年1月 ジュブナイル作品 角川文庫『仮面城』に収録)
27、『三行広告事件』 (1942年 角川文庫『空蝉処女』に収録)
28、『神の矢』(1949年2月 中絶作品 柏書房『由利・三津木探偵小説集成4』)
29、『模造殺人事件』(1950年5月 中絶作品 柏書房『由利・三津木探偵小説集成4』)
30、『カルメンの死』(1950年1月 角川文庫『幻の女』に収録)


 なるほど~。名探偵・由利麟太郎が活躍する作品は、ジュブナイルもあわせて全部で30作なんですか。ほとんどが長編じゃないし、これはコンプリートもお手頃ですな。本のお値段はちょっと張るかも知れませんが、まぁ読めるんだからいいですよね。
 いっぽう、我らが金田一耕助ものの作品は、ジュブナイル9作をあわせて全部で86作! 由利シリーズの約3倍というのは、順当なボリュームでしょう。そして、その中には先ほど言ったような経緯で、由利&三津木から「ぶんどった」因縁の2作もあるという……まぁいいじゃないのジュブナイルなんだから! 仲良くしましょうよ~。

 さてさて、原作小説のお話はここまでにしておきまして、肝心の「令和に復活した由利&三津木 in 京都」に話題を移しましょう!
 この記事をつづる時点では、第1話『花髑髏』のみを観ているという状況なのですが、ドラマの中身はといいますと……

存外(失礼ながら)おもしろいじゃないか! 由利麟太郎やらなんやら、アレンジはものすごいけど。

 いや~、っていうか、主演が吉川晃司っていう段階で、まぁ成功しかないんじゃないですか。何しててもカッコいい! 原作小説をちょっと読んでみるとわかるんですが、由利麟太郎って、実年齢的にも吉川さんよりもずっと若いし、けっこう猪突猛進で軽率に見えるところもあるんですよね。それなのに、一人称は「わし」! よくわかんねぇ……作品によっても印象がかなり変わるし。

 あと、由利麟太郎ものって、ほんとに「雰囲気系ミステリー」といいますか、「細かいことは気にしない!」という往年の「探偵小説」のお作法を色濃く継いでいるんですよね、だって戦前の娯楽小説なんですし。
 ですから、今回のように大幅に作中要素を改変して、由利麟太郎も原作以上にエキセントリックな変人にしたとしても、いちいち目くじら立てずに「いや~この、天知小五郎みたいな予定調和感が心地いいね。」ってな感じで眺めていればいいんですな。「推理小説」じゃあないんですよね。完全に、金田一耕助でなく明智小五郎の系譜にある名探偵になっているわけです。いかにも何か起こりそうな洋館は出てくるわ、謎の生体実験は出てくるわ!
 そう、基本的に由利&三津木シリーズは「戦前」の物語なんです。そして、『獄門島』の例を出すまでもなく、金田一耕助シリーズのほとんどは、「戦後」の物語。「古い時代の終わり」が生む事件という意味では、あの『本陣殺人事件』だって、由利先生ではなく金田一耕助が解決するべき事件なんですな。ちゃんと棲みわけてるんだなぁ。そして、金田一耕助が活躍する時、由利先生は去るという。

 なので、令和のこの時代に由利麟太郎が復活するというのは、確かに理に適ったことなのかもしれません。「もはや戦後ではない。すでに戦前である。」という……ちょっと怖い話ですが。

 それにしましても、今回の初連続ドラマ化が、たったの5回で終わってしまうというのは、最初から決まっているとだとは言え、いかにももったいない!
 京都ロケにもかなりの気合が入っていますし、来年にでも、また撮影状況が落ち着いた時に、まさかの第2シーズンの到来を期待したいと思います!! あ、来年もまたオリンピック進行に巻き込まれてしまうのでしょうが……

 いや~、等々力警部、気持ちいいくらいに原作小説からかけ離れたキャラクターになっていましたね……加藤武バージョンとはまた違った方向性で。そういえば、かつて田辺誠一さんはコマーシャルかかなんかで金田一耕助を演じていましたよね。まさか等々力警部のほうにいくとは。硬派な由利麟太郎に比べて、まるで金田一耕助のようなユニークな人物になっているのが興味深い。そして、部下の女刑事の名前は「鈴子」て! 制作スタッフもお好きねぇ~!!
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ドラマシリーズ 『ゴッサム』ファイナルシーズン

