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★秀吉の朝鮮出兵を「侵略」と書く自由社版-扶桑社版からの改悪<11>


扶桑社から絶縁された「新しい歴史教科書をつくる会」が自由社という出版社から出した教科書が、扶桑社版を大部分コピーしつつ、コピーしなかった部分で自虐的に改悪している―という連載をお届けしています。これまで、自由社版は朝鮮に配慮していると指摘してきました。上の写真は、自由社版の歴史年表の3ページ目です。なんと、秀吉の朝鮮出兵を「朝鮮侵略」と書いています(扶桑社版の年表は「秀吉、朝鮮出兵」です)。
 
本文じゃなくて年表だから…なんて言わないでください。年表は歴史教科書の命です。これは、うっかりミスではありません。自由社版の年表には確固とした自虐史観の編集方針があるようです。「朝鮮侵略」の前のページには「倭寇が高麗や明を侵す」という記述があります(扶桑社版は「倭寇の出没」です)。大東亜戦争が「太平洋戦争」となっていることは連載の3回目でお伝えしました(扶桑社版は「大東亜(太平洋)戦争」です)。あえて変えているのです。
 
韓国政府は平成13年5月、検定に合格した日本の中学歴史教科書8社について35項目の修正要求を突きつけました。その中に“壬辰倭乱を侵略と書け”というのがありましたが、「つくる会」は今になって受け入れたわけです。
 
言うまでもなく、「侵略」概念を中世に当てはめて自国を糾弾することに対しては「つくる会」がずっと批判してきました。
 
 あまりにもひどかった歴史教科書←クリック
 トンデモ教科書←クリック
 
前回紹介した「つくる会」理事の小山常実という人は、会報「史」5月号で「教科書は、秀吉の朝鮮出兵を『侵略』として糾弾しながら、朝鮮から陶磁器など多くの文化が伝えられたことを異様なほど大きく扱っている」と他社の教科書を非難しています(小山の著書『歴史教科書が隠してきたもの』にも同じ記述があります)。しかし自由社版こそが秀吉の朝鮮出兵を「侵略」と糾弾し、陶工・李参平のコラムを「異様なほど大きく扱っている」ではありませんか。
▼小山常実の記述(「史」5月号)             ▼自由社版のコラム(p97)
 
 
小山は『歴史教科書が隠してきたもの』で、次のように虚偽を基に他社を攻撃しています。
 
【p30~31】一方では、秀吉の朝鮮出兵に二十世紀の価値観を表す「侵略」というレッテル貼りを行い、秀吉軍の「残虐さ」を際立たせる記述を行う。そして他方では、朝鮮から陶磁器技術などが伝えられたことを異常に強調するのである。
【p44】自由社を除く七社は、朝鮮出兵を「侵略」とする。
【p45】それにしても、七社が朝鮮出兵を「侵略」と位置づけているのはおかしなことである。そもそも、前近代の歴史に「侵略」という二十世紀の価値観をもちこんで断罪することは、歴史学や歴史教科書の立場としては許されないことである。(中略)朝鮮出兵を「侵略」と位置づけることはおかしなことである。
【p101~102】(帝国書院は)特に対韓国・朝鮮の関係では、教育出版とともに韓国・朝鮮を祖国とするような記述を行う最悪の教科書である。(中略)文禄・慶長の役を日本の「侵略」と位置づけている。
【p170】(自由社は)文禄・慶長の役を秀吉の「侵略」とすることもない。
【p180~181】教科書は、秀吉の朝鮮出兵を「侵略」として糾弾しながら、朝鮮から陶磁器など多くの文化が伝えられたことを異様なほど大きく扱っている。

 
よくこんなデタラメが書けるものです。学者としての良心はないのでしょうか。「本文ではないから無視した」という言い訳はできません。小山は序章で「本文はもちろん、注や写真の説明文に至るまで、原始時代から現代までの記述を通読した」と書いて、その基準で他社を批判しています。前回紹介した「つくる会」のホームページでは、写真説明や単元の見出しの下に書いてある文で自由社が扶桑社より優っていると採点しています。日本文教出版は秀吉が「大軍を送り」としているのですが、江戸時代のところに「豊臣秀吉の侵略でとだえていた朝鮮とは、家康のときに国交を回復した」という記述があります。小山はここをとらまえて日本文教出版を「侵略派」にしています。その基準なら自由社は当然「侵略派」です。つまり
 
 「朝鮮侵略」=自由社など8種類  「朝鮮出兵」=扶桑社のみ
 
連載の9回目で紹介した藤岡信勝会長の発言と同様、発行者と一体の編著者グループの理事が虚偽を基に他社教科書を中傷・誹謗する行為は独占禁止法違反の疑いが濃厚です。特に帝国書院は「最悪の教科書」と非難される根拠がインチキなのですから、たまったものではありません。
 
自由社は今回、歴史教科書だけを検定申請しましたが、平成22年度検定(23年度採択、24年度使用開始)の教科書には公民も申請すると表明していて、その代表執筆者に小山常実が決まっています。それで小山は自由社を一生懸命ヨイショしてきたのですが、こんな状況では、歴史も公民も次回検定はないかもしれません。小山は著書を回収して筆を折るべきでしょう。少なくとも、もう教科書問題に口出しする資格はありません。世界日報←クリックにでも書いていればいいのです。
 
さて、小山常実のような小者は別にどうでもいいのです。
 
「つくる会」は「安重根や李参平を載せるのはけしからん」「菅原道真が載っていない教科書は駄目だ」「秀吉の朝鮮出兵は『侵略』ではない」とずっと言ってきたにもかかわらず、それを捨て去ったのです。

「つくる会」首脳はこんな教科書を作っておいて、なぜ会員に謝罪して引責辞任しないのでしょうか。
市販本の表紙の写真が日本の仏像ではなくタイのオブジェだと明らかになった時点で、回収が始まり調査委員会が設置されるものと思っていましたが、回収の気配すらありません。
 
これでもまだ「つくる会」会員たちは自由社版の礼賛を続けるのでしょうか。だとすれば、もはや教科書改善運動ではなく「信仰」の領域です。
 
(つづく)

連載一覧
★安重根を取り上げ志士と称える自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<上>
★自由社版教科書で菅原道真も乃木希典も消えた-扶桑社版からの改悪<中>
★特攻隊を「自殺攻撃」と貶める自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<下>
★進化論から始まり部落史を詳述する自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<4>
★自由社版 そんなに支那が 好きですか-扶桑社版からの改悪<5>
★スクープ!『日本人の歴史教科書』表紙はタイのガラクタ-扶桑社版からの改悪<6>
★「ポツダム宣言様ありがとう」の自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<7>
★悪党のくせに(笑)悪党を書かない自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<8>
★藤岡信勝会長、独禁法に違反してませんか?-扶桑社版からの改悪<9>
★乃木大将削除を開き直る「つくる会」理事-扶桑社版からの改悪<10>
★秀吉の朝鮮出兵を「侵略」と書く自由社版-扶桑社版からの改悪<11>
★自由社版「ラスコーの壁画」はニセ写真だ-扶桑社版からの改悪<12>
★みんなニコニコ古墳を造ったと描く自由社版-扶桑社版からの改悪<13>
★錦の御旗で威圧したと書く自由社版-扶桑社版からの改悪<14>
★ナチスのユダヤ人迫害を消した自由社版-扶桑社版からの改悪<15>
★編集趣意書から「太平洋戦争」史観の自由社版-扶桑社版からの改悪<16>
★石原慎太郎を載せても都教委は採択しないぞ自由社版-扶桑社版からの改悪<17>

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