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★錦の御旗で威圧したと書く自由社版-扶桑社版からの改悪<14>

扶桑社から絶縁された「新しい歴史教科書をつくる会」が自由社という出版社から出した教科書が、扶桑社版を大部分コピーしつつ、コピーしなかった部分で自虐的に改悪している―という連載をお届けしています。読者の皆様からの膨大な情報提供メールが整理しきれなくなってきたので、主なものをページ順に並べ替えて紹介しています。今回は韓国併合までです。
 
<p77>「ここがポイント!」。「『建武の新政』が失敗し、足利尊氏に人気が集まった理由は?→①武士が新政に期待した②現実を無視した公家政治の復活」。表現が不適当である。
<p82>「」の記述が9種類の中学歴史教科書の中で一番詳しく、バランスを欠いている。(→連載4
<p83>扶桑社版にある「足利学校」の記述が削除された。(→連載8
<p85>東求堂同仁斎の写真説明。文末の「。」が欠落している。
<p91>「ここがポイント!」に「②」が2つある。恥ずかしいミス。こんな欠陥商品を子供に使わせるのか↓

<p93>「ここがポイント!」「南蛮貿易でヨーロッパ人、日本人それぞれに人気のあった品物は何か?→①世界的な銀の価値②時計③ギヤマン④急に増えたキリシタン大名の理由」。「人気のあった品物」が「急に増えたキリシタン大名の理由」って何が言いたいのか? だいたい「人気のあった品物」がなぜ「ヨーロッパ人の日本来航」の「ポイント」になるのか?
<p97>扶桑社版にない李参平をコラムで取り上げ「捕虜にしてつれかえり、自分の領国の発展に利用した」と強制連行されたかのように書いている。「日本史広辞典」(山川出版社)も「日本歴史大事典」(小学館)も鍋島藩の家臣に「従って来日した」などとしており、自由社版には最高に自虐的な記述が採用されている。また「彼らによっての朝鮮の陶器技術が指導され」の「彼らによっての」は文章として変である。(→連載1
<p100>「江戸城 江戸図屏風」の写真説明。「壕を幾重にもめぐらした」。水を張った堀なので「壕」ではなく「濠」の間違い。
<p101>「武家諸法度」は重要な歴史用語なのに、さくいんにないので引けない。
<同>「ここがポイント!」。「江戸幕府は大名の領地をどのように決めたのか?→…②親藩③譜代④外様…⑧藩」とあるのは全くの重複だし、だいいち意味不明。
<p102~103>扶桑社版で好評の人物コラム「信長・秀吉・家康」が削除され「遠州と光悦」になった。
<p108>えた・に対する差別の側注で「ケガレ意識」論について書いているが、差別の根底が「ケガレ意識」かどうかは部落史の研究者の間で議論がある。(→連載4
<p121~121>本文と写真説明で葛飾北斎の葛が
になっている。この表記をする教科書は自由社だけ。
<同>「川柳」は重要な歴史用語なのに、さくいんにないので引けない。
<p133>「ここがポイント!」。「東アジアの海に現れた外国船の新しい顔ぶれは?→」「②ロシアの脅威と北方探検家(近藤重蔵・間宮林蔵)」。どこが「外国船の新しい顔ぶれ」なのか?
<p134~135>「ケシの果実」「インドのアヘン工場」「アヘンを吸う清国人」「アヘン戦争の図」。アヘン関係の写真が多すぎる。
<p140>「ここがポイント!」。「王政復古の流れをつくった主な人物は?→」「④王政復古の大号令」。王政復古の大号令が人物なのか。
<p142>戊辰戦争の「錦の御旗」の写真説明。「この旗に向って抵抗すれば子孫の代まで天皇への反逆者との汚名を残すぞと、と威圧した」。まるで暴力団の代紋で脅したような書き方

鳥羽・伏見の戦いで旧幕府軍が錦の御旗を見て戦意を喪失したとか退散したという話は、皇室の権威を示すエピソードとして有名だが、「子孫の代まで天皇への反逆者との汚名を残すぞ」というのは誰の発言なのか教えてほしい。皇室の権威に対しあまりに無理解で、保守とは到底考えられない記述だ。「子孫の代まで…と威圧した」って、それは霊感商法のことでしょ! なお「向って」は内閣告示「送り仮名の付け方」によると「向かって」が正しい。
<p150>「樺太・千島交換条約」の地図。幌筵島を占守島と表示している。(→連載3
<p156>「鹿鳴館でのバザー 錦絵」の写真説明。「西洋の上流社会のもよおしを片はしからまねた」。片はしからまねた? もう少し適切な日本語を使えないのか。
<p161>「ここがポイント!」。「日本はどのようにして立憲国家となったのか?→①憲法発布…」。日本の立憲体制の始まりについて、五箇条の御誓文、漸次立憲政体樹立の詔、伊藤らの憲法調査のあたりを意識させないのは保守派の言論ではない。
<p171>「日本海海戦」のコラム。扶桑社版にある「なお、同じく日露戦争で活躍した陸軍大将の乃木希典は、戦後、敗れたロシアの将軍の助命のためにさまざまな努力をいとわなかった。明治の日本にも、敗者の名誉を重んじる武士道は生きていたのである」を削り、乃木大将の名前を葬り去った。(→連載210
<p172>「韓国服の伊藤博文」の写真説明。扶桑社版にない安重根を取り上げ「韓国独立の志士」としている。「韓国では民族的英雄であり」などと韓国の立場を紹介している教科書はあるが、教科書の立場としてこのような記述をするのは自由社だけ。しかも「暗殺」ではなく「射殺」。ルビも朝鮮語の「アンジュングン」のみ。(→連載1
<同>「朝鮮総督府」の写真。これは戦後撮影された国立中央博物館の写真である。

当時の写真が入手できないなら、写真説明で戦後撮影と書くべきだ。また、昔の絵はがきのようにモノクロに着色したような不自然な写真である(文科省に提出された出典一覧表によると、共同通信社から購入したとなっている)。
 
(つづく)

連載一覧
★安重根を取り上げ志士と称える自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<上>
★自由社版教科書で菅原道真も乃木希典も消えた-扶桑社版からの改悪<中>
★特攻隊を「自殺攻撃」と貶める自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<下>
★進化論から始まり部落史を詳述する自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<4>
★自由社版 そんなに支那が 好きですか-扶桑社版からの改悪<5>
★スクープ!『日本人の歴史教科書』表紙はタイのガラクタ-扶桑社版からの改悪<6>
★「ポツダム宣言様ありがとう」の自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<7>
★悪党のくせに(笑)悪党を書かない自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<8>
★藤岡信勝会長、独禁法に違反してませんか?-扶桑社版からの改悪<9>
★乃木大将削除を開き直る「つくる会」理事-扶桑社版からの改悪<10>
★秀吉の朝鮮出兵を「侵略」と書く自由社版-扶桑社版からの改悪<11>
★自由社版「ラスコーの壁画」はニセ写真だ-扶桑社版からの改悪<12>
★みんなニコニコ古墳を造ったと描く自由社版-扶桑社版からの改悪<13>
★錦の御旗で威圧したと書く自由社版-扶桑社版からの改悪<14>
★ナチスのユダヤ人迫害を消した自由社版-扶桑社版からの改悪<15>
★編集趣意書から「太平洋戦争」史観の自由社版-扶桑社版からの改悪<16>
★石原慎太郎を載せても都教委は採択しないぞ自由社版-扶桑社版からの改悪<17>
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