NHKの「クローズアップ現代」。
世界のニュースをタイムリーに、専門家の解説に映像を交え判り易く説く。
5月11日放送のテーマが、「 “文明の遺産” めぐる攻防」。
メソポタミア、エジプト、インダス、黄河。
いわずと知れた人類文明の先史、世界四大文明の発祥地である。
これらの文明にかかわる25の国が、エジプトの首都カイロに結集、ある決議をした、と番組は始まる。
決議の主旨は、「植民地時代に旧宗主国など欧米諸国に持ち出された文化財を、一致団結して取り戻すこと。」
対象となった遺産とは、大英博物館(写真上)が所蔵する、古代王朝メンフィスでBC2世紀に開かれた宗教会議の布告を書き写したものとされるロゼッタ・ストーンや古代ギリシア・アテナイのパルテノン神殿を飾った彫刻パルテノン・マーブル、ルーブル美術館(写真中上)が所蔵する古代エジプト時代の貴重な天文図デンデラの黄道帯など26の遺産。
国際会議が開かれた背景には、原産国が急速に経済成長を遂げ、その声を現保有国の欧米諸国も無視できなくなったという、世界構造のパラダイムシフト、その時代や分野で当然のことと考えられていた認識や思想など社会全体の価値観が革命的もしくは劇的に変化したこと、にあると専門家は解説。
番組は、鑑賞客で賑わうエジプト考古学博物館を映す。
悲しくもそこにあるのは、ロゼッタ・ストーン(写真中下左)のレプリカ。原産国のエジプトにとって屈辱以外の何者でもないことは容易に理解できる。
画面は他にも、古代エジプト王ファラオ、ツタンカーメンの義母、ネフェルティティの胸像(写真中下右)を紹介する。
この、謎を秘めた未完成の美しい胸像は、1912年ドイツ人によって発見、今、ベルリン国立博物館が所蔵しているが、エジプトと100年に亘り所有権を争っていると言う。
また、ロゼッタ・ストーンやデンデラの黄道帯など、エジプトの眠れる文化を発掘、解読したのはフランス。
先史文明が残した財産、文化遺産は、人類共通の財産なのか、それとも、原産国固有の財産なのか?と、番組は問う。
ベルリンで観光客の人気が高く、何時も混んでいるペルガモン博物館。
ここが展示するゼウスの大祭壇(写真下)や古代バビロニアのイシュタール門などに至っては、差し詰め奈良の大仏殿と南大門が根こそぎ移設されたようなもの。よくぞここまで持ち帰ったものと、良くも悪くも感心しないでもない。
また一方では、今ここにあるからこそ、この遺産の原形を留め得たのだとも思え、それぞれの主張に一理があって難しい。
ユネスコが、原産国と現保有国の仲立ちをしているが、この30年間で返還が実現したのは僅か5件と番組は結んだ。
ち なみにわが国は、原産国であり現保有国でもあって、曰く言い難い立場にあるようだ。
ところで、貴方は、どちらの主張に与されますか?
返還リストに一番多く財産が並んだのが大英博物館とか。
私たちも3回ほど訪れたが、人気のエジプトブース、小学生から老人まで多くの鑑賞客で何時も溢れ返っている。
この大英博物館、入館料が不要で、ドネーション・寄付で運営というのが幾らかは救いか?
小ブログ、おかげ様で150回。ペトロ 少し浮かれて、随分と長くなってしまいました。
日本は、秀吉の朝鮮派兵の頃からの持ち帰った国であり、幕末の開国以降の持ち帰られた国でもあるんですね。複雑です。
ところで、大英博物館・グレートコート、懐かしく思い出しました。
ロンドン、何時になれば登場するの、と思っていましたが、ようやくですね。楽しみにしています。[E:foot]
コメント、ありがとうございます。
実は、ロンドン、というより、アングリカン・チャーチ、聖公会のイギリス、余り好きじゃなかったんですが、ナショナル・ギャラリー見たさに、足を運んだ様な訳です。
最初の海外、ロンドンでした。会社の研修だったのですが、その時のロンドンは、石炭で煤けた街、色のない街、そのものような街でした。
しかも、季節は深い秋、晴れたかと思えば時雨、陰鬱な印象があったのだと思います。当時、この国のよさが見えなかったのだと思っています。
石炭を使わなくなり、壁も洗われて明るい街になったようですが、今になってみれば、霧(スモッグ?)のロンドン、風情があって良かったということになるのでしょうか。勝手なものです。[E:key]