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★石原慎太郎を載せても都教委は採択しないぞ自由社版-扶桑社版からの改悪<17>

「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝会長は自由社版教科書について、「松本謙一(自由社教科書編集室長を解任された前つくる会東京支部長)のせいで記述もデザインも滅茶苦茶にされた」と言って文部科学省に訂正申請する準備を進めています。この連載にも言及しているそうですが、ここで指摘した個所を訂正するなら必ずご連絡ください。謝意は求めませんが礼儀として。
project-justice@mail.goo.ne.jp
 
しかし、「最も優れた歴史教科書」と宣伝しているのにどうして訂正するのでしょうか? 内部で欠陥商品だと認めながら、その欠陥商品を横浜市に1万冊以上採択させて「公平に評価されれば必ず採択されると信じていた」などと喋るのは道義上どうなんでしょうか。
 
さて、「つくる会」=自由社は早い段階から横浜市での採択を狙っていて、横浜の海を描いた「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を表紙に載せました(これは学校で使われる教科書「新編 新しい歴史教科書」の表紙で、書店で市販されている「日本人の歴史教科書」の表紙については→連載6を参照)。

自由社版教科書は欠陥だらけですが、表紙はよくできています。横浜市の採択は松本謙一さんの置き土産です。「神奈川沖浪裏」の下にあるのは両国橋のジオラマです。東京都での採択も狙っているのですが、こちらはうまくいかないようです。 【8月14日追記】やはり採択されませんでした。
 
扶桑社から絶縁された「つくる会」が自由社という出版社から出した教科書が、扶桑社版を大部分コピーしつつ、コピーしなかった部分で自虐的に改悪している―という連載をお届けしてきました。「つくる会」会員を含む読者の皆様からの膨大な情報提供メールが整理しきれなくなったので、主なものをページ順に並べ替えて紹介してきましたが、今回は戦後史とさくいん、年表です(怒りのあまり表現が過激になっているメールは修正させていただきました)。
 
<p219>昭和30年代の説明で、扶桑社版にない「一方、ソ連を理想とする共産主義も進歩的な思想として労働者や学生、知識人を魅了するようになった」が加筆された。自分のことを書くなよ、昭和38年入党の代表執筆者さん。
<p221>「日中国交正常化」の写真説明。「このあと両国間の貿易は急速に拡大し、中国の開放政策への転換で交流はさらに盛んになっている」。日中間には歴史教科書、戦没者追悼に対する内政干渉や、領土や資源が脅かされているという問題がある。商売の話に特化するなら、こんな写真説明は必要ない。
<p222~223>「さらに戦後独自の新しい若い作家として三島由紀夫、石原慎太郎などが現れ、新鮮なイメージで人々を惹きつけた」

石原慎太郎の名前載せたって、都教委は採択しないぞ。「戦後独自の新しい若い」や「新鮮なイメージ」は中身のない修飾語。ただ名前を載せるための記述。
<p225>「阪神大震災被災者を見舞う天皇・皇后両陛下」の写真。皇后陛下の頭や背中が切られており不敬だ

お顔だけとか上半身だけというトリミングはあっても、頭を切るのは考えられない。戦前なら許されないことだし、戦後も出版関係者はこういうことのないよう配慮しながら仕事をしてきた。これは朝日新聞など左翼メディアも同じである。自由社が文部科学省に提出した「出典一覧表」によると、この写真は読売新聞社から購入している。そこで読売新聞の写真データベースを見ると↓

元の写真はもちろん切られていない。切ったのは自由社である。
「つくる会」や自由社の首脳には皇室への尊崇の念はない。西尾幹二が「私は日常生活のうえで、天皇の存在を必要としていません」とか「天皇制度の廃棄に賛成するかもしれない」と公言していることを見れば分かる。(→昨年9月28日付エントリー
自由社のホームページでは仁親王殿下を「仁親王」と呼び捨てにしている

