国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

政府と軍がイラク侵略作戦の詳細に合意済みで侵略準備完了とトルコ外相が発言、風雲急を告げる事態に

2007年07月10日 | トルコ系民族地域及びモンゴル
<トルコ・クルド人問題>

トルコ政府と軍はイラク侵略計画に合意-インターナショナルヘラルドトリビューン紙、2007年7月6日付英文記事全文を以下の通り日本語訳。ソース:http://www.iht.com/articles/ap/2007/07/06/europe/EU-GEN-Turkey-Iraq.php

【トルコ、アンカラ発】 トルコ政府と軍はイラク北部を基地とするクルド反政府勢力に対する国境線を越えた作戦の詳細な計画について合意に至ったと外務大臣が7月6日に発言した。

アブドラ・ギュル外務大臣はトルコ軍のイラク国内への侵入に反対している米国とイラクに対して、クルド労働者党(PKK)の反政府勢力に断固たる措置を取るよう要求した。しかし、彼は必要ならトルコはいつでも攻撃を実行する用意があるとも述べた。

「我々はどの様に行動するかを決定した。全ては明白だ。何をすべきか、いつすべきか、我々は分かっている。」とギュル外相は民営のNTVテレビで語った。ただし、詳細は明らかにしなかった。

最近数ヶ月の間トルコ国内で激しさを増してきた分離主義の反政府勢力の活動に対して米国が行動を取らないことにトルコは不満を訴え続けてきた。先週はトルコ軍の指導者が政府に対して、イラク北部に対する侵略について指針を示す様に求めている。起きるかもしれない国境線を越えた攻撃が来週の閣議で論議されるかどうかとの質問には、ギュル外相は「一日の間には何でも起きうる」と答えた。


トルコの政治的指導者は、議会はあらゆる大規模侵略を容認せねばならないと述べた。そのような動きは、イラクの他の場所で暴力への対処を試みており、イラク国内で唯一相対的に安定している北部を保護したいと望んでいる米国との絆を損なうことに成りかねない。

トルコは1984年以来分離主義者のクルド人と戦い続けており、数万人の死者が出ている。最近は反政府勢力の攻撃が急増している、今年だけで67人の兵士が殺害されている。トルコ軍によると同時期に110人の反政府勢力が殺害されている。7月22日の議会選挙を目前に控え、野党勢力は政府がテロに対して軟弱すぎであり、軍事侵略を容認することに乗り気でないのが見え見えだと批判している。







国境にトルコ軍14万人 イラク外相が非難  産経新聞 2007/07/10

 イラクのジバリ外相は9日、北部クルド人自治区を拠点にトルコ南部で活動するクルド人武装組織、クルド労働者党(PKK)封じ込めのため、イラクとの国境地帯に配置されているトルコ軍部隊が14万人以上に上ると述べた。ロイター通信が伝えた。

 ジバリ外相は「われわれは隣国によるイラクの主権へのいかなる干渉や妨害にも反対する」とトルコを非難する一方、「PKKの行動への懸念は理解できる」として、問題解決に向けた交渉をトルコに呼び掛けた。

 トルコは自軍への攻撃を繰り返すPKKを抑え込むために越境攻撃の必要性を主張し、国境地帯に増派していたが、規模は明らかにしていない。
http://www.sankei.co.jp/kokusai/middleeast/070710/mda070710000.htm








イラク・トルコ国境地帯で緊張高まる 2007/06/28  janjan

【イスタンブールIPS=ヒルミ・トロス、6月19日】トルコでは分離独立を求める武装組織、クルド労働者党(Kurdistan Workers Party: PKK)の活動が活発化している。これを受けトルコ軍は国際社会からの強い反発を買っている(PKKの拠点があるイラク北部国境付近での)掃討作戦の可能性を示唆し、PKKに対する徹底抗戦の構えを見せている。

 トルコのMilliyet紙は土曜日、トルコ軍がすでにイラク領内でPKKに越境砲撃を行ったと伝えている。これまでトルコ市民の間には、イラクに潜伏しているPKK戦闘員に対して断固たる行動を取るべきとする声が多かったが、大規模な掃討作戦は行われていなかった。しかし、トルコ軍による攻撃が行われた場合、周辺諸国に及ぼす影響は甚大なものになるだろう。

 トルコのエルドアン首相は、同盟国からの批判や7月の選挙を考慮して、この問題に関しては『柔和路線』を貫いてきた。しかし、イラク国民の間にはテロを放置していいのかといった感情論が広がりを見せはじめたことで、同首相は「イラクのクルド地域に軍事侵攻する前に、トルコ国内にいるPKKに対して徹底した圧力を加えていく必要がある」と述べた。

 また、退役軍人や野党からもイラク侵攻を含めたPKKに対する大規模な軍事行動を求める声が多い。

 トルコのシンクタンク、戦略問題研究所(ISRO)のセダ・ラシナー氏は「PKKに対する大規模掃討作戦は、トルコを国際社会から孤立させる結果になるだけだ」とIPSの取材に応じて語った。

