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★藤岡信勝会長、独禁法に違反してませんか?-扶桑社版からの改悪<9>

扶桑社から絶縁された「新しい歴史教科書をつくる会」が自由社という出版社から出した教科書が、扶桑社版を大部分コピーしつつ、コピーしなかった部分で自虐的に改悪している―という連載をお届けしています。新規参入の自由社を中心に、来年春から使われる中学校歴史教科書を客観的な事実に基づいて比較するというこの連載を行わせていただいているのは、①自由社が自由な論議のために教科書を市販してくれた②検定申請を見送って現行版を継続発行している他の7社8種類の教科書は、全国の教科書販売店で買うことができる―という条件のおかげです。子供たちが使う教科書はどれがふさわしいか、採択期間中に自由に議論し、インターネットで発信できることは大変望ましいことです。
 
しかし藤岡信勝会長。あなたは違います。あなたは自由社版教科書の代表執筆者です。教科書採択の公正確保を定めた独占禁止法や文部科学省の指導の制約を受ける当事者なんです。
 
月刊誌「WiLL」8月号や「チャンネル桜」の番組で他社の教科書を批判し、しかもその中に、例えば「教育出版が取り上げている姜という人物は日本史広辞典にも載っていない」などという虚偽が含まれていることは、独禁法や文科省指導に反しているのではありませんか?
 
チャンネル桜の番組はこれです。司会も自由社版執筆者の高森明勅「つくる会」理事ですから、違法なら“共謀”関係です。

以下、この連載の本題である「扶桑社版からの改悪」に触れつつ、藤岡・高森発言の違法性の有無も検証します。
  
藤岡「大阪書籍ってのは実はもう倒産してですね、日本書籍新社というところが買い取っているんですけど」
 
いい加減なことを言っています。大阪書籍の版権を譲り受けた(企業を買い取ったのではありません)のは日本書籍新社ではなく日本文教出版です。藤岡会長はよほど日本書籍新社に思い入れがあるようです。日本共産党と親密とされる日本書籍からたくさん本を出していますからね。←クリック

藤岡「(東京書籍と旧大阪書籍の)東西の2大教科書にですね、共通するのは、あの、明治時代のですね、特に日露戦争などで日本の国を守った重要な人物が消えちゃってると」
 
自由社版は扶桑社版に載っている乃木希典を削りましたけど…(→連載の2回目)。日露戦争で日本の国を守った重要な人物を消したのは自由社版です。あなたの持っている表より、こっちのほうが分かりやすいです(読者の方から送られた内部研究資料より)。
 
高森「日本の独立に貢献した人物が落ちてるということですね」
藤岡「その通りです、ええ。これはもう大変深刻な話ではないだろうかというふうに思うんですね」

 
大変深刻なのは自由社版ですよ。日本の独立に貢献した乃木希典を消して、「韓国独立の志士」として安重根を載せているんですから(→連載の1回目)。韓国の言い分ではなく教科書の立場として「韓国独立の志士」と書いているのは自由社だけです(内部研究資料より)。

 

藤岡「これ何と読むかっていうことですね。浅川巧さんの隣ですね。これはアテルイと読みます。アテルイと。で、これはあの、えー、奈良時代の後期にですね。あの、東北地方の蝦夷の酋長で、で、えー、坂上田村麻呂に、えー、降伏して、斬首されたとされている、ま、人物、えー、ですね。でー、朝廷にまあ、あの、抵抗したと、という、そういうまあ人物ということに、ま、なるんですけども、この人物がですね、えー、各社、ま、教育出版のように、こういう大きく取り上げてるのは、あのお、教育出版だけですけど、人物名としてはですね、後でも出てきますが各社取り上げてる」
 
アテルイは自由社版にも載っています(p54)。しかも朝廷が助命嘆願を無視して無慈悲だと印象づけています。

この記述は扶桑社版をコピーした部分です。古代史ですから高森明勅理事の執筆個所です。担当執筆者の高森理事と代表執筆者の藤岡信勝会長が話しているのに、自由社版にアテルイが載っている(1ページ以上でないにせよ)事実に言及していません。なぜそこを隠して教育出版を攻撃するのでしょうか。教育出版は確かにとんでもない自虐教科書です。しかし批判の仕方がフェアじゃありません。
 
藤岡「それで、えー、それ、じゃーですね、あの、ま、わが自由社はどうかって、下見ていただきますとお」
 
「わが自由社は」と言って、つくる会と自由社が一体であることを認めています。まあ、そもそも「つくる会」と自由社は同じビルの2階をパーティションで仕切って同居しています(→1月30日付エントリー)。
 

藤岡「教育出版のあそこは、どうしても、あの、ワープロの文字が出ないので、えー、手書きに、失礼しました。『かんこう』と読みますがね」
 
姜は「かんこう」ではなく「きょうこう」です。朝鮮語読みは「カンハン」。難しい字じゃないから普通にパソコンで出ますよ。生姜の「姜」ですから。音読みは「かん」じゃなくて「きょう」です。
 
藤岡「これは、あの、秀吉の朝鮮侵略のときに、連れて…」
高森「朝鮮侵略というのは教育出版の記述ですね」
藤岡「教育出版の記述ですよ。あの、きょ、こういうふうに書いてるんですから。朝鮮侵略のときに連れて来られた学者と。こういうことになってるんですねえ」
高森「あの、朝鮮出兵で日本に来たというだけで、歴史教科書に名前をとどめちゃったわけですね

藤岡「とどめちゃったわけですねえ」
 
自由社版には、朝鮮出兵のときに「捕虜にしてつれかえり、自分の領国の発展に利用した」として、李参平のコラムが大きく載っていますけど、どう違うんでしょうか?(→連載の1回目
 