2020年06月10日 00時32分59秒 | 特撮あたり
『GOTHAM / ゴッサム』(2014年9月~19年4月放送 5シーズン全100話 各話44~49分)

 『GOTHAM / ゴッサム』は、ブルーノ=ヘラーが企画し、DCコミックスの『バットマン』シリーズを基とし、青年期のジェイムズ=ゴードンと少年期のブルース=ウェインと、若き日のオズワルド=コブルポット(のちのペンギン)を中心に描いた、ゴッサム・シティを舞台にしたアメリカ合衆国の犯罪テレビドラマである。ゴードン、ウェイン、コブルポットの3人を中心に様々なキャラクターが登場し、中には後にバットマンとなるブルースと深い因縁を持つことになるキャラクターも多数いる。
 主人公である青年期のゴードンはベンジャミン=マッケンジーが演じ、ダニー=キャノンがエグゼクティブ・プロデューサーとパイロット版監督を務めている。第1シーズンは2014年9月よりフォックスで放送された。2015年9月からは第2シーズンが、2016年9月からは第3シーズンが、2017年9月からは第4シーズンが、最終シーズンとなる第5シーズンは2019年1月3日から全12話の構成で放送された。

 本シリーズでは、ペンギン、リドラー、キャットウーマン、ジョーカー、ポイズン・アイヴィー、スケアクロウ、ヒューゴ=ストレンジ、トゥーフェイス、Mr.フリーズ、Mr.ザーズといった『バットマン』シリーズの悪役たちのバックストーリーも語られる。


主なキャスティング(俳優の年齢は、ファイナルシーズン放送当初のもの)
ジェイムズ(ジム)=ゴードン …… ベン=マッケンジー(40歳)
 ゴッサムシティ市警の刑事で、退役軍人。父ピーターはゴッサムシティの地方検事だったが、ジェイムズが13歳の時に自動車事故で亡くなっている。
 封鎖されたゴッサムシティに残り、警察を率いて避難できなかった市民を犯罪者たちから守る。貴重な輸送物資を奪おうとしたペンギンの脚を撃って撤退させる。

ハーヴェイ=ブロック …… ドナル=ローグ(52歳)
 ゴードンのパートナーであるベテラン刑事。
 ゴードンと共に、無法地帯と化したゴッサムシティに留まる。

ルシアス=フォックス …… クリス=チョーク(32歳)
 ゴッサム市警で科学部門担当として勤務している。後にウェイン・エンタープライズの CEOとなり、バットマンの使用するガジェットやツールの多くを開発することになる。
 ゴードンらと共に無法地帯と化したゴッサムシティに留まる。ゴッサム市警に所属しながら、同時にウェイン・エンタープライズの技術開発部門を統括して周辺勢力に対抗する。

ブルース=ウェイン …… ダヴィード=マズーズ(17歳)
 強盗に殺害された大富豪ウェイン夫妻の一人息子で、現在は執事のアルフレッド=ペニーワースと生活している孤児。
 成人後にはヒーロー「バットマン」として犯罪者と戦うこととなる。
 脊髄を負傷したセリーナに付き添ってゴッサムシティに留まり、市外から救援物資を輸送させる。

アルフレッド=ペニーワース …… ショーン=パートウィー(54歳)
 ブルース=ウェインの執事かつ保護者。元特殊空挺部隊隊員。
 セリーナ、ブルースと共に封鎖されたゴッサムに留まる。

セリーナ=カイル …… キャムレン=ビコンドヴァ(19歳)→ リリー=シモンズ(25歳)
 若いホームレスの泥棒で、自称「キャット」。ブルースとの間にほのかな恋愛感情を育む。しかし、同じ天涯孤独の身ではあっても、裕福な環境である者とそうではない者との違いからすれ違いを起こしてしまうことも多いが、それでもブルースの存在は次第に大きくなっていく。
 後にバットマンと複雑な間柄となる女怪盗「キャットウーマン」となる人物。
 閉鎖されたゴッサムシティの劣悪な医療体制の中で、ジェレマイアに撃たれた脊椎は回復せず、絶望して自殺を図るが失敗する。