 さらに同氏は「トルコ軍によるPKK掃討攻撃が起これば、トルコ、シリア、イラン、イラクといったクルド人を抱える域内大国が全て関係した『クルド問題』を根本的な解決から一層遠ざけてしまう」と懸念を示した。混迷を極めるトルコのクルド人問題について報告する。
http://www.janjan.jp/world/0706/0706277955/1.php





<コソボ問題>

●コソボ独立めぐり対立・ロ、米欧決議案に反対 日本経済新聞 2007年5月9日

 【ニューヨーク8日共同】国連暫定統治下にあるセルビア・コソボ自治州の最終地位問題で、国連安全保障理事会の各国は8日、ニューヨークのフランス国連代表部で非公式に協議した。安保理筋によると、欧米諸国は「コソボ独立」を支持する新決議の骨子案を提示、ロシアは当事者間の交渉継続を求める対抗案を示し、鋭く対立した。

 この日の会合は、最終地位問題に関する決議案交渉の前段階だが、米欧とコソボ独立に反対するロシアの溝が明らかとなり、早期の合意形成は難しい見通しとなった。ロシアは常任理事国として拒否権を持っており、決議案提示がずれ込む可能性もある。

 共同通信が入手した米欧骨子案は13項目。アハティサーリ国連事務総長特使が3月末「コソボ独立」を勧告する報告を安保理に提出したことを踏まえ、「特使の勧告を承認する」内容とするよう求めた。
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20070509STXKD002209052007.html



●「コソボ独立を認めるべき」米大統領がアルバニアで強調 2007.06.11 - CNN/AP/REUTERS

ティラナ───欧州歴訪でアルバニアを訪問したブッシュ米大統領は10日、同国のベリシャ首相との合同記者会見で、アルバニア系住民が多数を占めるセルビア・コソボ自治州の独立を今こそ認めるべきだと述べ、ロシアに独立の足かせにならないよう求める考えを表明した。米国とロシアの新たな対立を招くとみられている。


ブッシュ大統領は、コソボ独立プロセスを推進することが重要だと強調し、「問題は、われわれが既に決意を固めた事柄について、終わりのない議論を続けるかどうかだ。われわれは、コソボが独立するべきだと確信している」と述べた。さらに、先日の主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)がコソボ独立を支持したことを指摘したうえで、ロシアが許容できる方法で独立を認める方法に議論が集中したことを明らかにした。

国連安全保障理事会はコソボ独立の決議案を採決する見通しだが、独立反対のロシアは拒否権を持つ。ライス米国務長官は同盟関係にある欧州各国と連携し、ロシアの説得にあたる意向という。ただ、ブッシュ大統領は、安保理の対応期限について具体的言及を避けた。

ブッシュ大統領はこの後、最後の訪問国ブルガリアに移動した。
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200706110008.html



●コソボの地位、4カ月内に結論を・欧米側が修正案提示 日本経済新聞 2007年6月21日

 【ニューヨーク=中前博之】セルビア領内で国連暫定統治下にあるコソボ自治区の最終地位を巡り、欧米各国は20日、セルビアとコソボの双方に4カ月以内の交渉決着を要請する修正決議案を安全保障理事会に提示した。

 修正案は期限内に両者が合意に至らなくても欧州連合(EU)の監督下でコソボの独立を事実上認める内容。ロシアのチュルキン国連大使は同日、「受け入れられない」と強く反発した。

 旧ユーゴスラビア崩壊の過程で深刻な人権侵害が起きたコソボでは、被害者側のアルバニア系住民が多数派で加害者側のセルビア系は少数派。セルビアは少数派保護の名目でコソボ独立に反対している。同じスラブ系民族が多いロシアも難色を示している。
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20070621AT2M2100O21062007.html




●コソボに見切りをつけ欧州選択を=米がセルビアに呼び掛け 時事通信 2007/07/08-07:57

【ドゥブロブニク(クロアチア南部)7日】フリード米国務次官補(欧州・ユーラシア担当、写真)は7日、セルビアに対し、国連の暫定統治下にあるコソボ自治州に見切りをつけ、欧州連合(EU)内で将来を選択するよう求めた。同次官補は「セルビアにとって問題は、指導者がコソボの維持に努めるかどうかではない。なぜなら、故ミロシェビッチ大統領がコソボを失ったのだから」と指摘した。
 フリード次官補は、クロアチア南部のリゾート地ドゥブロブニクで開かれた南欧首脳会議に出席した際、AFP通信のインタビューに応じた。同次官補はこの中で、「問題はセルビアの指導者が欧州を取るかどうかである。われわれの答えは歓迎するである」とし、「バルカン諸国はコソボの最終地位に伴う障害を克服できれば、中欧諸国のように、欧州・大西洋の一体化に成功するだろう、というのが南欧首脳会議のメッセージである」と述べた。
 フリード次官補はさらに、「皮肉なことに、すべてのセルビア人が一つの国家で暮らす唯一の方法はユーゴスラビアだが、セルビアの民族主義者がそれを破壊してしまった」と指摘。そのうえで「すべてのセルビア人が一つの政治社会で暮らすもう一つの方法は、皆がEUに加わることだ。それを実現する唯一の方法は、コソボの最終地位を解決することである」と強調した。 〔AFP=時事〕
http://www.jiji.com/jc/a?g=afp_int&k=20070708013275a



