ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/02/25 歌舞伎座千穐楽夜の部「仮名手本忠臣蔵」五段目

2007-03-07 23:59:55 | 観劇

五・六段目をまとめて書こうと思ったがやはり分けて書くことにした。
昨年10月の仁左衛門の五・六段目の感想はこちら
【五段目 山崎街道鉄砲渡しの場/二つ玉の場】
今回の主な配役は以下の通り。
早野勘平=菊五郎  千崎弥五郎=権十郎
斧定九郎=梅玉  お軽の父の与市兵衛=権一
浅葱幕が切って落とされ、舞台中央の松の根方で雨宿りしている勘平が笠を上げて菊五郎登場。3階席からだが、予想を上回る二枚目ぶりに驚いた。これが芸で見せるっていうやつだと納得。

昨年10月の千崎弥五郎も権十郎だったが、勘平の家の在所をきいたのを矢立や日記帳などを取り出して書いていただろうかとひっかかった。丸本ではいちいち書きとめたりしていなかった。丸本重視の仁左衛門の勘平とのやりとりではなかったような気がする。勘平が千崎の投宿先を書き留めずに覚えているのだから、同等レベルの教養があるはずの千崎が覚えられないわけがないと思うのだが、まぁ千崎をやる役者の見せ所を増やすための歌舞伎の入れ事だろう。ニヤニヤしながら見てしまった。
勘平は今の身の上を恥じながらも、敵討ちの同士に加われるかもしれないという喜びが湧き上がってくる。忠臣蔵の中でここが一番幸せなところかもしれない。

与市兵衛の権一がやってくる。風貌や仕草は文句なし。しかしながら台詞があまりききとれなかったのが残念。お軽を引き受けてくれた一文字屋様を拝んで前金50両を高々と掲げて拝んでいると白い手がその財布をむんずと掴む。
梅玉の定九郎の登場・・・・・・、う、違う。唯一の台詞「ごじゅう~りょ~う」・・・・・・、これも違う。色悪になっていない~。初役ということだが梅玉のニンではないと思ってしまった。顔の拵えもすっきりしていない。これでは仲蔵工夫のこのいでたちではなく、元々の山賊のいでたちの方が似合うと思ってしまった。花道で破れ傘を広げてしょって引っ込みかけると、そこに危いものがやってくる。かけ稲の裏側に隠れる(実はここで財布を変えるとか血を落とする所に霧吹きするとかいろいろと仕込んでいるという)定九郎。

花道から舞台に出てきたのは今年の干支のイノシシ。前回は可愛いなぁとか何気なく見ていたが、『芸づくし忠臣蔵』でここに入る役者さんが大変だという話を読んでからは俄然注目の仕方が違ってくる。確かに前足は作り物でブラブラしているだけで、うさぎ飛び状態で走っているんだ!こりゃあ大変だ!!(六代目菊五郎は好奇心旺盛だったのでこのイノシシにも一度入ったことがあるらしい)。

菊五郎の勘平は鉄砲を二度撃つ。揚幕の中で一度、花道でも一度。仁左衛門は丸本通り火薬の威力が二倍という意味にとって一度しか打たない。『芸づくし忠臣蔵』の中で紹介されていた菊五郎の考え方を知っているとこちらのやり方もありかと思う。本当は最初の一発しか撃っていないが、それを時間をずらして再現しているという考え方だ。花道で撃つだけにすると定九郎に誰も注目しないはずという。確かにそうだなぁ。花道に勘平がいないという約束があるからこそ、定九郎に集中できるというものだ。そして花道のプレイバックシーンの一発の勘平の見せ場も楽しむことができるという、役者を見せること本位の演出!まぁ、これもアリだろう。

次の注目は、定九郎が口から血を流して落とすところ。どこに落とすかも2つの方法があるという。亡くなった羽左衛門は膝に落とせば足先まで流れてしまうこともあるだろうから勘平役者の指が汚れるおそれありで、下がり(褌の前に下がったところのはず)に垂らすという考え方。しかしそれは衣装方泣かせらしい。昨年10月の海老蔵も今回の梅玉も膝に落としていた。

勘平は猪をしとめたと思い込んで、火縄のわずかな灯りも消えた闇の中をさぐりにくる。イノシシならぬ人間の足の指の形が手に触れてわかったために間違って人間を撃ってしまったことに気づく。驚きあわてながら薬で介抱しようと懐中を探って見つけてしまった財布。そのまま去ろうとするが花道でひらめいてしまう。引き返してきて、手を合わせはするが五十両を抜き取ってしまう。そして一路、千崎の宿所に向かっていく。
勘平はここから悲劇へと突き進んでいく~。

写真は、千穐楽の垂れ幕のかかった歌舞伎座正面を酒樽越しに撮影。
以下、この公演の別の段の感想
2/18歌舞伎座昼の部「仮名手本忠臣蔵」大序
2/18歌舞伎座昼の部「仮名手本忠臣蔵」三・四段目
2/18歌舞伎座昼の部「仮名手本忠臣蔵」道行旅路の花聟
2/25歌舞伎座千穐楽夜の部「仮名手本忠臣蔵」11段目


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
いのしし (かしまし娘)
2007-03-08 16:18:20
ぴかちゅう様。まいど!
イノシシの着ぐるみは、去年「歌舞伎展」で実物を見ました。
どうやったら身体を入れられるんだろ~って不思議だったです。
着てみたかった(笑)
返信する
★かしまし娘さま (ぴかちゅう)
2007-03-10 00:27:23
去年の「歌舞伎展」、気になってたのですが、そこまで足を伸ばす気持ちの余裕がなかったのと日本橋までの電車賃をケチったのとで見送ってしまいました(^^ゞ
イノシシくんの着ぐるみに入れる体験コーナーでもあったら行ったかもしれません?!前を見るための切穴とかが全くないらしいので、飛びはねた時に前方が見えるのだけを頼りにすすんでいくらしいですね。それも舞台で一周すると目が回って慣れていない人は定九郎のひそむかけ稲にぶつかってしまうかもしれません。昔、大幹部に命じられて千穐楽にわざと突っ込まされたイノシシもいたようですが、今はそんなことまで命令する人はいないでしょうね。そこまでハチャメチャにしていいのは俳優祭くらいかしら。
返信する

コメントを投稿