ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/02/25 歌舞伎座千穐楽夜の部「仮名手本忠臣蔵」七段目・後編

2007-03-13 00:02:47 | 観劇
遊女お軽の玉三郎登場!11段目から書き始め、大序に戻って続けてきた通し上演の感想アップもこれにて完結!!
【七段目 祇園一力茶屋の場】後編
舞台上手の二階座敷から遊女となっているお軽が風にあたろうと障子を開けて登場すると客席がざわめく。眉なしお歯黒の女房姿から一転。明るい薄紫の着物で何本も簪をさし眉も書き歯も白く戻して店の中では下級の遊女の姿が板についた姿になっている。う、美しい~。
由良之介が忘れた刀をとりにきたふりで戻ってきて一人になったと見計らい、釣灯篭の下で顔世御前からの密書を読み始める。人の艶書でも羨ましいと二階からお軽が手鏡を使って読んでしまう。そして手紙の端が下がっていった床下で九太夫が同時に盗み読み。鏡を使うのに身体をそらせていたお軽の珊瑚の簪が落ちる音で由良之介は手紙を巻き戻し、端が千切れたことで床下の存在も知る。
お軽が手紙を読んだことを知って、お軽をなんとかしようと手をうつ由良之介。店の他の者に知らせずに梯子を使って二階から降りてこさせ、「古いが惚れた。身請けしよ」と言う。三日で自由の身にしてやるという言葉に喜ぶお軽。
ここは座頭役者と一座の立女形が贅沢にじゃらつくのが御馳走という場面らしいが、吉右衛門の由良之介とお軽の玉三郎がじゃらつく様子は本当に美味しい場面だった。

由良之介は身請けの手続きに行ってしまい、お軽は里に知らせようと手紙を書き始める。そこに平右衛門が現れて「かるという女子を知らぬか」とたずねるが、うるさがる。「頼む頼むというから手紙に頼む頼むと書いてしまった」と怒り出し、顔を見てようやく気が付く。「お前は兄さん」「わりゃ妹!」昔の夜の部屋の中は暗いし、遊女の拵えで兄の方からは気づかないということらしい。双眼鏡で手紙を見たら本当に「たのむたのむ」と書かれていて笑える。
お軽の玉三郎が身体いっぱい使って邪魔くさがる仕草や表情が笑えた。こんな可愛さ炸裂の玉三郎は初めてだ。綺麗になった妹の姿を喜ぶ兄との情愛の場面の楽しさもこのうえない。愛する勘平の様子をききたいけれど回りくどく尋ねていってじれてしまう。その様がまた目いっぱい可愛い。そんなお軽に本当のことはいえない。
平右衛門もここにいる事情を話し、由良之介の心が変って「敵討ちはないのか」と嘆くと「あるぞえ」と耳打ちして手紙のことを伝える。玉三郎はちゃんとここはしゃべっていると『芸づくし忠臣蔵』に書いてあった。耳打ちしようとするとこそばゆがる平右衛門の仁左衛門の破顔もめちゃくちゃ可愛い。しかし、二枚目と立女形のこういう場面というのはけっこうエロティックでもあるわけで、歌舞伎というものの娯楽性の素晴らしさにまたまた感心。
平右衛門は手紙の盗み読みがばれてからの身請け話に由良之介のねらいを了解、いきなりお軽に斬りかかる。とっさの護身のために撒いた持ち紙が美しく散る(これにも工夫があるという)中、お軽は木戸口の外まで逃げる。
そこで「怖い顔をしているからいけない」「これは生まれつきだ」などとのやりとりをして、もう斬りかからないと刀を身から離してもらってようやく妹は兄の傍に戻る。そこで事情を聞く中で、家族の惨劇を知るお軽。ここで時代劇のお定まりの女の癪!癪を起こしたお軽を介抱する平右衛門。癪をおこしたら水を飲ませたい。お軽に口移しで飲ませようとするところで目がひきつけられ、こっちを向かないので声をかけてしまって平右衛門が自分で飲んでしまうというところで笑ってしまう。また癪というものは身体が反り返って苦しむものということになっているらしい。お軽の身体がそらないように足で押さえつけながら水も汲んでやりたいということになってのポーズを一生懸命とるところが思いっきり笑いを誘う。笑えるのにこんなに美しいこのコンビの素晴らしさに酔いしれる。

ここで笑った後、勘平のいなくなったこの世に未練はないとお軽は自害しようとするシリアスな場面へ。玉三郎の台詞が一部うまくききとれないので双眼鏡で見てみると泣かれているようだった。「加賀見山」での尾上での菊之助のお初とのやりとりの場面を思い出してしまった。

