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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

1月29日・ロマン・ロランの神さま

2015-01-29 | 文学
1月29日は、神秘思想家エマーヌエル・スヴェーデンボルグ1688年が生まれた日だが、作家、ロマン・ロランの誕生日でもある。世界文学の最高峰のひとつ『ジャン・クリストフ』『魅せられたる魂』の作者である。

ロマン・ロランは、1866年、フランスのクラムシーに生まれた。父親は公証人で、ロマン・ロランが14歳のとき、一家はパリに引っ越した。高等師範学校をでたロランは、歴史や美術史、芸術史を学校で教えながら、雑誌に文章を発表。
33歳のとき『ベートーヴェンの生涯』を発表。
好評だったこの評伝を足掛かりに、ベートーヴェンをモデルとした音楽家を主人公に据え、彼の生まれてから死ぬまでの一生を描ききる大長編小説を書くことを決意。それが、38歳から46歳のころにかけて書きつづけた長編『ジャン・クリストフ』である。
『ジャン・クリストフ』を執筆後は、教師をやめ、執筆に専念した。
49歳のとき、ノーベル文学賞受賞。
56歳から67歳にかけて、長編『魅せられたる魂』を執筆。
生涯を通じ一貫して、戦争反対、ファシズム反対、ヒューマニズムを訴え、国際社会に向けて発言しつづけた。日本の満州侵略はもちろん非難したし、ナチスが台頭していたドイツからのゲーテ賞授与を拒否した。
シュバイツァー、アインシュタイン、ヘルマン・ヘッセ、マハトマ・ガンジー、タゴールらと交友関係をもち、ラーマクリシュナや、ヴィヴェカーナンダなどインドの聖人についての評論も書いた後、1944年12月、フランスのヴェズレーで没した。78歳だった。
作品は上記のほかに『ミケランジェロの生涯』『ラーマクリシュナの生涯』などがある。

自分は若いころに『ジャン・クリストフ』を読んだ。大長編を読み追えた後の、あの大きな感動はちょっとことばにできない。
『クリストフ』の、たしか主人公クリストフの青年時代を描いたくだりに、彼が神さまの声を聞く場面があったと思う。クリストフが、どうして自分はこんなに苦しみ、悩まなくてはならないのか、と苦悶していると、そこへ神さまの声が聞こえてくる。神さまはこういう意味のことを語りかけていたと思う。
「クリストフ、悩みなさい。苦しみなさい。悩み、苦しむむこと。それこそが、わたしがおまえに望むことなのだ」
表現はちがうかもしれないけれど、そういう内容だったと思う。自分は衝撃を受けた。
「そ、そうかぁ、神さまは、われわれ人間に、そういうことを望んでいるのかぁ」と。

長編は読むほうも体力を要求されるけれど、書くほうはさらに強靱な体力と精神力を要求される。ロマン・ロランはそういう力のたくましい人だったのだろうと想像する。
(2015年1月29日)


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