街の字には、都会的な雰囲気を漂わすイメージがある一方、村よりは少し大きいイメージの町、その町の字が似合う国がある。
中公新書に、「ドイツ 町から町へ」(池内紀著/中央公論新社刊)という本があって、著者は前書きで、そのようなことを書いている。
少し引用すると、“ ドイツの町には驚くほど個性がある。通りや建物、広場から民家の屋根や壁の色、窓のつくり、土地ごとにはっきりとした様式がある。(中略)歴史的な背景があってのことだ。現在もそうである。法律が自治権を保障している。国家に預けず商業主義に売り渡さない ” と書く。
引用したこの一章が、この国のかたちを上手く表している。
そのドイツ連邦共和国なる外(と)つ国、首都ベルリンでさえ350万人、ベルリンと並ぶ特別市のハンブルクが170万人、南部バイエルンの州都ミユンヘンで130万人に過ぎない。
♪ フランクフルト・アム・マイン(中)とドレスデン(右)です
♪ どちらも、町の中心を流れる川があって、大阪・中ノ島公園に少し雰囲気が似ています
ライン川畔のケルンが100万人に近いが、日系企業が多く進出するデュッセルドルフ、空の玄関フランクフルト、旧東ドイツの中核都市ドレスデンですら50万人を僅かに超す程度。
著者は、“ リューベック、ブレーメン、フルダ・・・、何れも古い歴史をもつ町だ。わが国の尺度でいうと中都市あるいは小都市にあたる。別に好んで町の規模を競うなど愚かしい。人間的尺度に応じた大きさ、あるいは小ささがいいのである。それをこえると快適さを失うだけではなく、都市が人間を困惑させ時には威嚇してくる。そのことを人々はよく知っている ” と続けている。
♪ ゲルマン民族の最初の国の首都だったアーヘン(左)
♪ グリム兄弟ゆかりのカッセル(中)、そして、日本への降伏宣言を決めたポツダム(右)
♪ 訪れた季節は違いますが、どの町も森に囲まれ川が流れる美しい町でした
まわりくどくなったが、情熱の国スペインは<トレド>にエル・グレコを訪ね終えた 《ペトロとカタリナの旅》、さて、次なるはと思案、個性豊かな町とそこに暮す人々が、その地方の文化を守り育てているドイツへと思い至った次第。
で、今回は、トレドの旅でグレコの傑作「聖衣剥奪」でちょっと顔を出したミュンヘンの<アルテ・ピナコテーク>へと出掛けることにした。例によって、待降節で賑わうニュルンベルクなど、個性ある町へ道草をしながら。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.595