パピとママ映画のblog

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花筐/ HANAGATAMI★★★★

2018年02月20日 | アクション映画ーハ行

『彼女が結婚しない理由』『SADA 戯作・阿部定の生涯』などの大林宣彦監督が、『HOUSE ハウス』より前に書き上げていた脚本を映画化。戦時下を生きた佐賀・唐津の若者たちを描く。主演は『その日のまえに』などで大林監督作品に出演している窪塚俊介。主人公が憧れる美少年に満島真之介、病を患うヒロインに矢作穂香がふんするほか、門脇麦、常盤貴子、武田鉄矢、片岡鶴太郎、高嶋政宏らが顔をそろえる。

あらすじ:1941年春、叔母(常盤貴子)が生活している佐賀・唐津に移り住んだ17歳の俊彦(窪塚俊介)は新学期を迎え、美少年の鵜飼(満島真之介)やお調子者の阿蘇(柄本時生)らと勇気を試す冒険に熱中していた。肺病に苦しむ従妹の美那(矢作穂香)に恋する一方、女友達のあきね(山崎紘菜)や千歳(門脇麦)とも仲がいい。そんな彼らに、いつしか戦争の影が忍び寄り……。

<感想>今年に入ってやっと東北でもミニシアターにて上映された。期待して鑑賞したが、檀一雄の短編小説を原作にした「花筐/ HANAGATAMI」は、もともと1977年、大林宜彦監督が商業映画監督デビュー第一作として構想し、脚本まで完成していた映画だったが、様々な理由で実現しなかった。原作本は読んでいません。

第二次大戦中の若い青年たちの恋物語とでも言うのでしょうか、主人公の榊山俊彦には、兄である俳優・窪塚洋介の弟の窪塚俊介が、ただ一人戦争を生き抜いて最後まで演じていた。

友人のアポロ神のように雄々しく美しい鵜飼には、満島真之介が扮していて、女性たちの憧れの男となっている。そして虚無僧のような吉良には、長塚圭史が、お調子者の阿蘇には柄本時生といった青年たちが演じていた。

女子群には佐賀県唐津に暮らす俊彦の叔母には、常盤貴子が演じて妖艶で美しい。そこに住んでいる肺病を患う従妹の美那には矢作穂香。そして女友達のあきねに山崎紘菜や、千歳の門脇麦といった“不良”なる青春を謳歌している。みんな17歳の高校生役だというのに、そんなに気になりません。

物語は1941年の春から、毎年11月に行われる“唐津くんち”を描いており、1941年12月8日の真珠湾攻撃までの約8か月間の出来事を物語っている。

ここで展開するのは、一見若い男女7人による能天気な青春群像劇でもある。人のいい俊彦の他、行動派の鵜飼や、斜めに構えた吉良、にコメディリリーフの阿蘇。そして女性群の肺を病む美少女の美那、明朗活発なあきねに引っ込み思案の千歳の門脇麦が。彼らの中の誰かと誰かがくっついたり離れたり、若者特有の過剰な自意識がふくれあがったり萎んだりして。

ここでは、悲惨な戦闘や空襲の描写がほとんどない。しかし、その代わり、軍人のカッコをした案山子など、段々畑に勇ましい姿で立てかけられている。戦争の影が具体的に、あるいは象徴的に画面の中に見え隠れしているのだ。

序盤で、肺病を病む美那が、庭の井戸、水汲み場で激しく喀血をするシーン、圭子が屋敷から駆けつけて来て、いきなり唇に自分の口を押し付けて血を吸い出そうとする。いつの間にか互いの顔は、上下逆さまの位置になり、それは妖しいキスにもにて観る者をドキリとさせるのだ。

若者たちは漠然とした切迫感を抱えながらも、だからといって戦争に反対するわけではない。「日本の男たちは、みんな戦争にいって殺されるのだ」との諦めたような刹那てきに生きている。

いつしか戦争の渦に飲み込まれてゆく。学友の一人である美少年の鵜飼が、「青春が戦争の消耗品だなんてまっぴらだ」とキッパリと言い切るのも良かった。

やはり戦争に青春を捧げざるを得なかった昔の若者たちの無念を、はっきりとわれら観客に伝えたかったのだろう。そして多くの若者たちの青春がまた、無残にも消耗品になりかねないような事態が刻々と進行している現在に向かっても、__。

主人公である俊彦がどう生き抜いてきたのか、戦中戦後のあの時代を、あと10~20年もすれば戦争を知っている人も誰もいなくなっていると思う。つまりは、その時代背景や知識を総ざらいできるということを考えると、まんざらでもない。

余命数か月と宣告を受けた重い病気を患っているにもかかわらず、大林監督の意気込みを感じられる映画にであい、敗戦というこの国の大きな転換期、戦後のすごい生活苦を体験している人たちや、戦争がどんなに恐ろしいものか、それを警告し発信つづけなくてはいけないと。

映画を観ているとそれがひしひしと感じて来て、この作品の中には大林監督の思想がある。その思想の根底には、第二次大戦中を知っている世代の特有なものがあるようだ。

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