オズワルド=コブルポット(ペンギン)…… ロビン・ロード=テイラー(40歳)
 「ペンギン」というあだ名で呼ばれる、暗黒街に身を置く男。追い詰められると卑屈になる傾向があるなど情けない面も目立つが、上昇志向が異様に強く、闇の世界でのし上がることを目論む。戦闘能力は決して高くないが、わずかな隙を見逃さずに反撃に転じる狡猾さと、持ち前の強い悪運で、何度死の淵の危険にさらされながらも、しぶとく生き延びており、再起を繰り返している。
 閉鎖されたゴッサムシティの市庁舎を不法占拠し、武器弾薬を製造して勢力を保つ。ペンギンに殺されたブッチ=ギルジーンの復讐に燃えるタビサを返り討ちにする。その際に自分の脚を撃ったゴードンの首に懸賞金をかける。「エドワード」という名前のブルドッグを飼っている。

アーサー=ペン(ヴェントリロクイスト&スカーフェイス) …… アンドリュー=セロン
 元々はカーマイン=ファルコーネの部下だった、コブルポットの顧問会計士。
 無法地帯と化したゴッサムシティに陣取るペンギンの側近兼スポークスマンとして活躍するが、独裁の度合いを更に高めるペンギンに恐れを抱いている。

バーバラ=キーン …… エリン=リチャーズ(32歳)
 ジェイムズ=ゴードンの元婚約者。
 無法地帯と化したゴッサムシティの歓楽街を女性と共に占拠し、娯楽や飲酒を周辺勢力に売りつけ勢力を保つ。長年行動を共にしてきたタビサをペンギンに殺される。

タビサ=ギャラバン …… ジェシカ=ルーカス(33歳)
 テオ=ギャラバンの妹で鞭使い。
 愛するブッチ=ギルジーンを殺したペンギンの復讐を図るが、失敗して逆に殺される。

リドラー …… コーリー・マイケル=スミス(32歳)
 無法地帯と化したゴッサムシティに留まり、無人の図書館を改造して潜伏しているが、原因不明の断続的な記憶喪失に悩まされている。

レスリー(リー)=トンプキンス …… モリーナ=バッカリン(39歳)
 3ヶ月前の連絡橋爆破の直後にドランスに捕らえられ、脳内に行動を支配するチップを埋め込まれてゴードンを襲うが、チップを破壊されて正気を取り戻す。

エドゥアルド=ドランス(ベイン)…… シェーン=ウェスト(40歳)
 かつて軍隊時代のジムの戦友だったアメリカ陸軍軍曹。テレサ=ウォーカー国防長官の指令により、軍事クーデターや暗殺を専門とする特殊部隊を率いてゴッサムシティに入る。その裏で、ニグマを脳内チップで操って市民の避難施設を爆破させ、ペンギンら他の悪党ともども責任をなすりつけて始末しようとする計画に従事していた。

テレサ=ウォーカー(ナイッサ・アル・グール)…… ジェイミー=マーレイ(41歳)
 アメリカ合衆国国防長官で、ドランスにゴッサムシティ制圧の指令を下した黒幕。ゴードンとの対決に敗れて致命傷を負ったドランスをストレンジ教授のもとに連れてベインに改造したり、リー=トンプキンスの脳内に埋め込んだ行動支配チップを作動させてゴードンを襲わせたりと暗躍する。その正体はラーズ・アル・グールの娘ナイッサであり、父を殺したブルースとバーバラに復讐し、ゴッサムシティを壊滅させようとしていた。

ジェレマイア=ヴァレスカ …… キャメロン=モナハン(25歳)
 ゴッサムシティを無法地帯状態に陥れ、セリーナを狙撃して半身不随にした張本人。連絡橋爆破から3ヶ月以上行方をくらませているが、側近のエコーを司祭として、自分を崇拝するカルト教団「予言者」の教祖になっている。逃げ遅れた少年たちを捕えて、閉鎖されたゴッサムシティから本土に通じるトンネルを掘らせていた。

