朝日などの主催で、小倉遊亀没後10年の回顧展が催されている。
会場の兵庫県立美術館(写真上)、建物を探訪するだけでも楽しめる。
美術館から運河に向かって階段が観客席のように設えられていて、この日も若い男女のグループが、穏やかな陽だまりのなかでお喋りなどに興じていた。
メイン通路の中ほど左手、エレベータで上階へ昇ると、建築家・安藤忠雄さんが多用する打ち放しのコンクリートに囲まれた階段室。
その壁に沿う回廊を半周して展示室に入る。
この企画展、挿絵や下絵などを含め110数点が並ぶ。
会期中に一部入れ替えもあるらしいが、作品リストにはかなりの数の絵が並ぶ。
余談だが、展示室でメモをしていると、展示室の先々で係官に注視されているような気がする。
手にしているのが鉛筆と分かると、残念そう?に視線が離れるのが分かる。
会場でメモを取る人、結構いるように思うのだが、稀に、万年筆とかボールペンの人もいるのだろう。
絵が無粋なガラス付きの額に収まっていたとしても、守るべきルールだ。
展示は、第一章《戦前期の絵を中心に》から第四章《多彩な活動》で構成。
各章毎に印象が残った絵を紹介すると、第一章では、「童女」に印象を受けたが、絵としてはやはり「浴女その一」が秀逸。
第二章《新しい日本画を求めて‐人物編》では、「娘」、第3章《いのちを見つめて‐静物編》では、「明果」(写真中)に感銘を得た。
第四章では、この画家にしては大ぶりな「青巒」。
また、画家102歳の絵「春の白梅」の瑞々しい感性に驚いたり呆れたり。
ただ、見たいと思っていた「径」(写真下)や「姉妹」は、残念ながら入れ替えを待たなくてはならない。
静物画は小さな絵が多く、そのなかでも椿を主題に描かれた絵が多く、それらの絵は画家の意図なのかどうかは分からないが平板に見えた。
静物でも花以外の絵、青柿などを小瓶などと組み合わせたものに佳品があった。
総じて、静物画より人物画に優れているというのが感想。
それにしても平日の展覧会、ご婦人ばかりのよう。
三人連れの途切れることなく続く、声をひそめた会話が耳に煩わしく、逃げても避けても展示室のどこかに。
まさかストーカのようで・・・、少し困ったこの日の美術館であった。