自害に待ったをかける由良之介。「心底みえた」と平右衛門には東下りの供をゆるし、お軽の手をとって床下の九太夫を成敗させる。
こうして仇討ちへの覚悟を示す場面では鶯色の着流しになっている由良之介。とどめを打つ代わりに九太夫を鴨川で水雑炊をくらわせろと平右衛門に命じ、嬉しさあふれる平右衛門が「ハアーッ」と答えて明るく決意の漲る幕切れを迎える。

七段目の後半は、仁左衛門と玉三郎という長年組んで呼吸のぴったり合ったコンビの素晴らしさを堪能し、吉右衛門の由良之介がそこに加わっての大顔合わせ!!この醍醐味を味わうことができたのは予想を上回るできごとだった。
義太夫も玉三郎お軽を語るのはいつもの愛太夫、立役を語るのは清太夫と贅沢な配置がされるのも嬉しい。
やはり力のある役者が揃うことでお互いに刺激しあって増幅された芝居を観ることができた満足感というのはなかなか得がたいものだ。こういう瞬間を求めて私は劇場に足を運んでしまうのだ。
3月の歌舞伎座の「義経千本桜」の通し上演ではどうなるだろうか。楽しみになってきた。
写真は公式サイトより今回の公演のチラシ画像。
以下、この公演の別の段の感想
2/18歌舞伎座昼の部「仮名手本忠臣蔵」大序
2/18歌舞伎座昼の部「仮名手本忠臣蔵」三・四段目
2/18歌舞伎座昼の部「仮名手本忠臣蔵」道行旅路の花聟
2/25歌舞伎座千穐楽夜の部「仮名手本忠臣蔵」五段目
2/25歌舞伎座千穐楽夜の部「仮名手本忠臣蔵」六段目
2/25歌舞伎座千穐楽夜の部「仮名手本忠臣蔵」七段目・前編
2/25歌舞伎座千穐楽夜の部「仮名手本忠臣蔵」11段目


最新の画像もっと見る

7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
みゆみゆ (Unknown)
2007-03-12 23:26:58
忠臣蔵の通しの記事完成ですね(^^)お疲れ様です。

七段目は、前にも吉右衛門さんと玉三郎さんで見ていますが、今回は仁左衛門さんと玉三郎さんのコンビが面白くて、とても良かったです。前回も良かったけど、今回はとっても良かったです。
返信する
至福の時 (かしまし娘)
2007-03-13 12:46:00
ぴかちゅう様、まいど!
私的にベストな布陣で、おもいっきり堪能~。幸せな一時でした。
返信する
ごめんなさい (みゆみゆ)
2007-03-13 14:11:33
タイトルのところに名前入れていたようです(汗)
一番上の記事は私がコメントしましたので、よろしくお願いします。
返信する
お疲れさまでした (六条亭)
2007-03-13 17:34:38
大長編の観劇感想が完成しましたね。お疲れさまでした。

今望みうる最高の役者陣による忠臣蔵通しでしたね。とくに七段目は、吉右衛門さん、玉三郎さん、仁左衛門さんのトリオが最高でした。

こちらからTBをうちました(私の方からはとくに問題なくうてました)。
返信する
皆様TB、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2007-03-17 13:05:30
★みゆみゆ様
通し上演の通し観劇、お疲れ様でした~。私も七段目を仁左衛門さんの由良之介で観てみたいです。その時を楽しみにしようっと。そうそう仁左衛門さんの「渡海屋・大物浦」のDVD出ますよね。アマゾンだと25%オフだし、買ってしまいそうです。
三月の「義経千本桜」通し上演も頑張りま~す(^O^)/
★かしまし娘さま
かしまし娘さんの七段目その2にTBしたらうまくいかないので3階席で観た感想にもかかわらず、華麗なる一等席の記事の方にさせていただいてしまいました。一等席観劇の至福が伝わってきます。
三月も堪能できるといいですよね。
★六条亭さま
>今望みうる最高の役者陣による忠臣蔵通しでしたね......ベテラン勢による大顔合わせで火花散る豚を堪能できました。
三月「義経千本桜」の通し上演にも期待しています。「菅原伝授手習鑑」の通し上演も歌舞伎座建替え前にやってくれるんじゃないかと推測しているのですが、あたらないでしょうかね。
返信する
大満足☆ (Ren)
2007-03-25 23:04:12
2月は忠臣蔵の通し、配役もばっちりでしたね!
ちょっと記憶があいまいになりかかっていたのですが
ぴかちゅうさまの記事を読んで、「そうそう!!」と
再度感動がよみがえってまいりました^^
返信する
★「如意宝珠」のRenさま (ぴかちゅう)
2007-03-26 00:03:29
TB、コメント有難うございますm(_ _)m
2/17(土)の二の午祭りのレポも楽しく読ませていただきました。このお稲荷さんのお祭りに地口行灯も関係していることも含めて今年初めて知ったんですよ。
日本の風物詩もきちんとわかると面白いと思うようになりました。
明日は3月「義経千本桜」通し上演の千穐楽、行ってまいりま~す。
返信する

コメントを投稿