エコー(ハーレイ・クイン)…… フランチェスカ=ルート・ドッドスン(32歳)
 ジェレマイア=ヴァレスカの右腕として暗躍する謎の女性。姿を消したままのジェレマイアに代わり、無法地帯と化したゴッサムシティの各勢力に忍び入り情報を収集する。
 ジェレマイアが課した「儀式」のために狂ってしまっているが、ジェレマイアへの忠誠心と格闘能力は更に高まっている。自分の気に入った相手を「プリンちゃん」と呼ぶクセがある。

マッド・ハッター …… ベネディクト=サミュエル(30歳)
 催眠術の能力が高く、薬学にも長けているが、芝居がかった言動の目立つその本質は、狂気によって倒錯しきったマッドサイエンティストである。
 現在はエコーと共にジェレマイアの手下となっており、ゴードンとリーやナローズ地区のギャングに催眠術をかけジェレマイアの計画に加担する。

スケアクロウ …… デイヴィッド=W=トンプスン(24歳)
 人間の恐怖心を煽り立てる「恐怖ガス」を開発して殺人を犯し、ゴッサム市警に射殺されたジェラルド=クレインの一人息子。
 無法地帯と化したゴッサムシティの一角を占拠する勢力のリーダーとなり、周辺勢力の物資を略奪する。

ポイズン・アイヴィー …… ペイトン=リスト(32歳)
 人々を殺して死体を公園の植物の肥料にしていたために魔女と恐れられ捕獲・監禁されていたが、ブルースに救い出されてセリーナの脊髄を治す謎の種を渡す。

ミュータンツのリーダー …… シド=オコネル
 かつてゴッサムシティの高級住宅地区だったゴーストタウン「ダークゾーン」を支配する暴力集団ミュータンツのリーダー。弱者を惨殺し略奪を繰り返すが、覚醒したセリーナと対決し敗れる。

Mr.ザーズ …… アンソニー=カリガン
 サディスティックなヒットマン。殺人のたびにその数を画線法で肌を彫って記録する。
 ゴッサムシティが無法地帯と化してからは、ペンギンの探索を逃れて空きビルに潜伏していた。逃げ遅れた市民の避難するマンションの爆破犯として逮捕されペンギンに処刑されそうになるが、ゴードンとブロックに救い出される。

ヒューゴ=ストレンジ教授 …… ブラッドリー・ダリル=ウォン(58歳)
 アーカム・アサイラムおよびインディアン・ヒルズを支配し、人体実験に情熱を燃やす医師。
 かつてペンギンの命により重傷を負ったニグマを蘇生させるが、その時にウォーカー長官の命により、密かに脳内にニグマの行動を操るチップを埋め込んでいた。

マグパイ …… サラ=シェンカン
 宝石を盗んで爆弾のレプリカに置き換える盗賊。ペンギンの秘蔵する宝石を狙うが返り討ちにされてしまう。

ジェーン=カートライト(ジェーン・ドゥ)…… サラ=ピジョン
 インディアン・ヒルでのストレンジ教授による実験によって、触れた人間の姿に全身を変態させることができる特殊能力を身につけたヴィラン。20年前に家庭内暴力を受けていた母親が父親を殺害した事件で、証拠を見つけられなかったブロックらに当時7歳だったジェーンが強制的に自白させられたことによって母親は有罪になり、自身はアーカム・アサイラムに収容された。シーズン2でのインディアン・ヒル解放事件に乗じて脱走し、後に無法地帯と化したゴッサムシティで、ブロックら捜査に関わった刑事たちに復讐する。


第5(ファイナル)シーズンのあらすじ
 前シーズンの、ジェレマイアによるゴッサムシティの連絡橋爆破から約3ヶ月(87日)後。依然としてアメリカ本土から孤立化し続けるゴッサムシティでは、物資不足が深刻化し治安が更に悪化していた。ゴードン、ブルース、ゴッサム市警はゴッサムシティに留まり、市外に避難できなかった市民を守る。

シーズン5(ファイナル)全12話 2019年1月~4月
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