●世界・スロバキア:外交政策の分裂かあるいは親ロシア路線か janjan 2007/06/27

大半の東欧諸国が親米路線を行く中、スロバキアのロベルト・フィツォ首相がエネルギー協力や地政学上の合意点をロシアのプーチン大統領と探っている。

 5月のモスクワ訪問時には、大規模な経済協力、核エネルギー、兵器生産について議論された。ブラチスラバのドナウ港を東西欧州間通商の物流センターに変えることになる広軌鉄道プロジェクトの覚書も交わされた。

 こうした両国間の経済協力は、孤立化を怖れるスロバキアの親西側エリートを困惑させている。さらにブラチスラバで行われた第二次世界大戦の戦勝記念祝典中にフィツォ首相が「全スラブ民族の連帯の醸成を怖れてはならない」と述べたことには、ロシアとの協調的姿勢を示すものと、メディアが騒然となった。

 メディアの批判を鎮めるため、フィツォ首相は欧州の共通エネルギー政策の策定を評価したり、欧州憲法支持の姿勢を明らかにしたものの、首相はプーチン大統領とともにポーランドとチェコに建設予定の米国のミサイル防衛基地に対し反対する立場で一致している。スロバキア政府はこうした基地の国内建設には「決して同意しない」とするフィツォ首相の声明は、スロバキア軍のイラクからの撤退を発表し、アフガニスタンへの増派について難色を示すなか行われたものである。

 さらに、スロバキアとロシア両国政府は、国連の暫定統治下にあるセルビア・コソボ自治州の独立に関し、反対の立場をとることで一致を見ている。

 しかしこうした首相の動向は、過大評価されるべきではない。スロバキア外交政策協会のトマス・ストラザイ氏は、「発言は親ロシア路線を示唆するものかもしれないが、スロバキア外務省は欧州連合の政策に従っており、対欧米関係の強化に関心を持っている」とIPSの取材に応えて述べた。

 コソボ問題は、スロバキアの外交政策の分裂を示す一例である。首相はコソボ問題の解決にセルビアの同意を求めているのに対し、ヤーン・クビシュ外相は欧州諸国に対し紛争解決に当たり欧州の邪魔はしないと約束している。
http://www.janjan.jp/world/0706/0706267913/1.php




【私のコメント】
冒頭の7月6日付けのインターナショナルヘラルドトリビューン紙の記事をお読みいただきたい。事実上イラク北部への侵略を宣言したに等しく、宣戦布告に他ならない。あまりに重大な発言なので全文を日本語訳した。誤訳等あればコメントで教えていただければ幸いである。

7月10日には産経新聞が国境沿いに展開したトルコ軍が14万人を越えるとの情報を紹介している。この軍隊が一挙にイラク北部に流入し、イラクで唯一治安が安定していた北部も他の地域と同様のレジスタンス活動で治安が深刻化するのだろうか?

コソボ問題もロシアがセルビアの同意のない解決策は通さないと明言しており解決の目処が立たなくなってきているが、それはバルカン半島をイスラム化した張本人であるトルコへの攻撃という見方ができる。
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1 コメント

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大変な事です。 (chosei)
2007-07-11 01:40:14
私は政治経済を専門にしているわけではないのですが、私のような一般の世界中の人間にも影響を及ぼします。
この部分:
Turkey was ready to stage an offensive if necessary.

"We have decided how to act, everything is clear," Gul told private NTV television. "We know what to do and when to do it," he said without providing details.

彼は必要ならトルコはいつでも攻撃を実行する用意があるとも述べた。

「我々はどの様に行動するかを決定した。全ては明白だ。何をすべきか、いつすべきか、我々は分かっている。」とギュル外相は民営のNTVテレビで語った。ただし、詳細は明らかにしなかった。

ですがアメリカの上院下院でほぼアメリカ軍の撤退はあきらかですのでこの後の処理は中東の連中でやるわけですか?
ネオコンとイスラエルの欲だけで始まった侵攻の後の後始末だけを残されたのは誰もが困りますね。

それでアメリカは良い顔できますか。アメリカの政治が民主党に変わってもギルト(guilt)は永遠に残ります。
20世紀のナチス党ほどではないですが。
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