これが「天皇」や「皇太子」「美智子皇后」と同じ呼び捨てであることが、保守でない彼らには理解できないのだろう。そういえば西尾幹二も「朝まで生テレビ!」で皇太子妃殿下を「雅子妃」と呼び捨てにしていた。
<p226>「歴史のこの人 昭和天皇」。二・二六事件と終戦のご聖断について、扶桑社版にある「どちらも君主としての強い自覚によってなされた行動だった」が削除された。
<p227>「昭和天皇のお言葉」。参考文献に、半藤一利、保阪正康など正統保守ならまず出さないような本を挙げている。程度が知れる。(→連載2
<p228>「5章のまとめ」。ポツダム宣言について「日本に降伏の機会を与えるため」「これによって日本の本土決戦が回避され、日本の分断国家化は防がれた」と説明しているが、日本が救われたのは「ポツダム宣言」のお陰か? そうじゃなくて昭和天皇のご聖断だろう。(→連載7
<p230>「エルトゥールル号事件」。慰霊碑の写真の説明に「和歌山県・串本町役場蔵」とあるが、慰霊碑の写真は文化財じゃないんだから「蔵」ではない。「提供」である。そもそも自分で撮影すべし。
<p234=さくいん>葛飾北斎の葛がになっている。この表記は自由社だけ。
<p235=さくいん>森鷗外の鷗がになっている。この表記は自由社だけ。
<年表2>「倭寇が高麗や明を侵す」となっている。扶桑社版は「倭寇の出没」なのに。(→連載11
<年表3>秀吉の朝鮮出兵について「秀吉が朝鮮侵略を始める」と記述している。扶桑社版は「秀吉、朝鮮出兵」。秀吉の朝鮮出兵に侵略という用語を使うのは間違いだという「つくる会」の主張を放棄している。(→連載11
<年表4>葛飾北斎の葛がになっている。この表記は自由社だけ。
<年表5>森鷗外の鷗がになっている。この表記は自由社だけ。
<年表6>大東亜戦争ではなく「太平洋戦争」になっている。(→連載3
<同>「このころ ソ連、人工衛星『スプートニク』打上成功」。モスクワ時間の1957年10月4日22時28分34秒と秒単位で特定できることをなぜ「このころ」とするのか。
<同>扶桑社版にある「2002 北朝鮮拉致被害者5人帰国」が削除されている。

連載一覧
★安重根を取り上げ志士と称える自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<上>
★自由社版教科書で菅原道真も乃木希典も消えた-扶桑社版からの改悪<中>
★特攻隊を「自殺攻撃」と貶める自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<下>
★進化論から始まり部落史を詳述する自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<4>
★自由社版 そんなに支那が 好きですか-扶桑社版からの改悪<5>
★スクープ!『日本人の歴史教科書』表紙はタイのガラクタ-扶桑社版からの改悪<6>
★「ポツダム宣言様ありがとう」の自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<7>
★悪党のくせに(笑)悪党を書かない自由社版教科書-扶桑社版からの改悪<8>
★藤岡信勝会長、独禁法に違反してませんか?-扶桑社版からの改悪<9>
★乃木大将削除を開き直る「つくる会」理事-扶桑社版からの改悪<10>
★秀吉の朝鮮出兵を「侵略」と書く自由社版-扶桑社版からの改悪<11>
★自由社版「ラスコーの壁画」はニセ写真だ-扶桑社版からの改悪<12>
★みんなニコニコ古墳を造ったと描く自由社版-扶桑社版からの改悪<13>
★錦の御旗で威圧したと書く自由社版-扶桑社版からの改悪<14>
★ナチスのユダヤ人迫害を消した自由社版-扶桑社版からの改悪<15>
★編集趣意書から「太平洋戦争」史観の自由社版-扶桑社版からの改悪<16>
★石原慎太郎を載せても都教委は採択しないぞ自由社版-扶桑社版からの改悪<17>
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