高森「しかもこれ、かなり特殊な人物ですから、一般の歴史事典とか人名事典にもなかなか出てこないような人物じゃないかと…」
藤岡「そうなんですよ。2000ページ以上のね、えー、日本史コウジエンっていうのにも出てこないような」
高森「はいはい、山川の日本史広辞典ていうと」
藤岡「山川のね。有名な」
高森「これ、一冊の歴史事典だと、恐らく一番詳しい事典だと思うんですよ」
藤岡「それに出てこない」
高森「それが中学校の教科書に」
藤岡「それが中学校の教科書に出てくる」
高森「いや、ひどい話ですね」
藤岡「も、ちょっと、常軌を逸してますね、ええ」

(中略) 
高森「要するに、学界でさえも大きく取り上げられていない、ましてや一般の社会ではですね、ほとんど知られていない人間が」
藤岡「専門的な辞書にも出てこない」
高森「それを教科書では特筆大書されて」
藤岡「そうですね、ええ」
高森「1ページぐらい解説があったり。ちょっと異常ですね」

 
姜が山川出版社の日本史広辞典に載っていない? いえ載っています(p610~611)。

第1刷からずっと載っています。「かんこう」で引くから見つからないんです(笑)。載っていないというのは全くの虚偽です。
 
中学の歴史教科書に姜を載せる必要はないというのは同意します。私たち一般市民が「教育出版は反日・自虐教科書だ。採択してはいけない」と言うのは自由です。しかし藤岡信勝会長(および高森明勅理事)、あなた方は自由社版の執筆者です。公正取引委員会による「教科書業における特定の不公正な取引方法」(教科書特殊定指定)は規制緩和によって平成18年に廃止されましたが、発行者が編著者に他社または他の教科書を中傷・誹謗させる行為は、引き続き公正取引委員会告示「不公正な取引方法」の第15項(競争者に対する取引妨害)に該当し、独禁法第19条に違反するとされています。文科省も同様の内容の指導を行っています。
 
 文部科学省「特殊指定廃止後の対応について」←クリック
 文部科学省「教科書採択の公正確保」←クリック
 
有名な事典にも載ってないという虚偽に基づいて「ひどい話ですね」「常軌を逸してますね」などと他社教科書を非難するのは、客観的な事実に基づく比較ではなく、独禁法や文科省指導が禁ずる編著者による他社教科書に対する中傷・誹謗ではないでしょうか。
 
藤岡信勝会長は同じように「WiLL」8月号で、柳寛順について「広辞苑にも出てこない人物」と言っています(p259)。こちらは岩波書店の国語辞典ですね。「○○にも載っていない用語や人物が出ている」という批判の仕方は、一般人が言っている分にはいいのですが、執筆者が言うと自分にはね返ってきます。例えば自由社版にある楠本イネ(p174)や向井千秋(p179)は広辞苑に載っていません。
 
藤岡信勝会長の歴史用語の基準は日本史広辞典(山川出版社)と広辞苑(岩波書店)らしいので指摘させていただきますが、その2つの書物は李参平について次のように説明しています。
 
 日本史広辞典(山川出版社)「佐賀藩の家臣に従って来日し」
 広辞苑(岩波書店)「文禄・慶長の役の際、朝鮮から渡来」
 
自由社版が書くように「捕虜にしてつれかえり」つまり強制連行だとは書いていません。岩波書店より自虐的なのが自由社版教科書なのですね。
 
藤岡信勝会長はチャンネル桜でもWiLLでも「中学教科書に登場する一般的とは考えにくい人物」が全社合計で25人いると言っていて、WiLLで「開いた口がふさがりませんよ」と非難しています(p259)が、そのうち自由社版には、アテルイ(p54)、李舜臣(p97)、李参平(p97)、シャクシャイン(p107)、安重根(p172)の5人が載っています。9種類の教科書から25人抽出して5人載っているのですから、かなりの数です(扶桑社は李参平、安重根以外の3人です)。

このフリップ、自由社版に安重根が載っていることを隠しています。
 
嘘で固めた自画自賛と他社批判には「開いた口がふさがりませんよ」。藤岡信勝会長。焦っているのは分かりますが、他社批判は自分でやらずに、当事者じゃない人に原稿を渡してやらせなきゃ駄目です。でも、もう手遅れです。
 
(つづく)

連載一覧
★安重根を取り上げ志士と称える自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<上>
★自由社版教科書で菅原道真も乃木希典も消えた-扶桑社版からの改悪<中>
★特攻隊を「自殺攻撃」と貶める自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<下>
★進化論から始まり部落史を詳述する自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<4>
★自由社版 そんなに支那が 好きですか-扶桑社版からの改悪<5>
★スクープ!『日本人の歴史教科書』表紙はタイのガラクタ-扶桑社版からの改悪<6>
★「ポツダム宣言様ありがとう」の自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<7>
★悪党のくせに(笑)悪党を書かない自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<8>
★藤岡信勝会長、独禁法に違反してませんか?-扶桑社版からの改悪<9>
★乃木大将削除を開き直る「つくる会」理事-扶桑社版からの改悪<10>
★秀吉の朝鮮出兵を「侵略」と書く自由社版-扶桑社版からの改悪<11>
★自由社版「ラスコーの壁画」はニセ写真だ-扶桑社版からの改悪<12>
★みんなニコニコ古墳を造ったと描く自由社版-扶桑社版からの改悪<13>
★錦の御旗で威圧したと書く自由社版-扶桑社版からの改悪<14>
★ナチスのユダヤ人迫害を消した自由社版-扶桑社版からの改悪<15>
★編集趣意書から「太平洋戦争」史観の自由社版-扶桑社版からの改悪<16>
★石原慎太郎を載せても都教委は採択しないぞ自由社版-扶桑社版からの改悪<17>

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